イカイカイカ・グランプリを見てみなイカ?
文=石田(N高6期生・ネットコース)
N/S高で職業体験が行われているのをご存じだろうか?
職業体験とは、農業や漁業などを体験することで、働くことについて向き合ったりその土地の魅力について理解を深めたりする課外学習だ。コロナ禍前から多くの職業体験が実施されており、学園の魅力の一つとも言える。
そのうちの一つであるイカ釣り漁業体験は、昨年度も開催されていたため、職業体験の例として知っている生徒も多いだろう。
今年は、イカ釣り漁業体験に伴い関連プログラム「イカにイカした料理が作れるか!?〜イカイカイカ・グランプリ〜」が開催された。漁業体験に興味はあったが、遠方に住んでいるため参加を諦めた私は、オンライン開催である関連プログラムへ参加することにした。
〜イカにイカした料理が作れるか!?〜イカイカイカ・グランプリとは何カ?
イカにイカしたイカ料理がつくれるか!?〜イカイカイカ・グランプリ〜(以下:イカイカイカ・グランプリ)とは、イカ釣り漁業体験で参加生徒が釣ったイカを使用したオリジナル料理を審査するもの。独創性が高く真似したい「イカした料理」と独創性が高く真似はできないけど魅力がある「イカれてる料理」が選ばれる。
使用するイカはブランドイカである「仙崎イカ」! 食べた感想も後ほどお伝えする。
完全オンライン開催のため地方に住む生徒も参加しやすく、イカれてる賞があるため、料理初心者でもアイデア次第で受賞を狙える。なにより、参加するだけで高級ブランドイカを食べることができるイカしたプログラムである。
職業体験参加者から話を聞かなイカ?
参加者はまずワークショップに参加することとなっている。
ワークショップでは、プログラム概要とイカの解凍方法を教えてもらい、今年の漁業体験参加者である4名からお話を聞くという流れになっていた。
今回のように職業体験での学びをプレゼン形式で発表する試みは、学園全体でこのワークショップが初めてだそうだ。前例のない中、更には3泊4日の職業体験を終えてから一週間も経っていないという忙しさの中で、全員が素敵な発表をしてくださった。
早寝早起きが辛かったり、船が網に絡まり停止してしまうトラブルなどもあったりしたが、イカ釣りやBBQなどの楽しいことも経験したと語る。海水から塩を作る「百姓庵」への訪問も印象深かったそうだ。
発表内容や写真から、職業体験の感想や、今回ならではの体験を通し様々なことを楽しく学んだ様子が伝わってきた。
特に、環境問題による影響を実際に目の当たりにしたという話が印象的だった。年が経つにつれてイカの漁獲量が減っているのは、昨年度と今年度の職業体験での漁獲量からも目に見えてわかるほどだという。
昨年度の体験参加レポートがあるため、イカ釣り漁業体験に興味のある方は是非そちらもみていただきたい。
イカを調理してみなイカ?
ワークショップから数日後、イカが届いた。解凍したイカは全体的に赤色のように感じた。先日のワークショップで話されていた「イカは怒ったり興奮状態になると色が赤くなる」という言葉を思い出し、このイカが赤いまま冷凍されたということは、やはり新鮮なイカだということがイカの状態からも感じることができた。
参加者は、事前にレシピを考え試作することが推奨されている。事前に考えて試していたレシピと手順で創作料理を作っていく。私は2杯のイカを使い、イカ飯の赤いイメージを覆す白いイカ飯と黒いイカ飯を作ることとした。
お湯で茹でたあと白だしで味付けした白いイカ飯と、イカスミに漬け込んだイカの中にパスタを詰めることで、黒いイカ飯……もといイカパスタを作成した。
事前に試した際に使用したイカは一般的なスーパーに売っている、いくつか入った小さいイカだ。その時に食べたイカと比べ、仙崎イカは一口で他のイカとの違いがわかった。
食感がとても柔らかく、一瞬火が通っているか疑う程だった。勿論、生の食感や味がしないため火は通っていたが、そう勘違いするほどの柔らかさ。そして、食感だけでなく味もイカそのままの味があり、特にパスタとの相性は抜群だった。
普段の私はあまり食材にこだわらない方だったが、試作品と仙崎イカで作った料理の違いから「質の高いものを使うことにより料理の質がぐっと上がること」を体験し、食材に対する価値観が変わった。
みんなの料理を見てみなイカ?
参加者全員の料理が揃い、投票サイトが公開された。
自分の料理も含め32品のイカ料理から、イカしたイカ料理とイカれたイカ料理をそれぞれ2品ずつ、計4品選ぶ。
様々な料理が並んでおり、特にイカれてる賞の投票には悩んだ。結果、「イカれてる賞」「イカしてる賞」どちらもパッと目を惹かれる料理に投票した。
同じ食材を使っているのにもかかわらずそれぞれのオリジナリティが出ていて、見ているだけでも楽しいものとなっていた。
受賞者から話をきいてみなイカ?
いよいよ運命の結果発表だ。受賞者には職業体験の開催場所である山口県長門市の特産品が届くとのことで、ワクワクしていた参加者も多いだろう。
結果はPDFにて共有され、参加者全員のレシピと投票コメントが確認できる。
今回の受賞者は、「イカしてる賞 スイさん」「イカれてる賞 ムムムさん」となった。
どちらの料理も完成度が高くボリュームもあり、何より一目で驚きの感情が出てくる料理となっているため、どちらも納得の受賞だと感じた。
受賞者であるお二人からお話を伺うことが出来た。
イカしてる賞 スイさんイカしてる賞 スイさん
料理名
〈イカ嫌いが考案〉イカ!イカ!イカ尽くし定食(長門の海に揺蕩う宝船/イカぷりかしわめし)
料理の説明
ゴムのような食感のイカを食べて以来、イカが大の苦手!……だったはずの私が自信を持って美味しいと言えるこだわりのイカ定食。
【長門の海に揺蕩う宝船】
数の子酢飯の上にはサーモンやカンパチ、マグロ、カニカマなど海のお宝がたっぷり。いかそうめんを波に見立てて、船の再現度UP!
【イカぷりかしわめし】
仙崎イカの柔らかい食感を楽しめるように、新鮮なイカを素朴な味付けにして調理。ぷりぷりのイカ焼きがドーン!と贅沢に乗っかった大盛りのかしわめしは迫力ある一品。イカ焼きを半日保存しても柔らかな食感で、これが仙崎イカの魅力なのだと感動しました!
工夫を凝らすだけでなく栄養面も考え、味噌汁と茶碗蒸しも添えてます。
こだわったポイント
「このコンテストでイカ嫌いを克服したい!」と意気込んでいたので、私のようにイカが苦手な人へ向けて、仙崎イカの柔らかな食感を活かせる調理法と、イカの旨みを楽しめる素朴な味付けにこだわりました。
【長門の海に揺蕩う宝船】
全体的に彩りを重視して海のお宝(海鮮)をちりばめ、料理名に“海”とあるように紺青色のお皿を海に見立てています。イカ焼きに使う仙崎イカの切れ端と市販のイカそうめんを使用しています。ちなみに、イカ一杯で使える量は限られているので仙崎イカは極少量です(笑)。
事前説明会の際に、イカ釣りの職業体験に参加した方々が現地ではお刺身をご馳走になったと話されていました。そのことから、仙崎イカそのものの新鮮さが味わえるおすすめのお刺身を試したくなり、生食メインのお料理になりました。
【イカぷりかしわめし】
イカが苦手な方にとっては少し食べづらい一品ですが、食べてみた途端イカの柔らかな食感に虜になるイメージを想像して作りました。
ご飯をかしわ飯にしたのは、イカ焼きに映える上に味が合いそうだなと思い、作ってみました。イカ焼きのインパクトを強くするためにご飯を大盛りにしてみたりなどと試行錯誤し今の形に完成しました!
料理以外でカメラワークにもこだわりました。インパクト大のイカ焼きに焦点を当てるため、イカ焼きの足をお箸で持ち上げてみたり、温かみのある雰囲気を出すために採光にもこだわってみたり、最高の一枚を模索しながらなんとか出来上がった一枚です!
調理時間
イカを一から捌き調理するのは初めてだったので、ご飯を炊く時間を省いても2時間はかかったと思います。
料理のアイデアはどこから?
【長門の海に揺蕩う宝船】
料理レシピ動画サービスを参考に、酢飯に数の子を混ぜたりカニカマを添えたり、旗ピックを立てたりしながら、既存のレシピに独自のアイデアを加え完成しました。
【イカぷりかしわめし】
仙崎イカの柔らかさを活かすために考えた料理で、当時はちょうど夏祭りの季節でもあったため、素朴な味つけでイカ本来の美味しさを楽しめるイカ焼きにしました。
仙崎イカを食べてみてどうでしたか?
もちもちとした柔らかい食感! 料理説明にもありましたが、イカ焼きを半日保存しても柔らかさは保たれたままで感動しました。
イカはゴムのような食感なのだと小さい頃から思い込んでいた私にとって、仙崎イカの食感は衝撃的すぎて一気にイカが好きになりました!
自分で作った料理を食べてみてどうでしたか?
一言で言うと美味でした! イカが苦手だった私の今までの価値観を一変した料理といっても過言ではありません。イカが苦手なのにこんな美味しい料理を作れるなんて、我ながら凄いなと食べながら自画自賛しておりました(笑)。
イカイカイカ・グランプリに参加するきっかけは何ですか?
初めてみたときは「イカイカ・イカグランプリ!? N/S高で料理コンテストなんて初めてみたかも。珍しいな、楽しそう!」でした。しかし私はイカが苦手。美味しく作れる自信がなく不安だったのですが、これを機に「イカを克服してみたい!」と思ったのと、ブランドイカである仙崎イカは今までのイカと違うのかもしれないという期待もあり、参加しようと思いました。
参加してみてどうでしたか?
家の食卓ではあまり出番のなかったイカですが、今回のイカイカイカ・グランプリをきっかけに、普段の料理にイカを取り入れてみたいなと思えるほどイカが好きになりました!
最近イカの値段が高くてちょっと豪華なメニューの日にしかイカ料理は作れませんが、このグランプリに参加して本当に良かったなと思います!
イカれてる賞 ムムムさん
料理名
イカしたカボチャグラタン〜焼き野菜のイカ墨チョコソース添え~
料理説明
イカを一杯使ってイカだしのきいたホワイトソースを作り、マカロニ・カボチャ・玉ねぎと共にくり抜いたカボチャに入れチーズをかけてオーブンで焼きました。
もう一杯のイカは内臓だけとり、バター焼きにして上に飾りました。イカ墨とカカオ70%チョコで醤油ベースのソースを作り、オリーブオイルで焼いた野菜に添えました。イカの目は、カボチャの種にイカ墨チョコソースをつけリアルに表現しました。
料理名は「生かした」と「イカした」をかけています。
料理名は「生かした」と「イカした」をかけて
グラタンに入ったイカとそのまま姿焼きにしたイカの両方を楽しめます。グラタンはかぼちゃと一緒に食べたり、濃厚なイカ墨チョコソースをつけたりと、様々な楽しみ方で食べられます。
こだわったポイント
味だけでなく、見た目もイカすように工夫しました。家にあった小さめのかぼちゃにちょうど良い大きさだったのでイカを丸々大胆に飾り、より迫力が出るように目を付けました。
イカ墨をとることができたのでソースにし、上品な味にしたかったので、カカオ70%のチョコを使用することでコクを出しました。
彩りも考え、最後に焼き野菜を添えました。タイトルも面白く工夫しました。
調理時間
1時間半ぐらいです。
料理のアイデアはどこから?
家にある食材を利用して、いかにインパクトが出るかを考えた。
また、イカ墨を利用したいと思ったことがきっかけとなった。
仙崎イカを食べてみてどうでしたか?
とても柔らかく、甘くておいしかったです。
自分で作った料理を食べてみてどうでしたか?
グラタンはイカのだしがきいていて、ソースにもコクがありとても美味しかった。
グラタンを野菜と一緒に食べたりソースにつけたり、いろいろな味を楽しんで食べることができた。
イカイカイカ・グランプリに参加するきっかけは何ですか?
料理が好きで、特に新しい料理を考えるのが好きだから。また、仙崎イカを食べてみたかったから。
参加してみてどうでしたか?
自分が好きなことができ、賞もいただけたので参加してよかったと思った。
スイさん、ムムムさん、この度は受賞おめでとうございます!
ちなみに、受賞者に送られる特産品とは……職業体験参加者の皆さんが訪問された「百姓庵」の「100zen海の塩」だ!
こちらの景品である100zen海の塩だが、入賞者であるお二人に加え、投票者の中からも十名に届くとのこと。幸運なことに筆者は投票抽選に当選したため、食べることができた。
この塩は、優しい味ながら粗塩で塩本来の味わいがあった。きっと仙崎イカや、ふぐ料理などにかけると美味しいだろう……。日常使いの料理でも味がぐっと上がる。少量ならば料理にかけずそのまま食べても美味しい!
オンラインショップでも購入できるため、気になる方は購入してみてはどうだろうか。私は既にリピートを考えている。
イカがだっただろうか?
職業体験関連プログラムは、私のように職業体験に参加したいけど距離的に厳しかったり、予定が合わずに参加出来なかった方、また、美味しいイカを食べてみたい方など、職業体験に参加はできなかったが、少しでも職業体験に興味がある方にオススメのものとなっていた。
昨年度に引き続き、今年度は職業体験だけでなく関連プログラムも開催された。関連プログラムでは、職業体験参加者はもちろん関連プログラムに参加した生徒もその土地や職業の魅力が伝わるため、今後も職業体験やこのような関連プログラムが続いていくと良いなと感じた。(※今後の開催は未定)
終わりに
今回、イカ釣り職業体験とイカイカイカ・グランプリが行われ、参加することで様々な美味しい食材や山口県長門市の魅力を知ることが出来たのは、職業体験参加者や関係スタッフ、そして現地の漁師さんや百姓庵で働かれている方など関係者全員のおかげだ。
この場を借りて、感謝をお伝えしたい。
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