メンタルヘルスってなんですか?〜私たちが答えてみた〜(後編) What is Mental Health? ~We tried to Answer~ (Part 2)
取材・文=ひーさん(N高6期・通学コース)
桜良(N高6期・通学コース)
yunana(N高7期・ネットコース)
Hiwa(S高1期・ネットコース)
yuna(S高1期・通学コース)写真提供=NPO法人インビジブル
前編に引き続き、後編はアンテーアさん、マルガレッタさん、プリヤさんの海外ゲストの質問に、新聞メンバー+同じユースメンバーである伊藤ちゃん、みつきと一緒に答えます!
それではどうぞお楽しみください!
Anthea Longo(アンテーア・ロンゴ)
アンテーアさんは、イギリスの首都ロンドンを拠点とするウェルカム・トラストの文化パートナーシッププロジェクトオフィサーとして活動。
Margareta von Oswald(マルガレッタ・ボン・オスワルド)
マルガレッタさんは、ドイツの首都ベルリンを拠点に人類学者として活動。 マインドスケープスの研究員。
Priya Basil(プリヤ・バジル)
プリヤさんは、ドイツの首都ベルリンを拠点に作家として活動。
政治活動家としても活動。
ユース×メンタルヘルス×○○○
ーーマインドスケープス(※)に関わってきて、みんなの中でメンタルヘルスの捉え方って変わった?どう変わった?(プリヤ)
マインドスケープス(※) ウェルカムトラストが主催する、メンタルヘルスの理解と議論を根本的に問い直し、再検討することを目的に、パートナーと協力する国際文化プログラム。
元々メンタルヘルスは、私の中で自分のメンタルが落ちたときに立て直すための手段みたいなものだと思っていました。
その立て直す手段は個人でそれぞれ持っているもので、私の場合は動物と触れ合ったりだとか、うちの猫ちゃんたちと戯れたりだとかで、なんとなくメンタルが落ち込んでいるときに、なんとか正常の0に行くまでの手段って考えていました。
このプロジェクトに関わってから、みんなが共通してメンタルヘルスに作用できるものはなんだろうって考えるようになりました。
それから食や睡眠、あとは「ありがとう」とか「ごめんなさい」っていう言葉をちゃんと口に出す、奥に溜まったものを出すっていう行動がメンタルヘルスになり得るのかなと思いました。
最初は「メンタルヘルス」という言葉を聞いたことがあるというくらいでした。
ただその言葉は、精神病だと診断されたり、そのくらい落ち込んでいたりするときに使う言葉なんじゃないかと、なんとなく思っていたんです。
プロジェクトを通してメンタルヘルスについて考えていく中で、完全に落ち込むっていうときだけではなくて、心の些細な動きだったりとか、落ちて上がるだけじゃなくてちょっとした波であっても、メンタルヘルスという言葉は使われるのかなと思うようになりました。
アートの効用についても、薬みたいにピンポイントで劇的に何かに作用するものではなくて、なんとなく心地よく感じるなどの気分的なものとして、何気ない生活の中でメンタルヘルスに作用できるものなんじゃないかなと思います。
コンビーニング(※)で、ミュージアムとか、アートとか、メンタルヘルスとかを考えたときに、自分自身にこういうアートプロジェクトに参加していて良い影響があったんです。
メンタルヘルスについて、アートは人が言葉に簡単にできないようなことを表現できたり、交流を通して伝え合えたりできるもので、単純に話しをするのとはまた違った相互理解に繋がるのかなって思います。
コンビーニング(※) マインドスケープス東京で行われた2つの企画の一つで、対話を主としたプログラム。UI都市調査プロジェクトがもう一つの企画。
もともと自分の心の動きとか感情の変化に興味があったから、メンタルヘルスって言葉は中学生くらいから知っていました。
このプロジェクトに関わったきっかけも、心の動きとかに興味があったからだったんですけど、でもやっぱりメンタルヘルスっていうワードは結構、”病気”とか特別な言葉だというイメージがありますね。
でも関わっていくうちに、身近っていうか些細な影とかと同じようなものなのかもしれないという感覚に変わっていきました。
日常生活のすぐ隣にあるっていう感じです。
マルガレッタ:素敵!ありがとう。
私がプロジェクトに参加したのは、心理学とかそういうものに興味があって。
色々な活動をさせてもらう中で心が動いたというか、たくさん気づきがありました。
元々メンタルヘルスにいいイメージがなかったけど、このプロジェクトに参加してから前向きなイメージになりました。
今回私が参加させていただいた映像チームでは、「普通ってなに?」っていうテーマで活動してきました。
この半年間活動を行ってきて、「普通」について、話し合ったり色々な人の話を聞いたりして向き合ってきましたが、考え方の視野がすごく広がったように感じています。
それを実感できるのが、例えば家族と喧嘩をした時に、
「これもこの人の考え方なんだよな〜」とか「この人にとってはこれが普通なんだよな……。」とか、少しづつ受け入れられるようになった時です。
「その人にはその人の考えがあって、こんな考え方をしているんだ。」と人と接していて感じる事ができたのは、自分の中では大きな変化だったな、と思います!
”デジタル”とメンタルヘルス
マルガレッタ:ひとつ質問いいかな? 日本に来るまでに、来日したことがある友人から、「日本の社会の変化はどうやら他の社会よりも一歩先を行っている」っていう話を聞きました。
私たち:ざわざわ……。
マルガレッタ:特に、どのように住むか。一緒に住むか。
とても資本主義的な社会でもありますよね。
今子供が実際に自分のところにいるっていうのもあって、すごく考えていたことがあるんです。
そこで、次の質問です。
ーー”デジタルとメンタルヘルス”についてみんなどう思う?(マルガレッタ)
マルガレッタ : 全部個人的な人生の視点で構わないんだけど、特に日本では、孤独っていうのがすごく大きな問題としてあるというのは知っているので……。
今日初めてオンラインスクール生、みんなの高校が通信制っていうことを知ったのですが、そんなものがまず存在することを知りませんでした。
自分の中でのデジタルとメンタルヘルス。そして自分自身がそれについてどう感じるのか、教えてください。
自分の将来のためにもそれってどういうものなのか聞いてみたい。
たきさん:いい質問ね!私もお母さんとして気になるわ!
デジタルって、自分の親世代はポケベルとかガラケーとか、デジタルが始まったみたいな時代だったのかなって思うんですけど、自分たちが生まれた時ってもうすでに携帯があって、物心つくときにはスマートフォンだったりで誰でも簡単にSNSで知らない人と話せたり。
デジタルがあって世界中の人と関わることができるようになったとはいえ、現実だからこその感情が欠けていったりとか、ネットの匿名性があるからこその暴力性だったりとか、そういうものの影響があったりするんじゃないかなって思っていて、のびのびみんなで遊んでいた時代の方が豊かだったんじゃないかって……。
子供の教育にデジタルってあんまり良くないんじゃないかなって個人的には思います。
今はコロナで外に出られなかったりして、デジタルはコミュニケーションなどの部分でそこを救った側面もあると思うんですけど、それに依存しきったりネットに比重を置きすぎてしまったりと、現実での関わりを疎かにしてしまっているっていう人もいるのかなと思います。
メンタルヘルスの面で見ると、デジタルはコミュニケーションのメインに据えるものではないと思います。
それが当たり前の世界になるかもしれなくて、今はまだそうではないからこう思うのかもしれないんですけど。
対面の人と人っていうのを一番大事にしつつ、生活をサポートする道具の中の一つとして使っていくのがいいのではと思います。
たきさん:メンタルヘルスとデジタル…難しい!(笑)。
考えたことがなかったんですけど、姉と一緒にご飯屋さんに行ったときに、子供達が遊んでいて、おばあちゃんと子供がいて、その子供が赤ちゃんを抱えていたんですよ。
赤ちゃんが泣き出しちゃって、おばあちゃんが「携帯でも見せてなさい!」って言っていて(笑)。
あぁ、そんな時代になったんだなぁって思いました。
なんかもう……スマホがなくちゃ生きていけない時代に今はもうなっていっちゃうんですよね。でもN高に通っていて、授業も全部ネットだし……。
そういう生活をサポートする役割と、音楽を作ったり写真を加工したり動画を作ったりっていう頭の中のものを表現できるものでもあり、メンタルの支えになっているのだと思います。
これからも進化はしていくと思うし、もうデジタルと私たちは切り離せないなぁって思います。
アンテーア:私も一つ質問いいかしら?
私たち:全然OK!!
大人とメンタルヘルスについて話すこと
ーーこのプロジェクトに関わり始めてから、自分より年上の人とメンタルヘルスについて話してみよう、または実際に話してみたっていう経験はありますか?
おじいちゃんおばあちゃんでもいいし、保護者でもいいし、目上の人と話す機会ってあった?(アンテーア)
わたしはお母さんと話しました。新しい話題になりましたし、考え方の違いって受け入れるものなんだなぁって感じました。
ここのプロジェクトで関わった大人の方とはたくさん話したし、大きな影響にもなったんですけど、正直、親とか親族とは全く話さなくて。
なぜかっていうと、私の親族は頭の中ではわかっていてもあんまり口に出さない人が多くて。
話題にあがらないからそれについて話す機会もなくて、正直切り出しにくいなぁって思います。親との世代が結構離れているっていうのもあるんですけど。
自分は元々家族とプロジェクトなどの会話をすることがなくて。
食チームなどUI都市調査プロジェクトの活動で色々な大人の方と話すことはあるんですけど……。
もともとそういうメンタルヘルスって、人それぞれ違うよなっていうのはずっと思っていて。
話そうと思えば話せるんですけど。話しにくいかもしれないけど、わかりあうためにも話した方がいいとは思っています。
私は、メンタルヘルスについて話すっていうのはあまりなかったですね。
私は、自分より上の世代の人と話すことが多くて。
なぜかというと、メンタルヘルスとかに関することって自分の弱いところなどを話すことが多いと思うんですね。それで泣いちゃうこともある。
目上の人だと本当に打ち明けられる。
素の状態で話せるなって思うので、自分より年下の子と考え込んだりあんまり話したりする機会がないかもしれないです。
時間が来てインタビューはお開きに!
最後は「Thank you!!」と感謝を伝えて記念撮影!お話ししてくれたアンテーアさん、マルガレッタさん、プリヤさん、ありがとうございました!!
座談会インタビューを終えて
座談会インタビューでは金継ぎやデジタルなど、日本の注目されている文化はたくさんあることがわかりました!
国の価値観の違いには、「海外はアートやメンタルヘルスの意識が強いイメージ。」「デジタルは海外の方が進んでいると思っていた。」など、みんな驚きを感じずにはいられませんでした……!
私たちは、同じ学校に通っていて、学校から課外活動の一環として募集がかかり、集まりました。
心理学に興味を持ち参加した人。アート・芸術に興味を持ち参加した人。高校三年間の最後に足跡を残すために、このプロジェクトに参加した人。
始まったばかりの頃はメンタルヘルスの考え方も、ウィキペディアの説明が知識として備わっているくらいだったり、あまり深く意識していなかったのも事実です。
約半年間、私たちはUI都市調査プロジェクトで「メンタルヘルス」について調査してきました。
仲間達と、自分と向き合う時間を経て、メンタルヘルスについて探求し続け完成させた調査結果。初めて来場された方がマインドスケープスと関わりのある、海外の方達ということにとても緊張していました。
発表をしている時、私たちの活動をみて考えに耽っている姿や、涙を流している姿を見て、「アートってすごく力を秘めているんだな」と感じました。
自分たちの活動に誇りを持てました。
各国の文化や思想などに触れることができ、そのお話をメンタルヘルスを研究している方達から聞けたこともあり、視野がとても広がりました。海外の方も、日本の高校生と話せるというのがとても楽しみだったそうです! お互いの国で良い影響を与えあえている場が広がっていました。
海外のゲストの方達と私たち日本の高校生。普段の日常では交わることのない、とても新鮮な時間でした。
心の動き。日常生活のすぐ隣にあるもの。些細な波。自分を立て直す手段。
メンタルヘルスの捉え方は人の数だけあるのかもしれません。
What does mental health mean to you?
ーーーーーー
今回のインタビューも含めて、UI都市調査プロジェクトに参加するまで海外の方と関わる機会が無く、とても楽しくて貴重な経験になりました。メンタルヘルスをどう捉え、どう付き合っていくのか。人が心を持つ限り、考えていかなければいけないと思います。ありがとうございました!
ーーーーーー
海外の方へのインタビューという貴重な経験の中、興味深いお話をたくさん聞くことができ楽しかったですし、とても学びのある時間でした。ずっと忘れられない経験になりました!
ーーーーーー
残念ながら現地にはいなかったのですが、海外ゲストの方々の興味深いお話を聞けて良かったです。この貴重な経験で学んだことをこれからに活かしていきたいです!ありがとうございました!
ーーーーーー
答えに詰まってしまったり、上手く事が運べなかったこともあったのですが、笑って「焦らなくて大丈夫。ゆっくり考えて。」と言ってくださいました。緊張もほぐれ、次第に笑顔で溢れる場となり、とても楽しい時間でした。
皆さんの心が豊かでありますように。 (新聞メンバー一同)
コメント