プロのコミュニティマネージャーに聞く、オンラインコミュニティのあれこれ

取材=かめた(N高6期・ネットコース)
たつひこ(N高7期・通学コース)
ほのか(S高2期・ネットコース)
文=ほのか(S高2期・ネットコース)
「コミュニティマネージャー」という仕事をご存知ですか?
コミュニティマネージャーとは、その名の通りコミュニティの管理をする人のことです。
先日、学園内で「コミュニティマネージャーの学校」というプログラムが開催されました。
コミュニティマネージャーを目指す人のための認定プログラムで、現場で活躍するために必要なスキルが学べる講座でした。
※『コミュニティマネージャーの学校』について詳しくはこちらをご覧ください。
→https://n-highschool.slack.com/archives/C10V9TA3E/p1676030113166679
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その「コミュニティマネージャーの学校」というプログラムで、講師として登壇された加藤翼さんに、人が集まるコミュニティを運営するコツやオンラインでの人との繋がりについてインタビューしてきました。

加藤 翼(かとう つばさ)
株式会社qutori CEO
株式会社ロフトワーク コミュニティデザイナー
1990年生まれ千葉県柏市出身。「共創」をテーマにしたコミュニティマネージャーとして、他分野のコミュニティを横断する事業を多数手がける。早稲田大学で哲学を専攻後に、外資系コンサル企業に勤務。デザインスクールを経て、株式会社ロフトワークに入社、100BANCH、 SHIBUYA QWSの立ち上げに携わる。2017年株式会社qutoriを創業、コミュニティマネジメントに特化したプロフェッショナルファーム「BUFF コミュニティマネージャーの学校」、ブランドを応援するポップアップメディア&コミュニティ「POPAP」を運営する。2020年 世界経済フォーラム(世界のリーダーたちが今の課題を議論する通称ダボス会議)の配下にある、Global Shapersに選出される。
Twitter:https://twitter.com/2_basa
加藤さんについて
ーーどのような経緯でコミュニティマネージャーという仕事についたのですか?
実はなりたいと志望してなったわけではなく、気づいたらコミュニティマネージャーになっていました(笑)。
僕が「コミュニティ」というものに関わるようになったのは、大学生時代に学生団体を立ち上げたことがきっかけです。そして立ち上げた日は偶然、東日本大震災が起こった日でした。だから、学生団体の最初の仕事は、震災支援ボランティアのプラットフォームの事務局長でした。そのときに多くの人をまとめ動かす立場になったことが今の起源になっています。
その後の大学生時代はずっと学生団体の裏方としてコミュニティを支える活動をしました。大学を卒業するとアメリカに留学に行き、現地で人々の暮らしや環境を通じてアプローチする方法を学びました。そして、一年間コンサルティングの仕事をし、今の会社のコミュニティマネージャーに就任しました。
というように、最初からコミュニティマネージャーという仕事に就きたいという思いがあったわけではなく、偶然体験したことがコミュニティマネージャーに繋がっているのだと思います。

ーー大学時代に哲学を専攻されていたと聞いたのですが、哲学と今のコミュニティマネージャーの仕事はどのように関係していますか?
まず哲学を専攻した理由は、予備校の先生がよく哲学の話をしてくれて、単純に哲学に興味が湧いたからです。高校生の頃は、虫などの生き物が好きで、東京大学理科二類の農学部を志望していました。ですが、浪人時代を経て理系は向いていないと思い、哲学を専攻しました。
最初は好奇心から哲学を専攻しましたが、学んだことは今のコミュニティマネージャーの仕事にとても役立っています。なぜかというと僕はコミュニティマネジメントとは「人間とは何かを問う」とても哲学的な仕事だと感じているからです。実際にはどの学問を専攻しても活かせると思いますが、哲学は特に役立つと思います。
コミュニティとは

ーーコミュニティマネージャーの加藤さんが思う「コミュニティ」とは何ですか?
僕が思う『コミュニティ』とは、全員を包んで信じた先へ進ませてくれるものです。
自分の中で生まれる問いを信じることでイノベーションが起こりより良い社会に繋がる。また、問いを信じている人たちを包み込むように連帯や繋がりが生まれ、実態はないように思えて信じている人たちには確かに感じられるというものがコミュニティだと考えます。
ーー「チーム」と「コミュニティ」の違いはなんですか?
「コミュニティ」というのは、参加してもしなくてもいい人がいて全員が自主的に活動する組織のことです。逆に従来のような参加必須で全員が明確に同じ目標を見ている組織は「チーム」になります。N/S高でいうと、オンライン部活動や同好会などが前者の「コミュニティ」に分類されると思います。
ーーコミュニティなど人が集まる際に「選考」は必要だと思いますか?
組織の目的によると思います。例えば、サッカー部だと全国制覇を目指すチームとサッカーを楽しむチームでは集まる人が大きく違いますよね。また、同じ山を登山していても、ルートやペースは一人ひとり違います。それらを合わせたい時に一つの方法として選考を使うと良いと思います。
ーーなるほど! では選考をしない場合、自分の思いに近い人や共感度が高い人と出会うにはどうすればいいですか?
宣伝方法を工夫することも一つの手ですね。例えば、「〇〇同好会に参加してください!」というより「△△をしている〇〇同好会です!××なひとWelcome!」という宣伝の方が自分たちの思いに近い人が来てくれやすいです。
コミュニティは誰でも入れるようオープンにしておくけれど、参加したい人が安心して参加できるように、宣伝や広告などでコミュニティのビジュアルをデザインしておくことが大切です。
オンラインと人々のつながり

ーーオンラインコミュニティの強みって何だと思いますか?
地理的な制約がなく物理的に安全なところだと思います。世界中のどこにいても参加でき、誰もが参加できるオンラインは魅力的ですよね。また、リアルに比べて事故や怪我などの恐れがないことも強みだと思います。
ーーだとすれば、オンラインのコミュニティが最強のように思えます…
確かに(笑)。でもオンラインでは食事やお風呂などの物理的な活動はできないですよね。特に会食は、生命としての活動を一緒に行うので、比較的簡単に絆を作ることができます。やっぱり物理的な活動は、リアルでしかできないことです。
加藤さんから最後に

今高校生の皆さんが大人になる時は、働き方や仕事自体も大きく変わってくると思います。そんな変化の多い未来でも人と人の繋がりが大切だということは変わらないと思います。AIによってなくなる仕事などが注目されていますが、コミュニティーマネージャーのような役割は人間だけができる仕事です。
そして、多くの人がコミュニティマネージャー的な視点で他者を思いやることができると、より良い社会になると思います。SDGsのように大きく目標を掲げなくても、自分の身近な人を思いやり続けることで幸せな社会を実現できるはずです。これを読んでくださる方も思いやる心と余裕を持って日々を過ごしてみるといいと思います。
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今回、コミュニティマネージャーとして活躍されている加藤さんに、コミュニティのあり方や人との繋がりについて伺いました。「人間とは何か」「コミュニティとは何か」を深く考え続けている加藤さんへのインタビューは、普段のN/S高生活で欠かせないオンライン上の人間関係やコミュニティを管理する側の思いなど、自分自身の身近な繋がりを考え直すきっかけになりました。
この記事で、N/S高でのオンライン上の学園生活をより楽しく過ごせるようになるヒントを伝えられたらいいなと思います。
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