【人狼部特別顧問とポケモンのあの人が!?】イシイジロウさん・森本茂樹さんにインタビュー!
取材・文=かめた(N高6期・ネットコース)
取材・文=ひかり(S高2期・ネットコース)
取材・文=toran(N高8期・通学コース)
※在籍、学年は執筆当時。
N/S高にある「人狼部」。
今回は人狼部の特別*HRにて、人狼部特別顧問のイシイジロウさん、そしてゲストの森本茂樹さんと一緒に人狼をすることができました!
ゲーム後はインタビューに答えていただいたので、ぎゅっとまとめてみなさんにもお届けします!
人狼ゲームで生まれるドラマや、自身の活動にかける思いとは……?
人狼ゲーム好きの人、そして創作活動に関わる全ての人に見ていただきたい記事になりました。ぜひ最後までご覧ください!
イシイジロウさん(画像右)
ゲームデザイナーとして『文豪とアルケミスト』や『428 〜封鎖された渋谷で〜』『 タイムトラベラーズ』など、数々のソフトを手がける。N/S高人狼部創設時からの特別顧問として、人狼部員に「魅せる人狼」を教えてくださっている。
森本茂樹さん(画像左)
ゲーム/キャラクターデザイナー。「ミュウの生みの親」でお馴染み。ゲームフリークの社員として活躍している。
ーー人狼ゲームのコツを教えてください!
(森本さん)
コツは人狼部顧問の児玉さんが言うように「迷ったら騙(かた)れ・出ろ」というものですね。人狼陣営というのは、人間側を楽しませるためにいる。
偽っぽくなってもいいから、他の村人を楽しませることが大事だと思っています。
(イシイさん)
私は物語を作るタイプの仕事をしているのですが、人狼ゲームはその場で物語が生まれます。その物語がどう生まれ、育つかというのを、自分の視点よりも、外から見ている視点に立った時にどうなるかを考えています。
外から見て面白く死んだらいいかなとか、もっと面白くするためにはどうしたらいいかというものですね。勝ちたい気持ち+その感情です。
ーー今日の試合の感想を教えてください!
(森本さん)
人狼部の*グランドルールや、グランドルールに則って、人の意見を尊重した行動が素晴らしいです。
人の意見を尊重できる村は素敵になると思うので、回を重ねてそれができるようにしていくことが大切ですね。
もっとこうした方がいいよとかいうのがないです。うまく人狼という役職で活躍できてよかった!
(イシイさん)
8年間毎年、設立当初から年に一回はみなさんと*同村していますが、すごく洗練されていて、もともとみんな人狼ゲームを楽しむんですね。人狼ゲームの勝ち負けではなくて、楽しむ。僕は「もう一度この人狼会に参加したい」「この人たちともう一度人狼がしたい」と思ってもらうことができたら、この試合の勝利だと思っているので、それをあそこまでグランドルールとして細かく文章化されているのが素晴らしいです。
その中で森本さんとかと人狼3人で高度な騙し合いができている。みんなが遠慮しているから人狼が無双する、とかではなく、ちゃんとしたやりとりの中で高度な試合ができるのは理想的。素晴らしい進歩だなと思っています。
僕自身も楽しかったし、死んで目を開けた時、森本さんが人狼で「やられたな」と心から思った。楽しい人狼ゲームでした。
ーー人狼をたくさんされているお二人から、人狼部へアドバイスをいただきたいです
(森本さん)
とにかく楽しく! 楽しく遊ぶ時の話をします。
僕は人と人狼ゲームをやっている以上、みんなを嫌な気持ちにさせたくないです。
村人陣営の時に怒っちゃったり、イラっとしたりするのをなるべくやめる。人狼ゲームの時にやってしまうと場が悪くなりますから。人狼陣営の時にイラッとしないのであれば村人陣営の時もそうしないように。人狼のときも村人のときも同じテンション感でいけるといいかもしれません。
(イシイさん)
僕が人狼ゲームに10年ハマっているのには理由があります。
それは、多数決は正しく機能するとは限らないということです。みなさんは民主主義の国に住んでいるけど、人狼ゲームをしていると多数決でも不正解を選ぶこともあるし、正しいとは限らないという方向にいってしまうことを経験できます。
人狼ゲームには客観的に証明できる視点がないことにも気づかされます。預言者や霊媒師は100%真実を知っているけれど信じてもらえないこともありますよね。世の中には100%の真実はないけれど、真実に近いと思うことを話しても信じてもらえない時があります。
そういうことと常に付き合えるゲームは自分を豊かにさせてくれる。そういうことを考えながら「世の中うまくいってないなー」とか「多数決って正しいの?」と疑いたくなった時に、それを別の視点から、一段上のレイヤーから見せてくれるものが人狼ゲームだと思っています。僕はそんな気持ちで人狼をしているので、みなさんもそういった視点から人狼をするのも面白いんじゃないかなと思っています。
ーーお二人の一番好きな役職とその理由を教えてください!
(森本さん)
僕は狂人ですね。狂人→人狼→占い師の順で好きかもしれないです。
僕は人狼では人に語りかけて村人陣営からどれだけ信頼を得られるかっていうところが一番好きなポイントなので、なるべくなら占い師を語ってこの人本物っぽいって言われたい。偽物でも本物でも信頼を勝ち取りたいという承認欲求のようなものがあります。
(イシイさん)
僕は実は村人だったりするんですよ。それはなぜかというと村人って情報がわからないから、そのわからないことがやっぱり現実に近いなって思ったり、役職と違って責任がないからこそ、面白いとこもあると思います。振り回されるじゃないですか世の中って。そんな感じで振り回される村人が僕は好きな気がします。
(森本さん)
ちなみに僕は振り回す方が好きです。
(イシイさん)
森本さんはそうですよね。
その振り回されるのを表現することも一つの魅せる人狼だと僕は思っています。
なので僕は舞台とかで人狼をやるときは「村人のときに振り回されてるよ!」という表現にこだわっています。それを言葉にして表現することによって、人狼を見てるお客さんが村人ってわからないからこうなるよねって共感しやすくなると思うので。僕はそれを表現したいので村人が一番好きですね。
ーー今までプレイした中で一番記憶に残っている試合を教えて頂きたいです。
(森本さん)
僕の一番記憶に残ってる試合は色々と重なった回ですね。
その試合では初日に占い師の偽物が2人出てきて、2日目に狂人が噛まれたけどGJ(※)が起こったのでこのまま潜伏しようと思っていました。そしたら自分と自分が白を出した人が疑われて、2人で決選投票になってしまってですね。急いで自分が占い師だと明かしたら偽物扱いを受けた、というそんな試合が記憶に残ってますね。
もうこれは覆しようがなく誰もが自分を偽物だと思う状況になっていて残念でしたね。
でも意外とそのような試合も楽しくて、本物なのにみんなから疑われるという感覚もすごい楽しいです。
(イシイさん)
僕はすごく記憶に残っているひどい試合があって。今までにプレイした1000を超える試合の中でもこれほどひどい試合はない、みたいな面白い試合があります。
その時、僕は人狼を引いたのですが自分が人狼だということを忘れてしまって。その状態で試合が進んで、夜になってもずっと自分が人狼だって気づかずに目を開けずにいました。昼間は村人のつもりで、一生懸命推理をして本来味方であるはずの人狼を処刑していって、最後の人狼になった時にGM(ゲームマスター)に肩を叩かれてそこで目を覚ましました。
目を覚ました時は本当に僕は何をやっていたのだろうかと驚いて真っ青になってました。
そこからは人狼として頑張ろうと思っていたのですが、論理的に自分が疑われてしまい人狼二人を処刑しているからと反論しながら処刑されてしまいました。その試合が終わった後には仲間の人狼二人に土下座する勢いで謝りました。
森本さんもその時いらっしゃいましたよね?
(森本さん)
そうですね。僕もいたのですが、みんな夜の時はクスクスと笑っていて何をされているのだろうという感じでしたね。
(イシイさん)
本当に今でも申し訳ないと思っています。
ーーお二人がされているお仕事を含めた様々な活動の目的の一つは、人の「楽しい」を作り出すことだと思っています。そういった活動をする中で大切にしていることを伺いたいです。
(森本さん)
自分は遊びを作る上で、それがどんな人に、どんな風に遊ばれるのかを想像することが一番大切だと思っています。作っている上で、遊んでくれる人達は何を楽しいと思うのか、どういう風にそれを遊ぶのか。そういったことを常に考え続けることが、自分の中で大切だと思っている点です。
ーー自分だけでなく、遊んでくれる人がどう思うのかを考えるのが大切ということですか。
(森本さん)
例えばRPGでいうと、レベルを100にして無双したい人達っているんですよ。僕はそういうタイプではないので、その気持ちが分からないんですよね。勝てるか勝てないかのギリギリのところを、創意工夫で何とか攻略していくのが好き。だけど、RPGを遊ぶ人たちの中には、圧倒的な力によって敵をなぎ倒していきたいっていう人がいるんです。自分はそれを楽しいとは思わないけど、そういった自分とは違うタイプの人達もちゃんと楽しめるように作るのは大切だなって思っています。
ーーイシイさんはいかがでしょうか。
(イシイさん)
僕は「あの時の自分を楽しませる」という考え方で仕事をしようと思っています。自分がエンタメの仕事をしているのは、エンタメの作品を見て「ああ、こんなすごいものを作りたい」と思ったからなんですよね。自分はヒットするものとか流行ってるものが好きじゃなくて、自分が惹かれるものを見つけて、それを宝物として大切にしていた気がしてたんですよ。その宝物をみんなに知らせたい。こんな面白いものがあるからみんなに知らせたい。そういう気持ちが原点でした。今は人気を博している機動戦士ガンダムも、スタジオジブリの宮崎駿さんも、最初は売れなくて打ち切りになることもあったんですね。その時に自分が見つけて、これは絶対ヒットするって思っていました。それと同じように、人気がなくても、それが持つ良さを見つけて信じてくれる人が絶対にいるから、まずはそういう人に向けて作りたい。そういう気持ちを理想として持っています。
ー一自分が見つけた、信じるものを伝えるために活動しているということですか。
(イシイさん)
そうですね。例えば、ゲームを作るときに予算がたくさんあったり、いろんなプロデューサーがいたりする中で作らなきゃいけないとしましょう。*ケインズの美人投票っていう言葉があるんですね。言い換えて、推し投票としましょう。推しに投票する時に、本来は自分が本当に推してる人に投票するじゃないですか。みんなが好きとか関係ない。僕はこの人が、この作品が推しだと。でも、この中で一番売れそうなものに投票してくださいってなると、みんなが好きそうなのはこれなんだよなって自分の好みとは関係なく投票するんですよ。でも、そういう作品ってヒットしづらいんです。つまり、みんながなんとなく好きじゃないっていうものに対する好きは、魂みたいなものが込められていない、ぼんやりした、みんな好きそうだけど、結局誰にも引っかからないものが生まれます。逆にみんながわからなくてもいいけど自分はこれを信じるという熱意こそが、作品の中にあると変わってくると思います。そういうものっていうのが、僕が言った「あの時の自分へ」というものに繋がっています。それと同じで、自分自身がいいと思うものを見つけ信じることが、エンタメでもすごく大事だと思っています。
ーー興味深いお話と楽しい試合をありがとうございました。
終わりに
今回の特別HR及びお二人のお話から、人狼ゲームから生まれる価値、得られる学びの可能性をありありと感じることができた。今回の特別HRを燃料とし、人狼部はこれからもより「魅せる人狼」を意識した人狼ゲームを展開していくのだろう。
人狼部では毎週金曜日の17:30より、Zoomにて活動を行っている。「グランドルール」を基にみんなで楽しく人狼ゲームをプレイすることを目的にしており、初心者の方も大歓迎だ。これを機に人狼部に興味を持ってくれたN中等部生・N/S高生は、人狼部のSlackチャンネルを覗いてみよう。
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