【2024年度卒業生インタビュー】「N/S高新聞」の縁の下の力持ち、kingのパワーの源を探る

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「N/S高新聞」実行委員会は、生徒による自治の度合いが非常に高い組織。その基盤を担ってきたのが、今回インタビューする相手king。実行委員2期として入ってきたkingが、約2年にわたってこの委員会を支え続けてきた思いとそのパワーの源を聞いた。

取材・文=高崎 薫(「N/S高新聞」外部スタッフ)

名前:king

所属:S高1期・ネットコース

「N/S高新聞」の”事務局長”のような人。Slackネームはもともとは「typographical king(=誤字王)」。誤字が多くてつけられた名前らしい。

kingが歩んできた人生

ーー卒業おめでとうございます! 生徒主体でおなじみの「N/S高新聞」ですが、今回は外部スタッフである私がインタビューをさせていただきます。というのも、kingは本来スタッフがやるべき仕事を一手に引き受けてくれていたんですよね。「この人、本当に高校生?」って何度思ったかわかりません。どんな人生を歩んだらこんなにホスピタリティあふれる人間になれるのか。今回はそこを紐解いていきたいと思っています。

よろしくお願いします(笑)。

ーーまずは「今までの人生で印象に残っている人」を聞きたいです。

おお……。今、ぱっと二人浮かびました。一人は「N/S高新聞」の立ち上げスタッフである職員の殿さん。もう一人は私がバイトしている「神奈川県立 愛川ふれあいの村」という施設の所長さんです。今の私があるのはこのお二人のおかげです。

ーーおお〜! そうなんだ。殿さんが聞いたら喜ぶね! 「愛川ふれあいの村」というのはどんな施設なの?

自然学校みたいなものです。私は小学生のころからキャンプが好きで、中学生からは神奈川県にある生涯学習施設「七沢自然ふれあいセンター」というところでキャンプカウンセラーについて学んだりもしているんです。「愛川ふれあいの村」でのバイト内容は、子どもたちが集まって「入村式」をやるときに施設の使い方や寝具の使い方を説明したり、キャンプファイヤーの薪を組んだり、クラフト体験の準備をしたり……。

ーーなるほど、運営側として多岐にわたって仕事をしている感じなんだね。「N/S高新聞」の運営の仕事と通じるものがあるね。じゃあ、「今までの人生で印象に残っている出来事」は何ですか?

うーん、一番は「N/S高新聞」に受かったことです。

ーーえ! そうなの?

はい。受かってからの私の毎日は、もう「N/S高新聞」一色なんです。毎日Slackを見るし、委員の誰かしらとしゃべるし……。

ーーkingにとって「N/S高新聞」って、3年間のN/S高生活のなかで何%ぐらいを占めているの?

99%ですね!

ーーそんなに!? 逆に残りの1%が気になるけど……(笑)。

kingはどうして「N/S高新聞」に?

ーーそもそも何で「N/S高新聞」に応募したの?

N/S高ってなんでもやれることが魅力じゃないですか。だから私も、1年生のときからなんか活動したいな〜って思っていて、いろいろやっていたんです。同好会とか。でも途中でやらなくなったりしていて。それでも何かやりたくて。そんなときにたまたま「N/S高新聞」2期の募集の案内が来たんです。

ーータイミングが良かったんだね。「なんか活動したい」っていう思いはN/S高生からよく聞くけど、kingはどうしてそう思っていたの?

うーん、1年生の頃からずっと、昼夜逆転の生活をしていたんですよ。朝の5時から10時までファストフード店でバイトをしていて、帰ってきてシャワーを浴びて寝て、夕方起きるという……。それを続けていると、ああ、なんか一日をすごく無駄にしているな〜と感じてきて……。

ーーうん、うん。

だから頑張ってそれをやめようと。やめてできた時間で何をしようかなって思って、「なんかやりたいな」って考えたんです。

ーーなるほど。昼夜逆転から抜け出そうと自分で決めたことがすごいね。入学してから昼夜逆転になっちゃったの?

いや、実は中学2年生ぐらいから昼夜逆転生活をしていました。理由は全然たいしたことではなくて、動画見てたら「あれ? もう4時だ。今から寝よう」みたいな。土日とか夏休みとかにそういう生活をしていたら、いつの間にか完全に昼夜が逆転しちゃって、戻すのも難しくなっちゃって。それで進学先をどうしようかなって考えて、N/S高に入学したんです。

ーーそうなんだ! いつの間にか昼夜逆転。誰にでも起こりうる話だね。実際に入ってみて、「N/S高新聞」はどうだった?

めちゃくちゃ楽しいです! めちゃくちゃ楽しい。学べることが多いし……誇張しているみたいに聞こえるかもしれないけど、今の私があるのは「N/S高新聞」のおかげだと思っています。だから本当に楽しいし、やめたくない。一生いたいです。

ーー本当に一生いてほしいよ……(笑)っていうくらいに、今の「N/S高新聞」があるのはkingのおかげでもあるよね。

いやいや、そんなことはないです。

kingが愛する「N/S高新聞」実行委員会。
所属する生徒たちは、自ら「公式マスコット」を公募して制作したり、腕章を作ったりと積極的に活動している。
写真左上がking。(写真提供=king)

いやになることは?

ーーkingは「N/S高新聞」に入って約2年。「楽しい」とはいっても、つらいこととか、やめたくなったりしたことはなかった?

うーん……、めちゃくちゃ強いて言うと、私、あんまり記事を出していないんですよ。裏側で動くばかりで。だから以前、「公開できる記事のストックが減ってきたからみんな頑張って記事を書いて!」って呼びかけたことがあったんですけど、それがちょっと心苦しかったです。自分が出してないのに、人に言っていいのかなって。

ーーえー! そうだったんだ……。だれもそんなこと思ってなかったと思うよ。

そうですかね。でも、それは今でもやっぱりちょっと言いづらくて、最近はあまり言わなくなりました。スタッフさんが気づいて言ってくれたらいいなって心の中では思っています(笑)。

ーーそ、そうだよね。なんかごめん。でも、kingのそういう責任感はどこから来ているの? 記事のストックが無くなって記事が出せなくなることはkingの責任じゃないじゃない? なのに心苦しい思いをしてまで呼びかけるという……。

確かに、どこから来ているんだろう?

ーー自覚してなかったんだ(笑)。私がすごいなって思うのは、kingのそういう責任感に波がないこと。「N/S高新聞」実行委員になってから、約2年間、ずっとその状態で活動してくれていたじゃない? なんでそんなに頑張れるのか。その背景を知りたいんだよね。

私も不思議です(笑)。

ーー(笑)。いつからそうなの?

え! いつからだろう……。ちゃんとやり始めたのは「N/S高新聞」に入ってからだと思うんですけど。あ〜、でも、最初に話した「七沢自然ふれあいセンター」でもやっていたかも。私たちボランティアスタッフは、職員さんと連絡先を交換できないんですよ。それで連絡が止まってみんなが困るっていうことがあって。だから職員さんとボランティアスタッフの間に立って「持ち物はこれだよ」とか「会議がいつあるよ」みたいな連絡をつなぐようにしていて。

ーー今やっていることと一緒だ!

思い返せば中学生の頃からそういうことをしていましたね。今ほどちゃんとはやっていませんでしたが……。

ーーなるほど。中学生の頃からそういう役割を担っていたのか。

kingのルーツはキャンプにあり!?

ーーkingがキャンプ好きっていうのは初めて知りました。

記憶はないですが、幼稚園の頃からキャンプに行っていたみたいです。将来もキャンプにかかわる仕事がしたいと思っています。

ーー将来も! kingにとって、キャンプの何がそんなに魅力なの?

私たちの生活って、PCとかスマホとか、デジタル端末がつねに身近にあるじゃないですか。でもキャンプってそういうものを持ってきたらダメなんですね。自然を楽しむことが目的なので。いろんな学校から来た初対面の人たちと交流して、なにか一緒に活動をして、2泊3日を楽しく仲良く過ごしましょう、みたいな。それがすごく楽しいんです。火を起こすこと一つとっても日常では体験できない楽しさがありますし、何より教育につながるなって私は思っているんです。

ーーなるほど。その魅力は子どもの頃から変わらないの?

そうですね……、私、最近、車の免許をとったんですよ。いまはまだ車を持っていませんが、車があれば自分で運転してキャンプに行けたりしますよね。

ーーああ、そっか。成長したら成長したで新しい楽しみ方があるのか。

そうなんです。それに、今までは用意されたフィールドでしか経験したことがなかったんですよね。でもこれからは自分でフィールドを用意できるんです。どう楽しくするかは自分次第! 飽きようと思えば飽きることはできるんです。「N/S高新聞」も一緒で、殿さんとかスタッフさんが用意してくれたフィールドを、どう楽しくするか、どう変えていくかは自分次第。そう思っています。

ーーなるほど。その考え方、最高だね!

「N/S高新聞」で印象に残っている活動は?

ーーこれまでの「N/S高新聞」の活動の中でいちばん印象に残っているのはどんな活動?

え、やばい。選べない! 「N/S高新聞 保護者通信版」(※1)でしょ、インスタチーム(※2)でしょ、配信設定(※3)でしょ。あと4期の初期研修とか、 今までの企画会議とか、振り返り会の運営(※4)とか、「NED」(※5)とか……。

※1 「N/S高新聞 保護者通信版」…学園が送る「保護者通信」に同封する、特別版の「N/S高新聞」のこと。

※2 インスタチーム…「N/S高新聞」のInstagram(https://www.instagram.com/nshigh_news/)を作成するチームのこと。

※3 配信設定…「N/S高新聞」の記事を配信する設定を行うチームのこと。

※4 初期研修、企画会議、振り返り会…「N/S高新聞」では、新しいメンバーが加入した時の研修や、記事作成のための企画会議、定期的な振り返り会などをすべて生徒主体で運営している。

※5 「NED」…N/S高生によるプレゼンテーションイベント。「NED」は「N高」「Expression(表現)」「Discovery(発見)」の頭文字。

ーーいっぱいあるな(笑)。あえて1つ選ぶとしたら?

「N/S高新聞 保護者通信版」ですかね。私がやるまではそれこそ薫さん(※筆者のこと)がやっていたじゃないですか。スタッフがやったほうが職員とのやり取りとか、いろいろスムーズに行くんですよね。でもそれをあえて生徒がやることで自由が生まれると思ったんです。

生徒だけで執筆・デザインをした「N/S高新聞 保護者通信版」。
kingは記事執筆に加えてプロジェクトの推進役を担った。(写真提供=king)

ーーふむふむ。

デザインを自分たちでやれるようになったり、判型をA4サイズからA3サイズに変えるチャレンジをしたり。あと、「N/S高新聞 保護者通信版」は紙なので、普段Webで記事を書いているのとは全く違う経験ができる。その知識を薫さんから教えてもらえるのがすごく楽しくて。

ーーえ〜、そうなんだ。ありがとう……。kingは「N/S高新聞 保護者通信版」の制作が終わったら必ず私に会議依頼をしてきてフィードバックの時間を作っていたよね。

あの時間が本当に好きで。先輩っていうか師匠からいろいろ教わって、それを委員のみんなに伝えるのが楽しいし、それによって毎回どんどん良いものができあがっていくのがうれしかったんです。

ーーそうか。kingの喜びって、誰かと誰かのハブになって情報を伝えることとか、それによって人が活躍できたり、いいものができたりすることにあるのかもしれないね。

手応えを感じるのはどんなとき?

ーーそういう裏方の仕事を一手に担ってきて、手応えを感じるときってどんなときだった?

あ〜、1個、めちゃくちゃ大きかったのは、フォルダの整理ですね。以前は企画書のフォーマットがあって、企画書を書く人が自分でコピペして使っていたじゃないですか。でもそれだと原本を壊しちゃう人も出てきて。

ーーそうだったね。

そこで私がフォーマットのコピーを大量に作って、そこから好きに使っていいよっていうふうにしたんですよね。そうしたら原本が壊れることもなく、アクセス権限の問題なんかも解消されて。

ーーあれはかなり助かったよね!

それにグループのフォルダもですね。前までは空のフォルダをあてがわれていただけだったんですけど、原稿フォーマットとかチェックシートとか、執筆に必要なデータをグループ分コピペして入れておくようにして。そうしたらみんなが「あのフォーマットはどこにあるの?」と探したりすることがなくなりました。

ーーそうだったね。そういうのってさ、その状態がなかったことを知っている人には感謝されるけど、知らない人には気づかれもしないじゃない? 感謝されなくてもずっと続けられるのはどうしてなんだろう?

うーん、感謝されるかどうかはあんまり気にならないですね。導入したての頃は「ありがとう!」って感謝してもらえたりもするけど、今はそれが当たり前になっている。それでいいと思っています。

ーーそうか……。人からの評価ってあんまり気にならないタイプ?

そうですね。そんなに気にならないです。

ーーなるほど! じゃあ、kingが自己肯定感を感じるときってどんなとき?

うーん、そうですね、自分が持った企画、それこそ「N/S高新聞 保護者通信版」が完成したときとか、初期研修が終わったときとか。そこまで緊張状態にあったのが一気にゆるんだときに感じますね。

ーー自分の中で「これをやりたい!」って思って、やり遂げたときに満足を得る感じかな。

そうですね。

ーー研修って、緊張するじゃん。私もいまだにめっちゃ緊張するんだけど、それを自分からやろうって思えるのってどうしてなの?

うーん、自分がやらないと……っていうか、例えば4期の募集が始まったのに研修について誰も考えていなかったりとか、「N/S高新聞 保護者通信版」も春号はやったけど夏号の話が一向に出てこないままに納品日が近づいていたりとか。そういうときに「これはやばいけど、私がやったらどうにかなるんじゃないかな」って思うんです。

ーーえ、えらい……。私だったら、そういうやばいものには近づかないようにしちゃう(笑)。それを、「やばいから自分がやろう、自分がやればどうにかなる」って考えるのがすごいよね。

いや、でも、初期研修も「N/S高新聞 保護者通信版」も、今後も続けていってほしいものなんです。生徒だけでできるようにしていきたい。自分が卒業した後もやっていってほしいから、いま引継書を作ったり、次年度引っ張っていける人を募集したりしています。どうにかして継続する、その基盤を私のところでつくるみたいなイメージです。

ーー本来はスタッフがやるべきなんだよね。それをそこまでの責任感で考えられる……その精神が本当にすごいし、不思議です。

私も不思議です(笑)。

kingたちが運営を担った4期研修の様子。
生徒同士ということもあり、研修は終始わきあいあいとした雰囲気だった。(画像提供=king)

kingのこれから

ーーkingは卒業したらどういう道に行くんですか?

通信制の大学で経済や経営学を学ぶ予定です。

ーーどうして経済や経営学なの?

さっき言ったように、将来はキャンプや自然にかかわりたいっていう思いがあるんですけど、そういう仕事って施設責任者になったりすると、お金の管理もしなきゃいけなくなるんですよね。であればそういう知識を今のうちにつけておいて、いざ必要になったときにすぐにいかせたらいいかなと思って。

ーー先々を見据えているね〜!

それと、進学予定の大学がN/S高とすごく似ているんです。通学しなくていいし、Slack使えるし。今感じているN/S高の快適さを、大学であと4年もできるっていうのが魅力です。

ーーそうか、N/S高の今の生活がすごくkingに合っているから、それを大学でも続けたいっていう面もあるんだね。kingがN/S高に入って得たものってなんですか?

うーん、そうですね、たぶんもともと私は行動力はあったほうだと思うんです。N/S高に入って、もともとあったそういうものが伸びたな〜って思います。初めて会う人と話すのも苦手だったけどだいぶ慣れたし。あとは、すごくいい仲間ができました。いまの仲間たちとは、卒業後もずっとつながっていきたいと思っています。

ーーそっか。もともとあった力がさらに花開いた感じなのか。では最後に、後輩たちにメッセージをお願いします。

そうですね、N/S高に入ったら、同好会とかクラブとか実行委員会とかいろいろあるので、ぜひ何かに入ってみてほしいです。普段味わえないことが味わえると思うし、何より仲良くなれる仲間ができると思います。飽きたら別の活動を始めればいいから。まずはSlackのチャンネルに入るだけでもいいので、やってみてほしいなって思います。

ーーそうだね! 一歩踏み出すことで世界はどんどん変わっていくことを、kingは身を持って教えてくれていると思います。今回話してくれたkingの考え方や行動は、きっと後輩たちの参考になるんじゃないかな。「N/S高新聞」の当たり前を作ってきてくれて、本当にありがとう。お疲れさまでした!

お疲れさまでした。またどこかでお会いしましょう!(笑)

おまけ。kingと筆者が初めてリアルで会った日の写真。
日経印刷さんの工場見学時に撮影。とても暑い日でした。(写真提供=king)

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