にじのむこうに ~ LGBTについて考える vol.2.0 ~

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取材・文=Яita(りた)(N高5期・ネットコース)

みなさんは、明日が何の日か知っていますか?

明日、3月31日は「国際トランスジェンダー認知の日」。

「国際トランスジェンダー認知の日」は、トランスジェンダー(※1)の人々を祝福し、世界中のトランスジェンダーたちが日々直面している差別の現状について深く知るための日です。

「トランスジェンダー」という言葉は聞いたことのある人も多いのではないでしょうか? 昔に比べ、「LGBT(※2)」や「トランスジェンダー」といった言葉が浸透しつつある現代ですが、やはり差別や偏見は様々なところで見られます。

そこで、今回はまず、LGBTというものを改めて知ってもらいたいと思い、LGBT当事者の方々にインタビューさせていただきました!

この「国際トランスジェンダー認知の日」をきっかけに、みなさんも、LGBTやトランスジェンダーについて考えてみませんか?

※1 こころの性とからだの性が一致していない人を指す。生まれた時の性は男性で自身のことを女性と認識している方を「トランスジェンダー女性(=MtF)」と言い、その逆を「トランスジェンダー男性(=FtM)」と言う。

※2 LGBTとはセクシュアルマイノリティ(性的少数者)のことで、女性の同性愛を指す『レズビアン』、男性の同性愛を指す『ゲイ』、男女どちらにも性愛感情が向く『バイセクシュアル』の3つの性的指向と、性自認と身体的性が一致しない人々を指す『トランスジェンダー』の各単語の頭文字を取ってLGBTと言う。近頃はさまざまなジェンダーやセクシュアリティをまとめてLGBTQやLGBTQ+と表すことが多い。

目次

ハルさんのお話

ハルさん

自身のセクシャリティについて

ーー最初に、性自認と恋愛指向・性的指向について教えていただけますか?

性自認は、Xジェンダーです。Xジェンダーのうちの中性や無性などと言った分類(※3)についてはまだあまりはっきりしていません。

恋愛指向や性的指向もそこまではっきりしていないのですが、今のところは男性しか好きになったことはないです。でも、恐らく性別は関係ない感じだと思います。

※3 一般的にXジェンダーの性別は、中性・両性・無性・不定性の4つがあるとされる。

自覚するまで

ーーどのような幼少期を過ごしていたのでしょうか?

小学生になるまでは結構、一般的な女子が好きな色やキャラクターが好きだったんです。

小学生になり、4年生くらいから、男女の格差などに強い興味を持つようになりました。国語の授業などでテーマを決めて何かを書くといったときなんかは、そういうテーマばかり選択していました。最初は、自分が女性として生きていく上で、格差があるのが嫌だったから調べていたと思っていたのですが、今考えたら自分もどこか男女の枠組みに当てはまっていないと感じていたからこその行動だったのかなと思っています。

ーー自分がLGBTであると自覚したのはいつ頃ですか?

はっきりと自覚したのは中学1年生の夏あたりでしたが、先ほどの話の通り、小学4年生の頃にはセクシャルマイノリティに興味があって、知ってはいました。

ーー自覚したきっかけはありますか?

体の性別は女性なのに、同性ならではの話題などがいまいちしっくりこないことに気がつきました。ですが、男の子とも、仲良くなるものの仲良くなりきれないという感覚がありました。一線置いてしまう感覚で、それがちょっと嫌だと思ったのがきっかけのような気がします。

ーー自覚した時どのようなことを思いましたか?

自分が当事者側だと気づく前からそういうセクシャリティとか性的マイノリティに興味を持って調べていたので、「やっぱり」という感じが1番大きかったように思います。

カミングアウト(※4)について

※4 性的少数者であると公表すること

ーー自身がLGBTであることを周りに言っていますか?

母親には、自覚して少し経った頃に、そのときにやっていた交換日記に書いた記憶があります。でも、その後対応が変わったとかいうわけでもなく、自分でもはっきりとは覚えていない感じです。あとは、高校の友達と小学生の時からの友達の何人かになんとなく言っているくらいです。

ーー初めてカミングアウトしたとき、どんな反応が返ってきたかなどは覚えていますか?

先ほどもお話しましたが、文面で母親に伝えたのが初めてで、そのときは特に反応がありませんでした。

ーーどういった思いでカミングアウトしたのでしょうか?

カミングアウトしたのは中学生の時だったので、制服などを変えたいと思って伝えました。女子の制服で学校に行きたくなかったりするその気持ちを伝えたかったのですが、うまく伝わりませんでした。

治療について

ーー治療などは受けていますか?

いえ、受けていないです。

ーー治療を受けたいか受けたくないかなど、思ってることありますか?

受けなくてもいいと思っています。男性になりたいというわけではないというか、なれるとも思っていないというのが近いですかね。ですから、別に今から方向転換しなくても、自分らしさを表現していければいいのかなと思っています。それに、きちんと今の自分というものを見てもらいたいです。

LGBT当事者ゆえに

ーー無理に答えなくて大丈夫なのですが、傷付いた出来事はありますか?

自分の本名がいわゆる女子らしい名前なのですが、見た目は初対面の人などにはどちらか見分けられないくらい男女の中間という格好をしていて、「名前は可愛らしいのに、なぜそんな格好しているの?」などと言われたことがあります。特にお年寄りの方はそう思うみたいで、田舎に住んでいてお年寄りの方が多いため、よくそう言われてしまいます。

ーーそういうときはどう対処しますか?

言って伝わりそうな人にはなんとなく言いますが、言っても伝わらなそうな人についてはとりあえずスルーしています。

ーーなにか普段の生活で困ることや不快に思うことはありますか?

トイレについてちょっと困る時がありますね。 コンビニのトイレが楽なのでそこを使うようにしています。あとは、基本メンズ服しか着ないのですが、ちょうどいいサイズがなかったり、入りにくいお店があったりします。

メッセージ

ーーこの記事を読む方に伝えたいメッセージはありますか?

こういう記事とか読んでも、「自分の周りにはいないし」というふうに思う人も多いと思いますが、言わないだけで意外と身近にもたくさんいると思うので、無意識に使っている言葉で傷つく人もいるということを知ってもらえたら嬉しいです。

ーー同じLGBT当事者の方々にひとことお願いします。

人と違うと感じるところはあるけれど、人と違うと感じている人の中でもいろんな人がいて、それで必ず気が合うわけでも分かり合えるわけでもない。でも逆に、人と違うと感じていない人とでも分かり合えることはあると思うので、うまく何か吐き出せる場があればいいと思います。 

Яita

今回のインタビューに応じてくれた理由をお聞かせください。

ハルさん

学園内でもそういうチャンネルがあるし、意外とLGBT当事者がいるというのはわかりますが、LGBTというのは一括りにはできないということが読者の方に伝わってほしいなと思って受けることにしました。例えば、同じXジェンダーの方でも細かく見るとそのケースは何通りもあるんです。

Kさんのお話

Kさん

ーー最初に、性自認と恋愛指向・性的指向について教えていただけますか?

性自認は女性です。恋愛指向・性的指向はどちらも女性が対象です。

ーーどのような幼少期を過ごしていたのでしょうか?

特に周りの子たちと変わりませんでした。

ーー自分がLGBTであると自覚したのはいつ頃ですか?

中学2年生の頃です。

ーーきっかけは何でしたか?

学校でLGBTに関して考える授業があり、ちょっと気になったのでもう少し詳しく調べてみたところ、自分がLGBTであると気がつきました。今まで感じてきたことに説明がついた感じです。

ーー自覚した時どのようなことを思いましたか?

とてもすっきりしましたね。ちゃんと言語化できるようになったのはうれしかったです。

ーー自身がLGBTであることを周りに言っていますか?

△ってところですが、言っています。

ーーどんな立場の人にカミングアウトしていますか?

主に友達なのですが、クラスメイトやネットコースで仲良くなった子に言いました。

ーー初めてカミングアウトしたとき、どんな反応が返ってきたかなどは覚えていますか?

「そっかー」という感じでした。みんな優しかったです。

ーーカミングアウトはどのような経緯ですることにしたのですか?

自分のことをもっとちゃんと話したいと思って話しました。

ーー無理に答えなくて大丈夫なのですが、傷付いた出来事はありますか?

カミングアウトしている瞬間を信頼していた人に見られたときに、「気持ち悪い」と言われたことがあります。

ーーそのときはどうやって乗り越えましたか?

とにかく気にしないようにしました。私らしく生きているわけで、恥ずかしがる必要はないと思っています。

ーーなにか普段の生活で困ることや不快に思うことはありますか?

みんな優しいので、全然ないです。

ーーこの記事を読む方に伝えたいメッセージはありますか?

まずは自分自身のいいところについてよく考えてみてほしいです。そうしたら「自分ってこんなにすごかったんだ」と思える部分も見えてきて、自然と自尊心なども高まると思います。

あとは、一度落ち込んでしまったとしても、必ず立ち直れます。誰かが勇気づけてくれて、吹っ切れたときにはきっと立ち直れるので、「そのときまで生きよう」というふうな精神でいてほしいです。

ーー同じLGBT当事者の方々にひとことお願いします。

自分に自信を持って一緒に生きていきましょう。

とにかく、自分らしくいることが大事だということは忘れないでください。

Яita

今回のインタビューに応じてくれた理由をお聞かせください。

Kさん

こういう情報発信が必要だと思ったからです。私以外にもLGBTの人はたくさんいるから知ってもらいたいと思いました。あとは、私のように信じていた人に否定的なことを言われて傷付いた人もいると思うので、そういう人を勇気づけるためにも今回のインタビューを受けることにしました。

Sさんのお話

Sさん

自身のセクシャリティについて

ーー最初に、性自認と恋愛指向・性的指向について教えていただけますか?

性自認は、男性寄りでFtM(※5)に近い感覚ですが、Xジェンダーの無性です。

恋愛指向と性的指向はよくわかりません。

※5 生まれた時の性は女性で自身のことを男性と認識している人を指す

自覚するまで

ーーどのような幼少期を過ごしていたのでしょうか?

まず、仮面ライダーやスーパー戦隊といったものが好きでした。

それと、幼稚園の頃に女の子が「私」や「うち」といった一人称を使うのに対し、男子が「俺」や「僕」を使うのを聞いて、本当はそちらを使いたいと思っていました。でも、子どもながらにそれは使えないと思い、「じゃあ、自分の本名を一人称にしよう」と考えてそうしていた記憶があります。「俺」などと言った一人称に強い憧れがありましたね。あとは、遊ぶときは男子と遊ぶことが多かったです。

ーー自分がLGBTであると自覚したのはいつ頃ですか?

なんか違うなと感じたのは2022年の6月頃で、はっきり自認したのは同じ年の8月です。

ーーきっかけは何でしたか?

自分は昔からボーイッシュだったのですが、去年あたりから周りがだんだん女性らしくなっていくのに対して自分は男っぽくなっていっているということに気づき、「なんか周りと違う」と思ったのがきっかけですかね。

ーー自覚した時どのようなことを思いましたか?

自分は「これ」なんだという安心感と、しっかりと自認することが怖いという気持ちの両方がありました。というのも、初めはLGBTのことをよく知らなかったので、偏見があったんです。本当に良くないことだとは思いながらも、LGBTに対してかなり否定的な気持ちを持っている自分がいたんです。ですから、自分がその立場になると思うと、正直なところは嫌でした。

カミングアウトについて

ーー自身がLGBTであることを周りに言っていますか?

親族では母親にしか言っていませんが、それ以外だと結構いろいろなところで言っています。

ーー初めてカミングアウトしたのはどんな立場の人でしたか?

親友でしたかね。

ーーそのとき、どんな反応が返ってきたかなどは覚えていますか?

「まあいいんじゃん?」 といった感じでした。それが、とても嬉しかったというか、安心しました。カミングアウトすることを決めた時は、もうこの人から否定されたらこの人とは縁を切ろうというくらいの覚悟でカミングアウトしたので、本当に良かったです。

ーーカミングアウトはどのような経緯ですることにしたのですか?

まず、「カミングアウトしないと生きづらいよな」というところからです。やっぱり、カミングアウトしないと自分を隠して生きることになると思うんです。

例えば、恋愛の話になったときなどに、自分のことは話せないといった状況になることは本当に嫌だと感じます。

それと、自分の中でLGBTの啓発をやろう、LGBTへの理解を広めていこうって考えていたというのも理由の一つです。 LGBTだと自覚したことで、トイレに関するジェンダーの問題などといったいろいろな問題が見えてきて、そういうのを解決するため。そして、カミングアウトしたい人がしやすい環境にするためには、知ってもらわなくては始まらないので、LGBTを知る一つのきっかけに自分がなればいいなという思いがありました。

治療について

ーー治療などは受けていますか?

治療は受けていないです。

ーー治療を受けたいか受けたくないかなど、思ってることはありますか?

胸などの女性特有のものは要らないと感じていますが、今のところは治療までは受けなくてもいいと思っています。

LGBT当事者ゆえに

ーー無理に答えなくて大丈夫なのですが、傷付いた出来事はありますか?

自分のセクシャリティをカミングアウトした相手に、目の前でアウティング(※6)されました。いろいろな人に言っているので、誰かにアウティングされる可能性は十分にあるというのは覚悟の上でしたが、やっぱり実際にされると嫌な気持ちになりました。

そのうえ、アウティングした理由を聞いたら、その相手と自分に共通点があるから話すきっかけ作りをしたかったと言われて……。つまり、自分も相手もアウティングされたという状況です。それで、もうちょっとアウティングのリスクを広めていかなきゃいけないなと思いました。

※6 人のセクシュアリティを勝手に第三者に言いふらすこと

ーーそのときはどういう対処をしましたか?

アウティングがどれだけしてはいけないことなのかということについて、かなりしっかりとその人に説明しました。カミングアウトをする人はどういった気持ちでしているのかということも。それをきっかけにディスコードの自分のサーバーでも、アウティングのリスクについて話しました。

ーーなにか普段の生活で困ることや不快に思うことはありますか?

やっぱりトイレ問題ですね。自分は傍から見れば本当に男性のような見た目をしているのですが、多目的トイレが空いてなかったり、そもそもなかったりした時には自分は女子トイレに入ることになるじゃないですか。そうなるとやっぱり周りの目がすごく気になります。あとは、多目的トイレから出た時に、車椅子に乗っている方や小さい子どもを連れた親御さんが待っていたりすると罪悪感が湧きます……。

メッセージ

ーーこの記事を読む方に伝えたいメッセージはありますか?

今まで自分はいろんなセクシャリティを調べた時期があったんですけど、覚えられる数ではなくて。つまり、それだけたくさんのセクシャリティがあるんです。ですから、自分はこうなんだよね、とカミングアウトされたら、とりあえず否定はしないで欲しいです。あとは、アウティングもしないでほしいです。理解するのは難しいかもしれないのでそれは求めませんが、今挙げたことはわかってほしいです。

ーー同じLGBT当事者の方々にひとことお願いします。

カミングアウトはするもしないも自由だし、セクシャリティに当てはめるのも当てはめないのも自由。全部その人の自由だと思うので、万が一、否定などをされても別に何も気にする必要はないと思います。自分は自分なんだって胸を張って生きていいと思います。 

Яita

今回のインタビューに応じてくれた理由をお聞かせください。

Sさん

団体などとして取り組むまではいかなくとも、LGBTの認知を広めたいと思ったからです。理解まではしてもらえなくても、せめて否定はしないでほしいといった思いがありますし、アウティングをなくしていくことに繋がるのであればやりたいなと思った感じです。

おわりに

いかがだったでしょうか? ここまで読んでくださったみなさん、まずは今回インタビューに応えてくれた3人の勇気ある行動に、心の中でぜひ拍手を送ってください。

今回は3人の方にインタビューさせていただきましたが、それぞれのお話には共通点もあれば、異なる点もあったと思います。つまり、同じLGBTでもさまざまな人がいて、一括りにはできないのです。それだけジェンダーやセクシャリティは複雑なものです。だからこそ理解されるのが難しくはありますが、それはこの世界にいろいろな人がいるのと同じことです。”マイノリティ”とは言われますが、決して特別なことではありません。LGBT当事者であっても何であっても、まず、その人は一人の人間です。すべてを受け入れることはできなくても、否定はしないでほしい。そう、僕は思います。そのためにこの記事を書きました。少しでもLGBTのことを知ってもらい、差別がなくなることを望みます。

Яita

明日は「国際トランスジェンダー認知の日」ということで、トランスジェンダーの方へのインタビュー記事を掲載します!そちらもぜひ読んでみてください!

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