印刷の世界を旅しよう 〜印刷工場見学レポート〜

取材・文=Lyra(りら)(S高一期生・ネットコース)
本や教科書、チラシ、パンフレット、私たちのすぐそばにある、何気ない無機物にも見える印刷物。
実は印刷会社で働く人々が懸命に創造したものであり、その人々の想いが印刷物には込められています。
今回はそんな印刷物の裏側の世界である「印刷工場」の見学レポートを通じて、皆さんのそばにある印刷物が面白く見えちゃうような旅へとお連れします。
印刷物の裏側の世界


印刷が始まる4階フロア
日経印刷株式会社の社員さんは、私たちを優しく出迎えてくださいました。工場内の会議室で、工場見学にあたっての諸注意の説明を受けた後、早速工場見学に向かいました!
まず私たちは、印刷物の企画・制作と刷版を作る工程がある4階フロアを見学しました。


見学した委員は

日経印刷株式会社さんが取り扱う業務が「印刷だけではない」ということに驚きました。印刷物の企画に始まり、デザインや原稿の校正まで業務の範囲内なんだとか。
僕のイメージでは、印刷物の企画やデザインは全て、印刷をお願いするお客さんがやるイメージだったので、意外でした!
日経印刷株式会社さんが取り扱う業務や印刷工程についての説明を一通り受けた後は、ついに印刷工程の見学へ。
最初に見学したのは、「刷版」を作る工程。
刷版とは、印刷する原稿のデータをアルミ板に写した「大きなハンコ」のようなもので、この刷版にインキを載せて、紙に転写することで印刷が行われます。
ハンコで説明してみた! 刷版とは?
左から紙、インキ、刷版(ハンコ)


刷版(ハンコ)にインキを載せて…


紙に転写!




印刷、刷版とは、ハンコのようなもの。刷版にインキを載せて、それを紙に転写する作業の繰り返しなんです。
印刷工場では、プロセス4色(BK+C+M+Y+特色インキ)のインキを用いてこのような作業を繰り返します。
4階で行われているのは、ハンコ(刷版)を作る工程。
RIP(※ラスターイメージプロセッサー。原稿データを印刷に適した仕様に変換する機械)を通して原稿データを読み取り、アルミ板にそれを焼き付けます。たくさんのアルミ板と、刷版を出力する機械に囲まれ迫力満点でした!


見学した委員は



印刷工場見学に参加するまではインクジェット印刷しか知らなかったため、刷版から作ることに驚きました!
刷版は細かいところまで作られていて、機械の技術力の高さを感じました。
とっても長い! 印刷が行われる3階フロア
刷版を作る工程を見学させていただいた後は、実際に印刷が行われているフロアへ!
インキと紙の匂い、大きな機械音に包まれて、「印刷工場」らしさを感じられるフロアです。
ここでは、先程の刷版を写真の機械にセットし、印刷を行います。工場での印刷はミスがあってはいけないので、原稿の色見本とズレがないように事前に何回も試し刷りをしているようです。








刷版の工程も同様でしたが、機械を動かす「オペレーター」と呼ばれる方々が懸命に働いている姿が印象的でした。
工場での仕事は機械が大半を担うとはいえ、機械に刷版や紙をセットする過程、印刷物に色ズレがないようチェックする工程などは人の目の力が必要です。
特に、色ズレをチェックする工程は人だからこそできること。そこにある技術や想いも、印刷物と一緒に印刷されているのかも……?
見学した委員は



大きな印刷機に紙がセットされていく様子が印象に残りました。普段本屋さんなどで手にする本が自分より大きい印刷機・紙から作られていることに驚きました!
本は大きな紙を折って作られている! 製本工程の2階フロア


3階の印刷工程を見学させていただいた後は、2階フロアの製本工程を見学させていただきました!
このフロアでは、3階の印刷工程で刷った大判の紙を「折って」製本をしているそうです。
自分は「製本」といえば何枚も紙を重ねて、それをくっつける作業のことを想像していたので、この話を初めて知って、とても衝撃を受けました……。
作ってわかる! 本が折って作られる仕組み



本が1枚の紙を折って作られているって本当??
本が折って作られる仕組みを皆さんにわかりやすくお伝えするべく、1枚の紙から16ページの本を作る工程を再現してみます。


まずは、裏表に16の区画を作って……


紙を横長になるよう置いて、中心を折っていきます。


その後、表に1番と16番の区画が見えるようさらに折ります。


表に1番の区画が見えるようにさらにさらに折ります。
このように折った状態の紙をページ分用意したら、背表紙に当たる部分を糊付けや金具等で固定します。これでようやく本の形になるのですが、このままだと開けないページがあり、読める状態とはいえません。





まだ全てのページを開けない……
そこで「三方断裁」という作業を行います。
三方断裁とは、本の三方「天」「地」「小口」を断裁する作業のことで、この作業を経て、ようやくページが全て開ける状態になります。


印刷会社に印刷をお願いする時は、「とんぼ」と呼ばれるデザインの余りが必要なのですが、それが必要な理由は「三方断裁」の過程で断裁されてしまう箇所があるからなんです。


グラフィックガーデンで作る「本」
グラフィックガーデンの製本工程では、これらの作業が全て下の写真のような機械で行われています。






この他にも、背表紙に当たる部分を糊付けや金具で固定する「綴じ」の工程を行う機械もあり、盛りだくさんな2階フロアでした。
普段何気なく手にとっている雑誌やパンフレット、書籍。
普段はどこにでもあるような無機物にしか見えないけど、それが作られる過程を目の当たりにしてみると、作っている人々の想いが感じられます。


印刷の仕事の面白さ
工場見学の後は、案内をしてくださった社員の方に「印刷の仕事の面白みとその意義」を伺いました。
日経印刷 能州さん
ムレコミュニケーションズ 永井さん
ムレコミュニケーションズ 杉田さん



印刷会社に携わっている上での面白さは、どのようなところにありますか?



印刷会社に勤務している人間としての面白さというのが、様々な印刷物に携わることができることなんですね。自分が担当していない印刷物でも、流通工程や、取引に至るまでの話を社内で共有できます。そんな風にまだ世に出る前の印刷物に触れられる機会が非常に多くあるという部分で、とても魅力を感じています。



印刷会社にいるといろんなお客さんと出会えるんですよね。
今、日本にある会社は、ほとんどが印刷に関わっている。どの会社も、印刷物を発行してるし持ってるんです。だからこそ、色々な会社で色々なお客さんと出会える。
印刷を通して、色々な人と出会えることが印刷会社の面白さだと思っています。



印刷の面白さというのは「世の中をカラフルにすること」ですね。
印刷物で、世の中をモノクロからカラフルにすることで楽しくできることが、印刷の面白さかなと思います。



印刷の仕事に関わられている方にはどのような方が多いですか? また、どのような方に印刷の仕事に携わって欲しいですか?



僕は、やはり本が好きな方に来ていただけるのが一番いいかなと思います。
ことしの4月に大卒で入社した方の中に一人「私製本が好きなんです」と言って製本工程に希望して入社された女性がいらっしゃいまして、製本目当てって結構珍しいな、と思ったのですが(笑)。
これが好きという思いを持って、印刷に参加していただけると、やはり会社としても一緒に働く者としても非常にありがたいと感じています。



印刷の仕事に意義を感じる瞬間はありますか?



自分が携わった書籍や雑誌がお店に並んでいる瞬間、それを誰かに手にとって買ってもらえた瞬間は「あぁ……やっててよかったぁ……」ってなりますね(笑)。



また、印刷会社ではイベントで配られるノベルティを企画から考えることもあります。
「このイベントに来る人たちは、どういった物なら喜んでくれるかな?」と考えたり、外に出て聞いてみたりもするんですよね。そうやって誰かを思って作った印刷物で喜んでもらえるとすごく嬉しいですよ。
印刷の世界の面白さというのは「世にある様々な印刷物に携われ、世に出る前の印刷物にも触れられること」で「自分が作った印刷物で誰かを笑顔にできる瞬間」にあるのだろうと感じました。
終わりに


私は印刷工場見学以降、印刷物を手にとった時に「これは印刷工場でこうやって作られたんだろうな」と想像し、目の前の印刷物をおもしろく感じるようになりました。
皆さんが次に本屋に行く時、「これは印刷工場でこのように作られているのかな」と想像してみたら、見える景色がとってもカラフルになっているかもしれません!
ここまで読んでくださった皆さんに、印刷の世界の面白さが少しでも伝わっていたら嬉しいです。
最後に、僕たちを優しく出迎えてくださり、インタビューにも真剣に向き合ってくださったムレコミュニケーションズの永井さん、杉田さん、日経印刷株式会社の能州さんにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
コメント
コメント一覧 (1件)
写真と大きい文字が多くて見学の様子と紙の素晴らしさがとても伝わりました!