LGBTについて考える第1弾 赤と紫、緑とそして(part2)
取材・文=Яita(りた)(N高5期・ネットコース)
「ずっと前から好きでした」
前回から記事を読んでくださっているみなさん、こんにちは。初めて読んでくださる方は初めまして。N/S高新聞ライターでLGBT(※1)当事者のりたです。
※1 LGBTとはセクシュアルマイノリティ(性的少数者)のことで、女性の同性愛を指す『レズビアン』、男性の同性愛を指す『ゲイ』、男女どちらにも性愛感情が向く『バイセクシュアル』の3つの性的指向と、性自認と身体的性が一致しない人々を指す『トランスジェンダー』の各単語の頭文字を取ってLGBTと言う。近頃はさまざまなジェンダーやセクシュアリティをまとめてLGBTQ+と表すことが多い。
みなさんにききます。
好きな人はいますか? 過去に好きだった人はいますか?
この問いを聞いて異性を思い浮かべる人もいれば、同性を思い浮かべる人も、困ってしまう人もいるでしょう。
恋のかたちが人それぞれ違うのと同じように、恋をする対象も、恋をするかどうかも人それぞれ違うのです。
なぜこんな話をするのか? それは6月がプライド月間だったからです。プライド月間とは何か知っていますか? プライド月間とは、世界各地でLGBTの権利を啓発する活動やイベントが実施・開催される期間のことです。
LGBT当事者である僕はプライド月間を終えた今、みなさんと一緒に改めてLGBTについて考えたいと思い、今回を含めて毎週月曜日に計4本の『LGBT』に関する記事をお届けします。
本記事は第1弾part2の記事となっており、第1弾は当事者匿名インタビューです。インタビューではpart1、part2と2つの記事に渡り、計6人の当事者の方にお話を聞きました!
Mさんのお話
お名前:Mさん
はじめに
ーー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーー最初に、性自認や性的指向、恋愛指向について教えていただけますか?
性自認はノンバイナリー(※2)で、性的指向や恋愛指向についてはアセクシャル(※3)です。
※2 自身の性自認・性表現に『男性』『女性』といった枠組みをあてはめようとしないセクシュアリティを指す。
※3 『無性愛』とも呼ばれ、他人に対して恋愛感情を抱かない、他人に対して性的な行為への欲求を抱かない人のことを指す。
カミングアウト(※4)
※4 自分が、社会一般に誤解や偏見を受けている少数派の主義・立場であると公表すること。ここでは性的少数者であると公表すること。
ーー自分がLGBT当事者であることは周りの方々に言っていますか?
家族や一部の友達には言えています。
ーークリニックに通うなどといったことはしていますか?
精神科には通っています。
ーーLGBTの関係で通っているのでしょうか?
はい。精神的なこともありますが……。
LGBTだと自覚するまで
ーー幼少期から何か違和感を感じていたなどということはありましたか? どんな子供だったか教えてください。
幼少期は周りから見ると、普通の女の子って感じだったそうです。今と比べて、スカートなども履いていたと言われます。
ーー幼少期は何か違和感などは感じていなかったのですね。では、そのあとLGBT当事者だと自覚したきっかけはありますか?
自覚というよりも、ノンバイナリーやアセクシャルという言葉を知って、自分自身のこの状態に名前があったのかという驚きがありました。
ーーなるほど。自分が何者か分からずにいた時にその言葉を知って、しっくりきたという感じですか?
はい、そうです。
日常を送る中で
ーー今までに傷ついた出来事はありましたか? 無理に答えなくても大丈夫です。
アセクシャルであることを説明した時に「でも将来変わるかもしれないでしょう?」 と言われて、確かに性的指向は変わることもあるかもしれないけれど、今の自分を否定されているような気分になったことがあります。
ーーその時はどのようにそれを乗り越えましたか?
正直言うと、今まで乗り越えられたことはないです。これから先、どうしたら乗り越えられるかどうかを考えている最中です。
ーーでは、普段生活していてLGBTの当事者として不快に思うことなどはありますか? 例を挙げると、『異性愛者だという前提で話される』『性別欄に男女しかない』などといったこといったことです。
やっぱり、異性愛者前提で話されて恋人の有無をきかれるなどといったことは、少し困ります
ーーその時は対処できましたか?
自分のことを話せる人にはきちんと本当のことを話しますが、そこまで言えない人に対しては聞き流すことにしています。
N/S高に入って
ーーN/S高に入ってから、何か変わったことや思ったことはありますか?
精神的に体調を崩すことが多かったのですが、N/S高に入ってからは結構落ち着いていて、今までの学校生活の中で一番心地がいいです。
ーーそれはよかったです。とても大事なことだと思います。
メッセージ
ーーLGBT当事者を支える人たち、支えたい人たち、そのほか周りの人たちに伝えたいメッセージなどはありますか?
人間である限り、全部理解してもらうということは難しいと思います。それでも、少しでも多くの人にセクシュアルマイノリティのことを知ってもらうために、アライ(※5)の方々と一緒に頑張りたいです。
※5 LGBTへの理解者・支援者を指す。
ーーでは、LGBT当事者の方々にはどのようなメッセージを送りたいですか?
誰に何を言われても、傷つけられたりしても、ありのままの自分でいてほしいです。皆さん、そのままで完璧なので無理に変わる必要なんてないと思います。
余談
『LGBTあるある』と言われて思いつくことはありますか?
トイレに関して困る人はいるんじゃないかな。
確かに。とてもわかります……。
Aさんのお話
お名前:Aさん
はじめに
ーー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーー最初に、性自認や性的指向、恋愛指向について教えていただけますか?
性自認は女性で、セクシャリティはレズビアンです。
カミングアウト
ーー自分がLGBT当事者であることは周りの方々に言っていますか?
ネット上では言えていて、プロフィールとかに書いてもいますが、やっぱりリアルで会う人にいきなり「レズビアンなんだよね」と言うことは勇気が要りますね。リアルだと若干ためらうかもしれません。
ーークリニックに通うなどといったことはしていますか?
いえ、していません。
LGBTだと自覚するまで
ーー幼少期から何か違和感を感じていたなどということはありましたか? どんな子供だったか教えてください。
男の人は苦手だったのもあって、男の人を好きになったことはありません。学校などでも女の子たちの恋愛の話には全然ついていけないというか、共感できなくて、疎外感を感じたりなじめなかったりしました。
ーーその後、自分がLGBT当事者だと自覚したきっかけはありますか?
中学生の頃、男子からセクハラを受けて男性が嫌になったということもありましたが、性自認が完全な女性じゃない人と付き合ってみて、『女性』が好きなのだと実感したのが大きなきっかけだと思います。
日常を送る中で
ーー今までに傷ついた出来事はありましたか? 無理に答えなくても大丈夫です。
直接何かを言われたわけではないのですが、中学性の頃にクラスメイトの女子が話の途中で「お前、レズかよ」と言ったことがあって、怖いと思いました。中学性の頃にはもうLGBTという言葉自体は浸透していたと思うのですが、自分とは違うという理由で心の中では差別だったり見下していたりするんだろうなと……。自分と違うってだけでなんか人間じゃないみたいな扱いをされるのかなと不安になりました。
ーーそういう時はどのようにそれを乗り越えましたか?
乗り越えるとかではないのですが、気持ちの持ち様が変わりました。人の発言や行動をすごく細かくチェックするようになったと思います。自分の中で「この人は信頼できる」や「自分のことを大切にしてくれる」など、はっきり言うと、選別するようになりました。自分のことを大切にしてくれない人に、自分の弱みをさらすのは結構しんどいことだと思ったので……。
ーーでは、普段生活していてLGBTの当事者として不快に思うことなどはありますか? 例を挙げると、『異性愛者だという前提で話される』『性別欄に男女しかない』などといったことです。
テレビやメディアなどでは、LGBTのことを取り上げたりするようになってはいますよね。でも結局は、女子は男子を、 男性は女性を好きになるというのが普通とされていると感じます。
ーーそういう時はどうやって対処しますか?
テレビなどで見ていてつらいシーンがあった場合には、部屋に逃げたりチャンネルを変えたりして見るのをやめます。あとは、学園のLGBTのチャンネルやSNSでつぶやいて、みんなと共有することで紛らわします。
N/S高に入って
ーーN/S高に入ってから、何か変わったことや思ったことはありますか?
LGBT当事者が阻害されることなく、ちゃんと学校になじめているというのは普通の学校だとあまりないのでそれがすごくいいと思います。
メッセージ
ーーLGBT当事者を支える人たち、支えたい人たち、そのほか周りの人たちに伝えたいメッセージなどはありますか?
もっと理解して欲しい、自分と違うからって否定しないで欲しい、ということくらいです。柔軟に考える力を持ってくれたらと思います。
ーーでは、LGBT当事者の方々にはどのようなメッセージを送りたいですか?
優しくなるな、ですね。
ーーえっ?
他人に優しすぎて、自分が困ったり傷付く人が多いと思うんです。自分のことを大切にして欲しいということです。自分の心の中で、「周りと違うから自分は気持ち悪い」などいうことを自分で思っちゃダメだよと。ですから、優しくなるな、そんなふうに思います。
余談
ーー『LGBTあるある』と言われて思いつくことはありますか?
難しい……。
最初は普通に話していて、後から同じLGBT当事者だということが分かった時には深いところでつながれるという感じがあります(笑)。
Dさんのお話
お名前:Dさん
はじめに
ーー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーー最初に、性自認や性的指向、恋愛指向について教えていただけますか?
性自認はXジェンダーです。性的指向についてはノンセクシャル(※6)だと思っていて、恋愛指向は定まっていない感じ、パンロマンティック(※7)に近いですね。
ーーXジェンダーのうちではどの性でしょうか?(※8)
不定性(※9)です。
※6 他者に対して恋愛感情は抱くが、性的欲求を抱かないセクシュアリティのこと。
※7 全ての性に恋愛的な感情を抱くセクシュアリティのこと。
※8 一般的にXジェンダーの性別としては、中性・両性・無性・不定性の4つがあるとされる。
※9 自身の性自認がその時々で揺れ動く性自認のことをいう。
カミングアウト
ーー自分がLGBT当事者であることは周りの方々に言っていますか?
言っている人もいますが、言っていない人の方が多いです。言っている人についても、全部言っているわけではないです。
ーーちなみに、どんな人に言っていますか?
母親と父親……だけですね。
ーー全部は言えていないとおっしゃっていましたが、親御さんに対してどの部分を言っていますか?
自分がLGBTであることは言っていて、「Xジェンダーです」などということは言ってないです。
ーーでは、親御さん以外の人に言わない理由は何かありますか?
やっぱり言いふらされるのが嫌だったり、そもそもお年寄りや親戚にはもう完全に異性愛者だと思われていたりするからですね。正直、言ってもわかるかどうかも微妙なので言ってないですね。
ーー親御さんに言えているとのことですが、クリニックに通うなどということはしているのでしょうか?
そもそもジェンダークリニックは聞いたことあるくらいなので、行きたいと思ったことはないんです。
ーーなるほど。ありがとうございます。
LGBTだと自覚するまで
ーー幼少期から何か違和感を感じていたなどということはありましたか? どんな子供だったか教えてください。
幼少期は普通に異性愛者で、小学5年生ぐらいの時に女性を好きになりました。でも、そんなにLGBTで幼少期からずっと悩んでいたということはないですね。
ーーその後、自分がLGBT当事者だと自覚したきっかけはありますか?
中学生ぐらいの時に「女性を好きになるのはどうしてだろう?」と思って、ネットで調べたところ、『LGBT』というものを知りました。
日常を送る中で
ーー今までに傷ついた出来事はありましたか? 無理に答えなくても大丈夫です。
正直、傷ついた出来事はたくさんあります。今はそんなにないと思いますが、バラエティ番組などで、同性愛者やトランスジェンダーを馬鹿にするような言葉を見聞きするのは結構しんどいです。
ーーそういう時はどのようにそれを乗り越えますか?
ポジティブな考えにもなれないので、自然に時が流れるのを待つ……かな。
ーーでは、普段生活していてLGBTの当事者として不快に思うことなどはありますか? 例を挙げると、『異性愛者だという前提で話される』『性別欄に男女しかない』などといったことです。
LGBT当事者であることを言っていない相手、親戚や知り合い、友達などと話すときに恋愛にからむ話題が出ると困ります。「どうしよう」や「ウソつかないと」などといった気持ちになります。
ーーそれはどうやって対処しますか? それも時間が流れるのを待つという感じですか?
そうですね。自分が違うから、どうしようもない。話に入ることもそうそうできないので、流す感じです。
N/S高に入って
ーーN/S高に入ってから、何か変わったことや思ったことはありますか?
正直、あまりSlackのチャンネルなども活用できていないので、特にないです。
メッセージ
ーーLGBT当事者を支える人たち、支えたい人たち、そのほか周りの人たちに伝えたいメッセージなどはありますか?
受け入れなくてもいいから、受け止めて欲しいですね。馬鹿にされるのも悲しくなるし、LGBT当事者に対してもう少し配慮してくれたらと思います。
ーーでは、LGBT当事者の方々にはどのようなメッセージを送りたいですか?
そんなに他人の意見を気にしないで、自分の信じることを貫いていいと思います。馬鹿にされたとしても、本当のことだから。そんなに他人を気にしないでいて欲しいです。
余談
ーー『LGBTあるある』と言われて思いつくことはありますか?
いろいろな性自認や性的指向、恋愛指向があって、当事者である自分でも覚えきれないというのはありますね。
終わりに
ここまで読んでくださったみなさん、今回インタビューに応えてくれた3人の勇気ある行動に、心の中でぜひ拍手を送ってください。今回でLGBT当事者の方々へのインタビューは終わりますが、今回の企画ではあと2本、LGBTに関する記事の配信を予定しています。それらを通して、LGBTに対する理解を深めていただけたら幸いです。身近なところから小さな幸せを形作り、すべての人がより幸せに生きられる世界を実現させていきましょう。
そして、LGBT当事者である方々。きっとこれまでたくさん辛い思いをしてきたと思います。それは、あなただけではありません。前回と今回の記事でインタビューに応じてくれただけでも6人、もっともっとたくさんの仲間がいます。そのことを忘れずにいてください。
今度はいよいよ第2弾、LGBT当事者である僕自身の経験のお話です。それではまた1週間後にお会いしましょう!
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