性教育に挑む!! 学校では教えてくれない⁉ イベントの魅力

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取材・文=Hiiro_116(N高7期・ネットコース)

最近、N/S高等学校・N中等部で開催されていたイベント
「学校では教えてくれない!セクシャルトラブル対策講座」(※1)。

(※1)
学校法人角川ドワンゴ学園が2023年1月より開始する
「これまで学校ではあまり教えられてこなかったけれど、
10代の皆さんが本当に知りたいこと・知っておくべきこと」を体系的に学べる授業シリーズ(2022年12月15日発信の案内投稿添付資料より抜粋)。

未成年がいまだに正しい性情報を獲得できておらず、性感染症や計画外の妊娠、インターネットでの性被害などのセクシャルトラブル(※2)が増加しているという問題を鑑み、シリーズ第一弾として実施されています。

(※2)
身体や性に関する知識不足により、巻き込まれてしまうトラブルの総称。

講座を受け、未来のために知っておくべき正しい性情報を手に入れ、セクシャルトラブルを回避し主体的に対応できるようになることを目指します。
今回はこの「セクトラ対策講座」を企画・運営しているお二方にインタビューをしました!
(※こちらの記事は2023年2月9日のインタビュー時点での話になります。)

話をしてくれた人=後藤真歩 さん
株式会社KADOKAWA 児童局
趣味:筋トレ,漫画,スポーツ
悩みを打ち明けられる人:家族や友人などの信頼できる人
打ち明け方:直接会って話すようにしている

話をしてくれた人=田谷知央 さん
角川ドワンゴ学園企画部企画課
趣味:世の中のマカロン屋さんを順番に食べ歩いて、一番おいしいお店を調査すること
悩みを打ち明けられる人:大学時代の友人や幼馴染
悩みを打ち明けられる場所:友人に会えない時は自分だけが見られるSNSに非公開で投稿している

(表記説明)

後藤さん…
田谷さん…

目次

イベント裏話

ーーこのイベントを企画された理由を教えてください。

た:
もともと私は、お金や死、宗教など学校ではあまり取り扱われないテーマやタブー視されがちなことがあるなと感じていて
同時にそれこそが生きていくうえでちゃんと考えないといけないテーマなんじゃないかなという想いがあり、
そういった学校では教えてくれないことを教えるシリーズをやりたいと思っていました。
そんな時に、後藤さんの性教育の企画が上がりました。
性や体に関することは、トラブルに発展すると取り返しのつかないことになったり、傷跡が残ってしまうこともあるので、
生徒の皆さんが誰かを傷つけることも傷つけられることもないよう、シリーズの中で最初に実施するのがいいんじゃないかという話になり、今回開催に至りました。

ーーありがとうございます!
企画はいつ頃からされていたのでしょうか?

ご:
最初に企画を始めたのは、2021年の7月頃です。
「N高で性教育をやれればいいな」という思いが最初に実現した企画になりました。
その時は夏だったこともあり、夏休みで自由な時間が増えると同時に、未成年の望まぬ妊娠が増えるという時期でもありました。
ちょうど性にまつわるリテラシーについてかなり敏感になっていて、企画を出してみようという話になりました。

た:
シリーズ全体も同じような時期に企画し、1年くらい練って、
2022年に本年度からやろうと決まりました。

ーーなるほど。
今回の企画は1年くらいかかったというお話でしたが、
他の企画もそのくらいかかっているのでしょうか?

た:
企画によると思います。
やりたい企画をあっためておいて、ニュースや世間の風潮を見て最適な時期にようやくその企画を出すということもありますし、
今このタイミングでやったほうが生徒に響くというときには、企画してから2週間くらいで実施することもあります。

イベント制作中の様子。画像は企画考案中の資料。(写真提供=田谷さん)

イベントゲスト

今回のイベントでは第一回目はブルボンヌさん(※3)、第二回目は北村邦夫さん(※4)がゲストとしてきてくださっていました。
お二人についても詳しく伺っていきます。

ーーゲストさんをお呼びした理由について教えていただきたいです。

ご:
ブルボンヌさんは企画部の部長である川﨑さんと面識があったことがアサインのきっかけの1つです。
「性」というコンテクストをあまりタブーな感じで重く見せすぎず、
生徒の皆さんが心を開いて話せる土壌を作ってくださるようなゲストを考えていました。
ブルボンヌさんは、性的にもニュートラルで、NHKのラジオ保健室(※5)という番組でパーソナリティもされていて、
青少年の悩みに寄り添うといった知見がかなりある方です。
普段からとても明るく、聞き上手で話し上手な印象の方なので、適任ではないかという話になりました。
特別顧問を務められている三戸麻子先生(※6)と初めて打ち合わせをしたときに、
性教育の実施にあたっては、低用量ピルを初めて日本に持ってきた産婦人科医である北村先生がご適任ではないかという話になり、ゲストをお願いしました。

(※3)
ブルボンヌ 女装パフォーマー/ライター
テレビ・ラジオ出演の他、ジェンダーや多様性に関する講演活動(企業内・自治体・大学等)など多方面で活躍中。

(※4)
北村邦夫 産婦人科医
自治医科大学医学部を卒業し、現在は日本家族計画協会クリニック所長/一般社団法人日本家族計画協会会長を務める。経口避妊薬・ピルの第一人者。

(※5)
10代のための性にまつわるお悩み相談番組。
https://www.nhk.jp/p/radio-hokenshitsu/rs/LP2P7WQW71/

(※6)
三戸麻子 母性内科医
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科 医長。
現在はスタンフォード大学内科PrimaryCareandPopulationHealthで「プレコンセプションケア」の研究に携わっている。

ーー今後のゲストさんの魅力についても教えてほしいです!

た:
第三回にはシオリーヌさんという助産師・性教育YouTuberの方と前田裕斗先生という産婦人科医の先生がいらっしゃるのですが、
お二人とも年代が私たちに近く、フランクで話しやすい雰囲気の方です。
それでいて助産師・産婦人科医としてご専門の知識もある方なので、話しやすさと知見のバランスがすごく魅力だなと感じています。
生徒の皆さんのリアルな悩みに寄り添って、医学的な知識が必要なところは、専門的な知識を持って質問に回答してくださるのではないかと思います。

第4回のイベントの様子。ゲストのN/S高・N中等部セクトラ対策チームの皆さんと一緒に性について考えた。(写真提供=田谷さん)

イベントを「つくる」

ーー今回のイベントを開催するのに困ったこと悩んだことがあれば教えてください。

ご:
今回のイベントは企画まで私が担当させていただいて、そのあと田谷さんが運営を担当してくださったのですが、
企画の時に困ったことは性教育という言葉の強さです。
「性教育」という言葉だけを見ると、日本ではまだセンセーショナルな印象を与えてしまうので、
親御さんに受け入れてもらえないかもという心配もありました。
ですが、実際にはこの「性教育」は性の生々しい知識をただ闇雲に教えるものではなく、
自分の体や未来を守るための知識を伝えるものです。
自分の子供や自分自身が、望まぬ妊娠やSNSを通した性被害などのトラブルに
どうやって巻き込まれないようにするか/巻き込まれてしまった場合どう対処するか をお伝えするものなので、
「セクシャルトラブル対策講座」という講座名にしました。
センセーショナルな内容を取り扱うことについて、最初は試行錯誤を繰り返していました。
必要な知識だけれど学校では教えにくいものなので、何の知識をどのように伝えるかの折り合いをつけるのが大変だったという記憶があります。

た:
運営の面でも似ているところがあります。
ほかに悩んだところで言うと、主体性と配慮すべきところの兼ね合いです。
やっぱり聞いているだけだと知識が流れてしまうので、授業が終わった後も主体的に対応できるようになるために
どうしてもアウトプットする癖を付けてほしいという想いがありました。 
ただ、生徒の皆さんの中には、性情報をある程度は知っていて気兼ねなくディスカッションできる方もいれば、
性に関する言葉を聞くのにも抵抗がある生徒さんもいらっしゃいます。
最終的に主体性を育みたいというこちら側の思いと、生徒さん各々の性情報を受け止める準備段階への配慮とのバランスは今もすごく悩みながら講座を作っているところです。
初めての取り組みだということもあって、運営面で至らないところもあると思いますが、
参加してくださった皆さんに意見をいただきながら改善していきたいと考えています。

ーーありがとうございます。たしかに、言葉の扱いは難しいですね。
このイベントで特に工夫したところはどこですか?

ご:
日本の性教育はやってはいけないことをタブーとして伝える風潮が強いという認識がありますが、
やってはいけないことに気をつけてさえいれば巻き込まれないのではなく、
気をつけていても巻き込まれてしまうこともあると思うんです。
やってはいけないことばかりを伝えていると、実際に巻き込まれた時に被害者が自分一人で抱え込み、追い詰められてしまうという危険性があるので、
今回の性教育の授業では実際にトラブルに巻き込まれてしまったらどうしたらいいのかという解決策を一緒に伝えることで、
「万が一の事態でも対応できるように」と考えたところがポイントですね。
これは田谷さんがくださった案なのですが、今回の企画では、
真っ暗なところで自分の体のことや悩み、性のことについて話す回があります。
私自身は自分自身の何かを人に開示するということに抵抗がないので、
明るいところで話すことに何の疑いもなかったんです。
田谷さんに「個人が特定されない形で話すほうが生徒も心を開けるのではないか」
というご意見をいただいて、実際に第一回目は暗闇で開催したというところが
この企画の持ち味になっているのかなと思います。

た:
第一回目は暗闇で安心感をもって話してもらい、
回を重ねるごとに性情報の解像度を上げてより詳しく、視野を広げて学べるように構成しました。また、性や体に関することを人に相談しやすくなってほしいという思いもあるので、一方的に聞くだけではなく生徒が質問や意見を話せる時間を設けました。

ーー自分もオンラインで一回目に参加したのですが、
家で暗いところを作ってみんなが参加しているのをみて、工夫されていたところが感じられました。
チャットも盛り上がり、すごく話しやすかったです。

第一回会場のダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」。
第一回リアル参加者はここからまっ暗闇の会場に入っていきました。(写真提供=田谷さん)

ーーこのイベントはどんな人におすすめですか?

た:
そうですね。
性や体に関することって気になっても
「周りの人や家族には聞きづらい」「正しい情報をどこで得られるのかわからない」
という人が多いと思うので、確かな知識を得られる機会だと思って、
ちょっとでも関心がある人は参加してほしいなと思っています。
もちろん、すごく問題意識を持っている人も参加してもらいたいんですが、やっぱり多くの人に
「これから自分の身に起こるかもしれないトラブルってどんなことがあるんだろう」
というのを知って、その対策を学んでほしいです。

イベントの様子。参加方法はリアルとオンラインの2つがある。(写真提供=田谷さん)

ーー最後に、このイベントを通して、参加者の方にどうなってほしいですか?

ご:
相手やパートナー、他者のことを尊重できるようになってほしいと思います。
今回の授業を通して、例えば他者との関係性を築くときに、
どんなコミュニケーションが適切なのかについて考えてもらえたら、素晴らしいなと思っています。

た:
抽象的にはなってしまうんですが、性や体に関することで
誰かに取り返しのつかない傷をつけることも傷つけられることもないようにしてほしい
というのが一番の想いですね。
そのために、何が起こりうるのか、実際起きてしまったらどうすればいいのか、
具体的に考えてもらえるようにしていきたいと思っています。

ーーありがとうございました。
イベントについていろいろなお話が聞けて、良かったです!

ご:
今日はお会いできて、そして私は今回初めて
企画にご参加くださった生徒さんのお話が聞けて、すごく嬉しかったです。
ありがとうございました。

た:
ありがとうございました。

***

なかなか触れることのないセクシャルトラブルの話題でしたが
みなさんどう思いましたか?
これを機に考えてみるのもいいですね。
今回インタビューをさせていただいたお二方ともとても仲がよさそうで、
インタビュー中も暖かな雰囲気が伝わってきました。
セクシャルトラブル対策講座はダイジェストをYouTubeで配信予定ですので
N/S高生のみなさん、要チェックです!

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