中高生にとって学校でのITの最適な使い方とは?

  • URLをコピーしました!

文=みとさん (S高1期生・オンライン通学コース)

今回の記事は「Student Learning Lab」 team:SITP(※1)によって開催されたディスカッションイベントでの議論内容をまとめた記事です。

当日、N/S高等学校・N中等部の実行委員や高校オンライン通学コース、高校通学コースからの代表者に加え、N/S高等学校外の高校生も参加し、教育×IT(※2)に関するディスカッションが行われました。

ディスカッションの最終テーマは「教育において最適なITの利用方法とはどのようなものか」です。
その過程で出された問いに触れながら、ディスカッションの内容をまとめます。

※1:Student Learning Lab(通称、SLL)とは、中高生が主役になって新しい教育をつくるコミュニティーです。team:SITPは、SLL内の、「教育のIT化について考え、活動する」プロジェクトです。

※2:Information Technologyの略。日本語訳すると情報技術。

画像
目次

教育現場でのIT利用

最初の問いは、導入もかねて「教育現場でのIT利用と聞いて、どういうものが思い浮かびますか?」というものでした。
これに対し、参加者からは「Google workspace」(※3)や「miro」(※4)など授業で使うものに加え、登校時にカードをかざしたり、ICタグをつけたランドセルを背負って校門を通ることによって、登下校時刻を保護者が把握することができるシステムなど、子供の安全を守るために使われるものなどがあがりました。

※3:Google の提供するグループウェアとして利用可能な組織向けオンライン アプリケーション セット。

引用:https://www.g-workspace.jp/googleworkspace/

※4:付箋を貼る・図形を描くといった自由なコミュニケーションを可能にした、オンラインホワイトボード。

引用:https://aslead.nri.co.jp/products/miro/lp/?gclid=EAIaIQobChMIyfCl_s_m_AIVVE5gCh1yAwdTEAAYASAAEgLYOvD_BwE

ITを活用する上で難しかったところ

そして、ここから議論は本格化していきます。
次の問いは「ITを学校生活の中で活用し、難しかった部分はありますか? また、それをどうやって乗り越えましたか?」というものでした。

最初に出てきたのは「ITの使い方がよくわからない教員にどうやって使用方法を知ってもらうかが難しかった」という意見です。これはマニュアルを作成することで少しずつ理解してもらえるようになったといいます。

次に、「初めて使うツールの使い方がわからなくて、周りの人より遅れて焦った」という声が出ました。これは、すでに実践してきた人たちにきくことによって乗り越えることができたとのことで、生徒同士の教えあいの必要性を感じた場面でもあったと思います。サイト作成やアカウント設定などにおいてわからない部分をすでに実践してきた人たちにきくことで解決したという例も出てきました。

最後の意見はオンラインでの活動を伴う所ならではかと思いますが、「資料をドライブにまとめたり、共有したりするのは楽だけど、認識の違いやズレが出てきて大変……」です。これに関してはコミュニケーションを取る量を増やすことによって解消することができたとのことでした。
参考にできるマニュアルや困った時に聞ける人がいるだけでも、技術的に難しい部分を乗り越えることができるようですね。また、オンラインでの活動が多い場合はコミュニケーションの量にも気を配る必要がありそうです。

良かったITの利用方法

3つめの問いは「実際に使っていて良かったと思うITの利用方法はなんですか? 思いつく限り教えてください!」というものでした。
まず最初に出てきたのは「ナレッジベース」です。これはよくある質問をGoogleサイトにまとめた、N/S高にある実行委員によって運営されている学内ヘルプサイトです。また、学内ヘルプの無い他の高校の参加者からは更新を急ぐものにはGoogleサイトが便利という意見も出ました。

次に、「タスク管理で使えるツール」が出てきました。生徒会や実行委員などで活動している生徒にとって、ツールによってタスク管理ができれば、進捗が一目でわかり、非常に助かるものとなっているとのことでした。

他にあがったものは「日程調整ツール」です。それぞれが実行委員などで忙しくしている中、日程調整ができるツールはまとめ役には重宝だという意見でした。

最後に出たのは、「Google Apps Script」です。メールの自動送信や通知をLINEに入れるなどの使い方をしているそうです。無ければ、自分で作ることができるのがITの強みという声もあがっていましたね。
先ほどのマニュアルもそうでしたが、困った時に参考にできるものがあると、技術面や知識面での助けになりそうですね。

紙であって欲しかったもの

4つ目の問いは「学校生活の上でデジタルではなく、紙であって欲しかったものはありますか?」というものでした。
ITと紙といえばデジタルとアナログとして退避されるもののような印象を受ける方もいらっしゃるのかなと思います。デジタル化、IT化が進められている中、逆に学生にとって紙であって欲しいものはどのようなものなのでしょうか?

実際に出た意見としては「テキスト」や「試験・テスト」、「ノート」がありました。
テキストに関しては、「日本漢字能力検定」など記述式の試験を受検する際に、実際に手で書く機会が少ないと、書き順などわからない部分が増えてしまうという意見でした。

次に、試験・テストですが、タイピング式の試験やテストの場合、入力に手書き以上の時間がかかり、テストの時間内に収まらず、実力を完全に発揮することが難しいとの声があがりました。

最後にノートです。実際にデジタルノートを使ってみると、タブレット端末に記載したつもりの文字と反映された文字の位置に微妙な差があったりし、紙のノートより使いづらいなどの意見がありました。
デジタル化やIT化が進められる中でも、学生にとって紙であって欲しいものはあるようです。

デジタル化のメリット

5つ目の問いは「紙媒体のものをデジタルにするメリットはなんだと思いますか?」というものでした。
最初に出た意見は「配布ミスでプリントが行き届かないことが無い」です。受け取り間違いなどを減らせるのはITの強みだと思いますね。

次に出たのは「場所を取らずに、たくさんの情報を集約できる」です。学校などでプリントやお知らせをもらった時に、プリントをなくしてしまったり紙が多すぎてスペースをとるといったことがなくなり、情報が1つの端末に集約されるのはITならではの強みかと思います。

3つ目は「どこでも確認・連絡が取れる」です。体調不良などで欠席していても、緊急かつ重大な用件については、自宅にいながら端末一台で処理することも不可能ではありません。

4つ目は「情報伝達速度が早い」です。例えばプリントを提出する場合、提出先に届ける必要がある紙とは違い、データであればボタン1つですぐに提出先に遅れます。そういった情報伝達速度の違いもメリットにつながりますね。

メリットはあがりましたが、改善点はないのでしょうか?

現在のIT利用の改善点

6つ目の問いは「現在の学校生活上のIT利用について、改善点はなんだと思いますか?」というものでした。

まず出たのは「組織に合わせてカスタマイズできるようにしたい」です。学校にはそれぞれ特色があり、教員も学校によって異なるので、当然ITツール使用方法等も異なります。そのため、各学校に合わせてカスタマイズできると非常にありがたいとのこと。情報科教員やITツール等を触ることのできる教員がいない学校もあり、仕方なく他校に依頼することもあるそうです。各学校にITツールを使える人員を配置してほしいという声がありました。また「教員によって運用が違って困る」との意見もあがりました。

他にも、個人情報が見えてしまうことに関しては、個人情報の流出というマイナス面と連絡先がわかっていれば共有が楽というプラス面の線引きが難しいという議論も見受けられました。

生徒同士の教え合い

最後の問いは「ITにおける不明点を生徒同士で教え合えると思いますか?もし教え合えるとすると、どのようになると思いますか?」というものでした。
「ITにおける不明点を教え合えると思いますか?」については「教え合える!」という形でまとまりました。
ただ、「もし教え合えるとすると、どのようになると思いますか?」は議論がたいへん盛り上がりました。メリットとデメリットにわけご紹介します。

メリットの1つ目は「交流が生まれる」ことです。生徒同士で教え合うことによって、教えることができる生徒と教わる生徒によるコミュニティーができ、交流が生まれます。

メリットの2つ目は、「気軽にきき合える」ことです。教員に質問しづらいことや場面はどうしても存在しますし、教員が不在の場合ももちろんあります。しかしながら、生徒同士であれば気楽な上、休みの日でも相談できるので安心です。

メリットの3つ目は、「自信を持つことができる」ことです。元々あまり活動的ではない生徒が、教える側に立つことによって、自信が持てるようになるということがありました。

メリットの4つ目は、「教える側も教わる側も互いに成長できる」ことです。教わる側は当然知識や気づきを得ることができますが、教える側も「ここで躓く人がいるのか」や、説明する上であやふやな点がわかるなど、気づきや発見を得ることができます。

生徒同士だからこそ、気軽に聞き合い交流が生まれるというだけではなく、教える側の生徒の自信に繋がったり、教える側と教わる側の双方に学びがあるのはすばらしいですね。

続いて、デメリットです。デメリットの1つ目は、「情報が誤っていた時の責任の所在がはっきりしない」という点です。生徒同士の教え合う中に誤った情報が入ってしまった場合、教えた生徒を特定したり、特定できた場合にもその生徒一人に責任を負わせるかということには難しいのではないかと思います。かといって学校や保護者が責任を負えばよいというものでもないように思います。生徒同士の教え合いの中で誤った情報が混じってしまった場合、その責任の所在を確定することは非常に難しいと言わざるを得ません。

デメリットの2つ目は、「知ってる人が1人だと1人に質問が集中する」ことです。生徒に聞く際に、その知識を持っている人が1人しかいない場合、その人に質問が集中してしまいます。質問される生徒にとっては非常に大きな負担になってしまいます。

このようにメリットとデメリットをあげましたが、「教え合いを進める上で、課題点に関しては学校側とともに解決していけたら良い」という結論にまとまりました。

まとめ

中高生によるディスカッション内容はいかがでしたか?
教育のIT化について、参加した中高生は非常にポジティブに捉えております。しかし、学生として紙やアナログのままであってほしいものは実在します。
また、今後生徒同士の教え合いも増えていくかと思いますが、それに伴う責任を誰がどのようにとるかや、生徒の負担が増えるなどの課題点もあります。

今後学校生活にITを取り入れる際は、学校のシステムの都合や教員の要望だけでなく生徒の声を反映させながら、各学校にあったスタイルを築いていってほしいと思います。

画像
写真提供=TA まさき

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次