【腹ペコライターWS】N/S高生が聞いて、書く「小布施町の魅力」とは?③
寄稿=食いしん坊なあなたのための腹ペコライターワークショップ
N/S高・N中等部では6月下旬から7月初旬にかけて「食いしん坊なあなたのための腹ペコライターワークショップ」を開催しました。長野県小布施町で美味しい食品を販売する四つの事業所さんにインタビューを実施。小布施町で地域課題の解決に取り組む小布施まちイノベーションHUBさまや、小布施町在住のライター大宮まり子さまの力も借りながら、商品や小布施町の魅力を伝える記事の執筆に挑戦しました。
N/S高新聞では参加した生徒が執筆した記事のうち8本を、4回に分けてお届けします。今回は社会福祉法人くりのみ園さまにインタビューを行った二つのチームの記事です。一部重複する内容や写真もありますが、2チームそれぞれの視点で書かれた記事を続けてお楽しみください。
くりのみ園をつくった島津さんを知っていますか?
取材・文=ゆなな(N高7期・ネットコース)、もり(S高2期・オンライン通学コース)
写真=くりのみ園さま提供
長野県北部にある小布施町に、くりのみ園という社会福祉法人があるのを知っていますか?
くりのみ園とは、平飼い養鶏や自然循環型農業で農産物を作り、障害者の方と支援員が一緒になって農業に取り組んでいる法人です。
今回は、そんなすばらしい法人を作った島津さんにお話を聞きました。
島津隆雄さん
出身地:長野県 小布施町
平成9年(25年前)くりのみ園開設
優しい声の奥に熱い情熱を感じる方でした。
自給という考え方
ーーどうして、くりのみ園を作ろうと思ったのですか?
20数年前の話になります。
障害を持つ人達が生きていく、あるいは生活していく、そのためには働ける場所がどうしても必要。それは一般の方とまったく同じです。
ところが、残念ながら障害を持つ人達には中々そういう場が保障されていない。整備されていない。働いてもお金がほとんどもらえない。そういう現実なんです。
結局お金がもらえないから、生活も厳しくなりますし、自立した生活ということとも繋がってこない。
障害をもつ人達はそういう立場におかれている訳ですね。
では、そういう方達にとってどういう仕事があるのだろうとなりますが、仕事というのはいろいろな仕事があります。障害を持つ方達も同じです。
そこで、生きていくために必要な「食」を確保しておくということが実をいうと一番重要な話になっていくんだと、そういう風に考えている訳ですね。
では、農業がいいんですよね。
生きていくために卵をつくるっていうのもあるし、お米を作る、それから大豆も生産する。にんじんも生産する。っていう風に繋がって、いわゆる自給という考え方がそういう活動のベースにある。
だから、そういう自給的なものを作ろうという思いでスタートしたんです。
障害と健康、食と安心安全
今の日本で、自給と同時に「障害と健康」というのが非常に重要な、大きなテーマになっています。
そうすると、どうしても「食」とか「安心安全」だということもまた大きなテーマとなってくるので、安心安全の農産物を生産する仕事をすることは意味がある事ではないか。
そういう農園を作ることができたら素晴らしいなと、そういう思いでやってきているわけです。
島津さんが話をしている時、後ろを働いている障害をもつ方が通りました。
それを見て、島津さんのお話は今くりのみ園が成し遂げていることだと改めて実感し、なんともいえない感動がありました。すごい方だなと思いました。
食についての考え方
ーーホームページなどに書いてある「命はめぐる」とはなんですか?
命がめぐるっていうのは、生き死にの問題なんです。
私どもも人間だから必ず死ぬわけです。動物も同じで、全て大地に戻るわけです。人間の生命が戻るので、その大地の中で、今度は次の世代は、にんじんになって生まれてくるかもしれないですね。あるいは、魚になってきて生まれてくるかもしれない。
そういう発想って、私たちみんなにとって違和感がありますが、昔の仏教なんかの世界も当たり前のこととして捉え、要するに一木一草(※1)命あり、全てに命があると見ていた。そしてその命はめぐってゆくというふうに捉えていた。生きる死ぬという世界の話。
やっぱり真実なんだと思っていて、私どもが死んでみんな無心で、そして土に戻るということ、だから昔の人が言った、身土不二(※2)とは、体と心は土と繋がっているということです。
※1.例え、一本の木、一本の草。また、ほんのわずかな草木など
※2.仏教の言葉
全ては土と繋がっているわけです。また、土に戻って、またそこから植物が育っていく。そういうふうに出来るだけのものを生産してるときに、出来るだけ化学合成物質を使わない、それは、自然にかえらないから、今世界問題で、マイクロプラスチックを魚が食べて、魚を人間が食べて体内にマイクロプラスチックが入ってきて循環してる。分解されていかないのは、化学合成したものだから、普通に自然の物ならば、それはすべて微生物の力で分解され土に戻るわけでだから、何も問題はない。
それが、また次の生命の糧になってくる。今の世代あんまり関係ないような生き方になっていますが、昔の人はよく実感として持っていて、そういうことを言っていたんだろうと思ういますし、でもこの時代にそんなことを言っても始まらない感じないけども、ベストもあるのかなっていう思いもあったりします。
まとめ
ーー今のくりのみ園の目標はなんですか?
今、この時代にいわゆる福祉の対象者と言われる方たち。特に障害者と言われる方が増えています。
少子高齢化と言われる時代に、障害を持つ子どもたちが増えているという現実は直視せざるをえないと思います。報道されたりはしませんが、無視する訳にはいかない。
だから、そういうことを根本的になくしていく、減らしていくためにはやはり食と農というものがキーポイントだというふうに思っています。
農薬の成分が障害に関わるのではないかという研究結果を発表している論文もあり、そうした可能性がある中で、農薬をできるだけ使わない有機農業にこだわることに意味があると思っています。
だから、今のくりのみ園は農福連携という農業と福祉を繋げていく取り組みをしています。
一人でも多くの障害を持つ人たちが、農業に参画してもらえないかなという思いがあります。
要するに畑仕事をしようということです。鶏を買ったり、米を作ったり、野菜を作ったりしてもらえないかなと。
それは一番根本的なことだから、どれだけ多くの人がやったっていい。
少なくともその人たちがやれる状況づくりを今後していけるといいのかなと、ちょっと社会的な使命なることを感じております。どこまでできるかはわかりませんが。
取材を終えて
恥ずかしながら、障害がある方の雇用問題や農福連携を知りませんでした。ですがお話を聞くうちに、食や有機農業の大事さ、農福連携のすごさを知りました。(農福連携もっと広まってほしい!)
島津さんのくりのみ園の思い、食への考え方、そして今の目標が少しでも伝わると幸いです。島津さん!応援してます!
暮らしを支えるくりのみ園 〜福祉×農業×食〜
取材・文=柳沢六花(N高6期・通学コース)、郷ちさと(N高7期・通学コース)
写真=郷ちさと、くりのみ園さま提供
今回は「腹ペコライターワークショップ」という、小布施町の事業所と食品を記事にするワークショップに参加しました。そこで実際に小布施町自慢の食品をいただいて、記事を書かせていただきました。
インタビューに答えてくれたのは…
島津隆雄さん
社会福祉法人くりのみ園 理事長
小布施町ってどんなところ?
皆さんは「小布施町」という町を知っていますか?
やはり、知らない人がほとんどだと思います。かくいう私たちも、今回のワークショップで初めて小布施町の存在を知りました。
小布施町は長野県の北東に位置する町で、人口は1万人程度。長野県で一番小さく、「栗と北斎と花のまち」として親しまれています。
とっても美味しい!マフィンとカステラ
今回私たちがいただいたのは、「社会福祉法人くりのみ園」のマフィンとくりのみのたまごカステラです。くりのみ園こだわりの「限りなく自然に近く、自然のパワーが詰まった平飼い卵」がたっぷり使われています!
(柳沢)プレーン・みそ味の「マフィン」と「くりのみのたまごカステラ」。
マフィンは、手のひらに収まる程度のサイズ。プレーンのマフィンの袋を開けると、ほんのり甘くて、美味しそうな匂いが漂ってきました。
味に関して言わせてもらうと、柳沢が人生の中で食べたマフィンのなかで一番美味しかったです。(※個人の感想です)
中身がぎゅっとつまったマフィンの、素朴なのに甘くてとても満足感のある味に、思わず口がほころんでしまいました。私が食べたのはプレーン一つだったのですが、もっと食べたい、買いに行きたい…!どうして私は小布施にいないのかと切実に思いました(笑)。
カステラは一口食べるとそのふわふわさに驚きました。私は砂糖の甘さが強すぎて、あまりカステラが好きではなかったのですが、このくりのみのたまごカステラは違いました。優しい甘さと言いますか、ほっこりするような素敵な甘さで、くどくなくてぺろりと全部食べることができました。初めてカステラを美味しいと思えたのでとても驚いたと同時にとても嬉しかったです。こちらのカステラはくりのみ園のオンラインショップ ( https://www.kurinomien.jp/ )で購入することができるので気になる方はぜひ一度サイトにアクセスしてみてください!
(郷)米こうじみそ味では、プレーン同様ぎゅっとつまったマフィンから、絶妙な味噌の甘じょっぱさが味わえます。大雑把に説明すると、ご飯系のマフィンです(笑)。普通のマフィンと比べて甘ったるくないので、何個でもパクパク食べられるだろうと思いました。
さて、これだけ商品の説明をさせていただいたわけですが、そもそもくりのみ園って何?と思う方も多いと思います。今回は、くりのみ園の食品についてだけでなく、「社会福祉法人くりのみ園」の詳しいことについてもインタビューもさせていただきました。
社会法人くりのみ園
「社会福祉法人くりのみ園」は、障がい者支援施設として農福連携に取り組む福祉農園です。平飼い卵や有機の米・大豆・味噌といった、こだわりあるオーガニック商品を販売し、地域農業に貢献しています。
島津さんが想う、障がい者の可能性
そんな「社会福祉法人くりのみ園」を26年前の1996年に設立した島津さん。その当時から島津さんは障がい者の可能性を感じていたと話します。
「障がい者の方とお付き合いをしていく中で、一つのことをコツコツと取り組めるという特徴に気がつきました。そういった力を農業と繋げることはできないかと考えたんです。生活して行く為には働く場所が必要ですよね。ですが障がいを持つ方が働ける場所が非常に少ないというのが現実です。現在、そういった方達と自給的なものを作るというのをベースに農業をしています。お米や人参なんかは作ったら食べれるわけですから、成果が見えますし、それが意欲に繋がります。普通の生産活動と少し違うところですよね。このような意味ある農園を作ることができたら素晴らしいなという思いがあったんです」
障害を持つ方と農業を営んでいく中で、ハプニングが起こることもあるそうです。「人参の草取りの時に、一生懸命育てた人参の身ごと取ってしまうんです。開いた口が塞がりませんよ(笑)。でも、それもありなんです。長い目で見て、相手の存在を受容してから全てが始まる訳ですから」
気長に呑気にやり続けていきたいと、楽しそうに話す島津さん。そんな島津さんから、広く温かい心を感じられました。
くりのみ園が目指す未来
今、少子高齢化が進んでいる中、障がい者の数は増加しています。くりのみ園が有機農業にこだわる理由の一つは、農薬の成分が障がいに関わっているのではないかという論文を気にしているから。くりのみ園の作る食品には、みんなで安全なものを食べ、少しでも障がいを持つ可能性を減らしていきたいという想いが込められている。「できるだけ多くの障がい者が、農業分野に参画してほしい。その為に必要な状況をつくっていきたい」と話す島津さん。このような時代だからこそ農福連携に力を注ぎ、障がい者の方の受け皿として、更に受け入れやすい環境を整えていくことが、くりのみ園としての今後の目標だそう。
終わりに
(柳沢)今回、ワークショップという場でこうして取材をさせていただいたり、実際に物をいただいて記事にするという初めてで貴重な体験をすることができてよかったです!小布施町やくりのみ園さんについて深く知ることができ、島津さんの考えもお伺いすることができ、とても楽しく有意義な時間を過ごすことができました。
(郷)島津さんのお話を聞いて、障がい者や福祉の問題について深く考えさせられました。地域だけでなく、障がい者の支えにもなっているくりのみ園さんにインタビューできたことを嬉しく思います。農福連携の普及を願っています。
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