【校長インタビュー】N高校長の原点とは?奥平校長の教育と向き合う姿勢
取材・文=霜田菫(N高6期・ネットコース)
N高の校長先生は、そう、奥平博一校長。
奥平校長は、なぜ教育に携わろうと思ったのか、なぜ通信制高校のイメージを変えたいと思ったのか、奥平校長の原点を聞いてみた。
奥平博一(おくひらひろかず)先生
N高等学校の校長。
開校当初から今に至るまでN高の校長を務めている。
ーー奥平先生が教育に携わろうと思った原点は?
父が中学校の教師で、昔は、田舎に行くと先生が住む家があったので、そこに住んでいたんですよ。だから学校がいつも近くにあるっていうのもあって、なんとなく学校で働くのかなと思ってました。
大学生のときは、障害児教育のアルバイトをしていました。ダウン症などを持つ子たちと一緒に過ごすアルバイトをしてたんです。それが子どもたちと触れ合った最初の経験かな。
そのあと、小学校の先生をしたり、学習塾の先生をしたりして、いろんなタイプの生徒さんたちと交流してきた。
N高は入学試験がないよね。それは、いろんな人がいてこそいいよって、いろんな人が世の中にいるんだっていうことを、大学時代や働く中で、身をもって感じてきたからなんです。
ーーいろんな人がいるっていうのを大切にしたいという思いでN高を作ったのですか?
それが原点かもしれないね。
精神的なところもあるし、もっと言ったら物理的なこともある。
例えば北海道の山の中に住んでいたら、なかなか学校に行けない。高校に行こうと思ったら街まで出てきて、寮に入らないといけない。日本でもそんなところはいっぱいありますよね。そういう場所にいても同じものが学べるって言うのもN高の良さなんですよ。
要するに、人間って多様なんだから、何も横の人と同じことをしようと思わなくていいですよ、というのが一番のメッセージ。
多様さを大事にするっていうことは、ここにいるみんな一人一人を大事にするということ。
一人一人が自分に自信をもって、自分を大事にするということですよ。比べる場面は世の中いっぱいありますよね、それが間違っているとは言わない。いろんな物差しが世の中にはあるんだけど、絶対に失ってはいけないのは自分だけの物差しですよ、ということです。
ーーよく通信制高校のイメージを変えたいとおっしゃっていますが、そう思ったきっかけはありますか?
人っていろんな人がいるじゃないですか。なのに、通信制高校に行っているだけで「変わっているんじゃないか」と言う。そこに違和感を感じた。
全く新しい学校をつくることで、通信制高校のイメージを変えたい。
イメージを変えることで、生徒の皆さんへのイメージも変わる。
通信制に行っているだけで「通信なの?」って言われたことないですか?そういう考え方ってまだまだある。
世の中の評価ってそういうのがいっぱいあるじゃないですか。自分が知らないことは「それって大丈夫なの?」っていうのと同じでね。皆さん一人一人を見ないで、「箱」が何かということだけで見る。〇〇高校に行ってたら頭いいね、って言わない?その人が頭いいか悪いかは全然知らないのに、その高校に行ってるだけで頭いいねーって言うのと一緒。
学校なんていうのは一つの場所に過ぎない訳やから。大事なのは皆さんがどう学んでいくか。単なる手段に過ぎない。学校なんて、皆さんがいなかったら何もない。それなのに、学校のイメージっていうのはまだまだ強いですよね。だからそういったイメージを変えたい。
ーーイメージを変えたいと言っているということは、イメージで見るのは仕方ないと思っているということですか?
イメージで見ることは仕方ないとも思っています。でも本質の話ではないよね、人の価値とかは、どこに行っているとか、良い服を着ているということではないよねっていうのが根本にあるんですね。
世の中の人の見方っていうのは、そういう一面で評価するというところがあるから、それを完全に否定することはしても仕方ない。だからN高は進学の実績も書いたりしてるじゃないですか。「進学なんて人の価値じゃないから、進学なんて僕らは意味を感じてないよ」なんてことは言ってない。進学したい人、本当に行きたい人はどんどん行かしてあげるようにしていく、というふうになっていきたい。
その場面場面での評価軸を全部否定するのも間違っていると思う。
今の高校生たちはね、世の中の評価軸と自分の評価軸が一緒になってしまっている。だから自分はだめだって思っちゃうわけ。できないという評価と自分という人間の評価っていうのは全く違うよね。遥かに違う。
ーーN高に対してどのようなイメージを持ってほしいのですか?
中学3年生で学校を選ぼうとするときに、近くの公立高校にしようか、近くの私立高校にしようか、N/S高にしようか、というふうになることが、一つの目標なんですね。
皆さんが多様であるように、いろんな勉強の仕方があっていいのが当たり前なんですよ。
学ぶ目的って、かわいい制服を着て毎日決まった時間に電車に乗って学校に行く事じゃないんですよね。未来に向けて何をするのか、っていうことが目的であって、そのための準備の方法ってなんでもいいじゃないですか。世の中の人は、その準備のやり方に色々言うわけ。でも、自分はこれに向けてやるんだ、っていう思いがあったら何を言われようが関係ない。
学校も時代とともに変わっていかないとあかんなとも思ってるし。僕が小学校に通っていた当時なんて、インターネットもなかったじゃないですか。いろんな話を聞きたかったら、学校の先生から聞くしかなかった。今は皆さんってどんどん情報を取れるでしょ。私が取る情報と、皆さんが取る情報ってなんの違いもないじゃないですか。
学校が知識を教えるだけの場所だとは思っていないからね。知識を得るのはインターネットや家のオンライン授業で、アウトプットするのは例えば通学コースだったらキャンパスで、となっていないとおかしいよね。今更学校に行って教科書を読まれても困るでしょ。教科書だけ読まれても何なの?って思うでしょ。もっと他のことができるはずなんですね。だから学びの方法もどんどん変わってくるんじゃないかな。
だから学びの方法とかに囚われることなく、自分が卒業して次に何をしたいのか?っていうところを考えて、しっかりやっていってもらえたらいいのかなと思っています。そこを見失わなかったら人から何を言われようが自分に自信を持って過ごしていけるはずなんです。
ーー通信制高校だとコミュニケーションが取れない、などの否定的な意見もありますが、それについてどう考えていますか?
皆さん高校に入ってから誰ともコミュニケーションをとってこなかったと言える人はいますか?そんな人絶対いないよね。コミュニケーションが学校という、教室という場面でしか学べないと思っていること自体がおかしいですよね。
中学校のときにコミュニケーションの取り方って教えてもらいましたか?教えてもらってないよね。なのに何で通信ならコミュニケーション取れない取れないって言うの?それは本当にイメージなんですよ。イメージだけで、「家にいるんじゃない?」「しゃべってないんじゃない?」って言うわけ。
皆さんは、いつまでコミュニケーションの取り方を教えてもらわないといけないんですか?大人になってもコミュニケーションが苦手な人はいるよね。
だからそれも通信が持ってるイメージの一つなんですよね。
でも通信という中で、例えばプレゼンテーションで賞を取ったりしている姿を見ることによって、「なんだ、大丈夫だよね」って思ってくれる人がいる訳やんか。それがイメージを変えていくって言うことで、まさにコミュニケーションを取れないんじゃないかって言うのも、一面だけを捉えた見方にすぎないと思うんですよ。
インタビューを終えて
一人一人を大事にして欲しい、それが奥平校長が教育に向き合う姿勢なのではないかと思った。
一人一人を大事にして欲しいからこそ、根本的なところを見失っていないような気がする。世の中の物差しと自分の価値は違う、いろんな人がいるんだからいろんな学び方があって良い。奥平校長がお話したことは、よく考えると当たり前のことだ。
違和感から生まれた新しい学校、N高等学校。
これからますます教育を変えていく存在になる、そんな予感がした。
最後に
奥平校長のプライベートや、仕事内容について書かれた記事もある。
そちらもぜひ読んでみて欲しい。
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