愛が世界を救うかもしれない。 CFFジャパンさんにインタビュー
取材・文=樺山 泰生(N高5期・通学コース)
当たり前に行けると思っていた修学旅行は無くなり、友人と遊びに行こうと思っていたイベントは中止。
何をするにも制限がある生活がもう2年続いている。
「なんで俺だけ…」と思うこともあるが、きっと世界中の同世代の人達も私と同じ悩みや不満を抱えているのだと思う。
そう考えると生まれた国や話す言語が違うなんてのは小さな問題で、自分の行動力と愛情があれば世界中の人たちと友達になれるような気がした。
今回は認定NPO法人CFFジャパンのケンジさんに海外の児童養護施設「子どもの家」についてお話を伺った。
SDGsが頻繁に取り上げられている今、私たちが協力できることはなんだろう?
話をしてくれた人=ケンジさん
現在は日本で働いているが、新型コロナウイルス拡大以前は年間で5ヶ月間ほど海外で過ごしていた。
すごく優しい。
CFFジャパンさんについて。
CFFジャパン は東京都より認定を受けたNPO法人。
「誰もが希望を持てる社会」を目指し、主に東南アジアで厳しい立場の子ども達を支援している。
フィリピンとマレーシアでは「子どもの家」という児童養護施設を運営。
CFFジャパンはボランティアに参加する学生向けに
・普通の観光ではいけない貧困地域、先住民の村などを訪問し、なぜ社会問題が起きているのかを学ぶ「スタディツアー」
・「子どもの家」の子どもたちや地域の子供たちと一緒に作る「子どもキャンプ」
・ボランティアワークで施設を整え、未来を築く「ワークキャンプ」
などを実際に行っている。
(現在は新型コロナウイルスの影響で行っていません)
「子どもの家」での暮らし
ーーCFFジャパンさんが運営されている「子どもの家」では子どもたちが共同生活を送っていると聞きました。
実際にどのような生活を送っているのかを教えていただきたいです。
ケンジさん:「子どもの家」では7歳から18歳までの子どもたちが共同生活をしています。
かつては路上で生活していたり、親から育児放棄や虐待を受けていた子どもたちが入所しています。
平日はみんな通学バスで学校に行き、土曜日はお出かけをしたりなど、日本の家庭と同じような生活をしています。
「子どもの家」はフィリピンとマレーシアにあるので、それぞれ違った生活をしているんですけど、少し小高い山にあるフィリピンの「子どもの家」では子どもたちはみんな歌とダンスがとても上手で、新曲が出るたびにダンスを覚えたりしてますね。
フィリピンでは歌とダンスが日常にあり、一家に一台カラオケがあるのだとか。
毎日が音楽で彩られた生活はすごく憧れる。
ケンジさん:マレーシアの「子どもの家」は熱帯雨林の中にあって、今は男の子だけが生活しています。主にサッカーやバレーなどの外遊びをしている子が多いです。
施設内にフルーツのなる木がたくさん生えていたり川が流れていたり、すごく良い場所です。
どちらの施設も自然の中に位置しているのは大きな特徴だ。
ビルの一室ではなく自然の中に「子どもの家」を建てたのは、子どもたちが自然の力によって癒されてほしいという思いがあるそうだ。
コンクリートに囲まれて育った私にはすごく魅力的に思えた。
ケンジさん:あと、どちらの施設でも日本のアニメはすごく人気ですよ!
土曜日のお出かけプログラムでは鬼滅の刃の映画を観に行ったし、呪術廻戦も読んでいます。
日本のアニメはクオリティが高くて大人気です。
離れた地に住む子どもたちも、私たちと同じものを好きになり楽しんでいると知れたのはすごく嬉しかった。
私の中ですごく遠くに感じていた世界との距離が少し縮まった。
仲間を家族と受け入れる
しかしケンジさんは児童養護施設の限界も感じているという。
ケンジさん:「子どもの家」で暮らしている子たちも、本当は両親や兄弟と暮らしたいと思っているだろうし、彼らに背負わせるにはすごく大きいものを背負わせてしまっているなと思います。
「子どもの家」は確かにおうちだけど、”All Happy”ではない。
それぞれ本当にしたいことはありつつも、今自分のいる場所を受け入れて、一緒にいる仲間を家族と受け入れて一緒に成長しているんです。
学校帰りに友達と遊んだりしたいだろうけど、施設のルール上させてあげることができない。
できないことが多いのは児童養護施設の限界があるなと感じるし、これは私たちだけではなくすべての児童養護施設が抱えている悩みだと思います。
だからこそ、日本からボランティアのみんなが遊びに来てくれることは本当に嬉しいことなんです!
真っ直ぐな愛情が育むもの
ケンジさん:子どもたちはボランティアの学生が一度来ただけでも喜んでくれるけど、学生側は「また会いたい!」と何度も参加してくれるんです。
子どもたちにとって、「好きだよ、愛してるよ」と言ってくれる人がいることはすごく救いになっているし、学生も子どもたちの真っ直ぐな愛情に育てられる部分がありますね。
良い育ちあいが起きているなと見ていて思います。
ボランティアの学生が参加できるプログラムは複数あるが、中でも「ワークキャンプ」はすごく楽しそうだった。
ワークキャンプでは、セメントを使って道路や遊具を作ったりしているのだそう。
ケンジさん:そもそもワークキャンプは「子どもの家」を0から建設しだしたことが始まりなんですよ。
もともとフィリピンは山、マレーシアはジャングルだったんです。
それを機械ではなくボランティアと現地の若者たちが”手作業”で何年もかけて作り上げてきたのが「子どもの家」なんです。
ケンジさん:多分機械を使えば1ヶ月で終わるのだろうけど、人間の手で作ることで生まれる温かさが絶対にあると思っていて。
例えばセメントには子どもたちの手形がたくさんあったり、名前が彫られていたり。
一つのセメントの石を見ても、たくさんの人の思い出が詰まっているんです。
そんな「子どもの家」で実際に過ごしている子どもたちは本当に幸せだろうなと思います。
なんて微笑ましく温かい場所なんだろう。
私たちが暮らす家にも、誰かしらの思いが詰まっているのかもしれない。
そう思って周りを見渡すと、壁に刻まれた成長の証や落書きの後など、何年も前の私や家族が残した幸せのカケラが家中に散りばめられていると気づいた。
私も幸せに囲まれながら生きていたんだと気づいた時、毎日を大切に生きようと思えた。
ケンジさんの思うCFFジャパンのやりがい
ーーケンジさんが実際に働かれていて感じたCFFジャパンの魅力ややりがいを教えていただけますか?
ケンジさん:子どもたち、学生たちの成長に関われていることが凄く嬉しいです。
ボランティアを通じて「誰もが希望を持って生きれる社会」を目指すために「私も力を貸したい」と、どんどんアクションを起こしてくれる仲間が増えてきました。
場所はそれぞれ違っていても「社会をよくしたい」「誰かを笑顔にしたい」と思う人が増えていくこと、みんなと一緒に「良い世界」を目指して活動できていることは「未来は明るいな」と思えますね。
自分一人ではなく、みんなに背中を押してもらっているし、みんなと一緒に歩いているような感覚で、それが自分自身のやりがいになってます。
ここまでのお話を聞いて、「お金」や「見返り」などではない深い愛情のコミュニケーションに強く胸を打たれた。
今はコロナの影響で海外に行くことは難しいし、高校生が協力できることなど少ないと思う。
それでも、私にも何か協力できることはないだろうか?
平和へとつながる
ケンジさん:たくさんあると思います!
例えば、SDGsにはいろいろな目標がありますよね。
ターゲットごとにできることは変わると思うけど、環境なら節電や節水をしたり、マイバッグを使うとか。
まず、社会課題ってどんなものがあるのか実際に調べてみて、色んな視点で物事を考えてみる。まず知ることが大事だと思います。
もう一つは、家庭や学校などの小さいコミュニティから相手をケアすることです。
平和の最小単位は家庭の中だったり友達との関係になると思います。
そういった小さな部分から意識することで解決へ向かっていくのではないでしょうか。
でも、他人をケアするためにはまず、自分をどうケアするかを知らないとできないと思っていて。
今自分の大切にしたいことや自分らしさを考えてみることは、高校生の皆さんが5〜10年後に自分らしく生きる基礎を作っているはずです。
人に見えるわかりやすい形で何かアクションを起こしたいだろうけど、まずは自分自身を知って自分らしく生きることから始めていいと思うし、それが他人をケアすることや誰かの未来につながっていくと思います。
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以前よりも人に会えない時間が増えた影響か、今世界には愛が足りていないのではと思う。
そんな状況を打破する方法は、コロナを収束させることももちろん力になると思うが、何よりも人が人を思いやること、他人からではなく自分から行動を起こし愛を伝えることが大切なのではないだろうか。
今回のインタビューで私は「本当に大切なこと」に気づけた気がした。
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