【N/S高生の今】N高生は”怖い人”ばかり?〜ミュージカルを愛するN高生石井さんへインタビュー〜
この記事は、N/S高新聞リニューアルに先駆けて行われた「N/S高新聞 実行委員ワークショップ」内で、参加者同士でインタビューを行い、原稿にしたものです。
取材・執筆=芦田紗良
N高に転入学するか迷っている方。時間を、ほんの少し私に使っていただきたい。
通信制でネットの高校、N高等学校。
どんなところかよくわからない方も多いのではないだろうか。今回はそんなN高の授業や生活について……は他のライターに任せることにする。みなさん魅力的な記事を書いているのでぜひそちらも見てほしい。
私は少し切り口を変えて、N高生本人をクローズアップすることとする。
というのも、筆者は元々全日制の高校に通っており、N高へ転入してきた。そのとき一番不安だったのが「どんな人がいるのか」である。パンフレットには起業部や政治部というものも書いてあり、クラス(私の所属するオンライン通学コースでは、クラス単位で学習することも多い。)に馴染めるのか不安だった。端的に言えば、怖かった。私と話の合う人なんていなくて、みんな怖い人ばかりなのではと。
そこで、今回はN高生のありのままの姿をインタビューで明らかにしたいと思う。通信制でネットの高校に通っているN高生は、何に夢中になっているのか。本当に、「N高生は他の高校生とは全く違う」のか。もしかしたら、そこには”N高のリアル”が映し出されているのかもしれない。
話をしてくれた人
石井真洋(いしい まひろ)さん
・N/S高2年目
・通学コース(週3回通学)
趣味:歌・演技・百人一首・エレクトーン
そのままメロディで「カッケェ!」って聞くのもいいし、和訳を見て「そういう歌詞なんだ……ほぉ!」ってなるのも好きなんです。
楽し気にそう話す彼女の瞳が、きらきらと、輝いた気がした。
曲そのものを好きになった
よろしくお願いします、と挨拶を交わして。まず手始めに、事前に書いていただいたプロフィールの内容について聞いてみることにした。
−−−−では、そうですね。プロフィールの自己紹介を読ませていただいたんですけど、グレイテストショーマンの曲が好きと書いてあって。
『グレイテスト・ショーマン』は19世紀に活躍した興行師、P・T・バーナムの姿を描く、2017年のミュージカル映画。彼の奮闘、そして成功までの軌跡を辿っていく。
うんうん。
−−−−私も好きなので、おっと思ったんですけど。このお好きな曲はどのシーンで歌われているものなんですか?
えっと、映画の「グレイテストショーマン」はあんまり見てなくて。
おっと、映画はあまり見ていないらしい。どうやら、曲自体に思い入れがありそうだ。もう少し掘り下げてみることにする。
−−−−曲のどのあたりが好きですか?メロディとか、歌詞とか、歌われてる場面とか。
元々、ミュージカルが好きなんです。
この曲を歌ってる、ザック・エフロンさんっていう俳優さんがいて。その人が前にやってた「ハイスクールミュージカル」っていうディズニーの、高校生のお話があるんです。それが元々好きで。
『ハイスクール・ミュージカル』は、2006年にアメリカのテレビで放映された、同国の架空の高校・イースト高校を舞台とするミュージカル映画である。バスケ少年のトロイ、天才少女のガブリエラ、トロイのライバルで、目立ちたがりのシャーペイ。この3人がミュージカルの主役をめぐって成長し、青春を謳歌する姿を描く。
ザック・エフロン
『ハイスクールミュージカル』の主人公、トロイ役で役者として一躍有名になる。『グレイテスト・ショーマン』では主人公のよきパートナー、フィリップ・カーライル役を演じた。
−−−−うんうん。
それで、「そういえば、グレイテストショーマンのこれ、この人が歌ってんじゃん!」と思って聞いてみたら、「あれ、なんかカッケェ」みたいな感じになってきて。なんか、壮大っていうか。曲調も好きだし、話してる内容も、切ないけどお互いを想い合ってる感があって好きだし。ハマりましたね。
−−−−お互いを想い合ってる。いいなぁ。そっか、恋愛の曲なんですね。
そうですね。元々、ラブストーリーと歌が好きなので、ディズニーはすごく好きですね。
好きな漫画は少年漫画?
−−−−なるほどなるほど。そうしたら、恋愛ドラマや少女漫画は好きですか?
少女漫画とか好きですね。きゃーってなりながら見てます。
−−−−好きな漫画とかありますか?
外国の、英語のラブストーリーとかを見るのが好きなんですけど。好きになる本って、少年漫画が多くて。
一番おすすめの漫画なんですか?って聞かれたら、少年漫画の「彼方のアストラ」って作品なんですけど。
−−−−名前は聞いたことあります!
知ってますか?
近未来っぽい世界で。宇宙の彼方の、遠いところに急に捨てられて、そこから頑張って自分のいた星に戻るって話です。
−−−−冒険ファンタジーみたいな。
それで、その仲間たちの中に、自分を飛ばした犯人がいるっていう。
−−−−なんかちょっと不穏になってきましたね?
そんな感じの話で。漫画も全5巻なので、5巻でそれが全て終わるんです。
5、と左手で出してくれた。熱量を感じる。彼女のこの漫画への愛が伝わってきた。
−−−−ええ〜!すごい!
伏線も一から全部回収して終わるので、めちゃくちゃ好きです。
一から全部、に力がこもっている。何やらすごそうだ。ニコニコと、楽しそうに漫画の話をしてくれる。その語り口に、筆者もこの漫画が読んでみたくなった。
−−−−ふむふむ。確かに少年漫画とか、冒険ファンタジーとか好きだと、ディズニーはハマりそう。
そうなんです。自分の世界と違うことでも、似たような学園ものでも、なんでも好き!みたいな人なので。
−−−−なんでも好き?
幅ひろーく深く、色々な趣味とかをしてる人なので。全部好き!みたいな感じです。
−−−−おお。あ、でも私もスタンスとしては似てるかもしれない。
二段階で曲を楽しむ
−−−−ディズニーのこと結構書かれてたような気がしたんですけど、ディズニーで一番好きな……歌を聞いた方がいいんですかね?
そうですね、ちっちゃい頃から歌しか聴いてないんですよね。
ディズニーの、20周年だかのCDが家にあって。英語の曲集、みたいな。
−−−−英語の曲集。ふんふん。
それを小さい頃から聞いてて、好きなのは……今は「A Whole New World」が好きです。
−−−−あーっ!いいですね!わかる!
「A Whole New World」とか、「Beauty and the Beast」を元々英語でしか歌えなくて。それで、中学校の頃に、”今月の歌”みたいな英語の授業のコーナーで……
−−−−あったあった!
私も中学生のころ、英語の授業の最初に洋楽を歌うという時間があった。毎月曲が変わるので、熱心に練習していたものだ。そんな経験を、石井さんもしている。なんだか一気に距離が近くなったような気がして、嬉しくなった。
ありますよね!そこで「A Whole New World」が出てきて、しっかり歌えるようになったんですよ。言葉の意味とか見ながら。多分、ディズニーの中で一番歌える曲です。
−−−−私も同じ経験があります。
英語も簡単ですし。
−−−−こんな意味だったんだ!って私も思いました。
そうですね、何も感じずに聞く?なんていうか、そのまま曲だけ「カッケェ!」って聞くのもいいし、和訳を見て「ええそういう歌詞なんだ……ほぉ!」ってなるのも好きなんです。
きらきらと、目が輝いたように見えた。それくらい彼女は楽しげだった。ほんの少し声のトーンを高くして話してくれる。本当に洋楽が好きなのだということが、ありありと伝わってきた。
−−−−ふんふんふん。
二段階で好きだなって思います。いい曲だなって。
−−−−そのままも好きだし、歌詞を見て聞くのも好きなんですね。
「なんかこんな感じ!」で話せる
−−−−ではそうですね、ディズニーの曲を英語で歌うのが好き、とのことでしたが、英語そのものはどうですか?
英語自体は……リスニングができて、読めないって人ですね。
−−−−なるほど。
リスニングができて、スピーキングもノリでできるけど……読めない!リーディングの問題が壊滅的!みたいな感じです。
−−−−でもリスニングとスピーキングができれば話せるじゃないですか。
話すのは……ノリで「なんかこんな感じ!」ってやればできるんですよ!
−−−−すごい!
身振り手振りで伝わるからいいんですけど。いやぁ、読めない。
−−−−身振り手振りを使って、あまり緊張せずに話せるタイプですか?
私の一番の問題が単語なので、単語がわかれば話せるって感じですね。
−−−−じゃあライティングもちょっと苦手ですか?
そうですね。
小さい頃から、英語劇とか習い事でしてきたので、耳はいいんですよ。
−−−−なるほど、すごい!
いろんな話聞いてきたり、それこそディズニーとか、英語のロックとかお父さんに影響されて聞いてたりしてたので。聞くのはできるんですけど、書けはしないです。
幼いころから英語に触れてきて、会話はなんとなくでできる。彼女は「耳はいい」とだけ言うが、すごいことだ。ただ、ライティングが苦手だというところに親しみを感じた。
いつかディズニーの曲を誰かとデュエットしたい
−−−−あとそうですね、外国の方とお話しした経験はありますか?
えっと……ホームステイの受け入れとかで外国の方がお家にきたりとか。2、3回くらい。あと、中一の時にアメリカにホームステイに行っていたり。
−−−−ホームステイ!
はい。夏の一ヶ月間、夏休み全部使って。
−−−−うんうん。アメリカのどこに行かれたんですか?
アメリカのいっちばん下のテキサス州ってところです。
−−−−ホームステイに行かれたとのことですが、将来英語を使って何かをしたい、という気持ちはありますか?
うーん……アメリカにホームステイに行って、自分の語彙力のなさを感じて。ずっと日本に居ようかな、ってなったんですけど。
将来の夢が芸能関係の、歌とか演技とか、そういう職業に就けたらいいなと思っているので。そこで英語の歌とか歌ってみたいなーというのはあったり。あと小さい夢でいいなら、いつかディズニーのデュエット曲を英語で歌ってみたいな、というのがあります。
−−−−じゃあ……私もラプンツェルの劇中歌とか練習しようかな?
「A Whole New World」「Beauty and the Beast」とかのお互いを好きあってるような曲がいいです。
−−−−うんうん。いいですね!
確かに、ディズニーの曲を誰かとデュエットできたら、どんなに気持ちいいだろうか。私も想像すると心がおどった。笑顔の可愛らしい彼女が歌う音楽は、きっと素敵なものになるはずだ。彼女の夢が叶うといいと、そう心から思った。
−−−−今日は本当に、ありがとうございました。
ありがとうございました!
終わりに
彼女はインタビュー中、ずっとニコニコと質問に答えてくれた。私自身、インタビューがとても楽しかった。ここまで読んでくれたあなたなら、N高生は「怖い人」ばかりか?という問いの答えもわかるだろう。答えはNOだ。好きなものは他の高校生となんら変わりなく、しかもその愛は強い。「好きだ!」という気持ちを貫けるのがN高の良さである。
いかがだっただろうか?あの頃の私と同じように、「どんな人がいるだろう」「怖い」と不安に思っている方の参考になっていれば幸いである。
コメント