【八丈島プロジェクト】食わず嫌いで終わるのはもったいない!「くさや」のにおいの向こう側にあったもの。

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羽田空港から55分東京都八丈町を舞台に、宿泊型職業体験プログラム島まるごと探求ラボ 生産者の『声』を届ける八丈島プロジェクト」を行いました。このプログラムは、島で活躍する生産者や地域の人たちを直接取材し、その想いや島の魅力を発信するものです。生徒たちは、チームごとにテーマを設定し、取材のアポイントの取得から記事の執筆まで全て自分たちの手で行いました。

また普段から、メディア広報委員として取材・執筆を行っている生徒も各チームに加わり、記事を完成させました。全5チームがそれぞれの視点で書いた”八丈島”。個性あふれる記事をぜひお楽しみください。

=ろざ(S高3期・ネットコース)・しゅん(N高8期・通学コース)・さら(S高4期・通学コース)ちけん(S高5期・通学コース)
撮影・協力=藍ヶ江水産 浅井 佑太様 長田商店 長田 隆弘様 

「くさや」ーーそれは私たちにとってどこか遠く、テレビの中で見る“においが強い魚”という程度の存在でした。
くさやという名前からは、くさいことがメインで伝わってきます。

私たちの最初のイメージも、決してプラスのものではありませんでした。なにせ、引率の職員さんからも「とてもくさいよ」と教えられたくらいです。しかし、どんなものも食べてみなければ、味を知ることはできません。
私たちは今回八丈島を訪れ、そこではじめて、そのにおいと味を知りました。

※初めてくさやを実食する様子。においが強いため外に出て、恐る恐る食べました。
目次

「くさや」とは

くさやとは、ムロアジやトビウオを「くさや液」に漬けて干した発酵食品、つまり干物のことです。八丈島を含む伊豆諸島の特産品で、300年以上の歴史を持つ伝統食品でもあります。
また、意外に思われるかもしれませんが、くさやのにおいの元は魚自体ではなく、漬け込む液のほうにあります。

私たちにとって、はじめてのくさや


前述のとおり「くさや=くさい」という印象でしかなく、正直おいしそうだとは思えませんでした。というのも、くさやは「世界のくさいものランキング」(※1)第5位にランクインしているくらいにくさいのです。

※1出典:小泉武夫著『くさい食べもの大全』(東京堂出版、2015年)および『発酵は力なり:食と人類の知恵』(NHK人間講座)を参考にAIを使って資料を作成しました。

八丈島のスーパーでくさやを買い、においを嗅ぎました。程度の差こそあれ、その時のみんなの顔は曇っていたように感じます。

食べてみた反応は様々でした。顔つきが明るくなった人も、一層顔を曇らせた人もいました。他チームの生徒に勧めた時の反応も実に様々でしたが、顔をしかめ、嫌がる人が多かったように思います。
そこで私たちは、このにおいがなければもっとおいしく食べられるはずと考え、1つの仮説を立てました。「独特のにおいのために、本来のくさやの魅力を見逃しているのではないか。」と。

においの裏側にあるもの


八丈島で40〜50年続くくさや屋「長田商店」の加工場を訪れました。

まず印象的だったのは、隅々まで清潔に保たれた作業場。そして何より、自分たちの仕事に誇りを持ち、弾けるような笑顔で迎えてくれた長田さんの姿でした。

私たちの心を最も揺さぶったのは、この工場の心臓部、代々受け継がれてきた「くさや液」の存在です。明治時代から100年以上も継ぎ足されてきたというその液体は、単なる調味液ではありません。そこには数億、数兆という目に見えない微生物が呼吸し、今この瞬間も「生きている」のです。

「放っておけばいいわけじゃない。適切な回数かき混ぜて空気を入れないと、菌が弱ってしまうんだ」

店主の長田さんは、毎日の気温や湿度を肌で感じながら、大きな木樽を丁寧に、けれど力強くかき混ぜます。長田さんによると、去年(2025年)の10月に接近した台風22号・23号によって、4ヶ月間、製造が止まってしまったそうです。製造が止まるということは、くさや液に魚を入れることができないということです。魚がないと、くさや液の中にいる菌にとってはエサがない状態になり、活性は目に見えて落ちてしまいます。長田さんは、製造できない期間も休まず液と向き合い、菌が活発に動ける環境を守り抜いたのです。

発酵が理想的な状態に達すると、液の表面には炭酸飲料のように気泡が弾けるといいます。それは、長年この液と対話してきた職人だけが聞き取れる、微生物からの「生きてるよ」というサインです。

私たちが「におい」の一言で片付けていたものの正体は、何世代にもわたる職人の手で守り育てられてきた、いわば「命の記録」そのものでした。

※長田さんが、くさや液を混ぜている様子です。お店の奥にある加工場の、さらに奥にあったくさや液。話しながらも「混ぜる回数は数えている」と話していました。

くさやの味を知って


生産者の想いを知ったあとに、改めて訪れた実食の瞬間、 期待よりも緊張が勝っていたのは事実です。しかし、一口噛みしめたとき、くさやの香りが鼻を抜けました。
それは、納豆やキムチといった、においが強い他の食品のように好き嫌いが別れるものではありましたが、決して嫌なだけではありませんでした。なんとも言えない、複雑な旨味が合わさったもので、決して簡単に嫌いだとは思えないものでした。

また、藍ヶ江水産の浅井さんにおすすめされたチーズや柚子胡椒との意外な組み合わせも、味の奥行きをさらに広げてくれるものでした。

かつて長田さん自身も、くさやのにおいを自虐的に語っていた時期があったそうです。そんな彼を変えたのは、一人のこどもが放った「いいにおいなのにね」という純粋な一言でした。その言葉が、「くさや=くさい」といった世間の偏見にさらされていた長田さんの心を救い、「これは島の誇りなんだ」と胸を張るきっかけになったそうです。

においの向こう側にあったもの

 
「くさや」のにおいの向こう側には、守るべき文化と、それを愛する人々の揺るぎない努力がありました。インタビューを終える頃には、あんなに顔を曇らせていた自分たちが恥ずかしくなるほど、「くさや」という存在が、愛おしく、そして尊いものに変わっていました。

この記事を書くにあたり、島のたくさんの方にご協力いただきました。改めてここでお礼を言いたいです。八丈島の人の温かさがなければ、私たちはここまでくさやの魅力を知ることはできなかったでしょう。

たしかに、くさやはくさい。それは紛れもない事実です。
しかしその独特なにおいを嫌って、この愛おしさも、尊さも、くさやに込められた想いも知らないでいることはもったいないです。

※笑顔でお話をしてくれる長田さん。子どもたちに行った授業の思い出と、これからのくさやの未来への想いが印象的でした。

においも、その先にある味も、文字で伝えるのには限界があります。私たちができるのは、記事を読んでくれた人の食べるきっかけを作ることだけです。
だからこそくさやを手にとって、味わってほしい。画面で見るくさやではなく、本来のくさやを実感してほしい。八丈島のくさやには、それだけの価値があると確信しています。

長田商店のオンラインストアはこちら:https://kusayaya.com/online-store
藍ヶ江水産のオンラインストアはこちら:https://across.co.jp/aigaesuisan/net/index.html

※長田さんのお店の前での記念写真。一日雨の日の取材でしたが、取材を終えた時は晴れやかな気持ちでした。

今回のプログラムは、離島情報に特化したウェブメディアやフリーペーパーを発行する団体である、「離島経済新聞社(略称:リトケイ)」様ご協力いただきました。
リトケイのウェブメディアでは、今回の記事とは異なる視点での記事が公開されています。ぜひそちらもあわせてご覧ください!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
少しでも八丈島の空気を感じていただけたら嬉しいです。またどこかでお会いしましょう。

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