取材:N高グループ生徒会 渉外委員会
編集:くうと(渉外委員会)
写真提供:株式会社エイチラボ
下北沢に、高校生・大学生・社会人が一緒に暮らすユニークな寮があります。その名も「シモキタカレッジ」。
今回は、オープン当初からカレッジの運営に携わってきた原田遼太郎さんと、N高出身で現在東京大学に通う入居者・有馬誠太郎さんにお話を伺いました。
高校時代にシモキタカレッジで過ごした3ヶ月は、有馬さんの進路選択や自己理解にどのような影響を与えたのでしょうか。
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秋期生・年間生として、下北沢で大学生・社会人とともに暮らしながら学ぶ高校生を募集しています。募集期間・費用・説明会情報は、必ず公式ページで最新情報をご確認ください。
なお、N高等学校・S高等学校・R高等学校は入学金免除の対象校となっております。詳細についてはHLAB事務局までお問い合わせください。

お話をしてくれた方たち

原田 遼太郎さん
シモキタカレッジ運営責任者。大学卒業後そのままHLABに入社し、2020年のオープン当初から一貫してコミュニティ運営・プログラム設計を担っています。
有馬 誠太郎さん
東京大学理科一類2年。シモキタカレッジ5期生。N中等部1期生として入学後、中高6年間を角川ドワンゴ学園で学び、N高を2025年3月に卒業。高校2年の冬にシモキタカレッジに3カ月間入居した経験があり、現在は大学生として再びシモキタカレッジに居住しています。
多様性が生み出す、シモキタカレッジでの学び

現在シモキタカレッジには約120名が居住しています。内訳は大学生が6割、社会人が3割、高校生が1割ほど。この「多様な年齢層が一緒に暮らす」という環境こそが、カレッジの最大の特徴だと原田さんは話します。
「ナナメの関係」が高校生を変える理由
ーー高校生にとって、年上の人と一緒に暮らす意味とは。
原田さん:
家族でも同級生でもない、ちょっと上の先輩たちと日常的に関われる。それが「ナナメの関係」です。シモキタカレッジでは、オンもオフも含めていろんな時間を共有するので、関係性がすごく深まりやすいです。そして自分のメンタルがいい時もわるい時も、スイッチが入っている時もそうじゃない時も共有し合えるからこそ、特別な関係性が築けるんだと思っています。お互いの存在が断片的ではなく、立体的に見えてくるわけです。
この「ナナメのつながり」は、大物ゲストを招くようなイベントなどとは別の学びの機会になります。身近に一緒に住んでいるお兄さん・お姉さんが目の前に立っているから、参加のハードルも低く、自分ごととして入りやすい。実際にカレッジでは、大学生が自身の専門分野を話したり、社会人が仕事の内容を紹介したりする「知ってみる会」が突発的に開かれるなど、毎日何かしらのイベントが自然と生まれています。

N高グループ生とシモキタカレッジは相性がいい?
原田さんと有馬さんは、N高グループ生について「他の高校生と比べてもより上手くカレッジを活かせるのでは」と話します。
たしかに、時間の自由度が高く、自分の関心に合わせて学びや活動を組み立てやすいN高グループの学習スタイルは、日常の中に学びの機会があるシモキタカレッジと相性が良さそうです。
実際にこれまで、N高グループ生の寮生も15名程いるとのことでした。
居住者が自らつくる「学び」と「暮らし」

イベントづくりから予算配分まで、居住者がつくるコミュニティ
ーーN高グループでも「生徒会」があるのですが、カレッジにも「委員会」があるんですね。
原田さん:
シモキタカレッジにおける「委員会」は、同じ興味・関心を持つ人が集まり、プロジェクトを動かしながら協働する仕組みです。
「やりたいことはあるけれどやり方がわからない、1人では不安、わざわざやるまでもないかな…」というように、何かをやろうとする時には、やらない理由の方が多く浮かんできます。そんな時、委員会という枠組みがあることが、1つのやる理由になれたらと思い、一人ひとりの可能性を発揮する機会として位置づけ、設計しています。
主な委員会には、夏祭りやハロウィンなど季節に応じたイベントを企画する「イベント委員会」、新入居者の歓迎を自分たちでデザインする「ウェルカム委員会」、年間200万円程度の予算を預かりプロジェクトへの予算配分を決める「財務委員会」などがあります。
ルールを決めるのも、ツールを教えるのも、寮生自身
ーーそこまで寮生がやるんですね。
原田さん:
あとはルール決めも寮生自身が行います。カレッジの基本的なルールは「火気厳禁」や「暴力の禁止」など、安全に関わる最低限のものだけ。それ以外は、寮生同士の話し合いや合意形成、つまり「自治」に委ねているのも特徴です。120人もの多様な人が暮らすからこそ、管理ではなく自治を大切にしたいと考えています。
有馬さん:
僕も最近「ウェルカム委員会」のメンバーとして、デジタルツールの使い方を新入生に教えるイベントを開きました。
「自分たちが最初に困ったこと、知りたかったことを今度は自分たちが率先して伝える」という文化が、カレッジには自然と根付いています。
またツールの話で言うと、N高グループで使うのと同じ「Slack」をシモキタカレッジでも使用するので、その面でもN高グループ生は相性がいいと思います。
有馬さんのカレッジ体験

「社交的になりたい」という思いから入居を決意
ーー当時キャンパスにも通う中で、どうしてシモキタカレッジに入居を決めたのですか?
有馬さん:
カレッジを知ったきっかけは、学園のSlackで流れてきた案内です。
もともと人と関わるのが得意じゃなくて、もう少し社交的になりたいという思いがありました。あとはN高の中だけではなく、社会の中で色々なことに挑戦したいなという気持ちもあって。
またYouTubeで見た、成田悠輔さんがシモキタカレッジをロケする動画の影響も大きかったです。カレッジの居住者が学問的な話などをカジュアルに話している様子を見て、「ここには話が合う人がいるかもしれない」と感じました。
Youtubeの動画はこちら
N高だけでは得られなかった、身近な大人たちとの関わり
ーー高校生の時にカレッジで暮らした3カ月はどんな経験でしたか?
有馬さん:
最初は人と話すのが得意でなかったこともあり、輪に入るのも難しかったのですが、徐々に「誰に何を聞いてもいいんだ」と思えるようになりました。キャンパスで同級生に話したら周りに引かれてしまうかもしれないような問いかけや自分の気持ちも、カレッジの大学生や社会人にはぶつけることができました。
またその中で、みんなが答えを持っているわけではない、ということを知ることができたのも大きかったです。
「生きることに意味はあるのか?」という問いをカレッジの社会人や大学生にぶつけて回ったとき、誰も明確な答えを持っていませんでした。でも、それがむしろ安心感につながりました。答えがなくても、みんな迷いながら生きているんだと知ることができたからです。
原田さん:
有馬さん自身のポテンシャルが開放されて、好奇心が満たされたり育っていった3ヶ月だったよね。
人が持っている「可能性の蓋」を外すというのは、カレッジで目指していることの1つです。

有馬さん:
それは本当にそう。あとは様々な生き方を間近で見たことで、自分がどういう人間で、何に向いていて、何をしたいのかが少しずつ分かるようになっていきました。「自分は考えすぎるタイプなんだ」とかですね。これはたくさん人と話すという「実験」を通して見つけられたと思います。
進路決定と東大合格への道のり

リアルな「生の声」で決断した進路
高校2年生の冬に入居した当時、有馬さんは海外大学か日本の大学かで迷っていました。その選択を後押ししたのも、カレッジでの「生の声」だったと言います。
ーーシモキタカレッジでの3カ月が進路に与えた影響はありますか?
有馬さん:
最初は東大に対しても海外大に対しても「なんとなく」のイメージしか持っていなかったのですが、いろんな大学に通っている学生から実際に話を聞いて、SNSなどで見聞きするような情報とは違う事実を知り、解像度が上がりました。多くの話を聞くことで選択肢が広がる場合もあると思うのですが、僕の場合は「選べない」状態だったのが徐々に絞れるようになりました。
「自分を知る」「選択肢を知る」の両方が大事
原田さん:
主体的な進路選択のためには、選ぶ主体としての「自分を知る」ことと、「進路の選択肢を知る」ことの、両方が重要だと思っています。有馬さんの場合はその両方が合わさった結果、選択肢が絞れたのだと思います。
シモキタカレッジでは「高校生の主体的な進路選択」をサポートすることを重要視しています。
誰かに決められるのではなく、自分で責任を持って決めるということをしてほしい。
そのためシモキタカレッジでは特定の進路先を斡旋することはなく、その代わりに「自分を知る」ための自己理解の機会と、「進路の選択肢を知る」ためのキャリア座談会をたくさん提供できるようにしています。

高く飛ぶための「しゃがむ期間」
ーーシモキタカレッジに住んでいる時、勉強との両立はできましたか?
有馬さん:
僕は全然両立できなくて、模試の成績がA判定からE判定に落ちました(笑)。
原田さん:
それだと困るから、もうちょっと話して(笑)。
有馬さん:
いや、悪いことではなかったんです。
この時期に勉強しなかったことと、進路に納得感を持てたことのおかげで、高3の1年間は迷いなく勉強に集中できました。
カレッジでの3ヶ月は、高く飛ぶために深くしゃがみ込む期間だったのだと思います。
原田さん:
受験勉強というのは「大学に入ること」が目的になってしまいがちだけど、本当は大学に入ってからの学びが大事ですよね。
自分の興味関心を知り、それを学ぶためには東大に行く必要があると納得できたのは、有馬さんにとって大きかったんじゃないかな。
N高グループ生へのメッセージ
勉強自体を好きになれると良い
ーーおすすめの勉強法を教えてください。
有馬さん:
勉強自体が楽しくなるように工夫することかなと思います。
そうすれば過度な息抜きも必要なくなるので。
僕自身は、苦手科目をやるのが辛い時に、受験には直接関係ないけれど学びになるような調べものをしたり、ポッドキャストを聞いたりしていました。
環境と他者の力で、自分を引き上げていってほしい
ーー原田さんが大事にされていることは何ですか。
原田さん:
自分の限界を自分の認識の中で決めてしまっている人を見ると、それは許せないと思ってしまうんですよね(笑)。
可能性は人との関わりの中で広がっていくものだと思うので、勝手に自分を過小評価してほしくない。
ただ、自分ひとりの意志みたいなものをあてにしない方がいいとも思っています。
よく「努力を仕組み化する」みたいな話もありますが、環境や他者の力を使って自分の力を引き上げていくことが必要だと思っていて。
またその一方で、周りの力を引き上げることにも力を貸すような、そんなお互いをいかし合う関係性を作っていってほしいです。
だから、自分の可能性を信じてほしいです。

「ワクワクドリブン」を大切に
ーー最後に、N高グループ生に向けてメッセージをお願いします。
原田さん:
高校時代に面白い大人とどれだけ出会えるかで人生の豊かさが変わると思っています。
自分として「尊敬できるな」「こういう人になりたいな」と思える人にたくさん出会うことを大事にしてほしいです。
カレッジにはそういう大人がたくさんいます。有馬さんもその1人です。

有馬さん:
何をするにしても、好奇心に駆られてやっている人が一番強いと思っています。受験においても、そうじゃないことでも、自分が好きでやっているとか、知りたくてやっているとか、「ワクワクドリブン」でやっている人は、我慢しながらやっている人より絶対速く走れるはずです。
カレッジには、何かにワクワクして取り組んでいる大人がたくさんいます。そういう人たちのワクワクに触れて、「自分もこの方向で走ってみようかな」と思える場所が、シモキタカレッジです。
おわりに
高校生・大学生・社会人が一つ屋根の下で暮らすシモキタカレッジ。そこにあるのは用意された授業ではなく、日常の中で自らつくり出すコミュニケーションと学びです。
有馬さんがカレッジでの3ヶ月を「しゃがむ期間」と表現したように、一見遠回りに見えるその時間が、その後の人生を大きく動かすこともあります。自分の可能性に蓋をしてしまう前に、シモキタカレッジという選択肢を知ってもらえたらと思います。
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