この世には「本好き」がたくさん存在する。
本を読む人、書く人、紹介する人。
様々な「本好き」がこの世の中には生きていて、この文章を書いている最中もきっと本を楽しんでいるのだろう。
だが、「本好き」は生まれた瞬間から本が好きだったわけではない。
なにかと出会って、なにかが起こって、なにかが己の中に刺さって、「本が好きだ」と胸を張れるまでになった道のりが、確かにあるはずなのだ。
「本好き」であるココぴさんが本を好きになるまでを、本記事でご紹介しよう。

ココぴさん
元N高生
メディア広報・デジタル委員会(ナレッジベース部門)・イベント企画(バーチャル部門・体験学習部門)に所属していた。
現在、日本大学芸術学部文芸学科に在籍。
「奇想天外」という文学サークルのリーダーを行なっている。
文学フリマ東京39、40、41や磁石祭ZEROに出店。
今年の磁石祭2026と文学フリマ東京42にも出店参加した。
最近の本
雛谷さなんココぴさんは最近本読んでる?



ちょっと怪しいけど読んでる気がする。



何読んでるの?



最近読んだものは、「地雷グリコ」です。直木賞候補だった小説だったかな



へぇ。
あ、角川から出版されてる!



そうなの? 全然知らなかった(笑)。
この本は射守矢真兎ちゃんっていう女子高生が、頭脳バトルを、同級生だったり先輩だったりとしていく学園ものです。
私、最初は題名に「地雷」ってあるから勝手にデスゲームだと思ってたんだけど、中身はめっちゃ平和な学園ものだった。誰も死なないから安心して読むことができるやつ。



安心した。この本は面白かった?



面白かった。
やっぱり頭脳バトルだからすごいカタルシスというかそういうものは感じられたしね。
登場人物の性格というか思考回路とかも、小説だからやっぱり詳しく書かれていて、それが面白いなって感じるものだったり。



へ〜〜!



あと、固有名詞が使われているのが印象的だったかも。



固有名詞?



例えば、「ベローチェ」っていうコーヒーショップのチェーン店があるんだけど、作中でその店名が出てきて会話したりだとか。
実際に存在するお店とかが使われている感じ。



実際の道路とか都市とかの名前が使われてるみたいな?



そうそう。
そういう自分たちが知ってるお店とかが出てくると、現実感が生まれてすごく良いです。



生きてる感あるよね。



あるある。
あと私、文芸の大学に進学していて、そういった物語の技法についての授業も受けたりしていて。
そこで「固有名詞の力ってすごいよね」みたいな授業とかがあって、めっちゃ思い出しました。
もし彼女の登場シーンが「ベローチェ」じゃなくて「スタバ」や「タリーズ」、もっと言えば「吉野家」だったら抱くイメージは全然違うよね。
本に触れたきっかけ



本を読み始めたきっかけってありますか?



きっかけについては全く記憶にないんですけど、確か通っていた幼稚園の近くに図書館があって、そこにずっと親に連れられて行っていたからってのはあるかも?



いいなぁ。
ということは本当にお家絡みで、じゃない!! 親が好きだから触れてきたみたいな?



お家絡み(笑)。
親に連れられて図書館で本を読んだり、借りたり、本屋で買ったりとかもしていた感じです。
結構、絵本とかを読んでもらった記憶があります。



それは親が本が好きだったから? それとも教育として?



どっちもじゃないですか?
親は本嫌いでは全くないけど、本好きすぎて家に本棚がたくさんある家庭でもない。でも小説を読まないわけじゃなくて……。
普通に、近所にあるんだし、遊ぶ場所として連れて行かれたような気がします。



その当時の記憶で一番印象に残ってる本はありますか?



図書館で借りた本がなんだったか、とかはもうほとんど覚えていなくて。
でも小さいとき、分厚い紙芝居の絵本かな? そういう厚め本が実家にあったんですけれど、その本をお母さんに「読んで〜!」って持って行こうとしたら、落としてしまって足にぶつけた記憶があります。
超痛かったです。それでギャン泣きしたのを覚えています。



かわいい。



うふふ。



次の質問は、現在の自分についてになります。今、本を読むきっかけはありますか? 本を読む時間を作るきっかけ、みたいな。



そうですね。
まあ、大学では文芸を学んでいるので、「流石に読んでないとまずいのでは?」という気持ちで読んでます。



どのくらいの頻度?



頻度が本当にまばらで。
読む時は読むんですけれど、読まない時は全然もう読まないみたいな。
最近だと本当に読まない期間が多くてちょっと焦りを感じて、寝る前とかにベッドサイドに本を置くようにしました。
そこで強制的に本を目に入れて、なんとか読書灯をつけながら「ウェーイ」みたいに読んでます。



ココぴさんは本が好き?



大好き。



好きになったきっかけってのはある?



本当に気づいたら好きでした。



いつの間にか気づいたらずっと読んでるな〜? ずっと本買ってるな〜? みたいな?



気づいたら(笑)。
後は、別に本を読むのが苦ではないタイプだからってのはあるかも。文章を目で追うとかも苦ではないタイプだから。



それはでかい。



やっぱ、一回本の楽しみを知っちゃうとまた読んじゃう。
気づいたら読んでるよね。



本の楽しみってのは?



うーん。
小さい頃だと今の自分じゃない自分の気持ちを本だと追体験できる、みたいな。
わかりやすくいうと、ファンタジーな世界で魔法を使って、ちょっと恋をして。そういう自分じゃ体験できないものを体験できるのが珍しい。
自分は普通の、その辺にいるような小学生だったので、ドラゴンとか倒せないし、魔法とかも使えないし。
そういう、自分じゃ体験できない物語の世界だとかはやっぱり惹かれますね。



なるほど。



今だと文章とかの表現だったり、人間関係も見たりして……。でも元から人間関係も見てた?
……。面白いですね! 本って!



面白いよね(笑)。
書く側の意見。



ココぴさんってさ、実際に書いてるわけじゃん。



書いてます(笑)。



書いてる中で、この作家さんを参考にしたいなぁ、とか、こういう文章書きたいなぁ、と思う人はいらっしゃる?



います。もうあちらこちらにいます。



お〜!



辻村深月さんの物語は本当に読んでいるといつの間にか共感するというか、いつの間にか感情移入してしまうような文章なので、すごく好きだなと思いました。
書こうと思ったけど、でも「私に書けるのかな?」っていう。そういう技術に関してをトップレベルで感じた人。


辻村深月先生の代表作である『かがみの孤城』



あとあの成瀬ですかね?



「成瀬は天下を取りにいく」ね! シリーズ完結おめでとう!



「成瀬シリーズ」に関しては、文章が頭に入ってくるというのがすごいと思いました。
同時にすごくストーリーが面白くって。キャラクターの生き様がすっごい。もう目が離せない。
こんなに好感度がめちゃくちゃ上がるんだみたいな、読んでいてというよりかは、見ていて気持ちのいい主人公を書くなぁ、というのは思いました。


宮島未奈先生の「成瀬シリーズ」第2作品まで



それと、梨さん。ホラー作家の方なんですけれど。



知ってる〜!!



梨さんはカクヨムのイベントで知り合った方におすすめされて、読み始めた方でして。
言葉運びっていうのかな? そういうのがすごく、いい!
おぞましくてすごく印象に残る文章を書くなぁ、こういう文章とかも書いてみたいなぁ、と思ったり。



辻村深月さんも成瀬シリーズを書いた宮島未奈さんも女性だけど、梨さんって女性?



どうだろ。性別不詳かな。調べる? Wikipediaにあるかな? どれかな。女性かな? うん? ……GoogleのAIによる概要にすごく惑わされる!



うふふ。



別の検索で調べたら、AIによる概要が『性別を公表せずに活動している』だって。
さっき女性作家っていったじゃん!



AIくーん!



もういいか……梨さんは性別不詳ってことで……。
話を戻して。そう、その梨さんとかも好き。
あと「某」を書いた川上弘美さんかな?


川上弘美先生の「某」



めっちゃ読んでるじゃん。



全然読んでない。全然読めてないの。



この本はね、ちょっと前まで近所の電気屋さんにあった本屋コーナーで見つけたものなんだけど。



電気屋さん?



本屋コーナーがあってね。本を買うことができたんだけど、なくなっちゃったの。



電気屋さんに本屋コーナー、面白いね。



大きいところだったからあったのかな? わかんないけど。



で、この「某」っていう小説が、同じ主人公の視点で続いていくかといえば、続いていくんだけど。
この小説は視点がそれぞれガラって変わるような構造をしてる。
その視点によって文章、というか文体っていうかそういうキャラクターごとの違いを感じて、この方が好きだと思いました。
詳しくいっちゃうとネタバレになっちゃうから、ほんわかな説明でごめん。



その「某」の本では技法がすごいって思ったの?



技法なのかな? なんというか、この方はすごいすんなり読めるなっと思って。
最初の章を読んでいるときは「あ、なんか普通に読めるし面白いし」って思っていたのが、ある章では突然すんなり読める文章になったなと感じた時があった。
自分にとってすごく自然な文章。元々「某」は文体の切り替えが多い作品なんだけど、そういう切り替えが、自分の中で印象的だったなと。



あ、なるほど。
たしかにココぴさんの小説ってすごくすらすら読める文体だしね。テンポ感で終わりがない。詰まるところがないってので、共通点があるのかも。



あー、なるほど。



ココぴさんってもしかしてエンタメ系を読むことが多い? 純文学というより娯楽本、みたいな。



いや、私はその作者とか出版社とかジャンルとかも何も考えず、表紙だけ見て買うかな。



ジャケ買いだ!



そう!
自分ってそんなにミステリーとか読んでるつもりなくても、本棚見るとミステリー結構買ってるな、とかあったり。
「アリス殺し」なんかはまさにで、買ったときは「いい表紙!」と思ってあらすじ見ないまま読んだけど、あれよく考えなくてもミステリーだったのかな、みたいな。


小林泰三先生の「アリス殺し」



聞いてみると、ココぴさんはたくさん読んでるね。



いや、なんというか。
特定の作者さんの話を絶対読みたいみたいに思うようになったのが結構最近のことだし、作者さんの名前を意識するようになってきて、買おうかなみたいに思うようになってきた。
小学生の時とかは本当に作者のこととかわからなかった。
唯一作者さんの名前で買ったのは辻村深月さんくらい。



辻村先生はすごいよね。



「冷たい校舎の時は止まる」と「凍りのくじら」と「ハケンアニメ!」と……。
一番最初に読んだのが「かがみの孤城」みたいな感じで。



結構読んでるね。



ちょこちょこ読んでます。最近だと「闇払」とか。
あと「家族シアター」かな。すごく面白かった。


ココぴさんが持つ辻村深月先生の著書たち
中学生と高校生の話。



ちょっと思い出したことがあって。



お?



最初の方に本を読むきっかけというか、小さな頃について聞いたじゃん。その地続きになるのかわからないけど。
私、小学校高学年から紙で本をあんまり読まなくなって、もっぱらネットの方を読んでた時期があります。



「小説家になろう」※とか?



「小説家になろう」もだし、「アルファポリス」※とか、「カクヨム」※も読んでたかな。高学年でめちゃくちゃそういったものを読むようになりました。
で、中学の頃も紙の本はあんまり読まなくて、高校でも基本的に「小説家になろう」とか「カクヨム」をとことん読み始めていって。あと「pixiv」※も読んでたりして。



同類〜。



多分わかってくれると思うんだけど、そういうネット小説を読んでいくと文字数の認識に対するバグみたいなものが生じてくるんだよね。



わかるー! 普通に十万文字とか読むよね!!



そうそう。
十万文字を気付かぬうちに読んでいて、今思えばあれは本一冊分だったんだな、という衝動が襲ってくることがありますね。



「pixiv」の六万文字とか、さも当然の顔をして存在してるから、もうその文字数を読むためらいがないんだよ。六万文字って文庫本の半分みたいな、ページで換算すると200ページくらいあるんだけど、読むためらいがなくなる。紙の本の分厚さをみると「長いなぁ」と思うけど「pixiv」では全然ないっていうのは、ある。



しかもさ、その文字数の作品を朝起きた時とかに見つけるとさ。



あはははははは!!



電車とか隙間時間とかで、万越えの文字数でも「それくらいの文字数だったら読めるか(笑)」って。



そうだよね。普通、万ってためらうよね。



そう。しかも、「カクヨム」とか「なろう」では全然百万文字越えとかあったりするわけです。



たしかに。



でも、そういうものを1日で読むことにためらいがなくなってしまった。百万文字も1日で消費してしまう。
いや、もう本当に「このシリーズちょっと見返そうかな。まあ百万文字くらいあるけど見返せるか」みたいなノリで読んじゃって!
全然、本は読んでないのに、小説は読むみたいな生活を送っていました。てか今も送ってる気がする!



めっちゃいい生活じゃん! 明日やろっかな(カレンダーを見る)明日キャンパスじゃん! 無理だ!!
気づいたら。



気づいたら2時間喋ってた。



ね〜。



これはもうインタビューじゃない! 雑談だよ!



いえーい!



もう時間も遅くなったので、最後にここまで読んでくれた読者に向けて一言どうぞ。



急だね。
本ってすごく楽しいです。
本を読んでいるなり、アニメを見ているなり、漫画を読んでいるなり、こういった場面とかにこうだったらどういう結末になるんだろう、とか。こういう時とかにこういう展開だったら登場人物たちはどう思うんだろう、とか。
これってもしもこの瞬間、これが別の展開だったらとか。
そういう「もしも」をちょっとでも思い浮かべてしまうなら、是非創作に手を出してください!



みんなも創作しよう!



以上。
ありがとうございました!
終わり
本に影響された方々にインタビューする企画第1弾にて、本記事ではココぴさんにインタビューという体で雑談を行った。
実際に小説を書くからこそ、ただ物語として捉えていない読み方がある。
この作者の文はどういう味があるか、だとか、展開の変え方はこの作者らしいとか、物語の進み方だけじゃなく、そういった作者の書き方にも注目してみると、きっと普段とは違う読書体験になるはずだ。
普段本を読む読者の皆さんも、本を読まれない皆さんも、この機会に読書をしてみてはいかがだろうか?
N高グループ生の読書事情や読書に関する楽しみ方を伝えるテーマ記事もあるので、そちらもぜひ。






ご紹介させていただいは本はこちらから
「地雷グリコ」 青崎有吾 角川文庫
https://www.kadokawa.co.jp/product/322506000523/
「かがみの孤城」 辻村深月 ポプラ社
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008113.html
「闇祓」 辻村深月 角川文庫
https://www.kadokawa.co.jp/product/322311000525/
「家族シアター」 辻村深月 講談社文庫
https://www.kodansha.co.jp/titles/1000019045
「冷たい校舎の時は止まる 上」 辻村深月 講談社文庫
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000204536
「冷たい校舎の時は止まる 下」 辻村深月 講談社文庫
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000204537
「凍りのくじら」 辻村深月 講談社文庫
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000204914
「ハケンアニメ!」 辻村深月 マガジンハウス文庫
https://magazineworld.jp/books/paper/2690/
「成瀬は天下を取りに行く」 宮島未奈 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/354951/
「成瀬は信じた道をいく」 宮島未奈 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/354952/
「成瀬は都を駆け抜ける」 宮島未奈 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/354952/
「某」 川上弘美 幻冬舎
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344035041/
「アリス殺し」 小林泰三 創元推理文庫
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488420147



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