生徒会が「読書初心者向けの一冊」を本気で選ぶ。 読書座談会前編

この記事を読んでいるあなたは、普段読書をするだろうか?
「N高グループ生はデジタルに強い」という印象がかなり強いように思う。プログラミングやIT、パソコンを使用した学習が主軸であるため、読書家のN高グループ生というイメージはあまりない。そんなN高グループ生が、大体の場合は重くて、破損しやすくて、ちょっと真面目な雰囲気がある本なんて、読むのだろうか。
そんなイメージとは裏腹に、実際にはかなりの読書家、本好きがいる。アナログの書籍で読む人はもちろん、角川ドワンゴ学園の生徒なら誰でも無料で利用できる「BOOK☆WALKER 読み放題 角川ドワンゴ学園コース(※)」など電子書籍を利用して読む人もいるだろう。
筆者はれっきとした本の虫である。月に10〜20冊ほど読み、身の回りには常に本がある。本を読まない生活が考えられないくらい、日々読書に励んでいる。
そんな活字中毒まっしぐらの筆者が読書座談会(※)を実施した。N高グループ生徒会に所属する実行委員の皆さんに、おすすめの本を紹介してもらう会である。この記事では、その座談会の内容をお届けする。
前編では、普段本をあまり読まない、あるいは、どちらかというと読書は苦手だが、それでも「読んでみたい!」という気持ちがある人のために、「初めての人でも読みやすい本」を紹介する。読書を趣味にしたい人もいるだろうし、受験対策などで読み始めたい方もいるだろう。
これから読書好きになりたい人、読書初心者におすすめの本を知りたい人、必見だ。
※以下、小説家の方々の名前を呼ぶ時は敬称略で統一させていただく。
※チャット参加者の方のコメントは、送信されたコメントを語尾など一部を除きそのまま記載している。
座談会に参加してくれた皆さん
プロフィールの学年、所属コース、所属実行委員などは2025年度8月現在の情報である。実行委員の名称変更や統合などで現在は異なる名称の場合にも、取材時の名称を使用している。

名前:ゆひのも
学年・コース:N高3年 ネットコース
所属実行委員:新聞実行委員
ひと月あたりの読書冊数:マイペースに月2~3冊
最近読んだ本or好きな作家:「かがみの孤城」(辻村深月)

名前:コジー
学年・コース:N高3年 通学コース
所属実行委員:ナレッジベース実行委員
ひと月あたりの読書冊数:1、2冊
好きな作家or最近読んだ本:重松清

名前:クリフォト
学年・コース:N高2年 通学コース
所属実行委員:渉外実行委員
ひと月あたりの読書冊数:4冊
好きな作家or最近読んだ本:東野圭吾

名前:まだい
学年・コース:N高2年 通学コース
所属実行委員:バーチャルイベント実行委員
ひと月あたりの読書冊数:2、3冊
好きな作家or最近読んだ本:「dele3」(本多 孝好)

名前:類
学年・コース:N高2年 通学コース
所属実行委員:体験学習実行委員
ひと月あたりの読書冊数:最近は忙しくてあまり読めてないけど、大体月3.4冊
好きな作家or最近読んだ本:知念実希人・凪良ゆう

名前:kai
学年・コース:S高2年 通学コース
所属実行委員:体験学習実行委員
ひと月あたりの読書冊数:通学時間に毎日本を読んでいる。先月は二冊。
好きな作家or最近読んだ本:「レベルゼロ」(西崎 康平)

名前:愛禾(筆者)
学年・コース:N中等部2年 通学コース
所属実行委員:新聞実行委員
ひと月あたりの読書冊数:10~20冊、多ければ30冊
好きな作家・最近読んだ本:「騎士団長殺し」(村上春樹)
質問①「読書初心者におすすめの一冊は?」
第1回 ゆひのもさん・コジーさん・愛禾
ゆひのもさん私がおすすめしたいのは「伝言猫がカフェにいます」という本です。
あの世とこの世の境にあるカフェに勤める猫が主人公で、主人公が誰かの思いを伝言するっていうストーリーです。例えば、もう死んじゃった人から伝言を預かって、まだ死んだその人のことが忘れられない人に伝言を届ける、みたいな。



短いエピソードが5個くらい収録されていて読みやすいし、心も温まるし、初めて読む人にはおすすめできるかな、と思いました。



初めて聞きました。



(ネットで検索してみる)あ、表紙がすごく可愛いですね。



可愛いよね、私は基本的に本を表紙で選ぶタイプだから、惹かれて読みました。



僕がおすすめしたいのは、重松清の「青い鳥」っていう作品なんですけど。



重松清! いいですよね!!



あらすじとしては、中学校の非常勤講師で、吃音を持つ村内先生が、心に傷を抱えた生徒たちに寄り添っていく、そういう物語です。
いじめの加害者であるとか、父親が自殺してしまったであるとか、そういう傷を持つ生徒たちに村内先生が話しかけるんですが、吃音でうまく話せないからこそ、話すことには重みがある。村内先生の吃音という特性に重きが置かれた作品です。





なんか、あらすじがとても重松清っぽいですね。当たり前か、重松清だから。
私も重松さんの作品は好きなので、読んでみたくなりました。



私がおすすめしたい本は、吉本ばななの「キッチン」です。
小学校3年生の時に初めて読んで、それから何度も読み返しています。唯一の肉親である祖母と暮らしていたみかげという女子大学生が、祖母の死をきっかけに祖母と仲良しだった男の子とそのお母さんの家に居候するという物語です。
人間関係がかなり複雑で、様々な人物の人間味が交錯する面白い小説です。
「キッチン」自体の長さもそこまで長くないし、私が持っている文庫版には「ムーンライトシャドウ」という短編も入っていたので、もっと短い物語を読みたい人はそれから読むのもいいかもしれません。





初めは、やっぱり物語の長さに抵抗を感じちゃうことも少なくないから、親しみやすい長さなのも重要だよね。



そうなんです。それに、登場人物と自分がかなり違う境遇にあったとしても、やっぱり共感できる要素とか気持ちとかがあるので、そこも楽しめるかなと思います。
第2回 まだいさん・kaiさん・クリフォトさん・類さん(チャット参加)



私が初心者におすすめしたいのは、「マインクラフト こわれた世界」という本です。
事故にあった少女が親友を探してバーチャルリアリティの世界に飛び込んでいく物語です。小中学生向けの内容ではあるんですけど、高校生が読んでも面白くて、今でもよく読んでます。
主人公の女の子の後悔とか、親友への思いがすごく伝わってきて、冒険を通して成長していく姿が読んでいて感動するんですよね。



ハードカバーなので本がへたりにくいし、文庫本に比べて字が大きめになってて読みやすいし、しおりになる紐もついてるので、読書に対するハードルがだいぶ下がると思います。



本の内容もそうだし、しおりがついてるとか、ハードカバーであるとか、装丁も本を選ぶのに影響してくると思います。とにかく便利で読みやすい本、いいですよね。





私が初心者におすすめしたいのは、「眠れなくなるほど面白い」というシリーズです。
いろんな種類があって、科学とか、天気とか、北海道とか、それ以外にも面白いトピックがたくさんあるから、自分の興味あるものから選べて読みやすいかなと。図が多くて読んでいて頭に入りやすいです。化学の話、睡眠の話と、天文学の話、起業の話を読んだことがあります。







活躍しているN高生が気になりそうなトピックがたくさんまとまってますよね。



私が初めての人におすすめする一冊は、「星新一ショートショートセレクション 頭の大きなロボット」です。
短い話が何話も入っていて、起承転結が綺麗にまとめられているのでとても読みやすいのと、話もそれぞれ独立していて、似たような話が少ないので飽きずに読むことができます。



展開が読めないので、短いけど物足りなさを感じづらいかなと。





星新一、いいですよね! ショートショートは短編よりもさらに短いし、展開も早くオチもわかりやすいので、初めに読む本としては最適かもしれません。



「ピンクとグレー」加藤シゲアキ
NEWSの加藤シゲアキのデビュー作です。
主人公・白木蓮吾と親友・河田大貴は、幼なじみでありながら共に芸能界を目指す仲間で、芸能界の光と影、友情と裏切り、嫉妬や名声の毒に蝕まれていく過程が描かれています。
正直、アイドルが小説家…? と思っていたけど、実際に読んでみると、著者自身が芸能界で活動してきた経験から生まれるリアリティや前半と後半での印象の差がとても面白かったです。
約300ページと少し長めではあるけれど、文章と構成がわかりやすいので、さくさく読み進められるおすすめの作品です!


質問②「本が好きになったきっかけは?」
第1回 ゆひのもさん・コジーさん・愛禾



皆さんがどんなきっかけで本が好きになったのか、いつ頃から好きなのか、などを教えていただきたいです。



結構小さい頃から好きだったから、「これがきっかけ」っていうのはないのかなとも思ったんだけど。
よく考えてみたら、小さい時に親が読み聞かせをしてくれていたのが、大きなきっかけだったのかなと思います。そこから、小学生になって毎日図書館に通うようになった。



僕、元々読書を全然しないタイプだったんですよ。
小学生の時、授業で図書室に行っても、サバイバルシリーズ(※)を他の生徒と奪い合っていたくらいには、読書に興味がなかったです。



ただ、中学受験をした時に、塾の先生に「受験に重松清という作家が出るからそれをとりあえず読んどけ」と言われて。それでブックオフで「エイジ」と「ナイフ」という二冊を手に入れたのがきっかけです。220円で重松清の沼にハマったんですよ。



いいよね、ブックオフ! 安いから。



220円で沼にハマったエピソード、最高すぎる。
しかも、「サバイバルシリーズを他の生徒と奪い合っていた」というのが、本を読まない小学生代表みたいなエピソードで面白いですね。



私、読書に飽きた時はミッケ(※)やってた。



わかる〜。



私は二人のエピソードを合わせたような形です。



幼少期から母が毎晩何十冊も読み聞かせをしてくれていました。小学校低学年の時は児童文学の王道を突き進んでいて、いわゆる大人の小説に手を出したきっかけが中学受験でした。山田詠美の「僕は勉強ができない」という本を、受験勉強をきっかけに初めて読み、そこから現代小説の沼にずるずると……。



なるほど。みんな結構似ている部分があるんだね。
第2回 まだいさん・kaiさん・クリフォトさん・類さん(チャット参加)



私は小さい頃から親に絵本の読み聞かせをしてもらったり、小学校に読み聞かせの人が来てくれたりしていて、本に触れる機会が多かったことです。物心ついた頃には本を読むのが好きでした。
現実ではできないことが本の世界ではできるということが面白いなと思います。



めっちゃわかります。一言一句全て共感できる。



やっぱり、家に本があるかどうかってすごく重要だと思っていて。家に本がなかったら、自分で書店という未知の世界を開拓しなきゃいけないけど、家にあったら自然に読んじゃう。テレビみたいな立ち位置で本があるというのは強いですよね。



確かに。僕も、読書好きになったのは両親がきっかけでした。
両親が元々結構本を読む人で、本を買ってもらって一緒に読んでいました。小学校でも図鑑を眺めてるのが好きで、本で好奇心を満たしてましたね。



僕がちゃんと本を読み始めたのは一年生の頃でした。その頃に母親からハードカバーのハリーポッターを全巻もらったんですよ。
初めのうちは、さすがに小学一年生で読む本じゃなくねって思ってたんですけど、夏休みに読書感想文を書くことになって。その時にちょうどハリーポッターがあるからこれでいいかと思って読んでると、だんだん世界観を理解できて、面白さにはまっていきました。本を読むと、現実にはない世界を体験できるんだって感動しましたね。



小一の読書感想文の題材がハリーポッターなの、強いなぁ。小一の息子にハリーポッターを与えた母、すごいですね。
最初に難しい本を読み始めてしまうと、本に対する苦手意識が芽生えてしまって、他の本も読みたくなくなる方がいると思うんですが、逆のパターンなんだ。



それで言うと確かに逆のパターンでしたね。



読書体験の第一歩目で、児童文学の大きなハードルを超えるってすごい。もうその先、敵なしですね。



小学生の頃、一時期中学受験を考えていて、その時親に渡されたのがきっかけです。
最初は嫌々読んでいたけれど、次第に小説の面白さや魅力に気づき、読書にハマっていきました!
〜〜後編に続く〜〜
紹介本一覧
質問①「読書初心者におすすめの一冊は?」
「伝言猫がカフェにいます」標野凪 PHP研究所
https://amzn.asia/d/gZOiKHY
「青い鳥」重松清 新潮社
https://amzn.asia/d/aQHar42
「キッチン」吉本ばなな 福武書店
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999180008
「マインクラフト こわれた世界」トレイシー・バティースト (著)、金原 瑞人 (翻訳) 竹書房 https://amzn.asia/d/7PjjOem
「眠れなくなるほど面白い」シリーズ 日本文芸社
https://www.nihonbungeisha.co.jp/search/g15402.html
「星新一ショートショートセレクション 頭の大きなロボット」星新一 理論社
「ピンクとグレー」加藤シゲアキ 角川文庫(KADOKAWA)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321309000121
終わりに
読書座談会前編は、いかがだっただろうか。
前編では、N高グループ生徒会の実行委員に所属する6人に、自身の読書体験や読書初心者におすすめの本などを伺った。翻訳本から児童文学、ショートショートまで様々な本が集まったので、これから本を読み始めたいと思っている方はぜひこれらを参考にしてほしい。
後編では、少し難易度が高めだと感じる本や心に残っている本を6人が紹介していく。そちらもぜひ読書の際の本選びの参考にしてほしい。



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