活躍生徒vol.024:ピークは20歳!?来季W杯内定を果たした中原旺助さん

取材・文=作(S高4期・ネットコース)
写真=yoshinao yamada
生徒数がついに3万人を越えたN高グループ。多様な生徒が様々な分野で活躍しています。そんな中、キラリと光る実績を生み出した生徒もたくさんいます。実績を生み出した生徒は、どんな活動をして、どうやって実績を生み出したのか……気になりますよね!
そこでN高グループ新聞では「活躍生徒」と題してインタビュー企画を始めることにしました。第24弾となる今回は、高校生である事を武器に、今しかない絶頂期を最大限に活かしながら輝かしい実績を残し続けている中原旺助(なかはらおうすけ)さんにインタビューしました!
モーグルとの出会いと数々の輝かしい実績
Q. 所属校と学年、名前を教えてください。
S高3年、*アスリートクラスの中原旺助です。
Q. どんな活動をしていますか?
フリースタイルスキー競技種目の一つであるモーグル競技をしています。コブが配置された240m程ある斜面のコースに2箇所エア台が設置され、コブを滑るターンとスピード、体操選手のように体を回転させるエアー演技の3点で採点をする競技です。
Q. その活動を始めたきっかけを教えてください。
当時習っていた別のスキースクールがあって、そこでスキー検定1級を習得し、今の競技のフリースタイルのコースと出会ったのがきっかけです。
そのスクールでは、選手コースが2つあり、その内の一つが今のモーグル競技です。ダイナミックなエアーや大会に挑戦出来ることやオリンピックにも出場できるのを魅力的に感じて、小学5年生の冬に始めました。
Q. その活動であげた実績や成果を教えてください。

Freestyle Australian New Zealand Cup
The first 2位(総合)
Overall Junior Winner(18歳以下の部優勝)
Freestyle Open Apex Mountain, BC, CAN Moguls
3位獲得
Dual Moguls 優勝 (2024)
FIS Junior World Ski Championships
ジュニア世界選手権Almaty KAZ
Moguls 優勝
第44回北海道スキー選手権大会
Dual Moguls 優勝
(競技年2025)
第96回宮様スキー大会国際競技会
少年の部 優勝
(2025)
FIS WORLD CUP FINALS
Livigno (ITA)
ワールドカップデビュー戦
決勝進出 9位
オリンピック選考基準クリア
(2025)
第45回全日本スキー選手権大会フリースタイル競技
Dual Moguls 準優勝
(2025)
「紹介記事」
https://nnn.ed.jp/admission/scholar/athleteclass/member/z8iy7_87ghd
W杯内定と憧れの選手
Q. 活動の中で嬉しかった事はありますか?
初出場だったジュニア世界選手権で優勝し、ワールドカップ最終戦出場への出場権を獲得する事が出来たのは、嬉しかったです。
最終戦というのはワールドカップの中でもレベルが高く、年内11月から始まって3月中旬にあったのですが、それまでのランキングで30位以内に入った選手と特別枠を得た選手だけが出場出来る大会です。
W杯の決勝戦には16人だけしか進む事が出来ないのですが、僕は決勝戦に進めただけでなく、9位で終える事が出来ました。その事で来期のW杯開幕戦のメンバーに選ばれました。
また、ミラノオリンピックの派遣選考基準も満たす事ができ、当初は2030年のフランスオリンピックを目指していたのですが、自分が思っていた以上の成果を出す事が出来て、すごく驚きましたが、嬉しかったです。
Q. 憧れの選手はいますか? また、どういう所に憧れましたか?
堀島 行真(ほりしま いくま)選手(*1)に憧れています。堀島選手はカービングターンにこだわっていて、世界トップレベルのターンの持ち主です。
今シーズンワールドカップの中でも一番高いレベルの技に挑戦していたのですが、来シーズンは更に上げるという風に言っていたので、自分もこのままじゃダメだと、凄く刺激を貰う選手です。
どのコースでも毎回綺麗に魅せる事ができていて、今まで色々な選手のターンを見てきたのですが、ターンの奥深さを知るにつれて、堀島選手のターンっていうのはとてもすごいんだなと思っていて。
技術の高さだったり、丁寧さにはイタリアで見た時も圧倒されました。
僕も堀島選手のような、綺麗なターンが出来るように頑張っています。
*1 堀島 行真選手とは
日本のフリースタイルスキー選手。トヨタ自動車所属。世界選手権で2017年以来8年ぶりに優勝、北京冬季オリンピックで銅メダルを獲得、日本男子として初めてW杯でモーグル種目別年間チャンピオンに輝いた。
「堀島選手のカービングターン動画」
https://sports.yahoo.co.jp/video/player/12758882
Q. この活動を通して人に変化や影響を与えられたエピソードがあったら教えてください。
僕自身トップ選手に比べると身長が低く体が小さいのですが、「柔よく剛を制す」のように、小さくても体の大きいトップの選手と渡り合えるということを実証できたと思います。
また、ビビリであろうと、自分が怖くないと思える正しい技術を研究する事で、恐怖心を克服し、世界で戦えるという勇気を与えられたと思います。
また、ある非公式の大会をきっかけに僕のファンになってくれた女の子がいたのですが、その子がどういう事を意識して競技をしているのかやどのような練習をしているのか等聞いてくれて。
僕も周りに影響を与える事が出来るんだと感じましたね。
今は、僕の世代よりも下の子達が、僕がその年代ではやっていなかった技をどんどんやっています。僕の世代が見せている事が影響を与え、下の世代の子も凄く盛り上がっているように感じています。
日本では、ターンに関しては堀島選手の影響が一番強いのですが、僕もそれに向かっていることで、僕が堀島選手に憧れたように、下の世代がターンを綺麗に滑る事を目指してくれるようになるのかなって感じました。
様々な挑戦を通し、積極性と競技の安定感を獲得

Q. 成果を上げることができた理由は何ですか?
N高グループで、自由に学ぶスタイルを得られた事により、国内外を問わず色々な場所に挑戦できる機会を得たのが一番かなと感じています。
国内合宿や海外遠征、スキー以外にも様々な場所に出向き、練習を積ませて頂きました。
本州や海外に2年前から沢山出向くようになったのですが、地元北海道だけでは分からない、海外のコースの難しさや雪質の違い、気温や気候の違いなどを経験させてもらいました。
中には本当に氷のようなスキー場があったり、コケたら下まで行ってしまい、岩場に落ちるようなスキー場もあり、驚きの連続でした。
でも、そのお陰でどんなスキー場であっても焦らず対応していける心構えを持てるようになり、少しずつ安定したパフォーマンスを披露できる力を身に付け、結果に繋がったのだと思います。
Q. 活動にN高グループのコミュニティーなどは役に立ちましたか?
一度だけ*マイプロジェクトに参加したのですが、その時に取り組んだスポンサー活動に対する取り組みが役に立っています。今も行っている様々なスポンサー獲得の為の活動に一歩踏み出す事が出来たのは、マイプロジェクトに参加したからだと思っています。
高校1年生の時に、自分のスポンサー活動をどのように進めていけば良いのか悩んでいた時があったのですが、高校生である事を武器に、アピール出来る貴重な時期だと言われたんです。
他の参加者が、環境だったり地域のためだったり、そういった自分以外の事で参加していたので、最初は自分のスポンサー活動でプロジェクトに参加していて良いんだろうかって感じていたのですが、サポーターの方や参加者の方々が僕をとても温かく受け入れてくださいました。
そして、皆さんの発表だったりまとめているものを見て刺激を受けて、ああ、自分も一歩踏み出して良いんだなって後押しして貰いました。
活動の一環として、ジュニア世界選手権の優勝により札幌市長表敬訪問をさせて頂いたり、ラジオ番組に自らオファーしたり、競技の道具に使用する*3ワックスのサポートも自分からアピールしました。
競技を通じても感じた事なのですが、待っていても何も得られないのに、ただ待っているだけだった経験が人より多いと思っていて、マイプロジェクトはそんな弱い自分が、前に進む重要なきっかけになったと思います。
そうは言っても、まだメインスポンサーが付いていない状態なので、この記事を見てくださった方の中で、僕に興味があるという方がいれば、インスタなどで連絡を貰えたら嬉しいです。(笑)
*2 ワックスとは
競技特性に合わせて滑走面を最適化し、滑りの安定性を高める効果がある。
また、滑走性の向上や滑走面の保護にも役に立つ。
恐怖がありつつも、試行錯誤の挑戦
Q. モーグルでは、他の技術点に比べてターンに対する評価が60%と一番高いそうですが、ターンをする際は何を心がけていますか?
僕はチームの方針もあり、*4カービングターンを使っていかに体の負担を少なく滑れるかっていうのを意識しています。
このターンは、エッジを使ってターン弧を描く技術で、W杯選手の中でも出来ている選手が少ないです。
僕が競技を始める前は、板を当てる滑りや、ズラす滑りが主流で、かなりの筋力が必要だったのですが、ルールが少し変わり、今はカービングターンという技術が一番重要視されるようになりました。
だから、競技を始めた頃、ターンはカービングでなければならないと強く思い込んでいて、その難しさに壁にぶち当たる事も多かったです。
でも、そこから逃げずにカービングターンとは何かに向き合ってきた事で、必要以上の筋力をつける必要はなく、技術力で評価を貰えるようになりました。
*3 カービングターンとは
スキー板やスノーボードの板のエッジを雪面に立てて、雪面を彫るように滑るテクニック。横ズレを抑え、キレの良いターンができるため、上級者の滑りや高速滑走に適している。
Q. 得意なエアー演技はありますか?
フルツイストとコーク1080です。
フルツイストというのは、回転とツイスト(体や脚のねじれ)を組み合わせた技です。体全体を捻りながら回転するエアトリックで、全身の後方一回転に横一回転を入れます。
コーク1080はモーグルのエアー演技において、板をクロスしながら体を横に倒しつつ3回転する技(高難度)です。
Q. 競技をしていて怖くなる時はありませんか?
そうですね、僕自身結構ビビりな所があるんですが、初めてやる技には、すごい恐怖心に躊躇しました。
だから、どんどん挑戦できる子からすると、僕はすぐやる事ができず駄目だったんですけど、技を研究してみたり、どんな風に動けば良いんだろうって考えた結果、不安要素を無くす事が出来ました。
今は同世代の中でもエアの技術だったりは高いレベルで出来る所まで来ていますが、やっぱり難しい技であったり、恐怖心が抜けていない技はあるので、躊躇しがちです(笑)。
でも、これからも逃げずに挑戦していきたいです。
オリンピックでメダル獲得を目指す

Q. 将来的にはプロを目指すのでしょうか?
この競技は体を酷使するので、野球などのように長く続ける事が出来ず、プロという括りはないです。だから、W杯やオリンピックを目指す事が最終目標になります。
能力のピークも20歳とか、大学生後半とか、実際に競技している人でも30歳前後で大体皆んな競技人生を終えます。僕は2038年(30歳)まで競技を続けたいと思っています。
Q. 普段はどのような練習をしていますか?
オンシーズンは、近所に公式戦の大会コースがあるので、週に5日通っています。
まずは*5フラットな所でターンの感覚を確認してから、実際のコースでターンやエアの確認をしています。コースが使えない時期でも、雪があれば色々な場所に行き、時にはリフトがない場所でも*6ハイクアップして練習しています。
オフシーズンもオンシーズンも行っているのは、イチロー選手が取り組んでいた事で有名な初動負荷トレーニングです。
この初動負荷トレーニングというのは、筋トレとは違い、筋肉の緊張を避けながら、関節をスムーズに動かす事で、体の可動域を広げるものです。
僕が使っている目的は、ストレッチだったり、血流を良くする事による体のケアも兼ねていて、体の可動域を広げる事で怪我をしない体であったり、カービングでのしなやかな動きに対応していける体作りというのもあります。
オフシーズンはエアの技術を高めるため、トランポリンで練習をしたり、ウォータージャンプという施設で、斜面にプラスチックのブラシを敷いた人工の滑走路をスキー板を履いて滑った後にジャンプ台を飛ぶのですが、着陸する時に大きいプールがあり、そこに着水するというトレーニングを行っています。
*4 フラットとは
コブがない平坦な斜面での滑走。
*5 ハイクアップとは
リフトやゴンドラを使わずに、自分の足で雪山を登る事。
Q. 今後の展望を教えてください。
11月から12月にかけてのワールドカップのメンバーに内定していて、そこでの成績次第ではミラノオリンピックの代表入りが見えてきます。
そこに向けて練習したり、コンディションを整えて頑張っていきたいと思っています。
今日本人は4人の男子がオリンピック代表になれるのですが、現在5人が選考基準を満たしていて、僕は5人目ですが、来シーズンの成績次第では代表になれるという感じになってきます。だから、ミラノオリンピックの出場を目指しつつ、今後の2030年フランスオリンピックでは一番良い色のメダル獲得を目指して頑張りたいなと思っています。
おわりに
中原旺助さんのインスタグラム
https://www.instagram.com/osuke_nakahara
今回は、モーグル選手として様々な大会で眩い実績を残し続けている中原旺助さんにインタビューしました。
限られた絶頂期の中で、積極的にチャレンジしていく中原さんからは、周囲の助けを素直に求めてみる事の大切さや、諦めずに自分から一歩踏み出していく大切さを学びました。
これからの活躍にも期待が高まります!
活躍したいN高グループ生へ! 「N高グループマイプロジェクト」とは
「N高グループマイプロジェクト」とは、地域や身の回りの課題、自身の興味関心などをテーマにプロジェクトを立ち上げ、中・長期的に実践する課題解決型プログラムです。自ら課題を見つけ、問題解決のアプローチを思考し、プロジェクトと向き合うことで、社会や人とのつながりを学び、自分らしく社会を変える一歩を踏み出すことを目指しています。2017年に開講した「N高グループマイプロジェクト」は今年で8年目を迎え、累計1,000名のマイプロ生を輩出してきました。
N高グループマイプロジェクトでは随時受講生を募集しています。詳しくは下記URLからご確認ください。
https://sites.google.com/nnn.ac.jp/2025myproject
※詳しい募集タイミングは n-mypro@nnn.ac.jp までお問い合わせください。
※受講はN高グループ(N高/S高/R高/N中等部)の生徒に限ります。
アスリートクラス
アスリートクラスは、スポーツで優れた実績を持つ生徒を対象に、知識面・進学面・コミュニティー面・活動面でサポートすることに特化したクラスです。特別プログラムでは、アドバイザーで元サッカー日本代表の高原直泰氏や、特別講師による講義を実施し、種目を問わず競技やアスリート活動に役立つ知識を身に付けることができます。その他、オンライン交流会などを通じたコミュニティ形成や進学支援など、競技と学びの両方で生徒を支えます。
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