N高グループのイメージをつくる制作課の裏側とクリエイティブな仕事

  • URLをコピーしました!

取材・文=小悪魔ちゃん(S高2期・ネットコース)

目次

はじめに

N高グループの生徒やその保護者の方は、入学前に必ずご覧になったであろう学園のパンフレットとWebサイト。それを通じて、N高グループへの入り口とイメージをつくる「制作課」という組織が、学内にあることをご存知の方は少ないかもしれません。一般の学校にはあまりない、制作のプロが集まる学内の組織で、一体どんな制作が行われているのか。なかなか知ることができない学園の裏側への興味関心から、制作課の方にお時間をいただき、インタビュー取材を行いました。この記事では、前半は制作課について、後半はデザイナー(クリエイティブ職)について、制作課の方々にお話を伺っています。特にクリエイティブ職に興味のある生徒は必見の内容です。

前半:制作課

話をしてくれた方

豊沢さん
制作課の課長
デザイナー

松下さん
制作課の主任
編集職

制作課に関するインタビュー

Q. まずは制作課の基本的な情報が知りたいので、制作課とはどんなところなのか、簡単に説明していただきたいです。

豊沢さん:制作課は、主に広報として学園を知ってもらうための物を作っています。これからN高グループに入学したいという方や、全く知らないという方に広めていくための、パンフレットやWebサイト、広告などを作っています。一般の学校に例えると、職員室の中にデザイン部や編集部があるようなイメージでしょうか。メンバーはデザイナーや編集の出身が多いですが、Webに強いメンバーも居て、全員がディレクションの仕事をしています。

豊沢さん:パンフレットやWebサイトの他にも、生徒の学習ツールを補助する印刷物であったり、生徒の保護者に向けて送られる保護者通信であったり、動画配信のサムネイルを作ったりもします。

松下さん:あとはLP(ランディングページ)サイトやイベントの特設サイトも作ったりしていますね。

豊沢さん:LPサイトは広告ですね。先ほどのWebサイトとは別で、こういう人に見てもらいたいというのに振り分けて出る広告のWebサイトです。

小悪魔ちゃん:かなり幅広く制作されているんですね。

豊沢さん:そうですね。あとはグッズ系も多くて、イベントで配布するプレゼントを作ったり、部活のユニホームを作ったこともありました。入学式や卒業式の配布物など、そういった大きなイベントも、制作課が何かしら関わって作っていることが多いですね。卒業式の特別表彰で授与されるトロフィーも作っています。

小悪魔ちゃん:では今度卒業式があるので、注目したいと思います!

令和5年度卒業式 特別表彰トロフィー(画像提供=制作課)

Q. 広報部の中の制作課なので、どちらかというと生徒向けというよりは、入学検討者やその保護者に向けた物を作ることの方が多いイメージですか?

豊沢さん:そうですね。時々生徒に会った時に、パンフレットを見て入学を決めたという子に出会うことがあって、とても嬉しいなと思っています。やはり、広く知ってもらうための役割というのが制作課は多いですね。パンフレットとWebサイトが、私たちが一番責任を持って行っている業務になります。

制作課が手がけたパンフレットや広報物(画像提供=制作課)

Q. 例えばパンフレットだったら、どんな過程を経て完成されますか? 制作のプロセスを知りたいです。

松下さん:小悪魔ちゃんも入学前にパンフレットをご覧になりましたか?

小悪魔ちゃん:はい! 入学前に色々な学校を比べたりしながら見ましたが、N高グループのパンフレットが見やすくて分かりやすかったです。

松下さん:ありがとうございます! そのパンフレットですが、もう既に形がある物なので、今私たちが主に行っているのは改訂ですね。新しい情報が出たら、その情報を入れていくという作業を行っています。N高グループは情報量が多いので、どれだけの情報をどこに入れていくかというのを、色々な部署と相談しながら決めていきます。改訂自体も年に最低2回は行っていて、その他にも細かい修正は随時行っているので、他の学校に比べたら修正回数が凄く多いと思います。

小悪魔ちゃん:年に最低2回ということは、4月のタイミングだけではないんですね。

松下さん:そうなんです。秋にも改訂をしていて、授業を作っている部署や、入学検討者に向けて案内をする部署など、色々なところに今どんな情報が最新なのか確認を取りながら作っています。あとは情報を全て載せてしまうと情報量が多く分かりづらくなってしまうので、この情報は今必要なのか、パンフレットに必要なのか、それともより詳しいことを説明するプリントが必要なのかなど、そういったことを各部署と相談します。その情報を1ヶ月くらいかけて精査して、パンフレットのどこにどう入れ込んでいくか考えて修正していきます。パンフレットのデザインは外部のデザイン会社の方にも協力していただいて作っているのですが、そこで私が「ここにこの情報を載せたい」というラフを作ったり、原稿も基本的には編集が書いています。また写真が必要であれば写真を撮影したり、イラストが必要であればイラストを発注することもありますね。そういったことをしながら完成に持っていくので、変更箇所が多い改訂ですと、3,4ヶ月かけている感じです。

小悪魔ちゃん:そんなに長い時間をかけて作られているんですね。

松下さん:そうですね。あと印刷にも時間がかかるので、何月に配布したいとなったら、その1ヶ月前には完成されていないと間に合わないので、そこから逆算してスケジュールを作っていくのも制作課の仕事のひとつですね。

Q. そのパンフレットを制作する上で、心がけていることや大切にしていることがあれば教えてください。

松下さん:先ほども少し出ましたが、とにかく情報を精査することです。精査した情報を整理して、どれだけ分かりやすく伝えられるかというのが、私たちの一番の仕事だと思っています。特にWebサイトやパンフレットを手に取ってくださるほとんどの方は、学園のオフィシャルな情報に初めて触れる場合が多いと思うんですね。だから、まずはN高グループの入り口を作るということを大切に、分かりやすくオープンな情報を届けたいと思っています。

松下さん:あと、スタッフが入学検討者の相談に乗ることがあるんですね。そのような時に、スタッフがパンフレットを使いながら分かりやすく説明できるかどうかといった視点も大切にしています。どうしてもずっとパンフレットと向き合っていると、情報が当たり前になってきてしまうので、作り直す度に新鮮な目で見て、この情報はこの場所に出てくるのが本当に適切なのか、常に意識するようにしています。

豊沢さん:制作課の中でも編集はとても重要で、全ての柱を作ってくれているので、学園内で本当に信頼されています。私も信用していますし、とても大切なメンバーです。あとはもちろんデザイナーの方も協力してくれる方がたくさんいるのですが、やはりビジュアル面ではN高グループらしさが感じられたり、入学したいと思ってもらえるような物を作るようにしています。写真なども撮影で色々な人が関わってくれていて、来週にもまた撮影があるのですが、ビジュアルにこだわって作っていますね。

小悪魔ちゃん:どんな撮影をされるんですか?

松下さん:N高グループに興味を持ってもらえそうな写真であったり、N高グループって楽しそうだなと思ってもらえそうな写真を、モデルさんを手配して撮ります。

豊沢さん:その写真も使用するのが半年後なので、とても長期的ですが、これに使いたいとなったらこのくらい撮らなければならないというのがあるので、今から動いています。

写真とイラストを融合した、普通科のイメージカット(画像提供=制作課)

Q. 今まで制作されてきた中で、苦戦・苦労した経験はありますか?

松下さん:数年前まではパンフレットが2冊あったんですよ。今ある青い表紙のパンフレットと、コースガイドという各コースを紹介する本の2冊があったのですが、それを1冊にまとめるために作り直した時には、色々な部署に協力してもらいながら頑張って作った記憶があります。

Q. 今まで制作されてきた中で、特に印象に残っていることや、楽しかった思い出があれば教えてください。

印象に残っていること
豊沢さん:締め切り期日に終わらないのでは? というようなお仕事が発生した際に、協力会社含めメンバー全員で知恵・体力・経験値を振り絞って達成できた時は「プロが集まっているな〜凄いな〜!」と自画自賛してしまうので、作った物というよりはその時の気持ちが思い出に残ります。

楽しかった思い出
豊沢さん:ゼロから企画をして実現できた物は、作っていて楽しいなと思います。また、そこにメンバーの得意が活かされていると嬉しいです。今まさにそういった制作物を作っているので、目にする機会があれば楽しんでください。

Q. 制作課としての今後の目標があれば教えていただきたいです。

豊沢さん:作る物をアップデートさせていきたいので、チーム力をあげたいと私は思っています。それぞれが今まで作ってきた経験を活かして、新しい方の目に触れるような物を作っていきたいです。知名度は上がりましたが、それでもN高グループを知らない人はまだまだいるので、試行錯誤して届けたいところに届くような物を作って、目に触れてもらって、入学してもらえるような流れを作っていければと思っています。

後半:デザイナー(クリエイティブ職)

話をしてくれた方

福蔵さん
デザイナー
N/S高新聞のロゴの制作者

吉野さん
デザイナー

櫻田さん
デザイナー

大竹さん
編集職

インタビューの前にメンバーの方々について伺いました。

豊沢さん:ざっくり紹介すると、大竹さんが編集職で、高校生が興味を持ちそうな経歴をお持ちかと思い来ていただきました。他の3名(福蔵さん・吉野さん・櫻田さん)はデザイナーですね。

デザイナーに関するインタビュー

Q. デザイナーになりたいと思った理由・きっかけは何でしたか?

吉野さん:私は高校3年生の頃、進学をどうしようか考えていた時に、色々な学校のオープンキャンパスに行き、その内のひとつにデザインの学校がありました。その時は確かインテリアデザインの体験授業を受けて、そこで「めっちゃセンスあるね」と褒められたので、「もしかして私これいけるのかも!」と思いまして(笑)。でもどちらかというとインテリアよりは、ポスターとかグラフィックの仕事がやりたかったので、そっち系の学校に入りました。だから本当に些細なきっかけでこの道に進みましたね。

櫻田さん:私は小さい頃から絵を描いたり、工作した物を友達や家族にプレゼントして喜んでもらうことが好きだったので、大学に進学する時も美術やものづくりをやりたいと思って、美術大学を目指しました。その時にファインアートと呼ばれる日本画や油絵と、デザインのどちらに進もうか迷ったのですが、やはり物を通してコミュニケーションを取ったり、喜んでもらうのが凄く好きなので、大勢の人の目に触れて役に立つようなデザインをやりたいと思い、デザイナーになりました。

福蔵さん:僕は30歳近くまで、海外でバックパッカーをしたり、アルバイトしたり、色々な経験をしていました。一応デザイン系の専門学校には行ったんですけど、それが27歳くらいの時だったんですよね。「デザインって勉強するものなんだ」と思ったら興味が出て、バイトをしながら夜間の専門学校に通いました。その時は死にそうでしたけどね。昼はバイトして、夜は学校に行って、課題に追われて相当しんどかったので、半分以上の人は途中でやめていきましたけど、それを2年間頑張ると、やっとデザインの感じが掴めてきました。学校は家具や物を作るインテリア・プロダクト系でしたが、なぜかロゴの会社に入ったんですよ。それがグラフィックのスタートでした。だから、グラフィックに関してはほとんど仕事をしながら覚えていきましたね。どの分野でも多分仕事し始めてからやっとスタートではないかと思います。

豊沢さん:私は高校1年生の時に、美術予備校のパンフレットを見たんですね。それに美術大学を出た後CMを作っているという人が載っていて、私もCMを作りたいとなんとなく思いました。まんまとそのパンフレットに惹かれて(笑)。美術予備校に入って、美術大学を目指そうと勉強し始めました。デザインの中からグラフィックに絞ったのは、大学に入ってからでしたね。

小悪魔ちゃん:個人的な話にはなりますが、私が美術大学への進学を目指しているので、美大出身の方もいらっしゃって嬉しいです。

豊沢さん:目指すことは凄く力になると思います。試験にデッサンがあると思うのですが、観察力や表現力、粘り強さが鍛えられる基礎だと思うので頑張って欲しいです。なんだかんだデザイナーとして働いてから活かされていると感じます。

小悪魔ちゃん:受験期の積み重ねや、学校での学びも活かされていますか?

豊沢さん:実際会社に入ってから覚えることの方が、身につくところはあると思います。学校というのは、振り返ってみると技術以外のところで身になっているかもしれないですね。先生や友達とのやり取りとか、チームワークとか。

福蔵さん:学校は凄く為になった! デザインの根本は一緒だと思うんですよね。足し算より引き算なので。デザインの本質は、やっぱりシンプルイズベストだと思います。デザインというものを勉強したことが、今にめちゃくちゃ繋がっているので、あの2年間頑張って良かったです。

小悪魔ちゃん:ご卒業された学校や、デザインを始めた時期がバラバラでも、最終的に辿り着いた場所が同じなのが不思議ですね。

豊沢さん:不思議ですよね。

福蔵さん:それで仲間ができたので、制作課は凄く良いチームだと思います。お互い尊重し合って、人の良いところを盗み合っていて、皆んなで高め合えるような、本当に良い関係性ができているんですよ。これはそれぞれが今まで頑張ってきたことがあって、自分もやっているからこそ、人の気持ちも分かるんですよ。そうやって苦労してやってきたのが分かるし、だから相手のことを尊重したくなるし、自分も成長したいから盗むし(笑)。僕は今凄く有難い環境にいるなと思っています。

小悪魔ちゃん:皆さんがとても楽しく、仲良くされているのがよく伝わってきます!

取材時に制作課の方々がZoomの背景に設定されていた年賀状壁紙(画像提供=制作課)

Q. 先ほどデザイナーになった理由をお聞きしましたが、その後どうして制作課のデザイナーになったのか気になります

豊沢さん:私の場合は、教育業界でデザイナーは珍しいと思って、「ちょっと面白そうだな」くらいの感覚で応募したら採用されました。そこで、デザイナーとして今までやってきたことを活かせたら良いと思いました。

大竹さん:私は編集職ですけど、元々はアニメ雑誌や漫画編集を5,6年やっていました。デザインもそうかもしれませんが、一度どこかで限界が来るんですよ。「このままでいいのかな」とか「もっとスキルアップしたいな」と思ったので、転職しました。N高グループは一般の教育とはまた違う教育ジャンルなので、ここなら今まで自分が培ってきたスキルも役立つし、プラスアルファでスキルアップもできると思って選びました。

豊沢さん:私が採用も担当しているのですが、よく新しい「教育×エンタメ」という企画を作っている学校という風に紹介はしていますね。

大竹さん:それで元々いたエンタメ業界と、新しく教育をかけたら、自分にとって知らなかった能力が出てくるかもしれないし、経験にもなると思いました。

学園テレビちゃんぬいぐるみ(画像提供=制作課)

Q. デザイナーには、どんなスキルや能力が必要だと思いますか?

福蔵さん:スキル的には、やはりAdobeのPhotoshopとIllustratorは必須です。クオリティの高いものを見極められるようになる能力も、自分を成長させるために常に鍛える必要があるかもしれません。デザインはそこら中にあるので、いつも勉強できます! あとは「どうやって人に喜んでもらおうかな」とか「どういう反応をされるかな」といった、ドキドキワクワクできる能力も必要だと思います。思い通りに喜んでもらえなくても、何が違っていたか探求して、次に活かし続ける貪欲精神!

吉野さん:センスやデザインスキル以外ですと、仕事としてデザインをするなら、この制作物で一番伝えたいことやコンセプトは何かを正確に把握・整理する能力は大切かと思います。

豊沢さん:観察力、分析力、表現力です。例えば、何をどんな目的があって作るのかを考える力や、目的を達成するための最適な表現方法を、たくさん引き出しとして持っておけると良いと思います。デジタル能力と共にアナログな表現にも取り組んでみてください。

Q. デザイナーとして、お仕事のやりがいを感じる時はどんな時ですか?

福蔵さん:もちろんクライアントに喜んでもらえた時と、頼ってもらえた時、人の役に立てた時ですね。

吉野さん:月並みですが、制作したものを喜んでもらえた時です。今でしたら、生徒の皆様に「可愛い」や「カッコいい」や「分かりやすい」と言ってもらえるのが、一番嬉しくやって良かったと思います。

豊沢さん:目的に繋がる結果に近づけた時、結果を出せた時です。

制作課が作ったロゴの数々(画像提供=制作課)

Q. デザイナーを目指している生徒に、アドバイスやメッセージがあればお願いします。

福蔵さん:デザイナーは資格も何もないから、自分で名乗れば誰でもデザイナー(笑)。でもやっぱり人に喜んでもらったり、楽しんでもらったりした時が嬉しいので、自分のデザイン感覚を一生高めて行けるのが最高な仕事だと思っています。ちゃんと考えながら作れば必ず毎日成長できますし! つまらなさそうで疲れそうな文字だけの書類のデザインにも、デザイナーにしか分からないような小さな楽しみや喜びが常に隠れているので、そういうのを感じられる心を持ってるといいのかな。でも千差万別、十人十色だろうから分かりません(笑)。

豊沢さん:日々訓練! コツコツ考えた時間、作った時間がそのまま未来に繋がります。若い時は「凄い物を作るぞ」と力んでしまい、思うような結果にならず挫折してしまうことがあります。私もありました。ですが、日々の積み重ねや挑戦したことがオリジナリティになっていくので、長い目で見て自分の成長に期待していくのが良いと思います。デザインの世界に踏み出したなら、良い物を世の中に出していけるように一緒に頑張りましょう!

終わりに

取材時に、制作課の方々が仲良く、楽しい雰囲気でお話してくださったのが印象的でした。また長い時間をかけて、様々な思いが込められた物を制作されていると知り、プロフェッショナルを感じました。注目してみると、学園にはプロが制作したデザインがたくさんあります。そのひとつひとつに、完成までの長い過程と、制作者としてのこだわりや思いがあることを知っていただくことができたら嬉しいです。そしてクリエイティブ職に興味がある生徒には、進路選択や将来に役立つようなことを、この記事を通じてお届けできていたら幸いです。お忙しい中、取材にご協力くださった制作課の方々、本当にありがとうございました。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次