海外進学ってどんな感じ?【卒業生インタビュー】

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(クレジット)
取材・文=セリフ(S高4期・通学コース)

N/S高生の皆さんは、自分の進路についてどのくらい考えられていますか? 3年生であればはっきりと目標を立てて、そこに向かって進んでいる時期でしょうが、1・2年生となるとその目標すら定まっておらず、自分の未来が想像できないという人も多いと思います。
大学や専門学校など、卒業後の進路は多岐に渡りますが、その中でも最も想像がつきにくいものはおそらく「海外進学」ではないでしょうか。聞いたことはあるけれど、あまり想像がつかない。なんとなく別世界の話に感じている人も多い気がします。
しかし、N/S高において海外進学をする卒業生は年々増加しており(※)、将来的にはもっと身近になるかもしれません。
今回は、N高の卒業生で海外の大学に在籍している方に、現地での生活や海外の大学を志したきっかけなど、様々なことについてお話を伺いました。この記事を通して海外進学について理解が深まると同時に、自分の進路を考えるきっかけにもなれば嬉しいです。

(※):N/S高の海外大学合格実績は2023年度に合計143名と、前年に比べ91名も多い数の卒業生が海外進学を果たした

(引用元)
大学合格実績 | N高等学校・S高等学校・R高等学校 (2025年4月開校準備中)

話をしてくれた人

写真提供=立田さん

立田真子さん
ハンガリーの大学に在籍し、医学を学んでいる。
N高6期生として転入学。通学コースの金沢キャンパスに所属していた。

目次

大学について

ーーまず、在学している大学とその特徴などについて教えてください。

ハンガリーのセゲド大学というところに在学しています。私は寮に住んでいて、主に中東からの留学生が多いです。進級率が低いという特徴もあります。

ーー日本人の学生はどのくらいいますか?

結構多いですね。日本人全員だと70人はいると思います。私は日本の事務局の留学プログラムを通して、18人の団体で来ました。

ーーどんなことを学んでいますか?

主に医療英語や解剖学や理科を学んでいます。今は医学部の予備コースで、1年生に入るための準備期間、0年生といった感じでしょうか。

ーー勉強以外ではどんなことをしていますか?

いろんな国の料理を食べています。寮はキッチンが共用で、他の国の料理を見る機会が多いんですよ。「それって何? どうやって作るの?」と聞いて、教えてもらったものを自分で作ってみたりすることもあります。中東出身の友達が多いので、中東の料理に詳しくなりました。他にも、街にあるレストランを片っ端から訪れてみたりしています。最近ギリシャ料理の美味しいお店を見つけました。

ーーハンガリー料理や中東料理は日本食と比べても美味しいですか?

ハンガリー料理はまだ食べたことがないですが、トルコ料理が特に美味しく、日本人好みの味だと思います。トルコ人の学生と仲がよく、毎週食べに行きます。特にさつまいもなんかが食べやすいです。中東の料理って大体ヨーグルトとか、肉、スパイスが入ってるんですよ。

高校生時代のことについて

ーーいちばん熱心に取り組んでいたと思うことは何ですか?

結構暇な生活をしていたので、「特にこれ」っていうのはあんまりない気がします。それでも色々なことに挑戦していました。マイプロ(※1)もそうですし、年に7,8回ある金沢キャンパス(※2)のオープンキャンパスにはほとんど全部出ていましたし、他にも英語の勉強をずっとしていたこともあってエッセイコンテストやスピーチコンテストにも出場しました。学外でいうならバイトもしていましたし、元々音楽が好きで、地域のジャズを演奏するキッズバンドに参加してサックスを始めたり、暇な時にピアノを練習したり、キャンパスのTAさんにGarageBandを教えてもらったりしました。
「頑張っていたな」と思うことで言えば「いろんな人と関わる」ことだと思います。元々そんなに喋るタイプではなく、むしろ聞くことを大切にしていました。「この人はこういう人なんだな、こういう考え方をするんだ」とかを考えるのが好きで、人と喋る時には聞くことに集中していました。
N/S高ではいろんな人と関わることも多いし、学校外でもいろんなことに参加していました。強いていうならそれが「いちばん熱心に取り組んでいたこと」だと思います。

(※1):マイプロジェクトの略称。地域や身の回りの課題や、自身の興味関心などをテーマにプロジェクトを立ち上げ、長期的に実践する課題解決型プログラム。

(引用元)

ネットの高校マイプロジェクト| N高等学校・S高等学校・R高等学校 (2025年4月開校準備中)

(※2):石川県金沢市にあるキャンパス。全国にある、通学コース・個別指導コースの生徒が通うキャンパスの一つ。
(引用元)

本校・キャンパス | N高等学校・S高等学校・R高等学校 (2025年4月開校準備中)

(※3):ティーチング・アシスタントの略称。生徒やメンターのサポートを行う。

ーーいちばん記憶に残った思い出は何ですか?

金沢キャンパスでの生活がいちばん記憶に残っています。私は元々週一生で、最後の方だけ週五生でした。「特にこの行事が思い出」というわけではなく、メンターさん、TAさん、生徒みんなでワイワイと授業を受けるのがすごく好きでした。

ーー高校生時代に学んだことで、今に役立っていると思うスキルはありますか?

パソコンスキルは間違いなく他の高校の生徒より身についたと思いますし、「時間の使い方」を自分で決められるようにもなりました。
きっちりと決められた時間割を守る高校生活から大学生になると、急に自由時間が増えて戸惑う人も多いらしいです。私はそれをN高生時代に経験したので、「じゃあどうやって時間を使おうか」というのを在籍していた2年間で色々考えたんです。たとえば一人でいる時間が多くなるので、「寂しくなったり自堕落になったりする時間をどうやって使おうか」と考えたり、「疲れたらこれをしよう」といった自分の機嫌の取り方を考えたりするとか。そういったことを高校生のうちにできたので、今ではスムーズに焦ることなく「じゃあ勉強しよう」とか、「今はゆっくりしよう」とか、やることを決められるようになっています。
あとは、留学に向けて自分で料理を作ったり、家の掃除をするようにしていたことも今に役立っています。寮では自炊が基本で、掃除もたまにしか入らないので、日本で高校の時に練習しておいて本当に良かったなと思っています。日本では自炊をしない学生も多いですが、健康を考えるとした方が良いと思います。

ーー向こうでも学生は自炊をするのがいちばん健康的なんですね。

そうですね。デリバリーもありますが、ギリシャ料理・トルコ料理の外食なんかも味付けが濃いので、毎日食べてると塩分過多になるかと。日本みたいにコンビニにご飯や惣菜が売られていたりしないので、やっぱり自分で作るしかないです。

ーー高校生時代に「やっておけばよかったな」と思っていることはありますか?

今のところそんなに後悔はないですが、「もっと勉強していれば楽だったのに」とは思います。大学では理科を3科目取っていて、高校の範囲と同じところも多いんですが、高校生時代には生物基礎しか取っていなかったんですよ。化学や物理は入学試験用に少し勉強したくらいだったので他の人と知識に差があったり。英語もまだまだ理解してないことも多いので、「英語もわからない+理科の知識も少ない」感じです。
あと、世界や日本の政治のことについてもっと知っておけばよかったなと思っています。大学では中東出身の友達がほとんどで、宗教の関係で人間関係がすごく複雑なんですよ。イスラム教は戒律が厳しくて「お酒、タバコがダメで断食もある」とか。「戒律はきちんと守るべきだ」と言う友達と、「どう生きるかは個人の自由だ」と言う友達が言い争っているのを何回も見たことがあります。日本では宗教で人間関係が決まることなんてほとんどないじゃないですか。中東では宗教戦争が多かったり、常にみんなが政治のことを考えていたり。「自分の国はどうだ」とかにすごく詳しいんですけど、日本にいたら知らなくても生きていけるから、そんなにわかんないじゃないですか。だから、「今まで政治とか何も知らなかったな」と思いましたし、もうちょっと関心を持つべきだと感じました。

進学までの流れ

ーー海外進学をしようと志したきっかけは何ですか?

小学校低学年くらいの時に、NHKで「アイ・カーリー」というドラマをやっていたんです。アメリカの中学校の話なんですが、それがすごく好きで、ずっとアメリカに行きたかったんです。だけど最初に入った全日制の高校がすごく日本の国公立を推してくるところで、海外進学の夢を諦めかけたんです。私も一度先生に推されて日本の国公立を目指したんですが、もし入学してそこでうまくいかなかった時、絶対にその先生を責めることになると思ったんです。「私が選んだんじゃないんだ」ってなるのは違うし、「自分の進路は自分で選ぶべきだな」と思って。日本の国公立の大学に行って就職して働いてる自分の姿が全く想像できなくて、「やっぱりアメリカ行きたい」って強く思ったんです。
それで自分には合わないと思い、N高に転入学しました。最初はアメリカの大学で心理学を学ぼうと目指していたんですが、途中から医学を学びたいと思い始めました。しかしアメリカで医学部に行くのはほぼ不可能なので、他の国に行くしかなくなり、ハンガリーの大学を見つけてそこを目指すことに決めました。

ーーアメリカの医学部は結構難しいんですか?

難しいというより、そもそも日本人は入れないらしいです。仕組みが日本の医学部とは違って、どの学部でも良いので4年間大学に通った後、メディカルスクールという大学院のようなところに入って医学を勉強するんです。そこでは医師免許が「国家資格」とされていない国や地域から資格を求めてアメリカにやってくる人達をたくさん受け入れていることもあって、「自分の国でも資格が取れる日本人はそもそも受け入れていないから無理だね」っていう結論になりました。

ーー海外進学を決めた時のご両親やメンターの方々などの周りの反応はどうでしたか?

両親には昔から「海外に行きたい!」と言っていたんですが、まさか本当に行きたいとは思ってなかったらしく、いざ「アメリカの大学に行きたい」って言った時はめちゃくちゃ反対されたんです。けれど、粘り強く何回も言ったら納得してくれました。
前の高校の先生には「海外」の選択肢が頭になくて、そりが合わないと思い高校を辞めました。N高に来てからはキャンパスのメンターの方々や周りの大人がめっちゃ応援してくれて、すごくやりやすかったです。

ーー進学のために、どんな勉強や活動をしていましたか?

最初はアメリカに行くつもりで勉強をしていたので、高得点に向けたテスト勉強と英語、課題活動などもしていました。課題活動といってもそんなにすごいことではないですが、自分の好きなことや学校での活動に出来るだけ取り組んだ感じです。ハンガリーに決めたのは高3の10〜11月ぐらいで、そこからは理科の勉強をしていました。

ーー英語はもともと得意な方でしたか?

学校のテストは得意だったんですけど、いざ喋るとなると全然喋れないし、何を言っているかも分かりませんでした。そこでオンラインコーチング(現N塾※)に入り、海外進学に向けた英語の勉強をしていました。

(※):N/S高の学園内予備校。日々のレポート学習から大学受験対策まで幅広く学業のサポートを行う。

(引用元)

N塾|角川ドワンゴ学園運営

ーー海外進学に向けてメンターの方々や学園のスタッフ方からサポートを受ける機会はありましたか?

留学課※の方と相談をして「こういうスケジュールで進めていきましょう」とか、「今はこれが足りないからこういうことを勉強しよう」とか、そういう戦略を練ることをしていました。海外進学する人がそもそも少なく、通学していたキャンパスには一人もいなかったんです。最初はどうやって進学を目指せばいいかもわからなかったし、周りで一緒に進学を頑張る人もいないのでメンタルも落ち込みました。メンターの方とは、「留学課の方から言われたことをどうやって毎日進めていこうか」とか、メンタル系の話なんかをずっとしていました。
出願に関しては留学課とのやりとりがほとんどだったんですが、証明書を発行するときなどメンターの方から許可が要ることも多く、そういう時には留学課とメンターさんと私で随時連絡を取り合っていました。

(※):N/S高において生徒の留学や進学に関してサポートをしている組織

ーー今、在籍している大学はどうやって探しましたか?

留学課の方と話をして「アメリカ以外だと、ハンガリーとかチェコに医学部があるよ」と聞いたので、そこからネットで調べました。

ーーハンガリーを選んだ理由は何ですか?

進学実績が一番多く信頼できると感じたからです。日本人の医学部進学プログラムで一番最初にできた事務局がハンガリーで、他にもチェコやイタリアなどもあるみたいです。あとハンガリーには政府奨学金という素晴らしいシステムがあって、政府が留学生に対して学費を免除したり、食費や生活費を毎月数万円出してくれたりするんですが、高い成績を収めないと受けられないので、そのチャンスに向けて今も勉強しています。

ーー入試はどのようなものでしたか?

まず書類選考を受けました。自分の家族構成や高校での成績をきかれたり、「どうして医者になりたいですか」「医者になってどういうことをしたいですか」などの質問に作文を書いて答えたり。選考といっても振るい落とされる感じじゃなくて、どちらかというと出すだけに近いと思います。
その次は東京にある事務局に行って面接と試験を受けました。面接では最初の十分だけ英語のスピーキングが行われて、残りは日本語での受け答えでした。試験では理科を3科目から二つ選んで受けて、英語もあるんですが、私はIELSのスコアが基準以上だったので免除になりました。

ーー現地に移住するまでの流れについても簡単に教えてください。

移住は日本の事務局がめちゃくちゃサポートしてくれました。学費を払う手続き、アパートの契約、留学保険の紹介、航空券の購入、医学部進学のために必要なワクチン接種とか、「これやってください」っていうのを全部用意してくれたので、それに従うだけでした。私は偶々、寮が空いててそこに住めているんですけど、基本はみんな一人暮らしをします。

入学後の生活

ーーハンガリーではどの程度英語が通じますか?

セゲドではほとんど通じませんね。若い人でも喋れる人と喋れない人は半々で、「喋れる」といっても本当にちょっとしたことくらい。お店に行った時に店員さんから「キャッシュカードか、現金か」と英語で聞かれるとか、喋るシーンもそのくらい。現地ではハンガリー語が基本で、英語で会話するにしてもハンガリー語のアクセントが強すぎて、大体何を言ってるかわからないです。お年寄りだと英語は喋らないし、九割は喋れないと思います。

ーー入学後に一番大変だったことは何ですか?

講義で先生が何を言っているのかわからなかったことです。アメリカ英語とイギリス英語ってあるじゃないですか。この二つは違うところも多くて、私はずっとアメリカに行く予定だったので、アメリカ英語の勉強をしていました。けれどハンガリーの先生達はイギリス英語を基本に喋っているので、そもそもわからなかったり。ハンガリー語特有の訛りも強く、ネイティブじゃないこともあって文法自体が違ったり。最初は聞き取るのが大変だったんですけど、先生の癖を掴んだらなんとかわかるようになりました。
友達もネイティブじゃない人たちが多いので、聴き取るのに苦労しました。現地の人との会話で英語を使ったとしても、訛りが強すぎていまだに何を言ってるのかがわかんなくて、聞き返すことも多いです。あとは先生の書く字が筆記体で、それがいまだに読めないので、なんと書いてあるかきくようにしています。
他にも、理科の授業やこっちでの生活が大変だったりします。

ーー日本との文化的な違いから戸惑ったことはありますか?

常にどこかしら物が壊れているところです。今住んでいる寮に初めて来た時はキッチンにコンロがなかったんですよ。料理をする時は電子レンジを使ったり、上の階に行ったりしていましたし、コンロが来てからもすでに四つあるうちの二つが壊れていたり。二台ある洗濯機はいつもどちらか片方が壊れていたり。学校で言えば電気が急に消えるとか、朝はエレベーターが動かないとか。日本だったらまずあり得ないと思います。
あとは仕事がとにかく遅いというのもあります。日本だったら1、2週間で終わるようなことは、こっちだと1ヶ月前に言わないといけないとか。みんなの性格は良く言えば「マイペース」で、ゆっくりしているんですよ。例えばショッピングセンターでお会計の列に並ぶ時、日本だったら支払いは急がないといけないイメージがあるじゃないですか。後ろの人の視線を気にして「やばい、待たせてる!」みたいになるけど、こっちだと全くそういうのがなくて。待っていても「早くしてよ」みたいな圧力がなく、急がされてる感じがないのはすごくいい点かなと思います。でも、店員さんには日本でいう接客スマイルがなくて、元気がない日に行くとちょっと落ち込みますね。

ーー入学前に予めしておくべきだったと思うことはありますか?

あんまりないですね。世界の宗教とか政治とかについてもう少し知っておいた方がよかったなとは思います。知っていれば、友達との会話でそういう話をする時にも「どうしてそれってそうなるの?」ときけたと思うので。
あとは、旅行をするためにもうちょっとお金を稼いでおけばよかったなとも思いました。ヨーロッパの中での旅行ってすごく安くて、飛行機でハンガリーからドイツまで言っても往復8,000円くらいなんですよね。

ーー現地の方と親しくなることはできましたか?

普段は学校に通うだけで、現地の人と関わることはほぼないです。よく行くお店の人には「また来たんだ」って多分思われてて、ちょっとニコニコしながら接客もしてくれるので、それは嬉しいですね。前にワインフェスティバルというのがあって、そこでみんなワインを飲んでいたんですが私は一人だったんですよ。そしたら、隣のおばあちゃんが話しかけてくれて、孫の写真を見せてくれたりしました。お年寄りは英語が通じなくて、話もなんとなくわかるくらいなんですが、優しい人が多いです。

ーー学生の方とは親しくなれましたか?

医学部0年生のクラスにはハンガリー人はいないので、関わることがないですね。留学生なら、同じクラス、同じ学年で仲良くなることも多いし、友達経由でいろんな人と知り合って、遊んだり喋ったりして仲良くなったりします。

ーー寮でも交流は多いんですか?

寮だとあまり交流がなくて、街中で会ったらちょっと喋るくらいです。同じ階の共用キッチンで自炊するときに喋るんですけど、他はないですね。

ーー現在住んでいる街の住み心地についても教えていただきたいです。

住んでいるのはセゲドという街で、人口16万人くらいのうちの何万人かは学生なので、「学生の街」って言われてて。めっちゃ田舎で街がすごく小さいので、カフェに入ると誰かしら知り合いに会うくらい世間が狭いです。でも治安はすごく良くて「少し席を離れるときにも荷物は全部持って行かないと盗られる」とかも少ないので、荷物を置いてちょっと出かけたりすることもできます。ちっちゃいですがアジアンマーケットがあって、日本食を買うこともできます。普通のスーパーにも、美味しくはないけど米が売られていたり、豆腐とか海苔とかがあったり。
首都のブダペストと比べると日本の商品も遊ぶ場所も全然ありませんが、うるさくもないので「のんびりした街」です。

ーー入学後に得られたものや経験できたことなどはありますか?

中東の友達が多いので、中東にめちゃくちゃ詳しくなりました。
まだこっちに来て2か月しか経っていなくてあまり言えないんですが、何かあっても怒らないようにはなりました。日本だと設備が壊れていることもないし、電車が大幅に遅れてくることもないし、なんでも効率を良くしようとしている国だと気づきました。こっちだと効率は良くないんですけど、別にそれも悪いことじゃなくて、みんなゆっくりしているという感じで。SNSでは「海外に行くと、日本がどれだけ良くない国なのかがわかる」みたいな書き込みを見ることも結構あるんですが、別にどっちが良くてどっちが悪いとかはなく、「ただ国が違って文化も違って、人が違うだけなんだな」って気づきました。
今、こっちでは日本で困らないことに困っているので、やっぱり日本の効率の良さには感動しました。でも、だからといってハンガリーが悪いわけでもなく、ただ違うだけだと気づきました。

今後の目標について

ーー今後、学生生活を通して取り組んでみたいことはありますか?

とにかくいろんな人と関わってみたいです。日本人の中だと、顔を見ただけで「この人はこういう人だな」って性格がわかったりするじゃないですか。でも外国人だと本当にわからなくて、その人と関わっていくうちにだんだんとわかってくるので、それが面白いです。
あと、せっかくこっちにいるので、生活や文化の違いを楽しみたいし、ヨーロッパもいっぱい旅行したいです。

ーー現地の方々に紹介したい日本の文化はありますか?

基本、絶対にみんなが喜ぶのは景色で、見せると驚かれます。建物はヨーロッパと全く違うし、「日本」って感じしかしないので。私はそれが普通で生きてきたけど、金沢駅の写真を見せたら、「えー!」みたいな顔をされるし、兼六園とかひがし茶屋街の冬の写真を見せると喜んでくれます。
あとはお菓子も人気です。ここに来る時にお菓子を持ってきていたんですが、ハイチュウなどのグミ系やラムネなんかは「美味しい」って言ってくれて人気でした。
若い人だとアニメも結構わかってくれるのでいいかなと思います。「NARUTO」のTシャツとか、「鬼滅の刃」の「滅」って書かれたTシャツとかを着ている人も見かけます。

画像提供=金沢市

ーー卒業後の目標や夢についても教えてください。

とりあえず、精神科医を目指しています。まず卒業することが第一の目標で、卒業後は日本に帰って医師免許を取りたいです。その先のことはあんまり決めていなくて、どこに進みたいのかもよくわかっていません。ただ流れに任せていくと思います。いつもそうなんですけど、その時その時を生きているタイプなので、特に夢はなくて。平和に楽しく過ごせたらいいのかなと思います。
でも、「これだけは死ぬ前にやりたい」ってことは全部成し遂げたいです。バンジージャンプとスカイダイビング、プライベートジェットを運転してみたいので飛行機の免許も取りたいですね。あとはマリンスポーツなんかも。
そういうことは絶対にやりたいんですけど、他に夢とか目標はあんまりないです。とりあえず卒業して、精神科医になることが一番近い目標かもしれないです。

ーー精神科医を目指したきっかけ、医学や心理学に興味を持ったきっかけは何ですか?

私は元々すごく心配性で、自分の心配はあまりしないんですけど、子供の頃から周りの人がしんどそうにしてるのを見るのが耐えられなくて、周りの心配ばかりしてました。でも、「これからずっと先、そんな心配をしていくのか」と考えるのは嫌だし、しんどいじゃないですか。それで、心理学や精神医学などの「心の問題」について勉強したいと思いました。勉強していけば心配するレベルなのか、別にしなくていいレベルなのかがわかってくるし、「これはやばい」とか「これは普通に休めばいい」とかもわかってきます。
風邪などの「体の問題」もありますが、それは病院に行って治してもらうじゃないですか。でも、「心の問題」ってみんなが抱えているのに、それを我慢するじゃないですか。「全然大丈夫」とか「まだいける」みたいに言いがちだけど、「しんどい」と思ってる時点で大丈夫ではない。そういう周りの人たちをもっと大事にしたいから、「じゃあ私が勉強しよう」と思い立ちました。

ーー最後に、現在のN/S高生に伝えたいメッセージなどあれば教えてください。

私が高校3年生で受験生の時は、周りに海外受験してる人なんていないし、基準も模試もないので自分がどの地点にいるかが全く分かりませんでした。
受験に自信が持てず「どうしよう!」と焦っていたんですが、N/S高生にもそういう人が結構多いと思ってて。もし日本の大学を受けるにしても通信制高校の人は少ないし、真面目だからこそ焦ってしまう。だからこそ、勉強以外も含めて「圧倒されない」ことが大事だと思います。
受験の時、知り合いの方に相談した際にそれが大事だと言われました。「もし自分が周りの人よりできていなくても、最初のスタート地点がみんな違うのは当たり前だから、最終的にどこにいるかの方が大事。周りと自分を比較してプレッシャーに押しつぶされれば、実力を発揮できなくなるわけだからそんなのは必要ない。昨日の自分に勝っていて、成長していること、とにかく周りに圧倒されないことが大事。」と言われて、それを今でも大切にしています。今は文化の違いに圧倒されそうになることもあるんですけど、その度に「負けない!」と思うようにしています。

終わりに

今回のインタビューでは海外進学や大学での生活などについて、立田さんから貴重なお話を聞くことができました。
この記事は「卒業生インタビュー」という一連のシリーズの一つとなっており、それぞれ異なる進路に進んだN/S高の卒業生にインタビューを行っています。それらの記事も併せて読むことで、より多角的に進路を考えられると思いますので、ぜひご覧になってください。

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