活躍生徒vol.006:「起立性調節障害」の認知と理解を広める活動をしている、もみぃさん

生徒数がついに3万人を超えたN/S高。多様な生徒が様々な分野で活躍しています。そんな中、キラリと光る実績を生み出した生徒もたくさんいます。実績を生み出した生徒は、どんな活動をして、どうやって実績を生み出したのか……気になりますよね! そこでN/S高新聞では「活躍生徒」と題してインタビュー企画を始めることにしました。第6弾となる今回は、高校生ながら県政に政策提言をする「リバースメンター」に選出され、任意団体や同好会を立ち上げたもみぃさんへのインタビューをお届けします。
活動のきっかけは自身の経験から
Q.所属校とコース、学年、名前を教えてください。
S高等学校2年の高崎キャンパスに通っています。外所(とどころ)もみじです。
Q.どんな活動をしていますか?
起立性調節障害や不登校で生きづらさを抱える方々が生きやすい、学びやすい社会づくりを目標に、行政と民間の視点でアプローチする活動をマイプロ(※1)でしています。
※1 「マイプロジェクト」のこと。
Q.活動を始めたきっかけは何ですか?
きっかけは、自分自身が小学校4年生の時に起立性調節障害になったことなのかな……。小5・小6で再発してしまって。段々と症状は落ち着いていったんですけど、学校には行けたり行けなかったりという感じでした。
当時の友人から「休んでばかりでうざい」って言われて、理解してもらうことができなくって。そこから不登校になった経験があります。それで障害についての認知を広めようと思い、始めたという感じです。
起立性調節障害の認知を広めるために
Q.活動で挙げた実績や成果を教えてください。
一つは、「高校生リバースメンター」として、私の住んでいる群馬県に政策提言をしました。「高校生リバースメンター」とは、簡単に言うと知事の相談役として社会問題に対する政策提言を行い、その施策を実行するプログラムです。
実際に今、教育委員会の方々と政策実行に向けてプラットフォームを作成している段階です。
もう一つは、任意団体「Kaede.」を最近立ち上げました。これはN高の一年生のメンバーと立ち上げて、当事者やその家族に向けたコミュニティ運営と、教育機関向けの説明会を目標に活動しています。
また、通っているビジネススクールの最終発表で、早稲田大学の教授の方から特別賞をいただいたこともあります。
起立性調節障害と不登校というテーマを基本に、いろんなアプローチをしています。
Q.活動していく中で印象に残っている声はありますか?
SNSで発信していってるんですけど、そこで「起立性調節障害を知らなかった」とか、「自分の娘がもしかしたらそうかもしれない」とか、「今こういう状態で悩んでるんですけどその改善方法を教えてください」とかという声をいただきます。
学園内で起立性調節障害の同好会を立ち上げていて、1周年を迎え、メンバーは180人にもなりました。そこでも「気軽に相談できる場所ができた」「作ってくれてありがとう」という言葉をいただくことが増えました。
Q.同好会など、N/S高のコミュニティは役に立ちましたか?
そうですね。自分の活動にも役に立っていますし、やはり通信制高校では起立性調節障害の当事者も多いので、みんなにとっての居場所という意味でもすごく役に立っていると思います。
12歳から一貫しているテーマの中で
Q.活動の中で大変だったことはありますか?
12歳から起立性調節障害の認知を広げたいというテーマで一貫して活動してきたんですけど、途中から何がしたいかわからなくなってしまった時期がありました。それで一回立ち止まっちゃった時があったんですけど、自分の中で本当に何を解決したいのかとか、後はどんな未来を理想とするのかっていう部分に一回立ち戻って、なんとか乗り越えたのかなと思います。
Q. 12歳から一貫しているのはすごいですね。
そうですね。不登校の方の40%が起立性調節障害を抱えていると言われていますが、私がこのテーマを設定した当初は、まだその関連性がはっきりしていなかったんです。でも、自分の生きづらさがどこから来ているかと考えた時に、起立性調節障害と不登校の関連性が高いと考えて、テーマに設定した感じです。
Q.途中から何がしたいのかわからなくなったというのは、テーマを見失ったということですか?
そうですね。例えばですけど、SNSを運用していても誰のために発信しているか、だんだんわからなくなっちゃったんです。
あと、まず自分の生きづらさから解決しようと思って動いてきたけど、今のアプローチが果たして本当に生きやすさにつながっているのかなっていう疑問もありました。でもそれは将来的なイメージができていないから迷っちゃったんですよね。ゴールをイメージできていない状態で動いちゃったというのが原因だったと思います。
Q.生きやすさをゴールにしているんですか?
そうですね。生きづらさっていうのが課題であって。じゃあその人たちの生きやすさを生み出すためにはどうすればいいのかっていう、すごく抽象的なゴールなんですよ。
それを解決するのは医療なのか、それとも教育なのか、行政なのか、家庭内なのか。生きづらさは人それぞれ違うじゃないですか。そこが難しいですね。
Q.活動の中で嬉しかったことはありますか?
興味を持って聞いてくださる方がいたり、「うちの子も起立性調節障害かも」と初めて知ったって言ってくださる方がいることがすごく嬉しいのですが、それは矛盾していると思うんですよ。活動内容としては起立性調節障害の認知を高めて、「初めて知った」という状態を無くしたいということを目的にしてるんですから。でもそのような声をいただくことで認知が広まっていく感覚というのを体感することができたのかなと思います。
起立性調節障害とか不登校のイメージが変わっていってくれてるんだなみたいなのがすごく体感できるっていうか。結構マイナスイメージなことが多いんですけど、それがちょっとプラスに変わってもらえるっていうのは嬉しかったことかな。
Q.プラスイメージへの変化を体感することは年々増えていますか?
そうですね。年々増えていっていますね。例えば不登校が三年前ぐらいはすごいマイナスイメージだったんです。最近は「不登校だったんですよね」って話してもそこまで重たいイメージを持たれず、可哀想とかそういうことは言われなくなったし、学校が全てじゃないよねという考えを持っている人も増え、社会的なイメージが変わりつつあるなっていうのはあります。
活動を通じ得られた様々なスキル
Q.活動を通じて得られたスキルはありますか?
まず資金がなくて。それで自分でビジネスを始めたので、たくさんのスキルを得ましたが、その一つが人に発信するプレゼン力です。
また、ビジネスとしてお金を回しながら持続可能性を担保するための思考力とか、人に伝えるためにチラシとかパンフレットとかロゴとかを作ったりしたので、そういうところでデザインの知識が増えました。
Q.活動を通じて人に変化や影響を与えられたエピソードを教えてください。
当事者として同好会に入ってきた子達がもっと自分たちも貢献したいと同好会運営に入ってくれたり、マイプロジェクト(※2)を一緒にやってくれたり、もっと自分たちで発信していこうとしてくれたり、それらの影響を与えられたのはすごく嬉しかったなと思います。
※2 マイプロジェクトとは、地域や身の回りの課題、自身の興味関心などをテーマにプロジェクトを立ち上げ、中・長期的に実践する課題解決型プログラム。
行政と民間の強みを活かした活動
Q.今後の展望を教えてください。
先程話した任意団体「Kaede.」(※3)の活動も少し本格化していきたいなと思っていて、それは教育機関だったり企業への説明会とかっていうのはあるんですけど、行政だけとか民間だけでは補えない支援っていうのはまだまだいっぱいあるので、双方の強みを活かした形で活動をしていきたいなと考えています。
※3 任意団体「Kaede.」とは、オンラインコミュニティでご家族や当事者の方々のお悩み相談等を行いながらSNSの発信を中心に活動している団体。
Q.行政や民間だけで補えない支援というのは具体的にどのようなものがあるんですか?
例えば、行政って政策を作る機関じゃないですか。政策っていっぱいあると思うんですけど、それが本当に届いてほしい人にうまく届いていないんですね。現状、マーケティングができてない部分があると思うんです。
逆に、民間は地域全体を動かすほどの力を持っていないんですよね。本当に一部だけしか動かせない。でも間近でその人たちを見ているから発信力はすごく強いんですよ。
そこがうまく連携していけば、伝えるっていうことを民間がして、大元の政策っていうものは行政がしていけば問題を解決する一番の近道になると思っています。
おわりに
「活躍生徒」vol.006として、もみぃさんのインタビューをお届けしました。
自らの生きづらさをきっかけに活動を始めたもみぃさん。一つのテーマの中で様々な活動を行っているとわかり、インタビューをしていた私も感銘を受けました。もみぃさんの今後の活躍に期待です。
「N/S高マイプロジェクト」とは、地域や身の回りの課題、自身の興味関心などをテーマにプロジェクトを立ち上げ、中・長期的に実践する課題解決型プログラムです。自ら課題を見つけ、問題解決のアプローチを思考し、プロジェクトと向き合うことで、社会や人とのつながりを学び、自分らしく社会を変える一歩を踏み出すことを目指しています。2017年に開講した「N/S高マイプロジェクト」は今年で8年目を迎え、累計1,000名のマイプロ生を輩出してきました。
N/S高マイプロでは随時受講生を募集しています。詳しくは下記URLからご確認ください。
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