合格率10%前後の行政書士試験に合格した高校生がすごかった。

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取材・文=ココぴ(N高7期・執筆コース)

え? 行政書士が何かわからない?
ではご説明しますね。

行政書士は、行政書士法(昭和26年2月22日法律第4号)に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、行政不服申立て手続代理等を行います。

(日本行政書士会連合会|行政書士とはより引用)

……という、仕事です。
なんだかちっとも頭に入ってきませんが、とても頭の良い人が携わりそうな仕事だということはわかりましたね。

さて、そんな行政書士試験の合格率は毎年10%前後
毎年大勢の社会人や大学生が不合格になる中、見事合格した現役高校生がいるらしいんです。

そんな超絶頭が良さそうな現役高校生へ行政書士について勉強法について取材していきます。

「勉強はもう諦めた」「行政書士? なにそれおいしいの?」という方にこそ読んでほしい、そんな記事となっております。
ちょっと勇気の出るような言葉もあるので、ぜひ最後までご覧ください。

行政書士試験に合格した高校生

(写真提供=悉知信さん)

悉知信しっちあきらさん
S高2年生。通学週3日コース所属で、水戸キャンパスへ通っている。

目次

街の法律家「行政書士」とは?

——行政書士試験とはどういったものですか?

そうですね、まず行政書士試験っていうのは、当たり前ですけど、行政書士の資格を得るための試験です。

——なるほど。そもそもの話になってしまいますが、「行政書士」ってどんなお仕事なんでしょうか……?

1つ目の仕事は役所へ許認可を取るためのサポートです。
例えば、警察署とか区役所とか、国の部署で言ったら総務省とか、そういう役所に「建設業の許可がほしい」「〇〇の免許がほしい」などと思ったとします。
しかし、そういうときに国民・市民だけだと許認可を得るのは難しいです。そのため行政書士は、役所から取る許可などの申請代理を行っているんです。

2つ目の仕事は、法務的な部分の業務の代行です。
例えば遺言書ですね。作成の代理ができたり、他にも契約書を作る代理ができたり。

いわゆる「街の法律家」ですね。弁護士とまではいかないけど、法務的な部分の業務を代行できるっていうのが行政書士の大きな仕事ですね。

——遺言書の作成もできるんですね。結構身近ですね。

そうですね。結構色々、相続関係の書類も作ったり、大抵のことはできますね。

——わかりやすい説明をありがとうございます。軽く調べてはいたんですけど、あんまりぴんときていなかったので……。

将来なりたいのは弁護士、そして政治家

——では、行政書士試験に挑んだということは、将来は行政書士になられるんですか?

いや、弁護士になりたいなと考えています。
行政書士試験であれば高校生でも目指せるレベル感というか、現実的なラインだったので。大人の方でも「行政書士試験に合格してから弁護士の勉強をしようかな」というような流れでやっている方は結構いるので、まず行政書士試験を受けた、という流れです。

——「大人の方でも」ってことは、高校生で合格ってやっぱりすごいですね。

そうですね。大体19歳未満で今回合格したのが50人いないくらいなんですけど、ほとんどが大学生なので、高校生で受かったのは毎年一人、二人いるかいないかだとか、そういうものだと思いますね。

——悉知さんが法律に興味を持ったきっかけが気になります。

小中学生のときから法律系のドラマ——99.9とか、弁護士が元になっているようなドラマとかよく見てて、そこで弁護士って存在に憧れを抱いていました。

でも、いじめを受けたときに、なおさら弁護士などの法律関係の仕事を目指したいと思うようになりました。

もしかしたらご存知かもしれませんが、いじめを受けて不登校になった、というのがそもそもN/S高に入学したきっかけだったんです。
その中で「日本は法律を元にできている法治国家だから、いじめとかそういった問題についても法律でアプローチできるんじゃないか」と思ったんです。

——なるほど。弁護士として教育に関わるとしたら、どういった方法があるんでしょうか……?

最近だとスクールロイヤーと呼ばれる弁護士の方もいて、教育現場に関わる機会が増えてきていますね。そういう教育関係に関わったような弁護士になることができたらいいなっていうことを考えています。

それで一定期間スクールロイヤーとして働いたら、最終的に政治の世界から教育現場を変えていきたいです。
ですから政治家とかそっちも目指せたらいいなって思ってて、色々と活動しています。

——政治家ですか!? どんな活動を行っているんですか?

市議会議員の方のもとでインターンをさせていただいていています。
最近だと地元の市議会に「いじめの防止の条例を作ってください」っていう陳情——ようは意見書みたいなものを提出したり、市議会議員の方と意見交換させていただいたり。

そういうところで、いじめの解決の方向性について検討していって、最終的には陳情とは別の形で市議会などの会派に対して、意見書とか要望書っていうのを手渡しできればいいなと思って活動してます。

——す、すごい。意見を提出する中で大変なことはありますか?

そうですね、陳情を形にして提出するのはそこまで大変ではないです。
ただちゃんと陳情として成立させたいので、根回しというか、ロビイング(※)を行っています。

教育関係の陳情だと、水戸の場合は市議会の中の文教福祉委員会という委員会へ付託(※)するんですが、その委員会に所属している議員さん全員と交流を持っています。そこで事前に根回しして「ぜひお願いします」って感じで、ロビイングみたいなことをやっているんです。

「どういう気持ちで陳情を出すのか」とか「どういう気持ちで今活動しているのか」ということについて、議員の方と意見交換というか、インタビューというか、そういうことを定期的にやらせていただいています。
最近だと弁護士の方とか専門家の方教授の方とかともお話していて、それはより広めていきたいなって部分ではありますね。

※ロビイング(ロビー活動)……政治家に対して行われる各種団体や陳情団などの働きかけ。(goo辞典より引用)
※付託……物事の処置などを任せること。特に、議会で、議案の審査を本会議の議決に先だって他の機関に委ねること。(goo辞典より引用)

——行動力に感服いたします。そういった沢山の活動を行っていくためにはモチベーションの維持が重要かと思いますが、何かコツはありますか?

そうですね……正直モチベーションは上がったり、下がったり、色々あったりするんですが、1つモチベーションというか、「支え」になっているなっていると感じることはありますね。

こういう活動をしていく中で、N/S高新聞さんもそうですが、ありがたいことに色々掲載していただくことがあるんです。
それを見た人から、SNS経由で「記事を見て勇気づけられました」っていう感謝の言葉をいただいたりして。身近な人もそうですし全く知らない方からもよくDMが来るので、そういったことをモチベーションにしています。
自分がこうやって活動することで、勇気づけられたり、頑張ろうって思ってくれる人が一人でもいる。それなら、自分ががんばる価値がある、やってみようかな、ってことで色々と活動しています。

行政書士試験に合格した勉強法

余白を重視し、モチベ維持

——では、今度は勉強法について訊いていきたいと思います。また似たような質問ですが、勉強するときのモチベーションの保ち方を教えて下さい。

人間ってモチベーションには誰しも波があるじゃないですか。
だから勉強したくないなって思った日はそんなにやらない。
「最低限一日一問は解く」って考え方で試験勉強をしていて、1秒でもいいから法律の分野の勉強にさえさわれれば、1日の最低限の課題はクリアってことにしていました。モチベーションのない日は、それだけやったらあとはYoutube見たり好きなことをして、その代わり次の日はちゃんとやろうねって方針でやってました。

正直に言うと、モチベーションが落ちちゃって、1週間くらいほとんど試験勉強に手をつけなかった日もありました。
でもモチベーションが上がらない時に無理にやっても効率が悪いというか、あまり頭にも入らないんです。だから多少遊んでもいいかなって思ってます。

試験直前期はそれだとちょっとキツイかもしれないですけど、余裕があるなってときはそれでもいいかなって気持ちでいました。気楽な気持ちでやることがモチベ維持にいいのかなってことは思いましたね。

——なるほど、気楽な気持ちで勉強を。

こういうこと言ったらあれですけど、試験って別に落ちても死ぬものではないんで「最悪落ちてもいいかな」くらいの軽い気持ちで何事も勉強してた方がいいんじゃないかと思ってますね。一生に一度しか受けられないものでもないですし、受かるまで受け続ければいいんじゃないかなって気持ちで、正直やっていました。
それくらいの軽い気持ちでもいいと思います。

——それくらいでいいんですね。計画倒れはしませんでしたか?

もちろん逆算して計画を立ててはいましたが、1週間のうちに3日勉強できればいいかって気持ちで立てていました。
余白を持たせたりして「計画狂ってもなんとかなるでしょ」くらいの軽い気持ちでやっていましたね。あんまり根を詰めてやりすぎないっていうのも重要なのかなと思います。

——計画の時点でゆとりを持たせていたんですね。

でも結構、余白みたいな時間はあまりなくて、正直めちゃくちゃ焦ってはいたんですけどね。

行政書士試験は少なくとも1年くらいはかかるって言われてて、長い人だと5年6年もやってるって社会人の方も多いんです。
自分の場合は受けたいなって思ったのが試験日まで半年、残り6ヶ月あるかないかみたいな状況でした。

だから上手く考えて効率を少しでもあげて「勉強時間が取れなかったら効率上げればいいでしょ」って考え方で勉強してましたね。

効率化で勉強時間を1200時間→600時間

——え、効率を上げることで半年も時間を縮められたんですか?

大体のネット記事だと、やっぱり「どんなに少なくとも1年はかかる」って皆さん言ってて、1000時間とか1200時間とかは勉強しなきゃいけないらしいんです。
自分は600時間くらいで合格できたので、効率は2倍くらいにはできたのかな? って、勝手に思ってますね。

——めちゃくちゃできてると思います。どういった工夫をして勉強していましたか?

せっかくデジタルが近くにあるので、タブレットやスマホでも紙のテキストと全く同じものをKindleなどで見られるようにしたりなど、そういう工夫を。

あと復習のタイミングは上手くやりたいなって思っていました。
「エビングハウスの忘却曲線(※)」っていうのがあるんですけど、どのタイミングで復習すると人間の記憶に一番いいかっていうことを調べました。アイフォンのリマインダーとかで通知が来るように設定して、普段は勉強していましたね。

※エビングハウスの忘却曲線……ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した、特に中期記憶(長期記憶)に対する時間の経過と記憶の関係を表した曲線のこと(引用:エビングハウスの忘却曲線 – 一般社団法人日本経営心理士協会

——他に工夫したことはありますか?

やっぱ国家試験って全く同じではないですが、結構過去問から近い問題が出題されることがあるんです。
大体の試験は過去問分析が一番重要じゃないかとは個人的に考えてて、過去問——過去10年の過去問を一問一答形式にした問題集が行政書士試験はあるんですけど——時間がある時はそれをひたすら回しました。
多分、20周とか30周とか本が読めないくらいになるくらいはやっていました。正直テキストよりも過去問や問題集などで演習することを重視していました。

試験に出るところだけを頭に残したいって思っていたので、過去問や過去問集をひたすら解いて、「これだったらこういう答えが来るよね」っていう1つの流れを覚えるのが一番いいのかなって考えていました。
それで効率化したっていうのが1つありますね。

一番重要なのは過去問演習

——過去問集を使って勉強していたんですね。

そうですね。「肢別本」って呼ばれている問題集です。
司法試験などもそうなんですけど、過去問を一問一答形式にした問題集で一番わかりやすいと思うんです。

もちろんちゃんとした過去問もそうですが、そういったものをひたすら解いて問題形式に慣れることや、「これのときは大体こういう問題だよね」ってちょっと文章読んだだけでわかるくらいには解けるようになること、そういうことが一番重要なのかなって思ってます。

——テキストを使わなくても大丈夫だったんですか?

最初はテキストとか授業動画とか、そういうものを見たりはしていました。
ただ、正直言っちゃうと、テキストに全部書いてあることが問題として出るわけじゃないじゃないですか。

行政書士試験は300点満点なんですが、300点ぴったり取らないと受からないわけじゃなくて、180点とれば受かる試験なんです。
180点だろうが300点だろうが同じ合格っていう切符が取れるんだったら、正直全部を覚える必要はないなっていうように思っていたんです。

もちろんテキストは1周か2周は見たんですけど、その後、過去問見て「これ必要ないところもいっぱいテキストに載っちゃってるな」っていうのを思ったんです。
だったら過去問の中で何回も出るようなところだけ覚えよう。もし本番でいっぱい出るような部分じゃないところが出ても、どうせ周りも解けないんだからここは捨てていいっていうふうに考えてやっていました。
そう思ってテキストを通して読むのは1〜2周程度にとどめて、あとは過去問とか問題集をひたすら回してましたね。

——では最初の期間以外は、過去問演習がほとんどだったんですね。

そうですね。でもなんだかんだテキストが六法全書並みに分厚くて、問題もときながらだったので、1、2周読むのに1ヶ月とか2ヶ月弱くらいはかかりました。

それを読み終わったらあとはひたすら過去問解いてっていうのを繰り返していましたね。過去問を解かないとテキストの内容を本当に覚えてるのかがわからないので、そういう意味でもやっぱり、過去問を何回も何十回も解くことが、一番重要なんじゃないかと個人的には思ってます。

——勉強時間は大体どれくらいでしたか?

平均で大体1日3、4時間です。できてない日もありましたが、平均3、4時間を半年くらいってことなので、大体600時間と考えています。
まあ最初のときはモチベーションが湧かなくて、1、2時間ってときもありはしたんですけど、直前期になると焦りが出てくるので、一気に6、7時間勉強することもありました。

——一番勉強した日、最長の勉強時間はどれくらいですか?

多分、本当に長い時は10時間くらいはやっていましたね。なんだかんだ言いながら、休日などは10時間勉強していました。

——10時間、どういう風に勉強していましたか?

最後の方は結構過去問の内容も覚えてきちゃっていました。
「多分これ過去問の内容覚えられたら勝てる」って確信を持っていましたし、模試でも合格点を超えていたので「いけるな」っていう風には思っていました。

でも気を抜かないためにも、いろんな出版社さんから出ている市販の模擬試験を買って、それをランダムに、問題集として模試を解いていくっていうのをひたすらやっていました。
単純に数字だけ選んでいくだけでは十時間かからないので、「なんでそこの選択肢がバツなのか」「なんでこの選択肢は正解で、〇〇になるのか」っていうのを書けるまで考えて、10時間近くやってた日はありましたね。

——確かに「なんで他の選択肢が間違っているのか」っていうのをちゃんと言えるくらいに理解するのは効果的ですよね。

好きなことへの熱中が、勉強のための集中力を育てる

——勉強が苦手な人へ向けて、一言アドバイスをお願いします。

なんか……こういうこと言っちゃったらあれかもしれないですが、別に今の時代、勉強が必要ではないなって思っています。

自分も元々、数学や国語っていう普通の5教科7科目みたいな勉強は全然できなかったんです。自分の好きな分野が法律だったから、苦じゃなく10時間勉強できるだけなんです。
好きな学問だったり、領域だったり、N高であればblenderなどの3Dのソフトだったり、そういうのを10時間やってるのと本質的には一緒なのかなと思っています。
もちろん大学受験がある方もいらっしゃるでしょうし、一概に勉強しなくていいとは言えませんけど。

好きなことに熱中すれば、集中力もついてくるのかなって思っています。
実際、行政書士試験へ向けてずっと勉強していて、集中力っていうのは上がったなって実感してます。

それが5教科7科目の勉強にも役立ってるなと思うので、まずは好きな分野の勉強とか、5教科7科目の勉強じゃなくてもいいので、興味のあるものからやっていけばいいじゃないのかな、っていうのが一言になりますね。

——勉強って言葉だとやっぱり5教科7科目をイメージしちゃいますが、自分が好きなことについての学びも勉強だと言えますもんね。

そうですね。例えば、動画編集が好きな人だったら、本質的には自分の中の勉強ですから、一緒なんじゃないかなと思います。
好きなことをやって、それで集中力をつけて、5教科7科目もちょっとずつ頑張っていけばいいんじゃないでしょうか。

もちろん、10時間って今考えると「それだけ集中してやってるの自分でもすごいな」って思います。
それくらい勉強に集中すると、集中力っていうのは自ずとついてきます。5教科7科目など普通の勉強も、前よりかはちょっと長めに、嫌でも勉強できるようになったなというのは実感してますね。

——先ほど5教科7科目の方は苦手という話をされていたと思うんですけれど、行政書士試験に挑戦したことで、集中力以外に得たものはありますか?

行政書士試験の中にも試験分野があるんですが、その中に一般知識というものがあるんです。
一般知識では、社会情勢とか国連の加盟国とか、社会——いわゆる教科でいったら歴史とか公民に入るような分野であったりなども結構問われたり、軽い文章問題みたいな問題もあったりするので、そういう意味では文系教科には活かされました。

——なるほど、普段習うようなことに関連した問題もあるんですね。

そうですね。
試験の中でも一般知識は、「これ歴史の分野だろ」ってやつとか「公民の分野だろ」ってやつも出ていたりしたので、そういうところの関連もそうです。

でも、集中力や、勉強を続ける習慣っていうのが一番大きいかもしれないですね。
やっぱり勉強するっていう習慣が一度でも絶たれると続かなくなってしまうので、習慣がついたというのは結構大きいと思います。

——習慣化できたんですね。

一つのタスクというか、勉強することがルーティーンになったので、始める部分、机に座って勉強を始めるってところができるようになったのが、一番大きいかもしれないです。

——私も苦じゃなくなりたいです。ハードルが高くて高くて……。

一番勉強始めるってところがハードル高いですもんね。

試験の中で得たもの

——勉強した中で得た法律の知識や考え方、印象に残っている問題があれば教えてもらいたいです。

プロジェクトN(※)や社会の事象もそうですが、「なんでこうなってるのかな」っていうのの裏には、何かしらの法律、法令が関連してるっていうのが潜在的に意識づくようになりました。
例えば「〇〇という決まりがある」って言われたら「それはなんの法律の、どこの条文を根拠にしているんだろう」って法律ベースで物事を考えられるようになりましたね。法律の条文と物事を事象に当てはめる、論理的な思考力が身についたと思います。

でも、一番大きいなって思ったのは、自分の友人が消費者トラブルなど、何かしらの法律のトラブルに巻き込まれているとき、「どこの法律機関に案内すればいいのか」「こういう権利が消費者にはあるから、しかもあなたは未成年だからこれは取り消せますよ」っていうアドバイスができるようになったことです。

※プロジェクトN……通学コースで開講されている、課題解決型プロジェクト授業。詳細はこちら公式Xを参照してください。

——それはとても大きいですね。

日本司法支援センターの法テラスなど、そういう未成年が無料で弁護士に相談できる制度のことは、行政書士の勉強をするまでは知らなかったんです。
そういうところとかの番号、存在を案内できるようになったり、活動の中で弁護士さんの知り合いも結構できてきたので、そういう人たちに繋げることができたのでそこは大きいかなと思っています。

——勉強していく中で知ったんですか?

そうです。勉強していく中でそういうのも。
法律の問題もいっぱい出てきますが、日本の法律の制度としてどういう機関があるのかどういう役所があるのかっていうのも試験勉強の中で問われる分野でもあります。その中で身についたのかなって思います。

実際に過去問を解いてみた

——もしよければ、どんな問題が出るのか教えてほしいです。

じゃああれですね……ネットで検索した方が早いかもしれないですね。

例えば憲法だったら、上記のような、どういう考え方とか、この裁判例とか、学説でどういう例で出されているのかが問題に出たりします。

これはインフルエンザの予防接種の問題です。
予防接種っていうのは過失が認定しにくいものです。やっぱり医療行為なので、裁判の中では適用しにくい。

だから妥当ではない、みたいな考え方をしたんじゃないかっていう風にも考えられるんですが、4番だと予防接種によって死亡した側の権利っていうのが著しく侵害されているんです。だから、妥当ではないものはどれかっていったら、これだったら多分4番になります。(正解を見る)……そうですね。これだと4番ですね。

裁判例がなかったら、このように類推して、自分の中で考えて出します。「どういう風に裁判官が考えるかな」というのを考えていけば、自ずと解けてくるものもあるので、そういう感じでやってます。
結局は、法律を作っている人も、裁判官も人間なので、常識的に人間がどう考えるのかみたいな部分を想像したりして考えています。

——なるほど、そういったロジックで問題を解いているんですね!

自分を守る憲法と、権利を知らない私たち

——好きな法律や科目はありますか?

憲法です。
憲法というのは「日本の中でどんな法律を国が作ったとしても、憲法に反するものっていうのは効力を持たない」って解釈をされているんです。仮にそれが国会を経て通過されていたものだったとしても、効力を持たないっていう風になるんです。

その憲法がなんのために存在するかというと、我々が持っている基本的人権、そこを尊重して擁護するために存在してるんです。
だから、最後の砦としてやっぱり憲法しかないというのが一番大きいと思っています。

例えば、以前よりもいろんな価値観が増えていて、いろんな価値観を持った人がいるじゃないですか。
今までは、いわゆる性的少数者といわれるような方などの権利が、著しく害されてきた部分っていうのはどうしてもありましたよね。
そこを「憲法の中の幸福追求権や、人権の尊重という部分から認めるべきところもあるよね」って。

いろんな人の人生や価値観、考え方を守れるって意味で、自分は憲法は一番推しというか、好きな法律というか、そういうような法律の種類です。

——確かに憲法って自分たちを守るための、刑法などとはまた別のものですよね。

そうです。
自分たちの人生を守る、権利を守るというのもそうですし、考え方や言論の自由——仮に政府や政治家におかしい点があった際に、批判とかができている、というのも憲法のおかげです。
憲法がなかったら、我々は政府への不満があっても何もいえません。

そういった状態にならないためにも、やっぱり憲法があるっていうのは実生活にとっても一番大きいです。そういった理由で憲法を一番推してきたっていうのはありますね。

——憲法について知ってもらいたい、知識を得てもらいたいなどと思いますか?

憲法の勉強をしてなおさら思った部分ではあるんですけど、もっと自分の持っている権利っていうのを把握してほしいなって思ったりはしています。

例えば陳情の話。
未成年って投票する権利がないので、一見政治に関わることはできないんじゃないかなって思われるかもしれません。
ですが、憲法には請願権という権利があり、それは国民だったら誰でもできて、理論上は0歳の赤ちゃんでもできるんです。「国や議会に対して自分はこう思うんだっていう要望とかを出すことはできるんだよ」っていう、そういう権利は、例えば憲法には明記されている部分ではあります。

「我々にはこういう権利があるから国とか自治体に対して要求できるんだ」「逆にこういう義務があるから税金っていうのは収めないといけないんだよ」っていう、権利と義務の部分を認識してほしいなとは思いますね。

——確かに、陳情については学校じゃ習わない部分ですよね。

習わないですね。
自分も勉強するまでは知らなくて、未成年だからそういうようなことはできないんじゃないかなって勘違いしていました。
本来は学校で教えるべきことなんでしょうけど、そういう意味でもちゃんと権利と義務ってところは念頭において生活してほしいです。

——実はその辺があやふやというか、数年前まで憲法と刑法の違いもよくわかってなかったりして……。

一般的な方だとそういう方も結構多いですよね。
やっぱり、学校で教えろとまでは言わないですけど、軽くでもそこは触れた方がいいんじゃないかとは思っていますね。

——悉知さんが身近にいる方、すぐに悉知さんに相談できる方はいいですね。

結構「ありがたい」みたいな言葉はいただいています。
法律的なトラブルって、やっぱり生活してるとどうしてもあります。みなさん、自分だってそうだし、みんなあるので、そういう意味では勉強した甲斐があったのかなとは思いますね。

——私たち悉知さんが身近にいないような人にとっては、先ほど上げてくださった法テラスが相談先になるんでしょうか。

そうですね。法テラスとか市役所とかで、弁護士会がやってる無料相談みたいなものでもいいと思うので、まず気軽につながる。

やっぱり、その、弁護士っていうとバッチつけて偉そうにしてるみたいなイメージ、今でも自分は持ってるんですけど(笑)。
そういうイメージを抱いて、なかなか相談しづらいって人もいるじゃないですか。頭が固そうな人がいて——実際頭固い人は多いですけど——そういうイメージを持って相談できないのはもったいないなって思います。

ちょっとしたことでもいいし、なんなら家庭のことも、そういったものも法律で解決できる場合もあるので、もっと気軽に相談してください。「弁護士 無料相談」と検索すればいっぱい事務所さんが出てくるので、ぜひ弁護士を有効活用してほしいです。

——では、記事を見ている方もそういうところで相談してみてくださいね。

今後の展望、なりたい弁護士像

——弁護士に将来なった時、なりたい弁護士像はありますか?

子供の権利を守るという部分を一貫して、弁護士としては活動していければいいなって思っています。
日本において、子供の権利が守られていない例というのが、自分の身近でもそうですし、ニュースでも虐待やネグレクトなどが報じられています。学校現場だけではなく、全般的に守られていない部分がすごく多いです。

今、弁護士は50000人も近々達成しそうなくらいいて、余ってるって言われるほど弁護士さんがいっぱいいる状況です。
だったらそのいっぱいいる人たちに、刑事事件とか民事事件とかのみなさんが想像するような裁判は任せて、自分は子供の権利を守るって方向だけに一点集中して弁護士活動していければいいなって思っています。

——なるほど。子供の権利を守る弁護士さんかっこいいですね。

ありがとうございます。
子どもの権利条約を批准してから、日本も30年くらい経つので、そういう意味でもちょうどいいのかなっていうのも思っています。

今度日弁連が子どもの権利条約のシンポジウムっていうのを開くんですけど、そこに登壇させていただくことになっています。そういうこともあるので、子供の権利の重要性は弁護士にならない今の状態でもいろいろとSNSなどを活用して訴えていければなと思います。

——SNSでの発信をされているんですね。

XやFaceBookでも、ぼちぼちではあるんですけど、発信しています。
どういうことを行動としてやっているのか、どういう考えがあるのか、ちょっとずつやってはいます。

でも、子供の権利も含めた政治的な投稿になってしまうと、どうしても燃えちゃうんですよね。簡単に炎上しちゃいます。
それが怖くてあんまり上げられてないっていうのが現状です。

けど、記事を見て名前検索して、自分のXなりFaceBookに辿り着いて、そこでメッセージをいただくっていうのは多いですかね。どちらかというと、メディアさんの方で見て自分に辿り着いてくれることが多いですね。

——今後の展望を教えてください。

高校生のうちは、できることに幅があるので難しいところはあるんですけど、政治家の方と会って、一つでも多くのメディアに取り上げていただきたいです。そういったことで、いじめ問題や不登校問題をはじめとして、子供の権利に関する問題に関心を持つ人が1人、2人、3人と増えていくと自分は考えています。

正直、高校生一人が要望書とか意見書を出しても、政治家がどこまで見てくれるかはわからないので実現が難しい部分も多々あります。
けど「そういう要望書とか意見書を出しました」というのを、メディアで取り上げていただくことによって、そこで社会的な気運といいますか、こういうの変えた方がいいよねっていう流れを少しでも作ったり、子供の権利を守るために活動できるような仲間をどんどん集めていったりできればいいなと、思っています。

大学はもちろん法学部へ行って法律を学んで、大学院——ロースクールになるんですけれど——そこへ行って、弁護士資格を取ります。

大学生以降——大人になったら、スクールロイヤーなどの子供の権利を守る活動や、家庭裁判所で取り扱われるような少年事件など、そういう子供にだけ焦点をあてたような弁護士活動を中心的に行いたいです。

それから数年なり数十年なり、タイミングを見てではあるんですけれど、最終的には政治家の道っていうのを目指したいです。
子供の権利や、教育関係の部分で思うことがあるので、それらを中心として動ける政治家になれたらなと思っています。

——やりたいことが決まってるってすごいですね。

ありがとうございます。
でも決まってないって人の方が多いし、なんなら高校生のうちにやりたいこと決まってると幅狭めちゃいそうで、「それはそれでどうなの」って思われるときもあります。

だから決まってないことは、それはそれで全然いいのかなって思ってます。

——ありがとうございます。あんまり決まってない方なので、安心しました。

——最後に一言お願いします。

やっぱりN高S高の特性、特徴を考えると、不登校だったって人は多いのかなって個人的に思っています。
いまだに自分も、いじめを受けた経験というか、不登校だったことに対して、ちょっと後悔というか、どうしてもマイナスのイメージで思うことはあるんです。

けど、勉強やインターンなどの活動をやっていく中で、やっぱり一つ思ったことがあります。
使い古された言葉ではあるかもしれませんが、過去っていうのはどう足掻いても変えられないじゃないですか。だからもう、未来に目を向けるしかないのかなって、考えています。

過去は変えられなくても、未来は自分の頑張りよう。努力次第で変えることはできる。

ですから、過去は忘れられないかもしれないですが、未来に焦点を向けて色々頑張ってほしいと、すごく伝えたいなって思います。

終わりに

悉知信さんのすごさについて、わかりましたか?

勉強が辛くなったり、変えられない過去が頭から離れなくなったら、ぜひ、またこの記事を読みにきてくださいね。

最後まで読んでくださってありがとうございます。
悉知さんのさらなるご活躍をお祈りします!

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