【前編】TAさんってどんな人? ~N/S高のステキなTAさん~
取材・文=Яita(りた)(N高5期・ネットコース)
取材(動画)=toran(N高8期・通学コース)
みなさんは、N/S高に”TA”と呼ばれる、いわゆる学園スタッフがいるのをご存知ですか?
TAとは「ティーチング・アシスタント」の略です。主に大学で見られる制度ですが、実は、高校であるN/S高にも存在しています。当学園の生徒であれば、関わったことのある方も多いのではないでしょうか? N/S高のTAは、ネットコース・通学コース・オンライン通学コース・経験学習・外国語課・オンライン通学コースなどさまざまな部署に分かれています。例えば経験学習部のTAさんはワークショップや委員会などの活動のサポート、通学コースのTAさんは授業内のグループディスカッションでファシリテーターを務めるなどの形で生徒の学校生活をサポートをしてくれます。
今回の記事では、経験学習部のTAさんを取材しました!
そして! なんと今回の取材は記事だけでなく、動画でも……!
動画をみることで、記事だけではわからないリアルなTAさんを感じてほしいと思います。
えみこさん
えみこさん
*経験学習部 TA
*TA歴 1年10ヶ月
*好きなもの・こと:人とのおしゃべり、一人の時間、料理、横浜中華街、海、船
普段はどういったことをしている人ですか?
一応社会人です。ただ、働き方がかなり特殊というか、一般的な言葉で言うとフリーランスという感じですね。LGBTQ+関連の活動のスタッフやLGBTQ+当事者として学校や行政機関へお話をしに行ったりする講演会講師をしたり、あと最近は料理系の活動をしていて、自宅を少し改造して週末レストランをしたりと、ものすごく好き勝手に働いている人間です(笑)。
この動画の音声は音読さんを使用しています。
えみこさんのリアルな日常にお邪魔して、ほっこりした気持ちになりましたね。お茶探しの旅……素敵です!
TAになるまで
ーーTAになろうと思ったきっかけはありますか?
正直に言うと成り行きというのが近いです。
元々教育系のお仕事、塾の講師とLGBTQ+関係のNPO法人の職員をやっていたのですが、それを辞めて次の仕事どうしようかと悩んでいた時に、N/S高新聞実行委員会の職員として働いていた友人が誘ってくれました。「今こういうことをしているんだけど一緒にやってくれない?」と誘ってくれたそのお仕事が新聞実行委員会だったんです。私は校正や文章をきちんと書くといった経験などは何もない身ですが、 有難いことにコミュニティを形成する面といった自分の得意分野や経験を活かせる部分のお仕事をさせてもらっている感じです。
ーーTAになるまでの道筋を教えてください。
はっきり言って正式な手順は無かったように記憶しています。まず、その、元々TAとして働いていた友人から説明を受けました。それに対して「入りたい」という返事をしたら、当時の上の立場の方と連絡を取ってくれて、TAになることになりました。
TAの仕事について
ーーTAとしてどんな仕事をしているのか簡単に教えていただけますか?
大きく分けて2つあります。
1つ目がN/S高新聞実行委員会のスタッフです。N/S高新聞実行委員会内ではリーダーミーティングや動画コースのミーティングみたいな、コミュニティ形成というか交流を強めていくといった方面を中心としてお仕事させてもらっています。
2つ目は実行委員会以外で、N/S高にはいろいろなワークショップがありますが、その中でもダイバーシティ&インクルージョンに関連したワークショップなどを担当させてもらっています。私の専門分野であるLGBTQ+やその他人権関係といった内容ですね。自分の専門的な知識を活かして色々と企画に携わらせてもらっています。例えば、LUSHさんとの企画は基本的にずっと一緒にやらせてもらっていますね。
ーーTAの仕事をする中で何か感じることはありますか?
とりあえず、「楽しいな」という気持ちがあります。
あとは、LUSHさんとの企画など、LGBTQ+関係の企画は、自分の専門領域を思いっきり活かせる仕事なのでもうそれが本当に楽しいと感じるのと同時に、参加者のみんなと一緒にいろいろなことを考える時間を持てるのがうれしいですね。
自分は主に、LGBTQ+を切り口にして、「自分らしさを大事にできたらいいよね」といったメッセージや、生きづらく感じることもあるこの社会の中でどういうふうにしたら上手く生きていけるだろうか、ということをみんなで一緒にわいわい楽しく考えられるような場所を作るという企画を練っているんです。そういった場所はまだまだ少ないなと感じているので、それを自分で作って、それに参加してくれるだけでなく、終わった後に「すごくいい時間でした」「安心できました」といった言葉をかけてもらえることが多いので、うれしいという気持ちが大きいです。
新聞実行委員会の方では、今のメンバーはそれぞれが自分自身で考える力を備えている人がとても多いなと感じています。「楽しく、なおかつ心理的安全性も守られた場所を作るのにはどうしたらいいんだろう」ということを私一人が勝手に考えるんじゃなくて、おしゃべりしながらみんなで考えていけるので、一緒に歩めているという感覚は新聞の方が多いと感じます。それがうれしいというか実行委員ってこういう形がいいよねと思います。大人があるべき姿みたいなものを作り上げて渡すのではなく、メンバーそれぞれが「こういうふうにしたいな」と思っていることを、大人の力を借りながら叶えていくっていうことができているので、一緒に作り上げて一緒によかったと思える場所だなと感じてとても楽しく、有意義な時間を過ごさせてもらっているなと思っています。
ーー仕事をするうえで心掛けていることはありますか?
「心理的安全性を守る」というのが、絶対的に大切だと思っています。
N/S高のTAの仕事、LGBTQ+関連の仕事、週末レストランの仕事、どの仕事においてもそこの部分は大切にしています。私自身、LGBTQ+の当事者だったり、心の病気があったりするので、日頃から生きづらさを感じている人間なのですが、それは自分だけではないと思うんです。生きづらいと感じる人も多い世の中で、どうしたら生きやすい場所や安心できる時間を作っていけるのかを自身で考えて、システムやコミュニティ作り、いろいろな面に配慮した企画を作ることに取り組んだ結果、今まで社会に理解してもらえなかった困りごとが、この場所では無視されずにちゃんとあるものとして認識されて、過ごしやすくしてもらえていることがうれしいと感じます。そういった安心した場所で、なおかつさまざまなプログラムや企画を通して経験を積んで、成長させてもらえるというのは大事なことだと思います。「心理的安全性」が欠けていると、嫌な思い出になってしまうし、一番の目的であるいろいろな経験を通した成長も邪魔されてしまうと思うので、絶対に心理的安全は確保したいと考えて仕事をしています。
私生活との両立
ーー私生活との両立は大変だと感じますか?
まあ、忙しい時は大変ですね。大きな企画の直前などはやはりバタバタします。ですが、週末なんかを「今日はお仕事しない日!」というふうに決めて、その日は一日中寝る、ということをしたり、忙しくないときはストレスを溜めないようにお散歩やお料理をしたりしています。近所のスーパーにお散歩がてら長めの距離を歩いて行って、公園で休憩して「あら、もう桜のつぼみがついてるわね」と思いつつ、お家に帰ってきてちょっとした料理を作って食べて「あら、おいしいわ」 と思ったりして寝る、なんてことをしています。
ーー私生活と両立するためにリラックスする時間を作っている、という感じですか?
「自分の機嫌を自分で取る」ということをしています。自分の場合、イライラや落ち込みがある時に無理しちゃうと、嫌な思いしかしないということが経験上わかっているので、そういう時は一旦寝たり、お休みの日だったら自分の好きな場所に行ってみたりします。海が好きなので遠出して海岸でゆっくりして、気が済んだら特に何もせず帰るといったように、自分の機嫌を取るときには合理的な考え方を捨てて、とにかく自分の機嫌を取ることを第一目的にしています。
今後の展望・意気込み
ーー経験学習部のTAとしてどのように生徒をサポートしていきたいですか?
自分が企画するワークショップなどは、切り口としては簡単でも最終的な着地点は必ず「人権」に関わることになるので、結構難しい内容だと思います。正解がないんですよ。でも、正解がないことに不安を抱かないようにしているし、これからもしていきたいと思っています。例えば、「自分らしさ」なんか絶対に正解はないじゃないですか。一人で考えるだけでは、不安になったり嫌なことを思い出したり、ということが当たり前に起きてしまうようなテーマだと思うので、安心して自分と向き合う時間を作れるようにしたいです。否定する人はいないし、急いで正解を出す必要もなくて、自分が正解だと思ったらそれでいいんだよっていうふうに思ってもらえるような企画をこれからも作っていきたいなと思っています。
ーー主にサポートしている新聞実行委員会には、この先どんなふうになっていってほしいと思いますか?
個人的な本音を言ってしまうと、みんないい子だから、もうのびのび過ごしてほしいという気持ちが大きいと思いますね。先日の合宿で直接みんなと会ってみて、それぞれが素直で思いやりを持った子たちだなということを改めて感じました。ですから、もうそれだけで充分というのが個人的な気持ちです。
コミュニティ全体については、一緒に何かを作っていくという機会を増やしていきたいと思っています。今私が関わらせてもらっている中でもそういう機会はありますが、その幅をもっともっと広げていきたいです。一緒に作り上げたからこそ、スタッフもメンバーも満足できて、今後どうしていくかも上手く考えられるようになると思うので、一緒に何かを作り上げていく時間をもっと増やしていけたらいいのかな、と考えています。
ーーサポートするというよりは、「一緒にやっていこうよ」といったスタンスということでしょうか?
そうですね。サポートできるとすれば、さっきもお伝えした通り、心理的安全性を確保することですね。気軽に休むこともできるし、気軽に帰って来ることもできるというような場所を作るのはコミュニティ内での大人の役割だと思っているので。
ーー意気込みや目標があれば教えてください。
もう今年で30歳になるので、メンバーとの年齢差がだいぶ開いてきたんですね。自分としてはこれまで一緒に何かを考えられる身近な”お姉さん”という存在として活動させてもらってきた自覚があるのですが、今は身近に安心して相談できる”大人”に変わってきたと感じるのと、経験値が年齢とともに増えてきたので、話す内容ももう”お姉さん”じゃないんですよ。高校生、いわゆる子供の立場からすると”大人”はどうしても自分のことを話すのに少しハードルが高い存在に感じがちだと思うのですが、そうじゃなくて大人は大人でも安心して話をしたり、安心して一緒にいられるような存在でありたいと思います。そのためにも、いろいろな企画や新聞の中でのコミュニティ作りを今後もやっていきたいです。企画や新聞実行委員会のメンバー・スタッフには本当に恵まれていて、有難いと思うと同時に、「これからも一緒に頑張らさせてください」という気持ちでいっぱいです。
おわりに
えみこさんが生徒のことを想って活動してくれていることが分かりましたね。特にえみこさんのお話にあった「心理的安全性」という言葉。この言葉は、えみこさんの過去のさまざまな経験が、この言葉に重みを持たせているように感じます。本当にこの「心理的安全性」は大切にしなくてはならないものです。また、インタビューの中でのお話から、えみこさんは自分のことを上手に労わって心の健康を維持しているのだな、と感じました。心の健康を維持することについては、実際に僕自身も精神疾患を抱えている身として、その重要性がよく分かります。
今回のインタビューでは、TAさんのことを知るだけでなく、とても大切なことを教えてもらえた気がしますね。
TAさんへのインタビュー記事は後編もあります。後編では、えみこさんと同じ経験学習部のTAさんと、また別の部署である通学コースのTAさんを取材しました! お楽しみに!
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