LGBT・精神疾患(=自分らしさ)と向き合う高校生活【2024年度卒業生インタビュー】

取材・文=ほのか(S高2期生ネットコース)
皆さんは、自分がN/S高を卒業する時、『どんな自分になっていたい』ですか?
あまり考えたことがない方が多いのではないでしょうか?
今回は2024年3月に卒業した先輩にインタビューしてみました。この記事が、皆さんが卒業までにどんなことをして、どんな思いで卒業したいかを考えるきっかけになると嬉しいです。
プロフィール

Яita(りた)
N高5期 ネットコース
N/S高新聞実行 3期生
普段していること:勉強、スポーツ(特に野球)
好きなもの:サンリオのシナモン
Яitaさんが執筆した記事こちら
https://nshigh-news.jp/member/88/
入院のためN/S高に出会い編入
N/S高に入学した理由は何ですか?

実は、高校3年生の時に編入してきたんですよね。
僕は精神疾患を患っていて、入退院を繰り返していました。そして、最初に入院した時に、以前通っていた高校を退学することになって、編入する学校を探していました。N高という先進的な学校があると知り、編入してきました。
言える範囲で大丈夫ですが、どんな精神疾患を抱えているのですか?



結構ありまして、1回目の入院のきっかけにもなったのは、強迫性障害ですね。不完全恐怖と言って、自分の思う完璧じゃないと怖くなってしまうという症状が強くて、字が綺麗じゃないと何回も書き直しちゃうことがあります。



また、パニック障害で、発作が出ると息切れや過呼吸を起こしてしまいます。そして、摂食障害もあり、身長が152cmですが軽かった時は30kgしかなかったです。最近は落ち着いてきましたが、解離性障害で多重人格があります。
他にも、発達障害の社会コミュニケーション障害という、適切なコミュニケーションが難しいという病気や、ADHDという注意欠如・多動が特徴の病気を持っています。



最初に入院した時も、強迫性障害・パニック障害・摂食障害が一気に悪化してしまい、病気同士が足を引っ張り合いました。1つの病気が悪くなったら、その病気のストレスでまた他の病気も悪くなってしまうことがありました。


N高に編入した時はどんな高校生活を送ろうと考えていましたか?



ネットコースに編入したので、レポートなどやるべきことをやりながら、自由に遊んで過ごせたらいいなって思っていました。
学校生活 × 療養生活
実際にN/S高に入ってみてどうでしたか?



編入して最初は、自分の状態が良くなかったので、あまりレポートができず、そのまま入院して休学しました。レポートだけでも精一杯の生活でしたね。



僕は、強迫性障害のせいで自分の思っている完璧を実現できないと何度もやり直してしまう症状があって、勉強が全く進まなかったんですよね。パソコンで文字を打つ時も自分の中でルールを決めて何度も打ち直していました。
療養生活ではどんなことを考えていましたか?



学校生活や日常生活で自分とうまく付き合っていく方法を模索していました。自分が抱えているものとどうやって向き合い生活するのか、N/S高にきて、じっくり考えていきました。
療養生活ではどんな風に過ごしていましたか?



1回目の入院の後、引き籠ったこともありました。その時の記憶は曖昧であまり覚えていないのですが、だいぶ荒れた生活をしちゃっていましたね。前に通っていた学校が好きだったのに退学になってしまって、自暴自棄になっていました。



それでも、入退院を繰り返しながら施設に入りました。病院と施設が繋がっているので連携しながらサポートしてもらい、施設では運動したり外に出たりするプログラムによく参加しました。
特に焦らず生活することが大事だと思い、自分のペースを大事に療養生活を送っていました。
療養中に自身で工夫されたことはありますか?



自分で行動記録表を作ってその時の行動や状態を記録していました。そうすると自分の焦りが見えやすくなって、対処がわかりやすくなったので、自分の成長が素直に感じられました。病気が良くなったというわけじゃないんですが、自分で対処法を見つけられたので、自尊心が上がっていたなと感じます。
療養生活で学んだことは何ですか?



僕は人に相談しないで、自分を追い詰めて病気になったのですが、療養生活で施設やN高に来て『自分の話を聞いてくれる人はいる』ということに気づけました。施設では、担当のスタッフの方が話を聞いてくれるし、N高ではオンラインですが自分がオープンにすると話を聞いてくれる友達がいました。誰かが聞いてくれているというのは、すごく心強いですね。


「当事者の思い」を発信したい!
ЯitaさんはNS高新聞でもLGBTやジェンダーのトピックで記事を書かれていますが、Яitaさんの性は何ですか?



僕はXジェンダーといって無性別で、性的な感情が湧かないアセクシャル、どんな性別でも恋愛対象はパンロマンティックです。



最近は、結構かわいい系の格好をしていますよ。昔はスポーティーな格好をしていましたが、今はかわいいものが好きでかわいいものを着てるんです。だから、LGBTの方が理解されなくなって今悩んでます。「かわいいものが好きなのに女の子じゃないなんておかしいでしょ」って言われるんですよね。それでも、僕は自分のスタイルを突き通すことを大事にして生きてます。
N/S高新聞でLGBTやジェンダーのトピックで発信し続けている理由はありますか?



LGBTの方は声を上げることが負担になるタイミングが多いと思うんです。僕はオープンにしていますが、前からそうだったわけではありません。



オープンにしたきっかけは、入院中に同じ無性別の人に出会ったことからです。その人は、体が男性ですが女性っぽい格好をしていて、とても堂々としていました。その姿がすごく格好いいと思い、オープンにするようになりました。
そうやって、声を上げづらくて話しにくい人でも、匿名という形でインタビューすることによって想いを伝えられたらいいなと思い、記事にしています。
詳しくはこちら:https://nshigh-news.jp/2023/07/9046/
インタビュー企画の中で気づいたことは何ですか?



LGBTの当事者の方にインタビューしお話を聞くと本当に共感することが多いです。



インタビュー企画を通して、悩んでいても強く生きている人と多く出会い、普通の人と何も変わらないと改めて実感しました。だから、今でもLGBTに関して差別的なことが起きるのは本当に不思議に思います。「男の人は女の人を好きになる」「女の人が男の人を好きになる」という括りがあったり、たくさんの人がいるという事実を受け入れない人がいたり、より多くの疑問が湧いて来ました。


N/S高生活で見えた「自分」の輪郭
これからЯitaさんが挑戦してみたいことはありますか?



あんまり関係ないかもしれませんが、『大学に行きたい』です。前の学校を退学した時に悔しくて、いい大学に入ってやろうと思い勉強を始めました。でも、始めてみたら勉強が楽しくなってきて、自分は病気のこともあって大変な道ではあるんですが、乗り越えて大学に行きたいですね。
療養生活を送っている方や自身の性に悩んでいる方へメッセージをください!



病気を抱えて悩んでいる方に対しては、「自分のペースを守ることが何より大事」って伝えたいですね。自分の療養生活で、近道を探すよりも、なんだかんだ自分のペースで頑張っていく方が早かったです。一歩一歩、頑張ってください。
また、「自分の辛さは自分のもの」と思って欲しいです。自分以外の人も苦しい思いをしてるからって、我慢しないで欲しいです。自分の辛さは自分のものだし比べるものでもないです。辛いなら辛いで、助けを求めることが大切です。



自分の性に悩んでいる方へは、今の社会で困難がたくさんあると思うけれど、少しずつ世界は変わっているし、自分一人でも、ちょっとしたことから人を差別しないことに気をつけていたら、それが当たり前の世界になると思います。まずは自分から差別しないことを大切にしていれば、その想いが伝染していくと考えています。


終わりに
今回は、自身の「体」と「心」に向き合っているЯitaさんのN/S高生活を深ぼってインタビューしました。
N/S高には2万人を超える生徒が在籍していますが、一人一人違う生活を過ごしています。この記事で、卒業していく先輩の学園生活を参考にし、皆さんの日々の過ごし方を振り返るきっかけになれば嬉しいです!。
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