誰かの明日をつなぐため、今日僕らは手をつなごう ~食品ロス削減の輪を広げるために~

取材・文=Яita(りた)(N高5期・ネットコース)
みなさん、こんにちは。
今日、10月30日は『食品ロス削減の日』です!
……って「いきなりなんだ?」って感じですね(笑)。
みなさんは”食品ロス”という言葉を聞いたことはありますか?
食品ロスとは、本来食べられるのに廃棄される食品のことです。
この食品ロスは今、国際的な問題として注目されています。
「なぜ食品ロスが問題なのか?」「何が原因なのか?」といった疑問を解消するべく、食品ロスに関して本記事の初めで簡単に説明しますので、読み飛ばさずに最初から順に後半へ読み進めてみてください!
後半では、食品ロス削減に貢献する「日本もったいない食品センター」というNPO法人団体が運営している食品ロス削減ショップ「ecoeat」に実際に足を運び、伺ったお話を記事にしています。

みなさんも、この機会に一緒に食品ロスについて考えてみましょう!
食品ロスとは?


食品ロスとは前述の通り、本来食べられるのに廃棄される食品 のことです。
例えば……
- 形が崩れたりした規格外の加工食品
- 賞味期限切れ加工食品
- 家庭、飲食店での食べ残し
などなど
このようなものが食品ロスとなります。
食品ロスの問題点
食品ロスは一体何が問題なのでしょうか?
もちろん、食べ物を残して廃棄することは”もったいない”と思うはずです。しかし、世界に目を向けると他にも問題があるとわかります。主な問題をひとつずつ見てみましょう。


環境問題の悪化
食べ物を大量に捨てているということは、捨てたものを処分する必要があるということですよね。処分するのには、焼却などが必要になります。焼却すれば二酸化炭素の排出量が増え、地球温暖化につながると言われているのです。


食の不均衡の問題
先進国と発展途上国の間や先進国内で、食の不均衡が発生しています。まだ食べられる食べ物を廃棄している人々がいる中、その日の食事すらままならない人がいるのです。食の不均衡が発生しているにもかかわらず、食べられるものを廃棄する人がいることはもちろん、食品ロスを容認していることは問題だと言えるでしょう。


経済的損失の発生
自治体や企業で食べ物を廃棄すると、処分のためのコストがかかり、また、家庭でも食べない物にお金をかけていることになります。無駄な経済活動を行っているという状態になり、経済的損失が発生します。
食品ロスの現状
では、日本の食品ロスの現状はどうなっているのでしょうか?
現在、日本では年間523万tもの食品ロスが発生しています。と言っても、数字が大きすぎて想像がつきにくいかと思います。
523万tはアフリカゾウ約95万頭に相当します!


膨大な量ですよね。しかし、私たちはこれだけ多く、まだ食べられる食品を捨てているのが現実です。
食品ロスには家庭から発生するものと事業活動から発生するものの大きく2つに分けられます。内訳は図1を見てください。


家庭からも全体の半分近くの食品ロスが発生していることが分かりますね。
食品ロスの原因
食品ロスが発生してしまう原因はたくさんあります。
日本特有の原因の一つに「3分の1ルール」というものが存在します。
初めて聞く人も多いのではないでしょうか?
食品の流通において、賞味期限がある程度しっかり確保された商品を店頭に並べるために策定されたものです。
3分の1ルール


図のように食品が製造された日から、その食品の賞味期限までの期間をきっちり3等分し、その区切りのところを納品や販売などの各期限と定めています。
- 最初の3分の1の期間に、卸売業者は小売店納品しなければならない「納品期限」
- 次の3分の1の期間は、小売店が商品を店頭に並べておいてもよい「販売期限」
- 最後の3分の1は消費者がその食品をおいしく食べられる期間の「賞味期限」
ちなみに……
賞味期限=おいしく食べられる期限
消費期限=安全に食べられる期限→それまでに消費しなくてはいけない!
食品ロスは身近でありながら、大きな問題であることを理解していただけたでしょうか?
食品ロスに対する理解を深めたところで、いよいよ後半のインタビュー記事に入っていきます!
食品ロス削減ショップecoeat へ
僕は今回、以前訪れた時から気になっていた沖縄県那覇市にあるecoeat那覇与儀店に行ってきました!


ecoeatでは食品メーカーや卸問屋などの事業者から”まだおいしく食べられるのに捨てられる可能性のあった食品”を仕入れ、販売しています。こうして事業者からの食品ロスを削減すると同時に、得た利益の一部は食糧支援の費用となります。「お得に買って社会貢献。」ができるステキなお店です!


はじめに
ーー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーーまず初めに簡単に自己紹介をしていただけますでしょうか?
私は、NPO法人『日本もったいない食品センター』で理事をしており、沖縄でecoeatを運営しています。また、『合同会社 琉人(りゅうじん)』(※1)という会社の代表もしています。
※1 全国に多数ある『個別指導学院ヒーローズ』の沖縄での運営と『ecoeat』の沖縄での展開運営を行っている会社です。詳細が気になる方はこちらから確認してみてください。
活動の始まり
ーーどれくらいの年月、ecoeatで働いているのですか? また、いつ頃から店長になられたのでしょうか?
雇われて働いているのではなくて、代表をしている『合同会社 琉人』が沖縄でのecoeat運営展開の責任を担っているという形です。
この会社は2012年に開業したのですが、ecoeatの運営はは2020年に始めました。糸満兼城店(※2)をオープンしたのが始まりです。ですから、ecoeatの運営に私が携わるようになったのは3年ちょっと前のことですね。その後、2021年に那覇与儀店がオープンしました。
※2 現在は与那原店として与那原町に移転
ーーここですね。
そうです。
うちの会社は塾を運営していて、経済的に厳しいご家庭の子どもたちが通塾を続けるために、塾代の補助を出来る事業はないかと探している時に、ecoeatを見つけたんです。
ーー食品ロスの問題を最初に知ったとき、どういった印象を受けましたか?
予想はしていたというのが正直な感想でした。コンビニでの食品廃棄や恵方巻の大量廃棄の問題などをテレビで見ているので、ことさら驚きはありませんでした。「やっぱりそれだけいっぱい捨ててるんだな」という感じです。東京オリンピック関係者の弁当の廃棄問題もありましたし、そういうニュースを見て、「あまりよくない状況だな」とは思っていました。
ーーそうだったんですね。では、ecoeatで働こうとしたきっかけをもう少し詳しく教えて下さい。
働こうと思ったきっかけというか、どちらかというとやろうとおもったきっかけですが、先程もお話した通り、塾代の補助ができる事業を探していました。テレビでecoeatを紹介しているのを見て、「もしうまく連携できたらいい活動になるかもしれない」と思ったのがきっかけです。ecoeatというのは、食品ロス削減と、食糧支援といって困っている人を助けるということを目的としています。そういった社会問題と教育はリンクしやすいので、きっといい形になるだろうと思って始めました。
ーー先ほど食品ロスの問題は予想がついていたとお話をされていましたが、今現在はどのような思いを持っていますか?
食品ロスは沖縄県内だけでも6万tあります。その一方で食べられない人たちがいます。単純に考えて変だと思いませんか? 食べ物を捨てている人たちがいるのに食べられない人たちがいる。これはおかしいでしょう。これをどうにか均等にしたいと思っています。私たちの運営するecoeatでは食品ロスになる可能性のあったものを流通させることができるし、その利益で困ってる人たちの食糧支援ができます。それがうまく機能するようになったら、食品ロスも最小限にしつつ、食べ物で困る人もいなくなるので、それを目指しています。
ecoeatについて
ーーecoeatには、主にどの年齢層・立場のお客様が来店されていますか?
主婦層が一番多いと思います。30代から40代、50代の女性が多いです。
ーー確かに以前来た時もそのくらいの年齢層の女性の方が多かった印象があります。
普通のスーパーでの買い物と変わらないですからね。
ーー来店の際に説明などをされていると思うのですが来店したお客様から意見をいただくことはありますか?
質問されることもありますし、応援してくれる人もいます。また、意見交換をすることもあります。私たちがやっているのは啓発活動であって、それがないとただの激安賞味期限切れショップになってしまいます。それでは意味がありません。
私たちは、お店とお客さんという関係にしたくないと思っているんですね。お店に来て一緒に協力してくれる仲間をつくりたいと考えているのです。ですから、ちゃんと話を聞こうとしない人には帰ってもらっています。
ーーえっ。そうなんですか。
そうなんです。極端に理解しようとしない人には帰ってもらっています。
ーーあくまでも一緒に課題に取り組んでいく、ということなんですね。
そうです。こっちはこういうふうにやっているので、win-winの関係でやっていきましょうという考え方をしています。
活動の中で
ーー活動するときに心掛けていることなどはありますか?
商品の美味しい食べ方などをきちんと説明します。店内を見ると、何か分かる商品とよく分からない商品があると思います。やはり、分からないものは売れないじゃないですか。ですから、きちんと説明をすることで食べ物の価値を落とさないようにすることを心掛けています。分かりやすく言うと、こういう安く売る店は特価とか激安とか書いてあることが大半だと思うのですが、うちは書いていません。
ーー確かに、そうですね。
理由は「安かろう悪かろう」にしたくないからです。確かに安いけど、激安とか書いてしまったらその商品の価値を決めてしまうことになります。うちは食べ物の価値を上げていかなきゃいけない立場です。ですから、そういうふうには書きません。
ーーなるほど。
では、活動をしている中でうれしいことはありますか?
来店した方が「ありがとう」と言ってくれることです。本来ならお店側がありがとうと言うところを、お互いに「ありがとう」と言う。そういうときや活動の理解をしてくれた時にやっててよかったなと思います。
ーー逆に活動している中でつらいことや悲しいことはありましたか?
問題を理解してない人はどうしてもいます。分からないだけなら仕方ないけれど、お客様は神様だと思って話を聞こうとしない人などがいます。そういう人には帰ってもらっていますが、「こんな人もいるんだな」と悲しい気持ちにはなります。価値観の違いですから、協力するしないは自由ですが、まだまだ認知が足りてないと感じます。けれども、そういう人たちよりも、支持してくれる人の方が圧倒的に多いので気にするほどではないです。
ーー活動していて、新たな気づきや、自分のためになったと思うことはありますか?
小さいことだと、「食べ方を変えるだけでこんなにおいしく食べられるんだ」と気づいたり、珍しい商品も多いため「世の中にはこんな商品あったんだ」と知ったり、そういった気づきがあります。また、知識も広がります。「こんなものもロスになっていたんだな」「仕入れの仕組みってこうだったんだ」と今まで知らなかったことを知ることができます。今まで知らなかったものを知るということは面白いです。
ーー新しく世界が広がっていくという感じですね。
そうなんです。
ーー活動にやりがいを感じるのはどんなときですか?
先程話した通り、お店に来る人達が食品ロスの問題を理解してくれて、その輪が広がっていく時にやりがいを感じます。
メッセージ
ーー世の中の人々に望むことはありますか?
やるべきことは小さいことなんです。大したことをする必要はなくて、小さいことをやり続けて欲しいですね。
例えば、食品ロスを減らすために自分たちにできることは何かと言ったら、スーパーで買い物するときに手前から取るということ。たったそれだけのことですが、それを全員がやったらどうなるかを考えて欲しいです。他には、外食の時に持ち帰るなどといったことです。一粒残らず全部持って帰って家で食べるだけでも食品ロスは減らすことができます。食べ残しをして帰っている人を含め、意識してみると、食べ物を粗末にする人がどれだけ多いかといったことが少しずつ見えてくると思います。小さな行動を当たり前にしていく。それが一番の近道です。小さいことでいい、大それたことをする必要はありません。
ーーこの先の目標や展望があればお聞かせください。
ゼロゼロ地域を作ることです。ゼロゼロ地域というのは、食品ロスがゼロ、生活に困っている人がゼロという地域のことです。ecoeatは賞味期限の切れているものを流通させる力を持っているわけですから、食品ロスとなるようなものをうちで流通させて食品ロスをゼロにする。その利益を元に食糧支援をすることで、食べ物に関しては困らないという状況を作ることができます。そうすると、食べ物のことばかりではなく、子どもの勉強などといったことを考えられるようになるでしょう。そういう世界を作っていきたいと考えています。




おわりに
いかがでしたか? 国際的な問題となっている「食品ロス」と、その解決のために尽力する玉城さんご夫妻を知り、改めて様々なことを考えさせられました。僕は元々SDGsに関心があり、これまでもジェンダーに関する記事を掲載したり(※3)、生活の中でも気を付けていることは多くあります。しかし、今回玉城淳一郎さんにお話を伺ったことで、自分にできることはまだあると感じ、小さなことからはじめていきたいと思えました。
※3 SDGsの目標の5番目に「ジェンダー平等を実現しよう」とある。
過去のジェンダーに関する記事が気になる方はこちら。
誰かの明日をつなぐために、今日僕たちは手を取り合って食品ロス削減に向けて歩き出しましょう。身近なところからでも大丈夫、その輪は広げられます。
みなさんがこの記事をきっかけに自分たちの生活を振り返り、食品ロス削減を目指す仲間となっていただけたら、大変うれしく思います。
コメント
コメント一覧 (1件)
知った気になっていた食品ロス問題に対して改めて知るきっかけになりました。
とっても素敵な記事!お店の方のお話からもただ利用し気をつけるだけじゃなく、ちゃんと考えて買い物に行こうと思いました。