居場所を見つけ、未来を見つけた〜「本当に本を作るプロジェクト」参加者インタビュー⑤

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文=滝谷佳代(N高5期・通学コース)

「等身大の自分」をテーマに生徒が一つの作品を執筆する「本当に本を作るプロジェクト(以下本プロ)」の第3弾となる記事だ。

今までの記事はこちらから

第1弾

第2弾

今回もワークショップ(以下WS)に参加した玉谷 奏空(たまたに そら)さんにインタビューをした。このWSをどのように受験に活かしたかもきいているので、WSに参加した経験を活かして受験をしたいと考えている方は必見! 

話してくれた人

玉谷 奏空(たまたに そら)さん

N高等学校卒業生(インタビュー時は3年生)

雲居 詩依(くもい しえ)の名で「晩夏、藤袴ともう一度」を執筆

※「晩夏、藤袴ともう一度」を掲載している本「青空の余白」は現在販売停止中

目次

初めて参加したワークショップ

ーー本プロを知ったきっかけは何ですか?

SlackのWSのお知らせを見て興味を持ったのが最初のきっかけです。あとは小説や文章を書くのが好きだったので応募しました。

ーー小説が好きだったから「あ、これやろう」と思って参加したんですね。

そうですね。「これはやりたい」と思って初めて応募したWSですね。

ーーえー、そうなんですね。

初応募、初参加のWSでしたね。

ーー今までWSに参加してなかったのは、興味を持てなかったのですか?

そうですね。「めっちゃやりたい!」って思えるようなWSがなかったりとか、あっても有料のWSだとハードルが高めじゃないですか。

ーーそうですね。

その点、このWSは無料だったのと、私は1年次の後半にN高に入ってきたので、あんまり勝手がわからなくて、そろそろWSとか参加してみようかなって思っていた時に今回のWSが流れてきたので参加を決めたましたね。

ーー特に楽しかったことや印象に残っている授業はありますか?

そうですね。どれもかなり印象深かったです。2回ほどゲストをお招きして授業をやる回があって、1人目はスタジオジブリの石井さんをお招きしてやった特別授業、2人目は作家として活動している小野さんをお招きしての特別授業でした。クリエイティブの最先端にいる方のお話を聞けたので、すごく面白かったですね。

ーーなるほど! WSを通して身についたことはありますか?

そうですね。自分で文章を書いて出版するWSだったので、思いを形にする力は身についたんじゃないかなと思います。「本を作る」っていうのは著者だけの力では全くないので、協力してくれる人たちに対して、自分のやりたいことをアピールする力もついたんじゃないかなって自分は思っていますね。

ーー以前、このWS参加者の上野さんと橘さんにインタビューさせていただいた時に「WSの参加者同士が仲良かった」と聞いたのですが、他の参加者とどのような関わりがありましたか?

私は、今名前の挙がったおふたりとも顔を合わせて喋ったことがありますね。

本プロのメンバーはそれぞれすごく個性の強いメンバーなので、実際に会いたいって話したい思うことがあります。なので、別のインタビューを受けてるにこちゃんとかは住んでいるところが近いので会ったりとかしてます。あとは、WS内で言うのであれば、私はみんなのオタクみたいなポジションでしたね。

ーーみんなのオタク! それはどういうものですか?

前のことなのであまり覚えてはいないのですけど、例えば「〇〇の作品の△△がすごく良いよね!」とか「大丈夫!可愛いから自信持って!」って言っていましたね。

ーー本当にアイドルを応援しているオタクみたいな感じですね。

そうなんですよ、アイドルオタクしてましたね。

ーーそういうこと言ってくれる人がいるとすごい自己肯定感とか上がりそうですよね。

それはね、みんなも「自己肯定感めっちゃ上がるわ!」って言ってくれてましたね。

「表現」を突き詰めてきた

※ここからはネタバレを含みます。

ーー作品についてうかがいたいと思います。実際にデータをいただいて読んだんですけど表現が素敵だなと感じました。

えー、ありがとうございます、嬉しい。

ーー「どうかあなたが私の恋心に気づきませんように。」や「今日ほど雨を望んだことはない。雨に雲に星が隠れてしまえばいいと思う。」とかキュンとするような表現が多くて、そんな表現をどのようにして思いつくのかうかがいたいです。

そうですね、すごく難しいんですけど、一つのものを表すのにも、ポピュラーなものも変化球もあって、変化をつけようと思えばいくらでもつけられるじゃないですか。「白」って言うのに、「黒の反対」とか「光」とか何だって言い表せると思うんですけど、その言い表し方のストックが人より多かったんじゃないかなって思います。良い表現を思いつくというより、私の場合、想定されている場面を文章にしていくとしたらこんな表現かなって思いながら言葉をあてはめて書いていることが多いですかね。

ーーなるほど。

言葉を当てはめるときには、自分の中では言葉のテンポ感を大事にしています。音読するときに気持ちいいっていうのと、文と文のつながりだったりとか長さを自分が得てきた表現を使いながら書いてますね。

ーー「晩夏、藤袴ともう一度」というタイトルもすごく素敵だなって思ったのですが、命名理由はありますか?

あります。最初は「初恋」とか一単語だけでいいかなと思ってたんですけど、編集者の方に「もう1回タイトル考えてみたら?勿体無いかもしれないよ?」って言われて、考えた結果、出てきたのが今回のタイトルです。

ーータイトルを決めるまでの過程があったら教えてください! 

晩夏の時期の話なので「晩夏」ですね。「藤袴」は可愛いお花なんですよ。秋の七草のひとつでもあるらしくて、儚くて可憐な花で、作中に「先輩」っていうキャラクターが出てくるんですが、その先輩のイメージにすごく近かったのが藤袴なんです。「もう一度」は語らずいれたほうがかっこいいかなと思うので、読者の解釈にお任せしたいと思い、タイトルに入れました。

ーー素敵な命名理由で、「藤袴」っていうのは何なんだろう? と思って1回調べたんですよね。理由を知ることができて良かったです。

めっちゃ可愛いですよね、私もこの作品のタイトルを決める時にいろいろ考えて出てきたやつなので、知らなかったんですよ、「可愛い」と思ってこれにしました。

ーー雲居 詩依(くもい しえ)というペンネームの由来も聞きたいです! 

本名からきてるところも多少あるんですが、空を見るのが好きなので、「空」をフランス語にすると「シエル」っていう単語になるんですけど、それのルを削って「しえ」が名前です。漢字は当て字です。そして、私が持ってる別のペンネームに「雨音」って書いて、なんて読むかは人に委ねてるんですけど「あまおと」や「あまね」とかそんなペンネームがありまして、「空」と「雨」に関連するところから「雲」っていうところを連想して、何となく百人一首が頭の中に浮かんだので、「くもい」ってしましたね。

ーーこの内容の小説を書こうと思った理由は何ですか?

本プロのメンバーそれぞれに核になるものがあるので、私にとってもこの小説は核になるものだと思います。私の書いたのは恋愛小説なんですが、男女と何ひとつ変わらない女性同士の恋愛小説を書こうっていうふうに思ったからですね。初恋は実らないものだってよく言うじゃないですか、「初恋って叶わないもんだよね、実らないもんだよね」ってよく言われると思うんですけど。まあ、初恋が実らないのって男女、女性同士、男性同士だって全部何も変わんないと思って、ただただ「恋してる」っていうその期間の気持ちや感情の動き方とか、ついやっちゃう行動とか、それってやっぱりどの性別でもどんな状況でも変わらないと思っています。そういうのを恋愛小説として書こうって思った時に、今回の物語を書き始めましたね。

「言葉が人に与える影響」について学びたい

ーーここからは大学受験のお話をおききしたいのですが、まずは大学合格おめでとうございます。

ありがとうございます。

ーー大学ではどのようなことを学びますか?

「言葉が人に与える影響」について勉強したいなというふうに考えています。例えば言葉っていろんな形があるじゃないですか。今喋ってるのは「話し言葉」だし、ネットを通すのであれば「チャット」であったりとか「メモを書いて郵送」すれば滝谷さん(インタビュアー)の元に言葉が届けられるわけですよね。

ーーうんうん。

勉強したいことは、エンターテイメントの分野における言葉の力についてです。例えば「小説」についていえば紙媒体であったりデジタルの媒体であったり、同じ小説でもいろいろな媒体があるわけです。小説に絵が付けば漫画だと思うんですが、そういう媒体による違いの言葉の力、各分野における言葉の力について、勉強したいと考えています。

ーーどのような入試制度を利用しましたか?

入試は総合型選抜で受けました。一次試験の書類選考で自己推薦書を書きました。二次試験では面接がありましたね。

ーー今回のWSをどのように活かしましたか?

具体的に3つ挙げたいと思います。

1つ目は自己推薦書で本プロの話を書きました。合格した学校は「仲間と共に取り組んだ経験」や「協働体験」を大切にしてたので、本プロは作業自体は孤独だったんですけど、参加者同士で週3日zoomを繋いで、フィードバックをし合っていたので。

2つ目は面接で、実際に出版した経験を持ってる人ってやっぱり少なかったので、面接官の方にすごく興味を持っていただけましたね。

そして、3つ目なんですけど、そもそも総合型選抜とか学校型選抜、指定校推薦っていうのを受けようと思ったのが本プロに参加したからなんですよね。

ーー本プロに参加して、総合型選抜などの入試形式で受験しようと思ったのは何ですか?

「こんなおもろい体験してるやつ、同年代に絶対おらんやろ」って思ったからです。

ーーたしかに、WSは普段の学生生活とは違う経験をさせてくれますよね。

そうですね。本プロ以外にも文章にまつわるWSにも参加できたので、文章を深められました。色々なWSに参加して文章って面白いなって思ってから、「文章の力」について、めっちゃ勉強したいって思って受験しました。

ーーその大学に決めた理由は何ですか?

そうですね。総合型選抜を受ける前から候補には上がってた大学で、漠然と心理学とか人の心にまつわることがやりたいと思ってたんですけど、今は「文章」と「心」の密接な繋がりについて勉強したいということが明確になってきて絞れました。

ーー大学合格が決まった時の感想はありますか?

めっちゃホッとしました。落ちたらどうしようと思ってたので。

とりあえず大学には行けるんだっていう安心感がすごかったような気がしますね。

ーーあとはもうN高生活を楽しむだけっていう形になると思うんですけど、何をするか決めていますか?

そうですね、一応今参加中のWSが1つありまして、それが年末から1月2月くらいまであるのでひとまずそれをやりつつ、あとは今は進学資金を貯めているのでアルバイトとかいろいろしてますね。多分その生活が今後も続いていくのかなって思うんですけど、まあN高だからこその自由な時間を満喫しようかなっていうふうに思ってます。

ーー最後になるんですけど、「本プロ」っていうワークショップは、一言で表すと何ですか?

あーそうですね、N高生活を続けていく上での居場所になってくれたと思っていて、今もなお大好きな場所ですかね。

ーー素敵ですね。

メンバーだったりスタッフさんだったりとか、関わってくれた講師の方々だったりとかが、みんな一緒にいた「場所」っていう印象がすごく強くて、N/S高で友達って言える人は本当に本プロのメンバーくらいしかいないんですよね。

ーーそうなんですね。

友人関係を作るのを怠ってきた私が悪いんですけど、一番最初にN/S高で関わった人たちとすごく濃い繋がりを持ってしまったせいで、安易に友達を作れなくなってしまって、それくらい本当に濃密な時間だったんですよね。本プロの3ヶ月間くらいでWSそのものは一旦解散にはなったんですけど、今もなお私は本プロのメンバーが大好きです。

ーー素敵な関係ですね。

終わりに

本プロで、進路を決めたり濃い繋がりを持った仲間を得られた玉谷さん。N/S高のWSを使って、自分の可能性を広げることができたり、人との繋がりがたくさんできていることがこのインタビューを通して伝わったと思う。

みなさんも、玉谷さんのような素敵な高校生活を送れるようにぜひN/S高のコンテンツを存分に使って欲しい。

また「晩夏、藤袴ともう一度」を掲載している本「青空の余白」は現在販売停止中

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