論理哲学研究会のボスたちに突撃!

論理哲学研究会のボスたちに直撃
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プロローグ

取材・文=すみれ(N高6期生・通学コース)

「考えること」が好きなN/S高生の皆さん、少し私の話を聞いて欲しい。
どうやらN/S高に「深い話ができる場所」があるらしい。

その名も「論理哲学研究会」略して「ロンテツ」。主な活動として週に2回オンライン上で「対話」を実施している。
「対話」は問い(テーマ)に対して、参加者がそれぞれ意見を出し合い思考を深めていく場所、らしい。

なんとなく理解できたとしても、活動が特殊なゆえによくわからないところもあるのではないだろうか。設立理念の詳細や、「対話」ではどのような雰囲気で話し合いがなされているのかなどなど……。

今回私はそんな「ロンテツ」の理念や雰囲気を伝えるために、ロンテツのボスたちに突撃することにした。
ロンテツの副会長・会長にインタビューして、「対話」に参加し、感想を伝えること、これが私のミッションだ。

これは戦いでもある。
難しい話で頭がこんがらがっていくほど私のダメージが増えていく。「哲学」というワードを考えても難しい話が出てくる可能性が高い。
しかし私は皆さんにロンテツのことを伝えるためになんとしてでもミッションをクリアしてみせるっ!

突撃開始だっ!

目次

STAGE1:副会長に突撃!

記者のプロフィール(取材時)
副会長のプロフィール(取材時)

ロンテツ参加のきっかけは?

すみれ

ロンテツに参加しようと思ったきっかけは何ですか?

かざばな

元々哲学とか論理とかを考えるのが好きなタイプだったので、「論理」「哲学」などのキーワードに惹かれました。

すみれ

最初「対話」に参加したときの印象はどのようなものでしたか?

かざばな

不思議だな〜って思った記憶はありますね。
当時会長がモンゴルに行ってたときなのか、モンゴルについて話していて、「モンゴルがさあ……」みたいなことを言ってるから「モ、モンゴル……」みたいな。

参加のきっかけは「考えるのが好き」ということだったのか。

「対話」に参加したときは少し戸惑いもあったのか(笑)。しかしなぜ継続して参加しようと思ったんだろう?
それなら、次は「対話」について聞いてみよう!

対話の面白さは?

すみれ

「対話」に継続して参加しようと思った理由は何ですか?

かざばな

「哲学的な深い話をしよう」という場所って意外とないですよね。それを堅苦しく話すわけじゃなくて、フランクに話し合える場所って貴重だなと思ったからです。

すみれ

なるほど、対話は堅苦しい感じがしないのですね?

かざばな

僕は堅苦しくないかなと思っています。
対話って、哲学においては「アウトドア」なのかなと思っていて。部屋の中で「これはどういうことなんだ、うーん……」と詰まったときは、気分転換にアウトドアをしようという感覚です。僕は結構アウトドアが好きです(笑)。

かざばな

ロンテツは尖ってる人が多いなっていう印象で、自分の我(が)があるというか。
哲学的なことを人と話してみると、普段は気づかないけど、自分とは全然違う考えを持っているということに気づくことがありますね。

「論理哲学研究会」という名前から堅苦しいという印象を持つ人も多いかもしれないが、堅苦しくはないようだ。

確かに深い話をする機会はあまり多くないからこそ、話したときに違う考えを持っていることに新鮮さや驚きを感じることは多い。

なぜ哲学に興味を?

すみれ

哲学にはいつ頃から興味がありましたか?

かざばな

小さい頃から哲学っぽいことは考えていたなと思いますね。小学1、2年生ぐらいのときにふと何かが不思議になることがあって。
一つ特徴的なのが、「なんで自分は自分なんだろう」という問いがすごくありました。それは今でも疑問に思うときがあります。

かざばな

自分は内向的というのか、自己主張がないというのか、「なんで自分はこうなんだろう」というのを考えた末に「なんで自分は今の自分なんだろう」と思うようになりました。それが僕の哲学の始まりですね。

おっ、難しい……。
ここで一発目のダメージ……くっ……。

体力2
すみれ

なんで「自分はこうなんだろう」ということを考えた末に、自分の存在について強く意識するようになり、「なんで自分は今の自分なんだろう」という思いにいたったということでしょうか?

かざばな

少し違っていて、小さい頃に「なんで自分はこうなんだろう」という問いが生まれて、そういうどうしても答えられないもの、漠然と持ち続ける疑問があることに気づいた、という感じですね。

すみれ

なるほど!
そのような考え方には初めて出会いました。面白い……。

すみれ

哲学書は読みますか?

かざばな

これは副会長としてあるべき姿じゃないんですけど、あんまり読まないっていう(笑)。

かざばな

ただOrangestarさんっていうアーティストさんの曲は、自分にとって哲学を感じますね。
Orangestarさんの曲を聴いた当時真っ先に思ったのが「この感覚すごいわかるな」っていう感じでした。それをずっと聴いているとこれも一つの哲学だなと思いました。身近というか、素朴というか、そういう哲学が結構好きですね。

すみれ

Orangestarさんの曲の中でおすすめの曲はありますか?

かざばな

個人的に一番とっつきやすくて、哲学的だなと思うのは、「Nadir」という曲です。

すみれ

へ〜! 聞いてみよ!

ふとした疑問について考えていたら、これが哲学なのかもしれない、と思ったのか。
哲学というものがだいぶ身近に感じられてきたかもしれない。

会長ってどんな方?

ここで、会長への突撃に備えて会長の情報収集をしておこうと思う。

すみれ

会長のRyuさんを紹介するならばどんな感じで紹介しますか?

かざばな

一言で言い表せないんですけど、なんか不思議だなっていう。今まで関わったことのないタイプで。
例えば彼は今アメリカにいるんですけど、自分はアメリカと言われるとちょっと遠いなって思っちゃう。そんなふうに消極的というか控えめだけど、Ryuさんは「よしアメリカだー! 行こうー!」みたいなところがあるので、そういう違いは面白いなと感じます。

会長は行動力があるタイプなのか。かざばなさんはRyuさんに自分との性格の違いを感じていると、メモメモ。
こうなると会長がかざばなさんのことをどう思っているかも気になってくる。

ロンテツのすすめ

いよいよインタビューも終盤、かざばなさんから「てつがくのすすめ」を教えてもらった。

かざばな

僕がしいて言えることとしては「問いを立てよう」ですかね。
問いを立てることって哲学の本質だなと最近思いまして。
その問いについて答えを探すのかもしれないし、問いを元に自分の考えを修正するのかもしれない。
問いによって変わるものがあるなと思います。

ダメージは受けたものの、いい曲を知ることができて、かざばなさんの優しい雰囲気にも癒されて、楽しいインタビューだった。

かざばなさんが言っていた通り「哲学」は身近なもので、身構える必要なんてないものなのかも……?

とりあえず次に進もう。
次は設立者でもある会長に突撃だっ!

STAGE2:会長に突撃!

記者のプロフィール(取材時)
会長のプロフィール(取材時)

ロンテツ設立のきっかけは?

すみれ

ロンテツ設立の経緯を教えてもらっても良いでしょうか?

Ryu

N高生の3人で、哲学的な話をすることがよくあって、これ楽しいねってお互いに思い始めて、僕が「もう同好会作っちゃわない?」と言って始まったのが、論理哲学研究会です。

すみれ

最初に哲学的な話をしていた3人とはどういう形で知り合ったんですか?

Ryu

Twitterです。N高のTwitterを徘徊していると、スペース(※1)をやってたりするんです。
そこへ僕は迷い込んで、哲学的な話をふっかけてみたら意外と意気投合したという感じです。

(※1)スペース
Twitter上の音声通話

すみれ

初対面で哲学的な話を持ち出すってすごいなぁ……。(感嘆)

Ryu

僕はそういう話がすごく好きで、誰かと話したいなというのがありました。
彼らは最初ビジネスの話してたんですよね。ビジネスと哲学って似てるものがあって、その関連で哲学の話を繋げてみたら上手くいきました。

すみれ

ビジネスと哲学のどこが似てるなと思いましたか?

Ryu

ビジネスって、既存のものを否定して新しい事業をすることだと思っているんです。哲学は、日常的な常識を否定して、もしくは疑って、それから新しいものを生み出すもので。そういう点で、すごく似ているなと思いました。
例えば、パソコンは「キーボードもあって画面もあって使いやすいよね」っていうことで昔はパソコンしかなかったけど、「このキーボードいらなくない?」とか「画面でかすぎて持ち運べないよね」みたいに既存の価値観を破壊することによって、スマホが生まれたと思うんです。
それが哲学のプロセスと似ているんです。先生が「勉強しなさい」と言う、「それってほんとにそうなの?」「なんで勉強しないといけないの?」って考えるのが哲学なので、非常に似てるんですよね。そういう点で類似点を見出しました。

すみれ

類似点を考えるのが好きなのですか?

Ryu

類似点というか共通点を考えるのが好きです。今まで違うと思ってたものが実は本質的には一緒だった、ということはインパクトがあって楽しいですね。好奇心がそそられます。

ロンテツは「ノリと勢い」でできた場所だったのか。
だからDiscordの中でも交流が自然に生まれるような空間になっているのかもしれない。

「創設者の言葉」を深掘り

ロンテツの入部案内には「創設者の言葉」が掲載されている。これはRyuさんが書いた言葉だ。
この言葉にロンテツへの思いが詰まっているように見えたので、深掘りしていこうと思う。

情報が溢れている。これからもっと溢れていく。だから多くの人間は混乱し、結論だけを求めるようになっていく。そうなると、情報を適切に整理し発信できる人間に人々が付いて集団とを形成するようになる。そんな未来が見えたから、私は「哲学」という思考の入り口を通じて、集団を率い、世界中で活躍できる人たちを育てたいと思った。この世界に小さな哲学者たちが増えることで「対話」のある社会づくりの一助になるはずだ。

論理哲学研究会「創設者の言葉」
すみれ

「情報が溢れている。これからもっと溢れていく。だから多くの人間は混乱し、結論だけを求めるようになっていく。そうなると、情報を適切に整理し発信できる人間に人々が付いて集団を形成するようになる。」という一節がありましたが、そのように考えたきっかけやエピソードはありましたか?

Ryu

具体的に言うと「ひろゆき」ですよね。彼のやってることって、情報が氾濫してる時代に情報をある意味適切に処理して結論を出すっていうことなんですよ。
それを見る人が増えたということは、適切な情報処理ができなくて困っている現状があったからだと思っています。どこに行けばいいかわからない、何をすればいいかわからないところに、簡単な結論を発信してくれるひろゆきみたいな人が現れて、人が集まるっていう構図なんですよ。

すみれ

ふむふむ。

Ryu

情報を整理する道具として哲学が使われるだろうなというのがあって。
なんで情報がたくさんあると混乱するのかというと、全部盲目的に信じこんじゃうからですよね。だから正反対のことがあったときに「どっちを信じればいいんだ?」となる。

Ryu

哲学は「疑う」ということが第一段階としてあって、疑えばこそ優先順位がつけられるので、整理ができるようになるんですよ。だからその意味で、哲学が情報を整理する思考を身につける入り口になればいいんじゃないかと思いました。

すみれ

「そんな未来が見えたから私は哲学という思考の入り口を通じて集団を率い世界中で活躍できる人たちを育てたいと思った」という一節には、哲学を通じて情報を適切に整理して発信できる人を育てたいという意味が込められているのですね。

Ryu

そうですね。ロンテツを作ろうと思ったときに、教育機関みたいなものになれればいいなと思ったんですよ。僕がイメージしたのは、幕末の「松下村塾」(しょうかそんじゅく)。吉田松陰(よしだしょういん)という方が始めたところで、そこから高杉晋作(たかすぎしんさく)や、伊藤博文(いとうひろぶみ)などいろんな幕末の志士たちが生まれて日本を変えたっていう。当初はそういうものになれればいいなと思いました。

Ryu

ロンテツはただみんなで話してるだけで先生もいないので、ぱっと見は教育機関じゃないんですよ。けど、参加者は確実に何かを学び取って帰っていく。それって新しい教育の形だなと思って。
相手を疑うし自分も疑う、そして深めあっていくという過程において、自分についてや自分の所属しているコミュニティーについて考えるようになる。
そういうところから、ロンテツから世界を変えていけるような、例えば起業家とか言論人とかそういう人間を出せたら素敵だなと思っていました。

すみれ

なるほど、「思っていた」ということは、今は変わったということですか?

Ryu

僕の中では変わってはないです。だけどさっきの考え方は、日本を変えるような人間がえらいみたいな考え方にも結びついてしまう。別にお金を稼ぐ億万長者だろうが、日常の生活に困るような貧困者だろうが差はなくて、今の運営のみんなと考えた結果、「誰がえらいとか決めたくない」ということになったんです。
今は別の目標として、「場所づくり」というものにシフトしていますね。

すみれ

副会長のかざばなさんも言っていました。「対話ができる環境ってなかなかないよね」って。

Ryu

そうですね。一つの場所に先導するというよりは、いろんな人が集まって、そこでそれぞれが自分の目標を見つけていく方が健全で、より教育機関としての役割を果たせると思いましたね。

情報が氾濫していて適切に処理して結論を出すことが難しい、その通りだと思う。自分自身も情報がありすぎて対処しきれず、考えることを放棄してしまうこともある。

思考訓練の場としてロンテツに参加することもひとつの選択肢かもしれない。

対話の面白さは?

では次はロンテツの主要な活動である「対話」に関して、設立者の思いを聞いていきたいと思う。

すみれ

対話について簡単に説明お願いします。

Ryu

簡単に言うと、1時間半くらい、1つのテーマについて意見を出し合って、自分なりの結論を持って帰るということが対話ですね。
結論は出さなくてもいいんですけど、出そうとすることで質問も発生するものだと思っているので、出そうという心がけは大事だと思っています。

すみれ

対話の目的は何ですか?

Ryu

対話って「儀式」なんですよ。僕らの目的は、対話をすることじゃなくて場所をつくることなんだけど、対話っていうのは絶対必要なもので。

Ryu

2つの側面があって、1つ目は象徴としての儀式。
我々は対話をやってますよということの象徴。それを傍から見ている人は、ここは話をする場所なんだなと簡単にわかる。

Ryu

2つ目が祭りとしての儀式。
ここには、ある程度話したいことがあって、哲学について意見がある人が集まっている。そういう人たちの欲求、もやもや感を一気に爆発させてリセットする場所が必要で、それが対話なんですよね。
対話はある程度やり切った感が出るように設計されているんです。だから、対話に参加したらなんかスッキリして楽しかった、という経験ができる。そういう祭りとしての要素もあるんです。
ロンテツという組織を適切に管理するという面においても、重要な役割になっています。

すみれ

スッキリして楽しかったという経験ができなくなると適切に管理しにくくなる理由は、不満感が多い人が集まるとお互いに配慮できなくなっていって、ロンテツが荒れていってしまうからでしょうか?

Ryu

不満感が多いと、ロンテツから抜けてしまうからですね。不味かった料理店にもう一度行こうとする人はいないでしょう。

すみれ

なるほど、ロンテツの参加者は「話をする」ことが目的の参加者が多く、ロンテツで十分に話せる場がないと、ロンテツに対して不満がたまってしまうということですね。

すみれ

対話のテーマはどのように決めていますか?

Ryu

参加者の投票です。ロンテツのDiscord(※2)のサーバーでテーマ募集をしています。各自が日常で疑問に思ったことをテーマにしています。

(※2)Discord
チャットサービス

すみれ

今までの対話で例えばどんなものがありましたか?

Ryu

「なんで人は嘘をつくんだろう?」「友達とは何か?」「そもそも対話ってなんだ?」などです。たまにフェルミ推定(※3)やってみようとか、思考実験(※4)やってみようとかの特別な会もあったりしますね。

(※3)フェルミ推定
実際には調査することが難しい数字をいくつかの手がかりを元に論理的に出すこと。例えば日本の地形や国土面積などから日本に電柱が何本あるかを推定する、など。
参考:https://www.onecareer.jp/articles/1056

(※4)思考実験
頭の中で実験をすること。具体例として「トロッコ問題」がある。「トロッコ問題」は、暴走したトロッコの先には分岐点がある。レールをそのまま進むとその先には5人の作業員がいて、レールを切り替えた先には1人作業員の人がいる。レールを切り替えるべきかどうか、という問題である。

すみれ

へ〜〜! 全部面白そうだな〜〜。

Ryu

面白いですよ。ぜひ参加してもらいたい。

すみれ

Ryuさんが対話が面白いと感じる瞬間はどんなときですか?

Ryu

それぞれが目標を持ってると思うんですよ。それに対して進歩できるようなアイデアが見つかったら面白いなと思います。自分は「自分が思う幸せを実現できる空間を作りたい」という目標があるのですが、例えば民間のベーシックインカムのようなことをやろうとか、新しいアイデアが出たときに面白いなと思います。

すみれ

対話の雰囲気はどういう感じですか?

Ryu

真剣ですよね。funnyよりinterestingみたいな感じです。
重要な点は、世の中にはfunnyな場はたくさんあるけど、真剣な話し合いができる場は少ない。どっちも面白くて良いけど、機会を提供する場所に偏りがあるので、対話という場はすごく貴重なものだと思っています。

なるほど、対話は「日常を疑う」という場だから新しいアイデアも出やすいのか。

funnyとinterestingそれぞれ提供される割合を考えてみると、確かに考えてみるとアミューズメント施設はよく見るがロンテツのような場所はあまり見ない。そこに気づくとロンテツはとても貴重な場なんだと感じる。

なぜ哲学に興味を?

すみれ

いつ頃から哲学に興味を持ちましたか?

Ryu

明確に興味を持ったのは高校1年生のとき。全日制の高校にいたのですが、なんとなく違和感を持ったんです。毎日勉強させられるけど、これは正しいのか? 俺は少なくともやりたくねえぞって。それに疑いもなく勉強するって奴隷みたいじゃないかと思って。
そうして不満を持つと、なんで不満を持っているんだ? 本当は何がやりたいんだ? なんで勉強は大切なんだ? とか思うわけですよ。そうしているうちに、こうやって考えることが哲学なんだなと気づいたんだと思います。

Ryu

自分の考えを否定できる土壌が育っていたというのもあると思います。
幼少期から転校が多かったのですが、毎回カルチャーショックを受けるんですよね。今まで自分が正しいと思っていた価値観が崩れる。
僕は小学2年生まではガキ大将みたいな感じで自分が世界の支配者だと思っていたけど、小3でタイに行って、そこではもちろん別の帝国があって僕が王なわけではなくて。
そういう経験をいくつかして、自分が思ってることだけが正しいのではないということに気づいて。だから哲学にビビッとくるものがあったのかなと思います。

すみれ

哲学書は読みますか?

Ryu

読むには読むんですけど、本って全部哲学書だと思っていて。
ニーチェのなんとかかんとかとか、そういうものだけが哲学書ではないと思うんです。

すみれ

哲学は身近なものなんですね。

Ryu

そうですね。別の話でいうと、例えば対話のテーマ募集はお悩み相談に近いんですけど新聞の端っこにあるお悩み相談とは違うんです。
新聞のお悩み相談では「やる気が出ないんです」みたいな相談があったときに、回答者が「じゃあ筋トレをしなさい」「朝食を食べなさい」とか結論だけをパーンって言うんですよ。それはそれでいさぎよくて、救われる回答ではあるかもしれないけど、本当に問題を解決してはいないんですよね。
哲学だったら、「やる気が出ないんです」という相談に対して「なんで出ないのか」という問題の分析から入って、結論は過程を含めて回答するところがあるんですよ。
その結論だけじゃなくて、どういう考えでその結論に至ったのかまでを言うことで哲学になる。哲学の方がより親切で再現性がある。

Ryuさんも浮かんだ疑問を考えていたら、これが哲学かもしれないと思ったのか。かざばなさんと興味を持ち出す流れが一緒だ。

自分の考えを疑うことは、なかなか難しいと思う。カルチャーショックの経験はRyuさんの中で大きな衝撃だったんだろうなと想像する。

副会長ってどんな方?

副会長から会長の印象を聞いた以上、会長から副会長への印象も気になるのでちょこっと質問。

すみれ

副会長のかざばなさんを紹介するとしたら、どういう感じで紹介しますか?

Ryu

僕と正反対の人間。僕は行動が先だとか、自由が好きで義務感に縛られたくないみたいな面があるんですけど、彼は真逆で、勤勉で真面目だし、規則は守ろう、仕事はしようという性格です。だから補完してくれているんですよね。
そういう意味で彼がいなかったらロンテツは成り立たないだろうなと思います。

Ryu

僕みたいな人間、野球で言えば、ホームランバッターみたいな人間は運営に2人も3人もいらないんですよね。
2人も3人もいると意見が分かれて、対立してぐちゃぐちゃになっちゃうんですよ。
だから真面目に働いてくれつつ、意見も言ってくれるけど、自分! 自分! っていう感じじゃない人が欲しいなって思ってたんですよ。
そんなときに彼が現れて。ほぼ直感で彼がいいなと思って、副会長をしてくれないかという話を持ちかけました。

かざばなさんとRyuさんがお互いに支え合ってロンテツが成り立っているのか。
表現するのが難しいが「ふたりはプリキュア」みたいな感じですごくいいなと思った。

ロンテツのすすめ

最後にRyuさんから言いたいことがあるそうだ。

Ryu

最近一部で「この人嫌いなんです」ってTwitterでリストアップするという晒し上げみたいなよくない行為を目にするのですが、でもこれってある意味でしょうがないとも思っているんです。
その行為の原因って自分の信頼できる共同体がなくなったことによる寂しさだと思うんです。
例えば日本だと信頼できる共同体に警察があって、「この人は悪人なのでもう会いたくない」ということがあれば警察に言うことができる。晒し上げの事例に当てはめて考えると、嫌いな人を攻撃または排除できるということです。
でも信頼が薄いと共同体に言っても攻撃や排除といった対応をされにくいのではと考え、自分でやるしかなくなって、共同体の構成員同士が一気に争い出す。それがTwitter上でも起きていると思っています。

すみれ

なるほど。

Ryu

また現代におけるアイデンティティの持ちにくさもその行為に繋がっていると思います。昔は家柄などの強力なアイデンティティがあったけど今はない。加えて大きすぎる団体の中では一人一人がアイデンティティを持ちにくいのでなおさらです。だからお互いに言葉の暴力で戦うことになる。

すみれ

ふむふむ。

Ryu

アイデンティティとは「自分の存在価値を規定する、自分以外のモノ」だと思っています。「自分の価値を規定」するのは、例外を除いて他人です。両親だったり、友達だったり、SNSのフォロワーだったりします。
そんな中「晒しあげ行為」は多くの人間が見過ごし難い行為であり、それはイコールアイデンティティの獲得となります。

すみれ

なるほど、例えばアイデンティティを欲しがった生徒は、嫌いな人をリストアップしたらいろんな人が自分の価値観を知ってくれるかもしれないと思い、Twitterで「〇〇さんが嫌い」ということを発信。(承認をめぐって戦う。見過ごし難いことなので注目されやすい。)Twitterを見た人は、この生徒はあの人が嫌いなんだということを認識し、生徒自身はそれを認識されることでアイデンティティを確立することができる、というようなことなのですね。

Ryu

そういうことです。自分のアイデンティティとなる価値観とか、共同体とかを求めているなら、それこそ哲学が支えになるということを言いたいです。
自分がなんでそんなに心細いのか、その「なんで」を考える機会としてロンテツに来てくれるのもいい手なのではないかと思っています。

む、難しい!
ギャアァアアア!

しかしここまで自分の考えが構築されているなんて、さすがロンテツの会長だ。
こんなふうに社会状況を分析できるようになったら、きっと世界はもっと面白く見えるだろう。
(Ryuさんはアイデンティティについて言いたいことがまだあるそうなので、聞きたい方はぜひRyuさんに直接聞いてみてほしい。)

Ryuさん自身の経験談に加え、ロンテツの設立秘話や設立理念、「対話」の構想など、ロンテツという場所の奥深さを知ることができ、面白いインタビューだった。

次はいよいよ最後のステージ、「対話に参加」。
私はロンテツメンバーではあったが、これが初めての参加だ。

体力はあと少し。生き残ることはできるのか!?

FINAL STAGE:「対話」に参加!

時刻は20:00。
対話が始まったぞ……!(ドキドキ)
おそるおそる参加する。

次々とメンバーが参加する。
一旦集まった人数は私を含め6人。

いよいよはじまる。

司会

本日のテーマはこれだ!「表現者に必要だと思う要素とは?」
これについてどう思うのかというのを、みんなで言い合っていきたいと思います。

ここで言う表現者とは、何か作品を作る人とか、そういうものだと思ってほしいです。
言論とか、自分の考えを表現する人も含みます。

会員A

はーい! まずめっちゃ大事なところだと思うんですけど、世界が必要ですよね。表現するときって言語と同じような感じで、概念を説明する物だと僕は思うんですよ。要は誰かに伝えるときに、何かしらの形に変換しなきゃいけない。その変換されたものが「表現」だと思うんですよね。まず変換する元が必要。だから表現者の要素の中には絶対に世界がある。

会員B

世界っていうと、確率の世界とか、職人の世界とか、そういう感じなのかな?

司会

もしも小説で恋愛の小説を書こうと思ったら、恋愛を知ってなきゃいけないみたいな。もちろん実際は恋愛という形をとって別のことを表現したい場合もあるけど。

約1時間半にわたる「対話」が終わった。

全ての会話を文字に起こすと長くなってしまうので、ここからは終わった後の感想を述べたい。

「対話」は純粋にお題に対して考えたことを発言していくという感覚だった。通学コースに通う人だと「Nゼミ」に似たような議論だといえばわかりやすいだろうか。
ただ「収束」があるというところが対話の大きな特徴だと思う。人それぞれの考え方があるよね、で終わらせない。できるだけ参加者の認識をすり合わせにいくので、お互いの考えを深く知ることができる。

雰囲気としては、参加者メンバーは真剣で、わからないところがあったら納得するまで話し合う、そういう空気が流れていた。

人が話しているときに、ひとつの内容に対しても、それぞれ違う構造の考え方を持っている。話を聴きながらそれぞれが持つ構造を理解し捉えようとするたびに、視野が広くなっていく気がした。 
日々の思考の中で、考え方が固定されていたんだなということを実感した。誰かが話して、そこから話が広がるというときに、出てくる発言が自分の考えているものとは違う。違うことは当たり前のことだが、一人で考えているだけでは違う考えがあることに気付きにくい。
対話に参加することで自分の考えから一歩抜け出し、新しい視点で物事を見ることができるようになると思った。

ロンテツは情報を整理して適切に発信する力をつける場所でもあった。
その点において対話の中では「疑って」「発言」することを繰り返すので、この力を身につけることがしっかりとできると感じた。

一つのテーマについてこんなにも長い時間複数人で話し合ったことは初めてで、何より自分のかたくなった考え方から抜け出せた感覚を持つことができて、良い時間だったと思う。

………

………

(私はまだミッションを終えていない! 最後まで伝えなくてはならない! 今までのかざばなさんやRyuさんのインタビュー、対話で気づいたことを思い出そう……力がみなぎってくるぞ!)

はっ!

生き返った!


エピローグ

生き返ることができたので、今回の突撃で感じたことを記したいと思う。

「考える」ということは体力を使うものだ。だからこそ考えることを放棄してしまうことも多いのだ。そんなときに仲間と考えることができる場所は貴重だと思う。

ロンテツは難しいことを語らなければならない場所ではない。日常的に考えていることをちょっと誰かと話してみたいな、という気持ちで参加して大丈夫な場所だ。私はこの記事を書くことを通してそう感じた。

ロンテツでも、ロンテツでなくても、ちょっと日常を疑ってみて、そして誰かと話してみてはどうだろうか。きっと新しい発見があると、確信をもって言える。

✳︎  ✳︎  ✳︎

最後に、私はインタビューを完遂し、対話に参加して感想を記すことができた、ということで、

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ロンテツに参加してみたい方はSlackの「#論理哲学研究会」から

論理哲学研究会のボスたちに直撃

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