卒業したセンパイを追跡!〜学園TAとして働く、さとのば大学2年生〜

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取材・文=つか(N高6期 オンライン通学コース)

はじめに

N/S高には様々なところで活躍している人がいますが、N/S高を卒業したあとはどんな生活をしているのでしょうか?そんな謎を解くため『卒業したセンパイを追跡!』シリーズを勝手に始めていきたいと思います!

第1弾となる今回は、N高を卒業した後この学園の経験学習部TAとして働く、まさきさんにインタビューしました。

大学というのは色々な意味で「コミュニティでしかない」のだなと思ったくらい、自分から動くことの大切さを教わることのできたお話でした!

まさきさん。
さとのば大学に通う大学2年生で、N/S高の経験学習部で*TAとしても働いている。

*TA・・・ティーチング・アシスタント。N/S高の学園生活を職員とともに支えてくれる人たちのこと。主に大学生。

ターニングポイントは「職業体験」

ーー2020年にN高を卒業したあと、現在はN/S高のTAをされているのですか?

そうです。職業体験やワークショップ、トークセッションを運営している経験学習部という部署でTAをしております。この学園以外にも複数の場所で働いていまして、仕事がないとムズムズしてしまうような人間です。(笑)

また僕は*市民大学の「さとのば大学」と通信制大学の「managara大学」という2つの大学に所属しています。

さとのば大学は市民大学なので、ここに通うだけでは大学卒業資格が取れません。そのため、さとのば大学と提携していて大卒資格が取れるmanagara大学にも在籍しています。

*市民大学・・・主に市民に向けて、広く一般的に開設される講座全般を指す。入学や卒業といった制度がなく、プログラムを修了しても大学卒業資格(学士号)を得られないものが多い。

今年の職業体験でのまさきさん

ーーすごく不思議な大学生活なんですね……でも、なぜTAとして働こうと思ったのですか?
N高時代に行った長崎県にある五島列島への職業体験がきっかけでした。この経験が自分を変えてくれたと思っています。

だからこそ今度は運営サイドにまわって、次の高校生たちにも同じような時間を届けたいと思ったのが理由ですね。

ーー素敵ですね! 職業体験に参加したのには、何かワケがあったのでしょうか?

僕はもともと全日制高校に通っていたのですが、高2の7月にN高へ転入してきました。N高時代は週5で飲食系のアルバイトをしていて、月180時間働く時期もあったくらい働き詰めの生活でした。

だからあまり学校をメインに生活していなかったんですが、やっぱり高校生らしいことがしたいなと思って、たまたま募集していたN高の職業体験に申し込んだんです。

ーー身近な理由から参加したんですね!

全日制高校に通っていたとき、実はいじめを受けていました。人間不信にもなって、かなり辛かったです。

だけど職業体験で泊まった民泊先のおとうさんや一緒に過ごした仲間たちに、今までの暗い過去を全てさらけ出すことができたんです。そんなことができると思っていなかったからすごく感動して……。

そこから、今大学で学んでいる「地方」に興味を持ちました。またこのような心に残るような体験を次世代の人にもしてほしい、そのお手伝いがしたいという思いで、経験学習部のTAにもなりました。職業体験は自分にとって、とても大きなターニングポイントです。

長崎県の五島列島で撮った写真

謎の大学生活の中身

ーーさとのば大学に入った理由は何ですか?

N高の職業体験が終わってからも、そこで出会った民泊先のおとうさんと連絡を取り続けていました。それくらい本当に長崎県の五島列島が大好きになったし、同時に地域に興味を持ち始めていましたね。

だからN高卒業後は五島列島をスタート地点にして、たくさんの地域を回っていきたいなと楽しみにしていました。しかしコロナの感染拡大で断念することになってしまったんです。

そんな中で、大学自体が提携している地域を持つ「さとのば大学」なら、”さとのば大学の学生”という肩書きを使うことができるから、コロナ禍でも地域に入りやすくなるのではないか、と考えました。当初の計画は崩れてしまいましたが、さとのば大学にすごくワクワクしたんです。

ーー提携している地域……?

さとのば大学は、1年ずつ提携地域に地域留学をして学ぶ地域を巡る大学なんです。いろいろな地域を自分の目で見て体感して、そこで感じた地域課題と自分がやりたいことを掛け合わせてプロジェクトを大きくしていく。そんな少し起業のプロセスにも似た学びができる場所です。

さとのば大学の学生を受け入れてくださる地域が日本全国に10ヶ所あるのですが、僕は今年の9月までその中の岡山県西粟倉村(にしあわくらそん)というところにいました。

ーーそこではどんなことをしていたんですか?

西粟倉村の小学5、6年生たちと一緒に、食について考えるイベントを立ち上げました。

また、村の小学生と僕の2人で、村の子どもたちの給食のレシピを提供させていただいたこともありました。その給食には“*ジビエ”と呼ばれる狩猟で捕獲した鹿の肉を取り入れました。本来ならそのまま廃棄されてしまうはずの鹿肉でしたが、“森からの命”として、幼稚園から中学校まで120人分の給食になったんです。このことはネット記事にもなりました。

僕が興味を持っている”地域”と”食”を掛け合わせて、自分のプロジェクトを進めてきました。

*ジビエ・・・狩猟によって、食材として捕獲された狩猟対象の野生の鳥獣、またはその肉を指す。

(Wikipediaより引用)

小学生との企画イベントで作った料理

ーー”食”にも興味があるのか……それにもきっかけがあったのですか?

”地域”に興味を持ったのはN高での職業体験がきっかけでしたが、”食”というものに関心を抱いたのはもっと前です。

僕はおじいちゃんをガンで亡くしています。おじいちゃんは本当に食べることが大好きな人でした。そんなおじいちゃんを見ていて、なんで死にゆく人が満足に食べることもできず、抗がん剤によって痩せ細っていかなければいけないのだろうと思って。

食事は人間の体を作るための大切なものです。だからこそ、日々の食事を見直すことによって大きな病気も未然に防ぐことができると思いますし、食事で笑顔になりながら健康な体を作るサポートができる料理人にとても憧れがありました。そこから”食”について興味を持ちましたね。

過去の”料理人”という夢からは少し形が変わりましたが、食への興味は大学生になった今でも突き詰め続けています。

ーーなかなか奥深くて、アクティブな活動をしているんですね!

この「自分のプロジェクト」というのも、進めるのはチームでも個人でも良いんです。何をするのも自由です。基本的には1年に1回ずつ活動する地域を変えて、4年間で4つの地域を旅していく形になっています。こういった行動重視な活動ができるのも、さとのば大学の魅力です。

また普段は午前中に週3回、Zoomでオンライン講義があります。そこで教えてくださる先生たちも変わった方が多くて、いろんなことを学ばせてもらっています。このオンライン講義の時間以外で、今お話したような自分のプロジェクトを進めていったり、大卒資格を取るための勉強をしています。

ジビエを使った給食

さとのば大学には「受験」がない!

ーーそんなさとのば大学の受験はどんな感じだったんでしょうか?

「受験」という言葉でイメージするような学力試験はなく、志望理由書とZoomでの面接が入学試験でした。

面接とは言ってもそんなにガッチリしたものではなくて、この大学で何を学びたいのか、どのように成長したいのかといった、志望動機の根本的なところに関する質問が多かったです。僕自身は面接というよりも、面接官とのコミュニケーションだと思っていたくらいなので、あまり緊張はしませんでしたね。(笑)

またmanagara大学は書類選考のみだったので、N/S高の入学時と似ているところがあると思います。

高校時代の勉強に関しては基本的にN高のレポートだけをやっていました。受験塾などにも通っていなかったですし、レポート以外の学習には特に時間を割いていませんでした。

ーー学力ではなく、学びたいという意志を尊重する大学なんですね!

ここで少し余談なんですが……実は僕、大学進学を決めたのが高3の1月だったんです。そう、卒業式の2ヶ月前です。

そんな時期に「大学に行こうと思うんですけど……」と担任の先生に伝えたら「え? 今?」という感じで、とても驚かれたのを覚えています。(笑)でも最後まで出願のための手続きを手伝ってくれましたね。

僕は推薦書の発行を学校に頼んでいたので、少しバタバタした期間もありましたが、一般的な大学の受験というものに比べると僕はゆるいパターンだったと思います。

卒業式の写真(右は担任の先生)

ーーさとのば大学に入ることを決めたとき、ご両親の反応はどうでしたか?

僕の家が12人家族ということもあり、基本的に放任主義なので「いいんじゃない?」という感じで認めてくれましたね。本当にダメなことにはストップをかけるけれど、自分のやりたいことはやらせてくれるような親なのでありがたかったです。

ーー実際に入ってみてどうですか?

自分で考えてプロジェクトを進めていくのも楽しいですが、日々たくさんの地方の面白い大人と出会えるのもまた幸せです。

良い高校に行って良い大学に進んで良い企業に就職する、というのが”当たり前”だとよく言われますよね。でも僕が地方で出会うのは、その”当たり前”が良い意味で壊れた人たちなんです。

そういう大人たちを見ていると、僕も新しい道を切り拓いていきたいって思えるので刺激をもらえますし、とても尊敬します。

ーーかつての人間不信はないのですか?

いや、もう特にないです。時が過ぎたから言えることではあるのですが、むしろあのとき僕をいじめてきた人たちに今すごく感謝をしているんです。

当時はかなりモヤモヤしていたし、命を絶とうかと思った瞬間もありました。でもよく考えてみたら、あの頃いじめてくれたから僕は高校を変えて、普通じゃない大学生活を選んで、今とても面白い人生を歩めていると思っています。そう思えるくらいに自分は強くなれているんだと実感しています。

学園のTAとして働くまさきさん

ーー今後の展望を聞かせてください!

一次産業から地方創生を目指したいと思っています。食というものについて、最近の日本は海外に頼りがちですがそこには限界があります。

だからこそ、生産者になりたい、一次産業に関わりたいという若い世代を増やしていきたいんです。まずは、教育というツールを使ってたくさんの子ども達に農業などの一次産業について知ることを届けていきたいです。

これからも自分のやりたいことに正直になって、柔軟な考え方で生きていきたいですね。

おわりに

まさきさんはインタビュー中も常にリラックスした雰囲気を作ってくださったり、この記事のためにたくさんの資料を用意してくださったりと、本当に心が広くて優しい方でした。

自分の気持ちに正直に生きることが幸せな人生を歩むこと、そして人として大きくなることに繋がるのかもしれません。

もし気になったN/S高生の皆さんは、ぜひお話ししてみてください!


【在学生インタビュー】小曽根雅彰さん
上の記事では、さとのば大学での生活についてより詳しいお話をされています。ぜひこちらもご覧ください!

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