夢を追いかけ、写真を撮る | 2度の転職を経てフォトグラファーになったHirokoさんにインタビュー

取材=美田 皐月(みた さつき)(N高6期・オンライン通学コース)/sora (N高6期・オンライン通学コース)
文=美田 皐月
現在高校生で、進路に困っている人はたくさんいると思う。
そこで、2度の転職経験があり、教員免許まで取得している、不思議な経歴のフォトグラファーさんにインタビューをしてみた。
進路選択以外にも、フォトグラファーの仕事や、写真に対しての思いも聞いた。
フォトグラファーという職業に興味がある人や、写真に興味がある人、写真を撮るのが苦手という人にもぜひ読んでいただきたい。

話をしてくれた人=Hiroko (ひろこ)さん
株式会社ラブグラフ(注1)
写真教室ラブグラフアカデミー プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)
数学の教員免許を持っており、大学時代は塾講師として4年間勤務。その後新卒で銀行員に。その間独学でカメラを学び、副業カメラマンとしてラブグラフにジョイン。本業もマーケティングの企業に転職。そして2021年7月、ラブグラフに正社員として入社。
現在Instagramのフォロワーは1万人を超えており、ラブグラフ内でも社内上位10%TOPカメラマンとして活躍中。
Hirokoさんの紹介ページ:https://lovegraph.me/photographers/hiroko
Instagram:https://www.instagram.com/hiroko__photo/
(注1)株式会社ラブグラフ
2015年2月設立。出張撮影サービス「ラブグラフ」、法人向け撮影サービス「ヒストリ」、写真教室「ラブグラフアカデミー」を提供している。
ビジョンに「幸せな瞬間を、もっと世界に。」、ミッションに「世界中の愛をカタチに」を掲げる。
2度の転職。その根本にあるのは一つの「軸」
Hirokoさんは、現在勤務しているラブグラフに入社するまでに何度か転職をし、教育、金融、マーケティングと、幅広い分野を経験してきた人だ。
一見何も共通点がなく、バラバラの仕事のようだが、Hirokoさんはとある軸から気持ちがブレたことはないと語った。
ーー教員免許を持っているとのことですが、いつから教員になろうと思ったのですか?
Hirokoさん:人から感謝される仕事というか、人の人生にいい意味で影響を及ぼせる仕事に就けたらいいなと思ってたのが、教員になりたかったきっかけだと思います。
Hirokoさんのお父さんは教員だったそうだ。その背中を見て育ち、小学生や中学生の頃から、ずっと教員になりたかったという。父親が生徒から寄せ書きをもらったり、教え子の結婚式に呼ばれたりしているのを見て、そんな存在になれているのがすごいと思ったそう。
実際に教員養成をしている大学にも入学し、塾講師としても4年間アルバイトをしていた。だが将来のワークライフバランスを考えたときに他の選択肢を考えてみようと思ったらしい。
そして、結果としてHirokoさんは銀行に就職した。
ーーなぜ銀行員という道に興味を持ったのですか?
Hirokoさん:その時、FP(注2)や簿記に興味があったんです。私は数学の教員免許をもっているんですけど、数学と一緒で、FPや簿記も人から敬遠されがちだと感じていて。だから、自分がわかりやすく説明できたら喜んでもらえるんじゃないかなと思ったんです。教員と一緒なんですけど、何か自分の知識で人の役に立てる仕事がしたかったんですよね。
銀行員として勤務する中で「あなたに聞けてよかったです」とお手紙をいただくなど、嬉しかったことも多かったという。「やりがいも思ってたとおりだった」と笑顔で話していた。だが、やはりお金が絡む仕事ということもあり、シビアな時もあったようだ。
そんな中、Hirokoさんはラブグラフに出会った。
Hirokoさん:銀行に入って1年くらいの時にラブグラフに出会って、「あれ、これ私が一番やりたかったことなんじゃないかな?」って思って。自分が好きな写真で人を喜ばせられる。自分の写真スキルで人を喜ばせられるってなったら一番適してるんじゃないかなって。
ラブグラフに入ってすぐに、たまたま結婚式の前撮りの撮影をしてほしいというゲストさんがいた。その方はもともと経験豊富な別のカメラマンさんにお願いしようとしていたが、雨で延期になってしまい、もう結婚式まで時間がなくなってしまった。そこでまだ新人だったが、Hirokoさんが担当をすることになったという。
ロケ地の下見を何度も行い、イメージ写真などもたくさん用意して臨んだ撮影。「覚えてないくらい緊張しながらも頑張って撮影した」と、少し笑いながら話してくれた。
そして撮影が終了すると、感動のあまり、お礼を言いながら新婦さんが泣き出してしまったという。
「色々あってたまたまHirokoさんに撮影していただくことになって、最初は不安や心配があったけど、本当によかったです。結婚式にも席を用意させていただきたいので、来てもらえませんか?」
Hirokoさん:すごく感動したのを今でも覚えています。もともとカメラマンになりたいという思いがあったうえで応募してるし、なってるんですけど、そこでガラッと意識が変わりました。一番嬉しかった出来事です。
それからHirokoさんは「ラブグラフに役立つように」と、マーケティングの勉強のため広告代理店に転職し、その後正式にラブグラフに入社した。
Hirokoさんのように、天職のような職業との出会いはとても憧れるものだ。だが、それは自分のやりたいことについて「自分の力で人の役に立てる仕事がしたい」という、明確な目標を定めて仕事をしてきたHirokoさんだからこそ見つけることができたのだと思う。
仕事に対して熱心に向き合う姿勢を含め、とても憧れる女性だと私は感じている。
(注2)FP
ファイナンシャル・プランナー。
相談者に合わせて、住宅ローンや保険、年金制度など、人生の夢や目標を叶えるための総合的な資金計画を立てるサポートをする専門家。幅広い知識を備える必要がある。
職業「フォトグラファー」
ここからはフォトグラファーという職業について迫っていきたいと思う。
ーーフォトグラファーをやる中でのやりがいはなんですか?
Hirokoさん:フォトグラファーのやりがいだと感じることは「また撮影していただけませんか?」と言ってもらえることです。カップルさんの写真やウェディングフォトを撮った後に、マタニティフォトやお子様のバースデーフォトなどを何度も頼んでくださる方もいて、そういうのがすごく嬉しいなと思って日々、撮影をしています。
基本的にスケジュールが合う人が依頼を引き受ける、という形で仕事をしているらしい。
今では直接DMで依頼をしてくださる人も増えているそうだ。「カメラマンがたくさんいる中で私に頼みたいって言ってくださって嬉しい」とHirokoさんは明るく教えてくれた。
ーーHirokoさんが指名されて撮影を行うようになるまでに意識したことはありますか?
Hirokoさん:ブランディングみたいな感じにはなっちゃうんですけど、自分が好きなもの、例えば私はお花が好きなので、それをうまくアピールして「私もお花が好きなので、Hirokoさんに撮ってほしいです」って人を増やすようにしました。そうやって、好きなジャンルが違っても「この人の写真が好きだから頼む」みたいな人も増えていったのかなと思います。
「Hirokoさん流ブランディング術」として、一本主軸を決めるというのがキーワードなんだそう。
・自分ができることと好きなものをかけ合わせる
・「全部できる」より得意なものを主軸として押し出す
こうやって工夫をしながらSNSの運用などにも力を入れ、ラブグラフで撮影できるゲストさんを増やしていったという。
Hirokoさんの紹介ページを見ると、得意な撮影として「お花」「自然」「ウェディング」と書いてある。お花と自然は「好き」から発展していったようだが、ウェディングはどういう思いで撮り始めたのだろうか。
ーーウェディングフォトは好きな分野だったのですか?それとも得意な分野だったのですか?
Hirokoさん:ウェディングに関しては、撮りたいっていう憧れがあったのと、私はウェディングフォトを「家族の始まりの瞬間」って思っていて。ウェディングフォトは心が「これから一緒に生きていくぞ」っていう決意の写真だと思っているので、そこを撮っていきたいと思いました。私の人生の目標として、「人の人生にずっと寄り添える人を目指して」というものがあるんですけど、それが前提にあったときに「じゃあそれってどんな写真なんだっけ?」ってなると、家族写真の始まりである、ウェディングフォトかなと思ってます。
Hirokoさんと写真
次は、Hirokoさんにとっての写真について紐解いていこうと思う。
ーー紹介ページに「写真を見返す瞬間がとても好き」って書いてらっしゃいますが、Hirokoさんにとっての写真とはどういうものなのですか?
Hirokoさん:私にとっての写真は、タイムカプセルみたいなものかなと思ってます。高校生の時にiPhoneが出て写真を撮り始めたので、いまだに高校の友達と会った時に、「あ、これ覚えてる?」とか「このこんなことあったよね!」って話すのがすごく好きで。写真を見るだけでなんか笑い声が聞こえてきたりだとか、その時の感情が全部詰まったまま思い出せるみたいなのが、写真のいいところだなって思っています。
記憶はすぐ忘れてしまったり、奥に眠ってしまうこともある。でも、それでも写真を見返すだけでその時の感情を思い出せるというのが、写真の魅力だとHirokoさんは教えてくれた。
だが、写真を撮られるのが恥ずかしいと思う人ももちろんいると思う。私もそう思うことが多く、写真を撮られるのはあまり好きではない。
ーー写真を撮られるのが苦手な人でも、積極的に撮っていった方がいいと思いますか?
Hirokoさん:そうですね、私に依頼くださる方の中でも、写真撮られるのが苦手ですみたいな人ってやっぱり多くって。でも、ちょっともったいないなとは思っています。その時ってもう戻ってこないし、後から撮りたかったって思っても撮りに戻ることはできない。どれだけ後悔してももう一回撮りに行くことは絶対できないですよね。
実際に「あの時写真を撮っておけばよかった」と後悔した経験がある人も少なくないと思う。
Hirokoさんは写真を撮るときはスマホでもいいし、その時見たかわいいお花や今日の夕日でもいい。自分が映ってなくてもいいと思うと話をしてくれた。
「だって同じ夕日は2度と見られないから。」
今日の夕日は今日しか見られないから、綺麗な空やお絵描きしたような雲を見つけるとすぐ写真を撮りたくなるという。そうやってHirokoさんは日々過ごしていると語ってくれた。
*
インタビューの終わりに、進路について質問をした。
ーー高校生で進路に迷っている人にはとにかくこれをしてほしいというものはありますか。
Hirokoさん:とにかく自問自答をしてほしいなって思います。私みたいに一本、軸が決まるみたいなのが大事だと思っていて。「これがやりたいな」って絶対見つかると思うんです。自問自答をした上で、高校生のうちから軸を見つけられるような考え方ができたらめちゃめちゃいいんじゃないかなって思います。
「教員になりたい」という具体的な職業の他に、Hirokoさんは「人の人生にずっと寄り添える人を目指して」という目標を決めてさまざまなことに挑戦してきた。その目標があったからこそ、今フォトグラファーとして活躍しているのだと思う。
高校生は進路についてじっくりと考え、行動することができる時期だ。周りが具体的な職業を決めていたとしても焦らなくていい。また、思い描いた夢を「できるわけない」と捨てなくてもいい。
自問自答をして、自分の人生の目標として一本の軸を考えてみよう。
「これがやりたい」を追いかけ、努力を重ねれば、Hirokoさんのように必ず輝けるはずだ。
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