小さい頃に遊んだおもちゃの裏側からアイデアの手法を学ぶ〜タカラトミーの社員さんにインタビュー

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取材・文=滝谷 佳代(N高5期・通学コース)

N/S高等学校、N中等部の通学コース、オンライン通学コースではプロジェクトN(以下プロN)という授業が実施されている。

社会に出て活躍するための知識やスキルを身につける課題解決型学習プログラム。具体的な解決策を企画し、制作物をアウトプットしていく。私はこの2年プロNを体験する中でチームで企画を作っていく動き方やアイデアの出し方に何度も詰まった経験がある。

今回は商品開発のプロである、佐野さんにアイデアの出し方のコツについて話を聞いた。

佐野 信二(さの しんじ)さん
株式会社タカラトミー 事業統括本部 シニアスペシャリスト
1989年入社。マーケティングを主な業務とし「リカちゃん事業」「女児向け玩具事業」「バラエティ話題商品」「新規事業」を担当。
単品ヒットでは「ファービー」「生キャラメルポット」「ケータイわんこ」「うまれて!ウーモ」「プリントス」などをプロデュース。

目次

コアな目と時代に合わせるモチーフが秘訣

ーー発想から制作の時間はどのぐらいですか?

発想したアイデアが”いいね”ってなったら、通常のもので試作品は3~4週間で完成します。

ーーそんなに短期間なんですね。

試作品なので。そこから原型となるもの(大量生産される際に参考にされるおおもと)を作って形を作って金型(プラスチックの部品をたくさん作るための金属製の型)に入ってというプロセスがあります。初期段階では1か月ぐらいあればある程度のものはイメージできます。凝った仕様ですと試作だけで3か月かかります。

ーー試作で一番時間がかかったおもちゃはなんですか?

自分が関わった中では「リニアライナー」(磁力で浮かせて走行することを実現した電車の玩具)はスタートしてから3年かかりましたね。
新しい技術を取り入れたり、電子部品を多用するデジタルのおもちゃの商品は着想から3年ぐらいかかります。他にも生産からのリードタイム(商品の発注から納品に至るまでの生産や輸送などにかかる時間)が半年になります。一般的なアナログのおもちゃでいくと1年から1年2か月で商品化ができます。

ーー「リカちゃん」などが世代を超えて愛される理由はなんでしょうか。

「リカちゃん」は55年、「プラレール」は60年続いている理由の一つは、先輩たちがその時代時代にヒット商品を出してくれているからです。子供たちに支持されるそのヒット要因をしっかりと深く分析してから、時代に合わせたモチーフを加えたり、アップデートをしていくやり方がロングセラーの秘訣だと思っています。
例えば、「リカちゃん」だとキャンプがブームになっていれば、キャンプやBBQ遊びができる「リカちゃん」を発売したり、「ベイブレード」や「ビーダマン」もサッカーが流行った頃には、スパイクをモチーフにしたデザインを加えたり、時代に合わせたモチーフをいれるのがポイントだと思います。

ーー実は裏で関連しているおもちゃはありますか?

おもちゃ業界でも他社を真似することもあります(もちろん合法的に)。
他社の商品ヒット要因の部分だけ抽出して、キャラクターを起用する手法もあります。ですからよく見てもらうとこの商品とこの商品は同じ機構を使っているというケースがあります。例えばファービーって聞いたことがありますか?

ーーはい、あります!

当時、ファービーを発案・開発したデイヴ・ハンプトンさんから聞いた話では、実はファービーは、たまごっちを立体物にしようというのが企画のスタート地点だったそうです。これはコンセプトの一部を別の手法でカタチにした例です。

ーーそうなんですね。悔しいと思う商品はありますか?

たまごっちは偉大な商品ですよ。僕らの業界で行くと。当時おもちゃを買わない世代の女子高生が火付け役となり、瞬く間に世界中で売れましたね。「死の概念」を設けたっていうのは遊びのストーリーでは画期的で、それ以降いろんなおもちゃに影響を与えた存在だと思います。もう一つあげるとしたら、レゴですね。幼児から大人も遊べるように、体系化された企画とフォーメーションが素晴らしいと思います。

人生のプロセス

ーー企画を作る仕事をしようと思った理由はなんですか?

入社してからマーケティングの仕事をやってきたんですけど、商品が産まれるところから終わるまでの全体に関わるようになりました。その経験を重ねていくと最初の商品企画が一番大事だと思うようになりました。そこでどんどん商品企画に重きを置くようになりました。

ーーでは元々興味があったというよりもマーケティングをやっていくうちに興味を持つようになったということですか?

はい、プロデュースする立場なので、商品の面白いところを、どんな人にどうやって、伝えるかを突き詰めると商品にヒットの素質が必要だと思うようになりました。

ーーコミュニケーションの取り方で意識していることはなんですか?

チームをリードするには、メンバーのエンジンがかかって、企画に気持ちが入ることで良い結果につながってきました。メンバーの意見を尊重し、企画業務に取り組みやすい環境作りが大切だと思います。

ーーアイデア出しの時に気をつけていることもチームメンバーの意見を聞くことですか?

はい、そうですね、メンバーはその企画の担当者なので一番考えてくれていると思うんです。でも自分の考えを人に伝えるのは難しいじゃないですか。だから1回企画を聞いた段階で「ここどうなの?」ってさらに質問して、本人が深く考えてたことを引き出すようにしています。プレゼンをやってもらう機会もあるんですけど、6割7割ぐらいしか伝えられてないケースが多いと思うので、意見のやりとりを活発にして引き出すようにしています。

ーー佐野さん自身がプレゼンする時に気をつけることはありますか?

基本的に受け手の目線や内容を簡潔することを気にして資料を作るようにしています。プレゼンって退屈だと聞いてもらえないので、キャッチーな箇所をしっかり設けるとか、文字を少なくし、伝えたい要点をはっきりさせるとか。できるだけ中身をシンプルにします。あくまでも受け手にどう聞こえるか、見えるかに主眼を置いてプレゼンするようにしています。

ーー就職活動をする時に大学で経験していて良かったことはありますか?

たくさんバイトをしたことです。多種多様なアルバイトをしました。マクドナルドでアップルパイを揚げたり、社会人のようにスーツを着て広告代理店で働いたりなど40種類以上しました。それぞれが良い経験だったと思います。やるなら徹底的にやった方がいいと思います。

ーー尊敬する人はいますか?

新入社員当時の上司です。仕事への取り組み方など考え方も含めて基本を教えていただきました。

ーーその方の言葉で印象に残っていることはありますか?

「部下が評価されるように自分は動きなさい」ですね。
チームをまとめる立場になったら自分がアピールすることよりも、チームメイトが結果をだして輝くことが大切です。自分をアピールしたがる人もいますが、チームメイトが会社から評価されることがチームにとって一番良いことだと教えられました。

ーー仕事のやりがいはなんですか?

計画以上に売れて、ヒット商品となることが嬉しいです。またヒット商品を出したくなります。ヒットしないことも多いですが、それでもまたヒット商品を目指したくなります。あと、子供たちが夢中になって遊んでいる様子を見ることも本当に嬉しいですね。

どんどんチャレンジをしてほしい

ーー商品企画の仕事につきたい人に高校時代をこう過ごしたらいいよ、というようなアドバイスはありますか?

これっていうのはないです。その代わり何かに打ち込んだ方がいいと思います。例えばですが、クリエイティブなものに触れるとか。何かに打ち込んでやり遂げたうえで自分のオリジナリティをのせるとすごく魅力的な人になると思います。

ーープロNで企画を作る生徒へアドバイスはありますか?

企画はどんどん数を出してください。ダメなものもいっぱい出るだろうし、でも量を出していくうちに質が上がるケースって多々あるので、アイデアを出す脳を使うことをおすすめします。 数をいっぱい出せる方がプランナーとしては優秀だと思います。いろんなジャンルで活躍できる可能性があると思うのでどんどんアイデアを出すトレーニングをしてほしいですね。

ーー例えばどんなやり方がありますか?

何かを見た時に、それに関するアイデアを5個出すとか。そんなふうに自主的なトレーニングをすると、たくさんアイデアを出せる脳になっていきます。大変ですけど、どんどんやっていくと辛くなったりしないですね。

ーー最後にN/S高生にメッセージをお願いします。

おもちゃ会社もそうですけど、どんどん変わらなきゃいけないんですね。「リカちゃん」とか「トミカ」とかロングセラーブランドもあるんですけど、もっと新しいものにもチャレンジしなければなりません。だから、生徒の皆さんにもチャレンジしてほしいなと思っています。その経験っていうのは社会人になっても生かされると思います。今は10代でも、チャレンジできるツールがあるじゃないですか。だからチャンスをどんどん見つけて、小さいことでもチャレンジしていってほしいと思います。

数多くのことを語ってもらったが、ここに載せられたのはほんの一部に過ぎない。その中でもチームでやっていくうえで大事なこと、アイデアを出すうえでやった方がいいことを教えていただいた。今回はプロNをする生徒に向けて書いているが、社会でコミュニケーションをとる時、アイデアを出す仕事につく時にとても役にたつ内容だと思うからぜひ参考にしてほしい。

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