良いアイデアを見つけるためには?〜タカラトミーの社員さんにインタビュー!
取材・文=まどやん(N高5期・通学コース)
N/S高やN中等部には、プロジェクトN(以下プロN)という授業がある。
現代社会に必要なスキルを身につけるため、生徒自ら企画・実践・発表を行う課題解決型学習プログラムだ。私もN高に入学して2年、多くのプロNを受けてきたが、毎度成長を感じている。
今回、まさに企画・実践・発表を仕事として取り組むタカラトミーの石本隆史さんに、アイデアを生み出す秘訣を聞いた。
石本 隆史(いしもと たかし)さん
株式会社タカラトミー 生産戦略本部 技術開発室 室長
1997年入社。1999年より男児向け玩具の企画開発を担当。
アニメ・漫画と連動したメディアミックス商品に携わり「小さな巨人ミクロマン」「メタルファイトベイブレード」「クロスファイトビーダマン」「ビーストサーガ」等多数のコンテンツを世に送り出してきた。
受け取った人が、変わるものを
ーー 企画をする際に考えていることはなんですか?
自分にとってこういうものがあったらいいな、ではなく、商品を受け取った人の生活がこういうふうに変わると嬉しいな、ということを考えています。たとえば赤ちゃん向けの商品だと、親がどういうものを欲しがっているかを最初に考えます。調査をして保護者が求める教育的要素などを探り、監修の先生にも相談して企画していきます。
ーー 赤ちゃんだけじゃなくて、親もターゲットに入っているんですね。
そうなんです。買ってくれるのは親なので、親の期待を裏切らない商品はすごく重要です。
ーー 職業柄、いろんな職業の方とお仕事をされてきたと思います。そんな中で、この仕事をしていないと出会えなかったと思う職業の方はいますか?
おもちゃの開発業務って多岐に渡るので、いろんな方と知り合えるのはすごくいいことだと思います。アニメのおもちゃの仕事では、僕が子供のころから大活躍している声優さんとお会いする機会があったり。小学館の漫画雑誌「月刊コロコロコミック」さんともすごく懇意にさせていただいているんですが、新年会に呼ばれたときに漫画家さんがすごくたくさん来ていて。その中に藤子不二雄Aさんがいらっしゃったのがやはり一番嬉しかったです。僕が子供の頃、ヒーローだと思っていた方に仕事を通じて会えるのは嬉しかったですね。
良いアイデアと出会うために
ーー アイデアを出すことに特化した、おすすめの考え方はありますか?
よく使う考え方に、「AとBを足してA+B以上のものを作る」というものがあります。いちごと牛乳を合わせるとイチゴミルクができるじゃないですか。これはいちごの味とも牛乳の味とも違う、新しい味になる。世の中にある2つのものを1つにしたらこんなおもしろいものになるんじゃないかっていう考え方がおすすめです。
ーー アイデア出しに行き詰まったときは、どう対処していますか?
その日はもう何もしないですね。多分何をやっても行き詰まっちゃうので、今日はもうやらないって決めて。たとえば、僕はオープンカーに乗っているんですが、それでドライブして、一回何もかも忘れて戻って来るっていうのをしています。
ーー リフレッシュが大切なんですね。では、人のアイデアを聞くときに意識していることはありますか?
プレゼンが上手・下手ってあると思うんですが、実際に商品化するうえでそこは関係ないんです。人のプレゼンがうまかろうがへただろうが、そのネタがおもしろいかどうかなので。プレゼンが上手・下手を一度取っ払って見たとき、それが世に出ておもしろい物かをまず考えるようにしています。
ーー 自分のアイデアに注目してもらうために意識していることはありますか?
笑いのポイントをたくさん入れるようにしています。肝の部分はしっかりおさえて、見ている方もフランクに聞けるように。資料もおもちゃの世界観が伝わるよう、バトル物の商品をプレゼンする資料は黒っぽい色を使ってみたり、おままごと系の商品をプレゼンする時は柔らかいピンク色を使ってみたり。そういう工夫はしますね。
ーー アイデアを共有するとき、自信がなくなってしまう高校生は多いです。そういうことは、大人でもありますか?
もちろんあります。特に若者は、おもしろいと感じるのは自分だけなのか、他の人はおもしろくないと感じるアイデアなのか、という考えに陥ってしまう。周りの人に見せて、意見を聞いて、改善していくところは改善していくと、一気に良くなったりします。3人に聞いて2人が良いって言ったらそれは良いところで、2人が「ちょっとここは…」って言ったところは本人がどんなに良いと思っても変えた方が良いところ。人に見せるっていうのが重要かなって思います。
ーー 仲間と共同作業するうえで気をつけていることはありますか?
企画に上下関係はないと思っています。部長だから部長の企画がおもしろいってわけじゃなくて、新入社員からおもしろい企画が出るかもしれないし、大ベテランからおもしろい企画が出るかもしれない。企画に関しては役職、年齢、上下関係は全部なくして、みんな思い思いの意見を言いましょうって伝えています。みんな平等に、おもしろいものはおもしろい、おもしろくないものはおもしろくないって言える環境を作るよう努力しています。
高校生の今しかできないことを
ーー 今の高校生に期待することはありますか?
皆さんは学校自体もオンラインの世代ですから、僕らとは経験している人生が全然違うはずです。僕らの親の世代と僕らは違うし、僕らと皆さんも違う。だから、皆さんにしか考えられないおもちゃだったり商品だったりがあると思うので、ぜひそういうものを作っていただきたいなと思います。
ーー 今の高校生に伝えたいことはありますか?
時間があるはずなんです。仕事を始めると、朝から夜まで拘束される。なので、今できることをたくさんやってほしい。大人になったらできないことをたくさんやっておいた方が良いと思います。
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すべて書けなくて悔しいと思うほど、良い話をたくさん聞けた。私もこれまでたくさんアイデアを出し、プレゼンをしてきたが、ここ最近はターゲットが何を感じるかではなく、発表の場で1番に選ばれることだけを考えていた。しかし今回のインタビューを通して、自分がどうなりたいかではなく、その企画のターゲットがどう思うかが一番大切なんだと改めて感じた。石本さんのお話はプロNだけではなく、さまざまなところで活かせるのではないだろうか。ぜひ皆さんにも、どんどん自分の成長に活用してもらいたい。
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