みんなと同じは好きじゃない私の美学〜「本当に本をつくるプロジェクト」参加者インタビュー②
取材・文:滝谷佳代
N/S高等学校では、日々ワークショップというものが行われている。内容はさまざまだ。無料で聞ける企業のオンライントークセッションや、体験型学習など。もちろん有料のものもある。
たいていのものは1日で完結し、長くても1ヶ月で完結するものがほとんどだ。
そんな中で、約3ヶ月にわたって行われた「本当に本をつくるプロジェクト」に参加し、ありふれた人間の普段の生活の話から始まり、衝撃の展開を迎える小説「星の数だけ」を執筆した上野 佳織梨(うえの かおり)さんに話を聞いた。
話をしてくれた人=上野佳織梨さん
N高等学校オンライン通学コースの1年生
ペンネーム「梨岡(なしおか)こうずけ」の名で人を星と月に例えて「星の数だけ」を執筆。
苦手なことにチャレンジした
ーー「本当に本をつくるプロジェクト」のワークショップを知ったきっかけは何でしたか?
最初は他の出版イベントに参加しようと申し込みする時に、申し込みフォームの「どのワークショップに参加しますか」の部分で、あなたの本を出版してみませんかみたいなのがあって、まだお知らせが正式にはきてなかったんですけど、『え、こんなのがあるんだ!』ってずっと目をつけていたんです。そしてお知らせがきた途端に秒で申し込みました。
ーーもともと出版系のワークショップに興味があったんですか?
そういう訳ではなくて、とにかく物を作ることが好きで、例えばイラストだったり、ハンドメイドなどが好きで、小説を書くのは苦手な部類でした。
なので新たなことにチャレンジをしたいなという思いで申し込みました。
ーーワークショップに参加する前のイメージとしたあとの感想はありますか?
自分が綴る文章の特徴がなんとなくつかめたのと、自分が好きな題材が見えてきました。
ーー長期間のワークショップだったと思うのですがその中でも印象的な授業はありますか?
小野美由紀さんっていう小説家の方を招いて、授業を受けた回があって、小野さんがズバッという方ですごいなって思っていました。
授業外で印象的だったのが、私はそんなに参加していないんですけど同じワークショップを受けている人たちと授業終わりに毎回、zoomを開いて雑談会をしていました。
それでけっこう仲良くなってオフ会とかしているらしいです。
他にも雑談チャンネルみたいなのがあって、そういうのって大体1ヶ月で止まるじゃないですか?
ーーそうですね。
今でもずっと動いてるんですよね。
ーー珍しいですね!?
なのでこのメンバーでしか作れないものがあったんじゃないかって思います。
「エモ文学」を目指した
※ここからはかなりネタバレを含みます。個人的には「星の数だけ」が載っている書籍「青空の余白」を読んでからこの先の記事を読むことをおすすめします。
上野佳織梨さん、またの名を梨岡こうずけさんが書いた、ありふれた人間関係、心情の話から始まり、衝撃の展開を迎える「星の数だけ」。
この小説が読める「青空の余白」の販売情報はこちら。
「青空の余白」¥650
販売店舗:往来堂書店、himaar
(himaarはこちらのwebサイトからも販売予定)
発売日:3月上旬予定
*
ーー今回の小説は星と月が印象的ですが、なぜこれをモチーフにしたのですか?
みんなと同じなのがあんまり好きじゃなくて、特徴を前面に出したいというところがありました。
裏話にはなるのですが、文章の最後に「星が、融合した。」で終わったと思うんですけど、「星の数だけ人の夢がある」という言葉を自分で作っていて、星が融合した理由としては、みんなの願いが少なくなってしまって星が一個になったというところなんです。
ーーそういうことだったんですね!
小説の中でTwitterのトレンドに入っていた「月分裂」に関しては、年月を重ねるごとに人って成長するじゃないですか?
ーーそうですね。
登場人物が急に幼くなってしまっていたと思うんですけど、年月(月)がばらけてしまって、今まで積み上げて成長してきたものが崩れてしまった感じです。
ーーすごいですね!裏話を聞けてめっちゃ得した!って思います。
もうちょっと書きたい気持ちがあったんですけど、文字数制限があって、尚且つドキマギする展開、次も読みたいってなる展開をするのであれば打ち切り漫画みたいにするのがいいのかなあと。これは完全に私の美学ですね。
ーータイトルの命名理由は何ですか?
伏線なしで「星が分裂した」ってなると、読む人も「はにゃ!?」ってなると思うので、題名の方に「星の数だけ」って伏線を張っていれば文句なしだと思ったからです。
ーーなるほど、タイトル含めて全部が小説って感じですね。
そうですね。
ーー「梨岡こうずけ」をペンネームにした理由は何ですか?
私は上野佳織梨って名前で、普通だと佳織って書くと思うんですけど、私には「梨」がついていて、これがアイデンティティだと思っています。そして佳織梨の逆から読んで「りおか」ってとこから「梨岡」にして、歴史で上野の読み方がこうずけってあったのでこのペンネームに決めました。
ーーすごい考えられてますね。
割とひねりました。
ーー執筆にかかった時間はどのぐらいでしたか?
トータル1日ぐらい。設定や話のテーマを考えるのに結構時間を使ってしまったんですけど、書くのは24時間ぐらいです。
ーー意外と早いんですね。
トータル1日とは言いましたが締め切りまでため込んでいた人間なので軽い口は叩けないんですけどねー。
ーー特に注目して欲しい部分やお気に入りの部分はありますか?
人の心情というか、色々注目してほしいところがあるんですけど、主人公がバイトへ行く時に自転車を漕いで色々考えている部分が好きな部分ですね。共感を呼ぶところが多いのかなって思っています。
ーーかなり共感できる文でした。個人的に気に入っていたのは地震速報の「てんてろりん」を音として書いていて可愛いなってお気に入りでした。
ありがとうございます。
ーー本を読んで、読者にどういう変化を持ってほしいですか?
そこらへん全然考えてなくて、エモいなって思ってくれたらいんじゃないかなって。
ジャンルでいうと「エモ文学」というものがあるらしいんですけど、そういうのが好きな人間なので、それを目指して、書いていた節がありますね。
物づくりを趣味として楽しむ
ーー小説はこれからも書いてみたいですか?
けっこうその思いがありますね。「本当に本をつくるプロジェクト」で出会った仲間以外で小説を書く人がいるんですけど、その友達の小説を読んでいると自分もゴタゴタしている恋愛小説を書きたいなーって思っていて、昨日かな、ちょっと書いていましたね。
ーーいいですね。興味あります!
発表するかしないかは微妙なんですけどね。
ーーこのワークショップを受けて進路の変化はありましたか?
趣味でとどめておいた方が、物って楽しくて、お金とかをもらってしまうと純粋な輝きが失われてしまうのではないかと思っています。なので就職するにしても営業でも行くんじゃないかなって思っていますね。
ーーそこは営業なんですね。
営業というか平凡なOLになりたいです。
ーーわかります!私も平凡なOLになりたいです。
趣味として色々あるみたいな感じがいいなって思ってますね。
ーーインタビューを受けてくれた理由って何でしたか?
インタビューを受ける機会って生きているうちでは全然ないと思うんです。そこでワークショップのSlackで「インタビュー受けてくれる人を募集します」って通知がきたとたん、「これはうけるしかない!」思いました。
ーー受けるしかないって思ってくれたんですね。
私より優秀な人は多いんですけど、先着順で募集しますって言っていたので、「先に見た私が勝ちだー!」って
ーー 1番最初に送ってくれたんですか?
1番最初に送りました。
ーーすごい熱意を持って受けてくれたのは嬉しいです。
他にもワークショップに参加しているようですがその中でも印象的なのはありますか?
4月からずっと色々受けている感じで、ものづくり系とか、人の話を聞く系は結構参加しています。印象的だったのは、「無印良品のコオロギせんべい開発」というトークセッションがありました。先着100名にはコオロギ煎餅が送られてきたんですけど、実際に食べてみて、「コオロギうめ」って、無印すごいなって思いながら聞いていました。
ーー最後になりますがワークショップを受けるのは楽しいですか?
楽しいです!おすすめです!
ーーご協力ありがとうございました!
ありがとうございました。
*
今回オンライン通学コース(以下オン通)の授業があったにも関わらず、午前中抜け出してインタビューを受けてくれた佳織梨さん。(オン通の先生ごめんなさい)
だが読んだ時、これは本当に高校生が書いたものなのかと衝撃を覚えたのを今でも覚えている。どういう意図が含まれているのかを何度も読み直した。そして何度も読み直したくなるのが佳織梨さんの小説の魅力だと思う。今回は裏話をたくさん聞けたので私にとって有意義な時間だった。
是非とも佳織梨さん、またの名を梨岡こうずけさんが書いた、星が夢を月が年月を表している「星の数だけ」が載っている書籍「青空の余白」を購入して、読んでほしい。
「星の数だけ」が載っている書籍の販売情報はこちら
「青空の余白」¥650
販売店舗:往来堂書店、himaar
(himaarはこちらのwebサイトからも販売予定)
発売日:3月上旬予定
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